投資のいろは(眉に唾をつけて聞いてください)
私は普段、日経平均やその他の個別株でも下値目途のような予想はしません。
しかし、総合的に考えて12月のSQまでに45000円までの下落はありえるような気がしてきました。いくつか根拠がありますが、私は自分の主義からも下値目途や、急騰、暴落のタイミングについて予測することはしません。
このエントリーも読む人は眉に唾をつけて読んでください。
テーマも投資ではなく雑感にしています。
雑感(クラウディングアウトの例)
NVIDIAの決算で市場が少し動いていますが、本日は別の話を。
クラウディングアウトというのはマクロ経済学で大学生が最初のほうに学習する言葉になるのかもしれません。私は株屋で、株をしながら経済学をいわば実地で学んできているので政府が財政を拡張する時に使うことがあるというイメージを持ちません。もちろん政府は記載する額が巨大なのでクラウディングアウトが典型的に観測できるわけですけれど。
さて、最近プライベートクレジットの話を何度かこのブログでもしています。11月8日のエントリーでも一度紹介しました。そこも今回の話に関わっています。
先月から今月にかけてGAFAMあたりが非常に面白いスキームで社債を発行しています。社債を発行するだけなら面白くは無いのですが、これが将来的に市場を大混乱に導く大きな爆弾になるのと、短期的に見るとクラウディングアウトが発生しているというふたつの視点から面白いのです。
GoogleやMETAが社債を発行していますが嚆矢となったのは確かOracleです。この3社だけで700億ドル(11兆円)程度の社債を発行しました。年限は何十年というものです。これを読むだけでもきな臭さを感じられるかもしれませんが、話はもっと複雑、かつ深刻です。
通常社債を発行するとバランスシートが悪化します。このあたりはGoogleで『社債_バランスシート』でも入力して検索してください。
METAは200億ドルくらい起債して、そして次のようなスキームでバランスシートを棄損させずに大きな資金調達をしました。自分のところで2割、そしてここにプライベートクレジットの会社が残り8割を出資してSPV(特別目的事業体)を作って、そこがNVIDIAのGPUを大量に使ったAI向けのデータセンターを作ります。
そしてMETAはこのSPVのデータセンターを使う代わりに使用料を支払います。その使用料からSPVは社債の利子を支払うわけです。その利子が凄まじくて6%を越えています。経済学部の学生さんならここでクラウディングアウトが(政府が財政を拡張させるケースで無くとも)起こることが分かるでしょう。
このSPVの格付けはAです。Aの格付けを持つ社債の発行体の利回りがジャンク債の利回りを越えています。人々はどう行動するでしょうか。ジャンク債はリスクがあるから高利回りです。格付けAの発行体が同じ利回りを自社の社債に設定したら、誰だって自分のポートフォリオを、ジャンク債を売って、このSPVが発行する社債を買って組み替えるに決まっています。
そして実際そういうことが起こっています。これらの会社が揃ってこのスキームで社債を発行しています。それが先月です。その後ジャンク債市場は低迷しています。それだけでは無くて新興企業が集まる市場は漏れなく低迷しています。それだけ利回りが上昇しているわけです。そうしないと買い手が現れないので。
これはふたつの意味で問題だと私は思っています。
ひとつはこれで新興企業が市場から資金調達をすることがより困難になり、経済活動全体のエネルギーがアメリカですら殺がれていくということです。今は小規模ですが、このスキームでバランスシートを棄損せずに容易く資金調達できると分かれば、格付けの良い会社は全て真似をします。
それは個々の事象としては良いことかもしれません。投資家としても格付けがAの発行体、それはリスクが非常に少ないわけですけれど、そこが発行する社債の利回りが6%を越えているわけですから。けれども大きく見るとどうでしょうか。現在M7と言われているような企業、GAFAMやFANGもそうですけれど、市場から資金を調達することが出来たからこそ今があります。
ところがこのスキームで巨大で格付けの高い企業が高い利回りで社債を発行し始めたら、新興企業はそれに勝る利回りをつけた社債を発行しないと市場から資金を調達できません。これは全体を見た時に企業の新陳代謝を阻害する方向に作用すると思います。これだけでも危険です。
しかし最も危険なのはこの先です。これは次のリーマンショック、おそらく時期が後ずれするとリーマンショックを軽く超えてくるかもしれませんが、こうしたスキームは最初のうち、体裁を整えてやっていくとしても、それが上手くいったとなれば色々な思惑を持った人たちがこのスキームで社債を発行していきます。しかもプライベートクレジットを扱う企業はひとつひとつの案件について別々の契約をするので、外から見ているとそれらの会社の出資が安定しているのかリスクはあるのか、これが完全にブラックボックスになります。つまりこのスキームは本質的にリスクが潜在化する穴を最初から備えていて、悪意を持った人がそれを悪用するところまで距離があまりありません。しかもその規模がかなり大きいです。
もし、将来のどこかの時点でこの手法を使ったSPVが実態としてかなりいかがわしいことになっている、と市場が認知したら、市場はその時広範に使われていたこのスキームの全体に厳しい目を向けてきます。するとこうした格付けAの社債でも市場で売り圧力が強まって、大混乱が起こります。
それがいつになるのか。例えば5年後なのか6年後なのか。それは良く分かりませんが、リーマンショックの時、サブプライムローンなどをCDSにして世界中で売りさばいていたわけですが、それ自体は2001年頃(ちょっとよく覚えていませんがそのころです)からありました。けれども2007年頃になると問題が顕在化して、もう小手先の手法では市場の崩壊を止められないところまで来ていたわけです。
このブログでも何度も話していることですが、リーマンショックは半年ぐらい前から予見可能だったというのはそういう意味です。しかも割と多くの人がそれに気が付いていました。個人投資家ですらそうです。しかしちょうど今、つい先ほどのエントリーでも書いたように人は順境に弱いものなので、危険を知らせるサインに無頓着になるわけです。無頓着にならないような古強者の個人投資家は私の周囲でも全員生き残っていますけれど、そうでない個人投資家はあの時全員消えました。
話が逸れますけれど、今回のこの後起こる調整局面はこれまでより複雑な事象の結果として市場が動くので、リーマンショックの時と同じように多くの個人投資家が消えていくと思います。多分来年の今頃は、これまでここの常連だった人でも少なくない人が消えているような気がします。用心してください。
とにかく、おおよそそのくらいの時間軸で問題は表面化すると思います。今回はもう少し早いかもしれません。既にプライベートクレジットを扱う会社の業績にケチがついているので。けれどもこの短期間でこのスキームで発行された額がこれまでよりけた違いに大きいので、例え短期間で問題が顕在化したとしてもその段階では取り返しがつかないぐらい問題が大きくなっているかもしれません。
その時はどうしましょうか。現金を持っていてもあまり意味が無いことだけは確かです。株や仮想通貨を持っていたら更に悪いですが。今の内から頭の中で思考実験だけはしておく方がいいかもしれません。
私自身もその時の解答を今ここで持っているわけではないので、私のブログを読んでくれているみなさんと一緒に宿題を解くことにしましょう。
投資のいろは(荒れていますね~)
乱高下という言葉が似合う相場になってきました。
チャートがとても面白い形になっています。
こちらは日経平均日足の3ヶ月チャートに移動平均線とMACDを重ねたものです。昨日の上昇を全て打ち消して下落しています。チャートと移動平均線の基本ですが25日MAに届かずに5日MAも回復できてすらいません。
典型的な下落チャートです。
今回の4月頃からのラリーの中でこの25日線がとても強力な支持線となっていましたが、今回これを割った上に戻すのに時間がかかる、というよりこれだとしばらく25日MAを回復できないと思います。
18日から19日に日付が変わる頃にアップしたエントリーでも書いたのですが、今回のNVIDIAの決算では想定とは異なる影響が出る可能性があると思っていました。さて、その肝心のNVIDIAの株価ですが、これを見てみます。
こちらはNVIDIAの1時間足の2日間チャートです。これで見ると中央のところが決算の翌日のESTの午前9時(日本時間午後11時)になります。つまりここがNVIDIAの決算が出た後の最初の取引の時間だったわけです。その瞬間は5%上だったのですが、そこから場中にどんどん下落していって、最終的に終値は3%安でした。
これを受けてナイトセッションでの日経平均先物は日付を超えた頃から急落し始めます。AIバブルと、業績の不明瞭さが市場にこれほど共有されたらこういうことになるだろうということでしょうか。ちなみにSOXは5%近く下落しています。
日経平均だけでなく現在世界的な株安局面にあり、株以外の色々なものも価格が下落しています。先を読むのは難しい局面ですが、少なくともここから上に行くという流れではないと思います。下値の目処、というのも私は基本的に考えません。そういうのは当たることが無いので。
しかしプット買いはそう簡単に決済しないということは確かです。
下値目途を想定しにくいのはテクニカル的な支持線が近くにないということもそうですが、オプションの建玉を見ても下の方はスカスカで、このあたりだろうというポイントが見当たりません。もしかするとこの週末などにどこかの価格帯で大きな取引があるかもしれませんけれど、それでも建玉が積み上がっているという状況にはならないでしょう。更にオシレーター系の指標もあまりあてにできません。
こちらは日経平均の日足3ヶ月チャートにボリンジャーバンドを重ねたものです。こちらも参考程度に見ておく方が良いですが、それにしてもここから下の方にバンドウォークするのなら、46000円が底値という気はしません。
上でリンクを貼っているエントリーにも書きましたが、現物を持っているだけなら、あまりじたばたしない方が良いでしょう。率直に言って含み益が減少する、という生易しいことでは済まず、かなり厳しい含み損を少し長い期間抱え込むことになると思いますが、不確実性も高く、ここで決済した翌日から(少ない可能性とは言え)暴騰することもあり得ます。そもそもボラティリティが上昇していて値動きが荒くなっていますから。従って、ここまで現物株を持ち越してしまったら、もう塩漬け一択でしょう。
先物やオプションだと、これがまたNVIDIAの決算の中途半端さでポジションを多く取りにくくはありますが、25日MAまで接近することがもしもう一度あれば、そこで追加のプットを買おうと考えています。
しかし相場観に自信が無ければすべて現金で持つのが最善手です。
ちなみに、24日は祝日ですが日本では先物オプション市場は祝日営業日で動いています。そこで大きく市場が動いたら、火曜日は朝から阿鼻叫喚の相場になると思います。しかもそれはおそらく長い下落局面の初動だと思います。
さて、本日までの成績です。
現物株
8月(ここ)までの確定分
+291500円
本田技研工業(7267)
400株×1600円
+8300円(確定)
ベルーナ(9997)
500株×942円
+11500円(確定)
+14500円
小計
+326800円
オプション
8月(ここ)までの成績
+417500円
9月限C43500買@680円×2枚
9月限C43500買@690円×1枚
9月限C43000売@930円×3枚
-74000円(確定)
9月限P42000売@680円×1枚
9月限P41500買@515円×3枚
-86500円(確定)
11月P46500買@745円×2枚
+159000円(確定)
11月P46500買@1015円(平均)×2枚
+105000円(確定)
11月P42000売@415円×2枚
11月P41500買@370円×2枚
+9000円(確定)
11月C49500買@540円×2枚
11月C49000売@410円×2枚
-26000円(確定)
12月P48000買@685円×3枚
12月P48000買@545円×1枚
12月P47500買@465円×1枚
12月P47000買@590円×1枚
+369000円
小計
+873000円
合計
+1199800円
オプションについては直近の引け値を採用しています。
ここで欲を出してプットを買い増すのも考えたのですが、このブログは初心者向けにリスクを最小化しつつ利益を出すという主題があるので、それは止めておきます。私がこことは別に個人として取引するところではプットは既にラージで大きく買っています。金融資産全体との割合で考えればまだ少ないですけれど。
しかし中国株と新興国の一部の株を除いて、日米の株は長期で持つつもりであったものも含めてほとんど売っており、残っている銘柄も緩やかに売却を進めています。なので世界のどこの市場で取引されている銘柄であっても、それをヘッジする必要性自体が失われているので、過度なリスクを取ってまでオプションのポジションを持つこともありません。
それと、このブログで9月以降更新が非常に少なくなりましたが、こういう時がいつやってくるのか、割とすぐそれが来ることは分かっていても、正確にそれがいつなのか分からない時、動かないことがとても重要なことを理解していただけると幸いです。
私がこのブログで繰り返し述べている投資の唯一の格言があります。
多くの人は逆境には強くても、殆どの人が順境にとても弱い
投資のいろは(明日の展望)
現在NY市場でSOX指数が3%を超える下落中です。
チャートを見ているとまだ下落し続けるように見えます。NASDAQも冴えません。日経平均先物は日中の引け値を一瞬ですが下回りました。
まだ明日の朝に向けてNYが持ち直す可能性はありますが、このままだと大口参加者のポジションの組み替えに伴う大きな動きで明日も大きな陰線を引く可能性が高まってきています。現段階で現物を持っている人は、しばらくそれを持ち続けるというような戦略を受動的にであれとるしかないでしょう。
こちらのブログでは9月頃に全ての現物を売ったと書いていて、読者の方々にそれを強要するようなことはありませんが、これだけのバブルです。調整し始めたら相当大きな下落が生じるのは当然です。
個別で業績の堅調なところを持っていてもこういう場合は意味がありません。信用買いの残高が積み上がり過ぎていて、これが一気に巻き戻される可能性を考えると、全ての銘柄に売り圧力がかかります。
ただこのナイトセッションの動きを見ると、今からだと何をやっても手遅れに思えるので、今は諦めて信用買いを全て決済して含み益が減少するにせよ現物は持ち続けるしかないような気がします。
私個人としては、今回の下落は相当大きなものになると思っていて44000円あたりまでは軽く届くだろうという感触ですが、それは人に断定的に言えることでも無いので、明日あたりに現物を売って、NVIDIAの決算で市場が全戻しする可能性だって少ないにせよ可能性はあると思います。
ただそのNVIDIAの業績が実際に市場の期待通りの数字かどうかよりも、その数字に粉飾の疑いがあるというのが市場参加者のコンセンサスになりつつあるので、明日のNVIDIAの決算は想定とは全く異なる影響を市場に与える可能性も見ておく方が良いかもしれません。
今回は相当多くの人が市場から退場しそうな予感がします。


