とし物語 vol68 ~美容師編17~
岡田さん。
見た目はひげ面のサラサラセンターわけの優しそうな人。
そんな男前ではないが、すげー男前の人だ。
初めての出会いはまんだらができて引っ越しの時。
一緒に手伝ってくれた。
そのときいろいろ問題が起きて、もう辞めようかと思ってた時
(この話はまた機会があればその時にでも)
岡田さんが僕たちのところに来てくれて
「今日初めて会ってたった3,4時間しか仕事してないけど
2人ともがんばってたよ。かっこよかったよ。」
って言ってくれた。
ホントにすくわれた。
うれしかった。
僕らは泣いた。
それからたまーに店に来られた時に会うぐらいだった。
先輩のグチ、お店のグチを言ってた時。
岡田さんからご飯に誘ってくれた。
岡田さんは何も言わずに僕の話を最後まで聞いてくれた。
しょーもないグチばかりの話を。
で、最後にこう言われた。
「俺の会社も大阪が本社で東京に支店がある。支店のトップは女性。
たまに東京に出張になった時、若い連中を連れて飲みに行くねん。
その時も今のとしくんみたいにグチになるねん。
で、聞いてるけど最後に俺はそいつらにこういうんや。」
「愚痴ばっかり言うてるけど、女がトップで体張ってがんばって会社守ってんのに
お前らカッコ悪いやろ。ダサいわ。
文句言うてる暇あれば、もっと仕事がんばってお前がトップになったらええねん。
それでもっといい会社にしたらええねん。」
って。
僕は自分に言われてる気がした。
気がしたというか、きっと僕に言ってくれたんだと思う。
僕の心の中のスイッチが自分でもわかるぐらいに
バチン!!!って入った。
俺ってダサいな。
カッコ悪いわ。
岡田さんがむちゃくちゃカッコよく見えた。
そして最後に
「出版と美容で違うけど、いつかとしくんがもっと仕事できるようになって
そのときにまたお酒飲みながら話できたらええのにな。」
って言ってくれた。
僕は心の底から
この人に認められたい。
この人にかっこいい男になったな。
って言われたいって思った。
ホントに思った。
それからは仕事の愚痴を一切言わなくなり、とにかくいいお店にしたい。
その一心でがんばった。
そのためにはトップにならないと。
店長にならないと。
と思った。
やはり下っ端では限界がある。
特に僕らの店は上は女性ばかりだったので、男性の僕が!
という気持ちが強かった。
で、3店舗目を出すときにカペリの店長になることができた。
その時右腕というか、一緒に頑張ってくれるメンバーに僕は同期の海くんを選んだ。
海くんとは入社以来切磋琢磨し、時には兄弟のようでもあり友達のようでもあり
仲良くライバルとしてがんばってきた。
たぶんこのままずっと2人で働けることなんてないだろうし、あと何年一緒にがんばれるか
わからない。
僕らは男子がすくなかったので、カペリとマンダラという感じで一緒に働くことはすくなかった。
今なら2人ですごいことができるんじゃないか?
そんな思いで海くんと頑張ることに決めた。
しかし、そんな僕の思いとは裏腹に
うまくはいかなかった。
とし物語 vol67 ~美容師編16~
美容師としてだいぶ慣れてきて、仕事も楽しくなってきたころ。
オーナーがもう1店舗出そう!
と言い出した。
最初は滋賀県でって考えてたが結局四条に出すことになった。
たまたまいい物件も見つかった。
四条の新店舗には本店カペリの店長が行くことになった。
それに伴い、僕が本店カペリの店長をまかせてもらえることになった。
店長。
そもそも僕は役職や肩書なんてどうでもいいって思ってる。
美容師になってほんとにいろいろあったけど、今ここにいるスタッフは
ホントに人間として美容師として素敵な人達ばかりだった。
僕がアシスタントの時に、もうちょっとうまくのせてくれたら
もっといい感じで働けるのに。って思ってた。
後輩たちに聞いても同じようなことを思ってた。
なかなか仕事なんでむずかしいけど。
でもいくら下っ端がいい雰囲気を作って仕事してても
トップがピリピリするともう店全体がピリピリした雰囲気になる。
どうしようもない。
そうなると今いるお客さん達もそういう雰囲気を感じ取って、急にしゃべらなくなったり
逆に僕らに気を使ってくれたりする。
なので、僕らはお客さんではなくて店長の顔いろをうかがいながら
怒られないように仕事をするようになってしまってた。
ずっとこれはおかしい!って思ってた。
逆やん!!
上の人達はみんな女性。
全員がそうじゃないけど、女性の方が感情的だ。と思う。
お店が忙しくなったらイライラしてるし、言い方もきつい。
しかもピンポイントで嫌なこと言ってきたりするし。
僕は最初はそんな人たちの文句ばかりを言ってた。
先輩のせい。
店のせい。
に、してた。
でもそうじゃない。
そのことに気づかせてくれた人がいる。
それが当時まんだらの店長をしてたホエチュエンさんの旦那さん。
岡田さんだ。
この人との出会いが僕のそれからの人生を大きく変えた。
とし物語 vol66 ~美容師編15~
なんとかパーティーも終わり、何ヶ月かたったころ。
今度はジェニーの両親が日本にやってくる。
ということになった。
でも僕には関係ないことだ。
と思っていた。
ある日、お店で働いているとジェニーがお店にやってきた。
つい最近カットしたばかりなのに。
僕は
カットがミスったのかな?
ちょっと長かったか?
とか思ってた。
どうやら違うらしい。
僕に紹介したい人がいるということだ。
一体誰だ?
そう。
両親だった。
お父さんはいかにもって感じでかなり太っていて身長も高かった。
お母さんもこれまた同じ感じで、かなりでかかった。
「おぉー、君がトシくんか。はじめましてよろしくね。」
的な感じで英語をしゃべってたと思う。
「あなたがトシくん?娘がお世話になってます。」
的な感じだった。
あいさつ代わりにハグされ、キスをチュっとしたしされた。
ほっぺたに顔を寄せてチュッとするやつだ。
皆見てるし恥ずかしかった。
気が付くと両親に腕を持たれてなぜか3ショットで写真を撮られてた。
あるスタッフが僕の所へ来て
「このままオーストラリアに連れて行かれるんじゃないですか?」
って言ってきた。
まさか・・・?
ちょっと不安になったので、ジェーンに
「ドゥーユーノー?アイハブガールフレンド!!」
確認した。
「イエス!アイノー。」
安心した。
どうやら日本の京都で娘が世話になってる美容師さんがいるから
わざわざ挨拶に来てくれたらしい。
別に深い意味もない。
おまけに、新婚旅行で是非オーストラリアに来い!
ってなことまで言ってくれた。
ほんとにうれしかった。
なんか、日本人だからか僕がそうなのか。
パーティーに誘われたり、両親を紹介されたりしたらなんかちょっとあるな?
って思ってしまう。
もしかして気があるのかな?
とか。
そうじゃなく、ジェニーはほんとにフレンドだから
楽しく飲みたいから誘ってるし、フレンドだから両親にも紹介してくれた。
そんな風に思った自分がちょっと恥ずかしかった。
反省した。
初めてホントに日本人以外のフレンドができたんだな。
そんな素敵な時間は長くは続かなかった。
ジェニーがオーストラリアに帰る日がやってきたのだ。
しかたがない、いろいろ事情があるのだろう。
そして、最後のカットする日が来た。
僕はホントに感謝の気持ちを込めて
「ハウドゥーユースタイル?」
って聞いた。
すると、なんとジェニーは
「エニーシングオーケー!」
って。
たぶん、あなたにおまかせするわ!
ってなことだと思う。
僕は心が震えたというか、燃えたというか
ほんとにうれしかった。
信頼関係ができたんだ。
「オーケー!ドゥーマイベスト!!!!」
カットした。
結果
シュワルツェネッガーみたいな
おっさんみたいになってしまった(笑)
いいわけすると、もともとかなりショートだったのに
月1回必ず来るのでどんどん短くなり
最後はホントにベリーショート状態だったので
そんなふうになっちゃった。
というわけだ。
(すいません)
でも彼女は笑顔で
「オーケー、サンキュー。」
って。
そして彼女と別れた。
お別れパーティーもあり、参加した。
最初はホントに日本語が喋れなくて不安で不安で美容室に行ったけど
初めてであったトシがほんとにやさしくて、一生懸命話しかけてきてくれて
うれしかった。感動した。
って言ってくれた。
僕は全く英語がわからなかったのに、不思議とジェニーの言ってる言葉は
わかるようになってた。
気持ちが通じてたからだろう。
僕も、精一杯お礼の言葉と感謝の気持ちを言った。
泣いてるジェニーを見ると泣きそうになったが、こらえた。
「ジェニー、これがサヨナラじゃないよ、今日が新しいスタートの日やからね
だから悲しくなんかないよ。きっとまた会えるよ。」
って言った。
伝わったみたいで彼女はうなづいてた。
そしてホントにサヨナラした。
それからしばらくはエアメールでやりとりをしてた。
僕が結婚したときは、お祝いの品をオーストラリアからわざわざ送ってくれた。
1年ぐらいして、彼女は今度はカナダに行くことになったらしいという手紙が来た。
しばらく連絡できないけど、おたがいがんばろうね!
って。
それが最後の手紙だった。
手紙がこなくなり、住所や連絡先もわからない。
僕は毎日の忙しさを理由にだんだんジェニーのことを忘れていった。
あれから5年。
なんていうか、今こうしてまた思いだして書いていて
あんなに他人の事を理解しようと思ったことはないんじゃないか?
って思えるぐらい。
今度はもっとしゃべりたいから英語を勉強してみたり(うまくならなかったけど)
相手の目を見て話したり(日本語なら耳でわかるけど、英語は目をみて一生懸命聞かないと)
パーティーに誘ってくれたり、両親を紹介してくれたり
友達になってくれたり。
ジェニーにと出会えて言葉が通じなくても気持ちが通じてたら相手の事もわかるし
わかってもらえるんだなって。
ホントに素敵な経験をさせてもらった。
ホントにありがとね、ジェニー。
最後に名前はジェニーであってたかな?m(__)m