月が満ちるまで 帰り道 2
遊歩道を歩きながら、彼女は自分の楽しみを見つけていた。
「あのベンチの下には、いつも猫がいる」
だの
「あの家の庭にあるラベンダーがもうすぐ咲きそう」
そんな、ぽろりとこぼれる言葉を聞くうちに、少し落ちついてきた。
彼女が冷静なのに、俺が取り乱すわけにはいかない。なるべく感情をこめて、相槌をうってきた。
彼女の世界で興味があるのは、猫やラベンダーだけにしておくわけにいかない。
いま、彼女の視界には俺もいて彼女のことを知りたいと思う気持ちと、俺のことを知ってもらいたいという欲望がある。
できるなら
離れていても、忘れられないくらい彼女のなかに居座りたい。
俺が惚れて…溺れるくらい…溢れるほど想っているのを知ってもらいたい。
俺の欲望を知ったら、彼女は驚くだろうか。
鹿のような瞳を見開いて、俺を見るだろうか。
臆病な鹿に近づくには、時間をかけるしかない。
ちいさな時間の積み重ねを続けるしかない。
一緒に帰るのも
次につながっていくように
あせらずに距離を縮めて、君を抱きしめたい。
「あのベンチの下には、いつも猫がいる」
だの
「あの家の庭にあるラベンダーがもうすぐ咲きそう」
そんな、ぽろりとこぼれる言葉を聞くうちに、少し落ちついてきた。
彼女が冷静なのに、俺が取り乱すわけにはいかない。なるべく感情をこめて、相槌をうってきた。
彼女の世界で興味があるのは、猫やラベンダーだけにしておくわけにいかない。
いま、彼女の視界には俺もいて彼女のことを知りたいと思う気持ちと、俺のことを知ってもらいたいという欲望がある。
できるなら
離れていても、忘れられないくらい彼女のなかに居座りたい。
俺が惚れて…溺れるくらい…溢れるほど想っているのを知ってもらいたい。
俺の欲望を知ったら、彼女は驚くだろうか。
鹿のような瞳を見開いて、俺を見るだろうか。
臆病な鹿に近づくには、時間をかけるしかない。
ちいさな時間の積み重ねを続けるしかない。
一緒に帰るのも
次につながっていくように
あせらずに距離を縮めて、君を抱きしめたい。
ありがとう
ブログジャンルを決めていなかったのですが、小説を書きはじめたので、ブログジャンルを小説、ポエムにしてみました。
ジャンルを決めるのは怖い気もしたのです…
なにせ上位ランカーは艶っぽい話なので、そんなジャンルに迷いこんでいいのかとね。
アメーバはよそのブログからのお引っ越しが多いですね。それだけ大きいネットワークなのだと思います。
そのなかで、たまたまとはいえ出会えたのですね。
アクセスありがとうございます。
拙い話ですが、お付き合いいただけたら嬉しいです。
ひとつ前の話は、書き足してあります。よかったら読みなおしてみて下さいね。
月が満ちるまで 帰り道
「それじゃ、もういいのね」
「ああ、今日はね」
金井先輩は、ふうっと息をついた。
気がつけば、俺も体に力が入っていて体が強張っていた。
今頃になって指先が震える…いや、わからなかっただけでずっと震えていたのかもしれない。
「風花、先帰っていいよ。僕はまだ用があるから」
「じゃあ先に行くね、行こう渡辺くん」
「…まだ許したわけじゃないからね」
金井先輩は目を細めている。
なにを、なんて聞かない。
俺たちの間には、まだ何もないから。
貨物列車が廃線になって、その軌道跡が遊歩道になっている。
学校からの帰り道には、ここを通るのだと教えてもらった。
朝は駅から近道して、通らないのだと。
たわいない会話だった。
それでも声が聞けるだけで嬉しい。
俺に話しかけてくれるのが嬉しい。
街路樹につつじが植えられていて、鮮やかなピンクの花をつけている。
自転車を押しながら並んで歩いているのが、夢みたいだ。
「…ありがとう。みんな柊兄にあおられると、逃げたり、無理やりイロイロ聞いてくるから嫌だったの。そんなことして付き合う人を分けたくなかったの」
「ずいぶん過保護だね」
「わたしにはおばあちゃんしか居なかったから、そう思ったのかも」
さらっとすごい事を言う。
「別に隠す気はないの。ただ興味本意に聞かれるのが嫌なの」
顔はまっすぐ前を向いていた。下を見たりしなかった。
「わたしの父親は、柊兄の父親の弟なの」
ちょっと考える間があいて
「いまは別に暮らしてる」
彼女はさらさらと話す。
なんでもない事ではないだろうし、迷いや葛藤があったのだとしても、さらさらした感情のしたに隠れてうかがえなかった。
ただ聞いていた。
どんな言葉も
どんな感情も
彼女の味わってきたものに比べたら
とるに足らないものでしかないようで
言葉がうかんでこなかった。
「…大変だったね」
それが精一杯で、あわててまばたきをした。
そして、明るい春の空を見上げた。
俺の惚れた彼女は…
やっぱり特別だった。
知りたい気持ちと、
知ってどうできるのか…子供な俺にはわからない。
ただ、もし彼女が誰かそばにいてもらいたかった時に…
そばにいれたら、そう思った。
「ああ、今日はね」
金井先輩は、ふうっと息をついた。
気がつけば、俺も体に力が入っていて体が強張っていた。
今頃になって指先が震える…いや、わからなかっただけでずっと震えていたのかもしれない。
「風花、先帰っていいよ。僕はまだ用があるから」
「じゃあ先に行くね、行こう渡辺くん」
「…まだ許したわけじゃないからね」
金井先輩は目を細めている。
なにを、なんて聞かない。
俺たちの間には、まだ何もないから。
貨物列車が廃線になって、その軌道跡が遊歩道になっている。
学校からの帰り道には、ここを通るのだと教えてもらった。
朝は駅から近道して、通らないのだと。
たわいない会話だった。
それでも声が聞けるだけで嬉しい。
俺に話しかけてくれるのが嬉しい。
街路樹につつじが植えられていて、鮮やかなピンクの花をつけている。
自転車を押しながら並んで歩いているのが、夢みたいだ。
「…ありがとう。みんな柊兄にあおられると、逃げたり、無理やりイロイロ聞いてくるから嫌だったの。そんなことして付き合う人を分けたくなかったの」
「ずいぶん過保護だね」
「わたしにはおばあちゃんしか居なかったから、そう思ったのかも」
さらっとすごい事を言う。
「別に隠す気はないの。ただ興味本意に聞かれるのが嫌なの」
顔はまっすぐ前を向いていた。下を見たりしなかった。
「わたしの父親は、柊兄の父親の弟なの」
ちょっと考える間があいて
「いまは別に暮らしてる」
彼女はさらさらと話す。
なんでもない事ではないだろうし、迷いや葛藤があったのだとしても、さらさらした感情のしたに隠れてうかがえなかった。
ただ聞いていた。
どんな言葉も
どんな感情も
彼女の味わってきたものに比べたら
とるに足らないものでしかないようで
言葉がうかんでこなかった。
「…大変だったね」
それが精一杯で、あわててまばたきをした。
そして、明るい春の空を見上げた。
俺の惚れた彼女は…
やっぱり特別だった。
知りたい気持ちと、
知ってどうできるのか…子供な俺にはわからない。
ただ、もし彼女が誰かそばにいてもらいたかった時に…
そばにいれたら、そう思った。