ふんわりシフォン -367ページ目

月が満ちるまで 帰り道 3

遊歩道の終わりに本屋があった。
なにげなく、のぞいて彼女の足が止まる。

視線をたどると、一枚のポスターがあった。

「上村松園展」

着物を着た女性が、鼓だろうか、楽器を演奏するさまが描かれている。
ふわりと広がった袂が、躍動感があって、きれいだった。

ほんのり頬がピンクにそまって、何も言わずに、じっと見つめている。

そんな様子も、よかった。

「好きなの」

「この人の絵のなかでは、一番好き」

はにかむように笑う。

「見に行くの」

考えるように、唇に指を持っていく。かわいい唇だ。
「…行ってみたいけど、少し遠いな」

開催地は、東京だった。電車でなら、二時間で着くだろう。
そんなに遠くない。

「いいじゃない、一緒に行こうか」

精一杯の、努力。

「ううん、いいのよ」

彼女は首を振った。

「見たことあるから」

ポスターでさえ、こんなにくぎ付けになるほど見ているのに?

好きなら、本物を何度でも見たいはずだ。



ふいに言葉が蘇る。

「わたしには、おばあちゃんしかいない」

……バカだ、俺は。

そんなの経済的な理由に決まってる。

楽しむために普通にできることはいくつあるんだろう。

いったい、いままでいくつ諦めてきたんだろう。

何も言わないで、我慢してきたんだろう。

かわいそうだ

そう言ったら彼女は嫌がるだろう。

同情で好きになったわけじゃない。

でもほかの言葉で…なんて言うんだろう。

Green curtain


緑の匂い

あずまやに緑のカーテン

したたる緑

ひんやりとわたしを包む

木漏れ日の影が

足元にレースを描く

騒音さえとどかない

物思いにふける午後

月の船

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月の船に乗って

あなたに会いにゆこう

千の夜と 千の昼を越えて

船縁を打つ

星くずを撒き散らしながら

あなたの夢にたどり着く


何度 離れても

切なくて

恋しくて

戻ってきてしまう


夢で会いましょう

月の船でまどろみながら

あなたを思う