とし物語 vol80 ~クラッチオープンまで2~
そのとき妻のお腹の中には赤ちゃんがいた。
僕はめっちゃ悩んでいた。
お腹の中の赤ちゃんにも苦労をかけてしまうことになる。
もちろん妻にも。
正直自信もなかった。
お金もなかった。
人脈もなかった。
何もなかった。
こんな状態でやれるはずがない。
でも妻からは「やってほしい。」
と言われた。
僕「お金もないし、できるかどうかもわからんし。」
妻「それでもがんばろうよ。」
僕「いや、甘いって。もうちょっと勤めてからでもええんちゃう?」
(甘いのは僕ですが)
妻「いや、そんだけ想いがあるならやるしかないやんか。」
僕「でも例えば勤めてたら給料が多少安くても貰えるやんか。でも自分達でお店をやったら
売り上げが0なら0やん。しかも借金してやらなあかんし。」
妻「・・・・・・」
僕「・・・・・」
僕「別に勤めるのがいやとかじゃないし。それか全然違う職業についてもいいし。
むしろそっちの方が給料も貰えるかもしれんし。就職できるかはわからんけど
今28やから転職するならこれがラストちゃうかな?」
妻「・・・・・」
僕「やっぱり産まれてくる子供はちゃんと育てたいし、苦労かけたくないし。」
妻「・・・・」
ここで妻が言った
「でもやっぱりやってほしい!」
僕「いやでも!!」
妻「もし今違う仕事をしたら確かにお金は楽になるかもしれへん。
でもいつかお腹の子供が産まれて大きくなった時、きっとこの人(僕)は
私とこの子のために夢をあきらめたんだ。って後悔する日が来ると思う。」
僕は
やりたくないわけじゃなかったが、やっぱり自信もなかったし不安ばかりで自分でも甘いのはわかってるし
苦労もかけるし。
そんな気持ちからかなり強く言った。
「・・・・・。でも絶対苦労かけるで!明日食べるご飯がないくらい貧乏になるかもしれんで!!」
妻
「そんな貧乏やったら全然耐えれる!!やってほしい!!!」
この言葉で自分に火が付くのがはっきりとわかった。
もう迷いはなかった。
妻は僕なんかよりよっぽど腹がすわってるというか
度胸がある人だ。
「よし!じゃあやるで!!」
とし物語 vol79 ~クラッチオープンまで1~
沖縄から帰ってきて2週間ぐらいでお店を辞めることになった。
ま、いろいろありまして。
辞めるちょっと前に自分の中でもうあと1回何かあれば辞めよう。
と思ったその日に何かあった。
お店には6年ほど勤めた。
最初はグチばかりだったが、ホントにお店がスタッフがお客さんが好きだったし
いいお店にしたかった。
が、志半ばで辞めることになってしまった。
最後はオーナーと話をして、言いたいことはだいたい言えた。
今皆がどんな気持ちで働いてるとか。
etc・・・
がんばってる人もいれば、そうじゃない人もいる。
目標をもってやる気がみなぎってる人もいれば、そうじゃない人もいる。
不安で仕方ない人もいるし、なんとなくやってる人もいる。
そんな大きなお店じゃないし、もっと皆を見てあげてほしい。
僕はもうやめる人間なんで、どう思われてもいいが
お店にいてくれる人たちをもっとちゃんとしてあげてほしかった。
今までの人生で2番目に勇気がいった。
辞めるにあたってお客さんにあいさつしたかったし、引き継ぎなどもあるので
2ヶ月後に辞めることになった。
その辞めるまでの間にスタッフの人達と1対1でご飯に行った。
1人1人と話して、安心した。
皆は自分なりの考えをちゃんともってるし、僕なんかがいなくても
全然大丈夫!
そう思えた。
僕はこの時、美容師を辞めようと思っていた。
自信がなくなっていた。
結婚もして、将来の事を考えると28歳の今が転職するラストチャンスかな?
なんてことも考えたりした。
自分が今まで担当させていただいたお客様にはきちんと伝えたかった。
感謝の気持ちを。
こんな僕なんかでも指名してくれて、ほんとに感謝の気持ちしかなかった。
2ヶ月間でどれだけの人達に伝えれるかわからないが、ハガキをだしたり
お店に来てくれた人達には直接伝えた。
「これからどうするの?」
「せっかく技術身につけたのにもったいない」
「向いてると思うけどな」
なんて言葉をいただいたりした。
正直、技術の事を言われてもどうでもよかったし、向いてるとか言われても
自分がもうしんどかったので、何とも思わなかった。
なので、特に気持ちが変わることはなかった。
ある1人の、
僕がスタイリストデビューしてからずっと担当させていただいてる人がきた。
その人にも伝えた。
するとその人は他の人達とは少し違う言葉を言ってくれた。
「せっかくとしさんと出会えたのに。」
なんか嬉しかった。
「どうしたらいいんですか?これからも私の髪の毛切ってくださいよ!」
うまく言えないが、必要とされてる気がした。
自分の居場所はこの店にはないな。
と思って辞めることにしたのだが、この人には必要とされてる。
気がした。
そう思った。
そんなことを言ってくれる人が他にも何人か現れた。
ホントに自信がなくなってた時なので、めっちゃ嬉しかった。
こんな僕でも必要としてくれる人たちがいるんだ。
って思えた。
そういう人が1人でもいるのなら、やっぱり美容師を続けてみようかな?
そんな気持ちが少しでてきた。
少し時間も立ち、落ち着いて色々考えなおしてみた。
店長をさせてもらって、自分のやりたい店というかやりたい感じというか
こんなお店にしたい!
という思いが強く出てきてる事に気付いた。
どこか他のお店に就職するか?
考えた。
しかし自分の中で、想いが強くあったのでもう自分でお店をやろう!
と決めた。
妻と話し合った。
結婚して同じ仕事をしてて、先輩でもあり相方でもある。
僕は妻に苦労をかけてまで、迷惑かけてまで、無理してまで
お店をやろうとは思ってなかった。
妻から思いがけない一言を言われた。
とし物語 vol78 ~沖縄1人旅編8~
翌朝。
昨日太陽が沈むところを見たので今度は太陽が昇るところをみようと思い
早起きする予定だったが、昨日は怖くてなかなか寝付けなかったので
寝坊した。
起きて急いで浜辺へと向かった。
このまま石垣へ帰るので荷物をまとめて持って出た。
となりで昨日の男性が寝てた。
結局名前も知らないままだったが、犯人じゃないみたいなのでよかった。
走って海岸へ行ったが、もうすでに太陽は登り始めていた。
しばらく浜辺を散歩することにした。
まだ朝の6時ぐらいだったので人もいなかった。

足は日焼けしてサンダルの型がいってた。
今日石垣に帰って夕方ぐらいの飛行機で京都へ帰る。
僕は景色を目に焼き付けた。

またきっといつかこの島に来よう。
船の時間になったので港へ。
港へ行くと、数人が船を待っていた。
その中の男性が声をかけてきた。
「昨日はどうも。」
???
「あっ!昨日は暗かったのでわかりませんか?オカリナふいてた者ですよ。」
「あぁ!!わかりました。顔はよく見えなかったのですいません。」
彼も石垣に帰るところらしい。
で、また違う島へ。
京都に帰るのが嫌になってきてたので、ホントにうらやましかった。
ふと横を見ると女性が1人立っていた。
おそらく旅人だろう。
僕はこの旅で初めて女性に声をかけた。
「すっ、すいませーん、1人ですか?」
かなり緊張した。
「はい。」
そりゃみたらわかるよね。
頑張って話しした。
どうやら石垣に帰ってそのまま黒島へ行くらしい。
僕は京都に帰るということを言って、よかったらお昼一緒にどうですか?
と誘ってみた。
すると、快くオーケーしてくれた。
帰りの船でも少し話しした。
もちろん船内で。
行きはデッキに座ってしまい、びしょびしょになったので。
石垣島に着いた。
僕らは時間もあまりなかったのですぐ近くのA&Wに入った。
沖縄限定のハンバーガーショップらしい。
そこで適当にランチした。
彼女は滋賀県から来てるらしくて1人旅は6回目だとか。
はまってしまったらしい。
その気持ちはよーーーくわかる。
彼氏が心配してるらしいが、旅はやめられないと。
しかも1人がいいって。
旅人に悪い人はいないですよ。
って彼氏さんに言うてあげたかった。
30分ほどランチして船着き場へ戻った。
彼女が黒島へ行くので見送った。
結局名前も歳もわからなかったけど、そんなことは関係ない。
時間が合えばめし食って、会わなければ1人で。
行き先が同じならば一緒に、違うなら1人で。
そんな感じ。
僕は少し時間があったので、最初に泊まった宿にもどってみようかな?って
思ったがやめた。
星君が最初
「空港から歩いて来たわ。結構近かったよ。」
って言ってたのを思い出して、石垣もラストやし空港まで歩くことにした。
石垣島のお店や景色をしっかりじっくりみながら、ゆっくり歩いた。

可愛いカフェがあったのでお茶した。


校長先生みたいな銅像もあった。

結構歩いたが、全然空港につかない。
いったいどんだけ歩くねん!
と、自分につっこんだ。
結局2時間ぐらい歩いた。と思う。
星君はこの距離を
「全然歩けたで。」
と言うていたので、かなりの脚力をお持ちのようです。
空港に着き、いよいよ石垣島とお別れすることに。

お土産も何も買わなかった。
旅行に来たわけじゃないので。
飛行機に乗り込んだ。
空から石垣島を見るとホントに小さかった。



この旅でいろいろな経験ができた。
僕にとってはすごいいい旅だった。
いい人たちに出会えた。
自分の気持ちもすっきりしたというか、フラットにもどった。
自分探しの旅。
という、それほど大それたものではないけど
僕にとっては初めての冒険で、初めての経験で
素敵なほんとにいい旅だった。
またホントに石垣島に行きたいし、絶対行こうと思う。
2011年の今現在も、あの旅で出会った人たちとはいまだに交流があり
石垣島に移住した人もいるので、泊まる所は大丈夫?
だ。
