ふんわりシフォン -282ページ目

月が満ちるまで ナツのハナ 7

わたしも、おばあちゃんに着付けをしてもらう。

紺の地に花柄の、ごく普通の浴衣だけれど、わたしには特別なものだった。

今年はおばあちゃんが新しくゆかたを仕立ててくれたからだ。まだ新しい浴衣は生地に張りがあってぴんとしていた。

二人で生地を見て、これがいいね、となったのは優しい桔梗の柄だった。

目が悪くなったから、最近はあまり針を持たなくなったけれど、昔は人に教えるほどの腕前だったそう。

そばで仕立てる様子を見てきたから、針目のひとつひとつが、揃った真っ直ぐな運針にため息がでた。

ためしに縫わせてもらったら、糊のきいた生地は硬くて針を刺すのも大変だった。

指貫きで針を送る様子は何気ないけれど、かなり力がいる。



「おばあちゃん、ありがとう」

「なに、いきなり」

「なんでもない」

顔を見合わせて、二人で笑う。





誰かが誰かを思う気持ちは、きっとまるくて優しい。
ころころと転がり相手の胸に届いて優しくなれる。

そんな相手をこれからも探していくのだろう。



胸の奥で触れ合える何かを探しながら。

唇からこぼれた言葉が

泡のように

ふくらんで 君にとどいたら




ふんわり丸く

ふわりと軽く

君へと届くなら



どんな想いを詰め込もう

月が満ちるまで ナツのハナ 6

お風呂からあがると、ちはやが浴衣を着付けてもらっていた。

紺の地にうさぎと雪の紋様に似た柄が散っている。柄自体は可愛らしいもので、意外な好みだった。

帯は形のできている物を、背中に結わえるタイプのもので、ラメの入った細い飾り紐がついている。

レースや花で飾り立てる浴衣でなくて、ホッとした。
それでも、ワンポイントに前から見た帯に造花がさしてあった。

派手すぎず、地味すぎず、だろうか。

乾かした髪を簡単に頭の上にまとめて、バレッタで留めていた。

「すごいね、あっという間だったよ」

くるりと鏡の前で回ってみせる。見慣れない浴衣姿は、ちはやを大人っぽくしていた。

もともと、目鼻立ちのはっきりしたちはやは大人っぽいので、浴衣なんて着たらこの前まで中学生だったなんて思えなかった。

「ちはや、すっごく似合ってる。極道達の妻みたい」

「なにそれ~せめてキャンペーンガールくらいにしてよ」

笑いながらおばあちゃんが言う。

「おばあちゃん子だから、流行りに疎くてねぇ。ちはやちゃん仕込んでおくれね」

「まかして下さい。今日は基礎から行きますよ」

じやらりと大きめのポーチを取り出す。ぷくぷくに太ったポーチからは瓶や金属のこすれる軽い音がした。
なにをする気なんだろ。

学校以外でのちはやは、どんなお洒落をするんだろう。