月が満ちるまで 帰り道 2 | ふんわりシフォン

月が満ちるまで 帰り道 2

遊歩道を歩きながら、彼女は自分の楽しみを見つけていた。

「あのベンチの下には、いつも猫がいる」

だの

「あの家の庭にあるラベンダーがもうすぐ咲きそう」


そんな、ぽろりとこぼれる言葉を聞くうちに、少し落ちついてきた。

彼女が冷静なのに、俺が取り乱すわけにはいかない。なるべく感情をこめて、相槌をうってきた。

彼女の世界で興味があるのは、猫やラベンダーだけにしておくわけにいかない。
いま、彼女の視界には俺もいて彼女のことを知りたいと思う気持ちと、俺のことを知ってもらいたいという欲望がある。

できるなら

離れていても、忘れられないくらい彼女のなかに居座りたい。

俺が惚れて…溺れるくらい…溢れるほど想っているのを知ってもらいたい。

俺の欲望を知ったら、彼女は驚くだろうか。

鹿のような瞳を見開いて、俺を見るだろうか。

臆病な鹿に近づくには、時間をかけるしかない。

ちいさな時間の積み重ねを続けるしかない。

一緒に帰るのも

次につながっていくように
あせらずに距離を縮めて、君を抱きしめたい。