ふんわりシフォン -28ページ目

Focus 7

伊部さんの携帯が着信を告げると、席を立って二人を迎えにいってしまった。

コーラを舐めている現地コーディネーターは、明日の撮影場所やお昼の打ち合わせを終えてからは静かに存在を主張していた。

もちろん何が食べたいと言えば、美味しいお店を紹介してくれたり、時間があれば連れていく約束をしてくれる。

日に焼けた肌は、あどけない顔を引き締めていた。

ぼんやり顔を眺めていたら、ニカッと笑われた。

「こっちのケがあるの」

手を顎にあてしなを作ってみせる。間違っても男に気があって見つめていた訳じゃない。


「違っ…なんか手持ち無沙汰で」


礼治さんは黙って泡盛を飲んでいて、話しかけづらい雰囲気を醸し出している。
いつも和やかに場を盛り上げる礼治さんが静かだと、俺も合わせて大人しくするしかない。




しばらくして店の引き戸が勢いよく開かれた。

開けたのは栗色のロングヘアーをゆるく巻いた目鼻立ちのはっきりしたカワイイ子だった。ロングワンピースを着ていてもスタイルの良さは際立っていた。

あ、グラビアのモデルかと思うまもなく礼治さん目掛けて突進してきた。



「明日からお世話になります柏崎玲奈です」

ペこりと勢いよく頭を下げると、長い髪がぱさりと垂れて床につきそうになった。

「山崎礼治です。顔あげて。そんなに畏まれたら俺も合わせなくちゃでしょ。楽にしてくれない?」

場をとりなすように礼治さんが話しかける。

「あたし礼治さんのファンなんです。今日も会えるのをすっごく楽しみにしてて、それで急いできて。やっぱり慌ててちゃおかしいんだけど…えーと…うれしくてにやけちゃいます」

前髪を直しながら照れ笑いを浮かべる。明るくて素直な子だと感心してしまう。

「ゴメンね、礼治さん。玲奈ちゃん場所がわかったら突進していって、俺ら置いてきぼりよ」

はあふうと息を切らせて、遅れた伊部さんとスタイリストさんがやって来た。

「もータクシーの運転手さん置いて走ってくんだもの。支払いしてきたよ」

「あ、ごめんなさぃお金払います」

慌ててバックを開けると、ポーチやスプレー、ヘアゴムなどが、ばらっと散らかった。

「やぁっ ごめんなさぃ」

そばにいた礼治さんと伊部さんも拾うのを手伝った。

「すみません、玲奈はほんっとあわてんぼうで」

一緒に来たスタイリストさんも、屈んで遠くにとんでいないか視線をさ迷わせた。

「いいんじゃないですかねぇ。元気があるのはいいですよ。年をとってくると余計です」

拾いあげたヘアゴムを玲奈ちゃんに渡しながら礼治さんが答える。

受け取った玲奈ちゃんは、唇を大きな三日月みたいにして「ありがとぅ」と言ってにっこり笑った。

夢のなかで

いつもあまり夢を見ないのですが、この前久しぶりに見たのでその話を。



わたしは誰かといて、その人が「どこでも好きな所に連れていってあげるよ」と言うのです。



どこにしようかと考えるより早く場所が移動して、目の前には鉄塔が二列に並んで夕陽を浴びていました。


「凄いねー大きいねー」



と鉄塔好きなわたしは喜んで見ていたのですが、その場所はわたしが選んだというより、連れてきてくれた人がわたしに見せたかった場所じゃないのかという気がしていました。



時間も場所も何も気にしなくていいなら、世界中の美術館で絵画や彫刻を見たり、有名な建築物を見てまわりたいのですが、その時のわたしは見せてくれた光景に胸がいっぱいになって、ただ二人で鉄塔を見ていました。

残暑お見舞い

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立秋を過ぎて暑さがやわらいだようです。


写真は風船かずら。
今年は写真の大きな植木鉢と、小さい植木鉢と二つに植えてみました。

どちらも好きなのですが、大きな植木鉢のほうが見栄えがいいようです。

風が吹くと緑の風船をゆらゆら揺らして、なんともかわいい姿です。



風船かずらの花は白い小さな花です。

かすみそうの小さな花と同じくらい、もしくは一回り小さいくらいの大きさ。



それなのに、こんなに大きなかわいい実をつけます。

花言葉は『あなたとともに』このかわいい実のなかに、白いハートを付けた種をしのばせているからでしょう。

見えない気持ち。優しくてあたたかい誰かを思う気持ちを隠しています。