800文字 -58ページ目

浮世離れ

浮世離れした人間になりたいとたまに思う。時代に先んじているとか、遅れているとかといったところから別の次元で、他人から影響されずにマイペースに暮らす人に憧れている。そういう生活にはそれなりの不便さもあるとは思うが、ここまで情報が氾濫した世の中になってくるとどこかで情報を遮断して暮らしたいと思うことがある。

そんな気分のときによく読む漫画は前川つかささんの「大東京ビンボー生活マニュアル」と高野文子さんの「るきさん」。どちらの主人公も一本筋の通った生活のポリシーを持っていて、慎ましい生活をしている割にはとても豊かで楽しそうだ。

大東京ビンボー生活マニュアル」に影響を受けたのは電車や地下鉄を極力避けて、目的地まで歩くこと。実際歩いてみると大阪に比べて東京の都心部は平らで歩きやすいことと意外と緑が多いことに気づく。また、地下鉄で行くと随分遠く感じるのに、歩いてみると実はすごく近いということもよくある。自分の中の地図が実際の距離よりも地下鉄の路線図に無意識の間に影響を受けていることがよくわかる。

食パンの耳を好んで食べるようにもなった。主人公のコースケが作るパン粥も実際に作ってみた。新婚時に住んでいた社宅近くの店のパンの耳が特においしかったのでよくもらいに行った。土日は奥さんがなかなか起きてこないので、朝食によく一人でパンの耳を食べた。たまに、サンドイッチの卵がついているものがあってとてもうれしかった。

「るきさん」から影響を受けたのは絵本を図書館で借りることと図書館の喫茶店でお茶を飲むこと。図書館の喫茶店(特に平日の午後)は独特のまったりした雰囲気がとても心地よい。借りたばかりの長新太さんの絵本を5冊くらい読みながらコーヒーを飲んでいると浮世離れしたオーラがいい感じで出てくるのでお勧めだ。


前川 つかさ
大東京ビンボー生活マニュアル 上
高野 文子
るきさん
長 新太
つきよのキャベツくん


バベル

登場人物がたくさん出てきて絡み合う群像劇が好きだ。先日亡くなったロバート・アルトマン監督が群像劇の名手と言われていた。その中ではレイモンド・カーヴァーの短編を組み合わせた「ショート・カッツ」が印象に残っている。当時かなり人気のあったヒューイ・ルイスが局部丸出し(それもでかい)で出ていたのが衝撃的だった。

もう少し若い監督ではポール・トーマス・アンダーソン監督の作品がかなり好きだ。ポルノ業界を描いた「ブギーナイツ」、トム・クルーズの怪演が光る「マグノリア」といった作品を撮っている。登場人物の抜き差しならない状況を尋常でないテンションの高さで描く。その後のカタルシスの描き方もすごく巧み。この監督の作品はかなりお勧め。

というわけで、遅ればせながら今年のオスカーで話題になった「バベル」を観てきた。「さまざまな理由によるコミュニケーション不全」という堅苦しいテーマを描いている割には、カット割りや展開がテンポよく巧みなので、負担なく一気に最後まで観ることができた。監督の技量はかなり高い。ただ、人物の描き方は少し浅い気がした。

 登場人物のメキシコ人家政婦のセリフで「私は悪い人間ではない。ただ、愚かなことをしただけ」というものがあるのだが、登場人物がほぼ全て、「善人だけど愚か」な人で占められている。「悪人で愚か」、「善人で利口」、「悪人だけど利口」な人も現実には当然いるのに、ほとんど出てこない。もっと言うと昨年のオスカー受賞作「クラッシュ」は「悪人で愚か」な人間が善人になる瞬間や「善人で利口」な人間が「悪人で愚か」な行動をする変化の描きかたが巧みだった。しかし、この作品にはこのような変化の視点もほとんどない。

 ところで、監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥという名前を聞くと、スリランカの首都スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテを連想するのは僕だけだろうか。


角川エンタテインメント
ブギーナイツ
ポニーキャニオン
マグノリア
東宝
クラッシュ ディレクターズカット・エディション

パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド


 去年から今年にかけて映画熱が蘇ってきた。学生時代は映画館で年間50本は観ていたが子どもが生まれてからは、それこそ盆暮れに1本ずつといった感じだった。泊出張の空き時間にふと映画館に立ち寄ったことがきっかけで、また、はまってしまった。現実とは隔離された映画館の雰囲気はやはりいい。たまに会社帰りにも映画館に寄るようになった。

 そういうわけで、パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズもこの2作は映画館で観ている。前作「デッドマンズ・チェスト」は、ホラー、アクション、コメディーのいろんな要素がうまい具合に融合していておもしろかった。何よりジャック・スパロウのキャラクターがかなり立っていて、ジョニー・デップ好きの僕としてはかなり楽しめた。

一方、今回の「ワールド・エンド」は正直観ていて途中から苦痛になった。内容がてんこ盛り過ぎてお腹がいっぱいを通り越して吐きそうになった感。こんなにたくさんの情報を盛り込む必要があったのかと疑問に思った。テンポよく前2作で張った伏線を解決して、メイン3人の人間関係をたっぷり描いて欲しかった。消化不良の感が否めない。

とはいえ大部分が海上シーンの映像は迫力満点。スパイダーマン3もシリーズの落とし前をつけるのに精一杯って感じが強くしたが、3部作の最後って難しいと思った。特に、本シリーズは2作目がかなりよかったので、余計に難しかったかもしれない。つくづく、ロード・オブ・ザ・リング3部作を描ききったピーター・ジャクソン監督はすごいと思う。そう思うとスター・ウォーズ エピソード3もうまくまとめたなあと今さらながら思った(もっともあちらはエピソード2がバカップル映画状態で最悪でしたが)。

マイナーな作品はともかく、こういうメジャー作品をおっさんが一人で観に行くとさすがに浮いてしまう。次は、大好きなシュレック3を観に行って家族連れを引かそうと思う。


ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト スペシャル・エディション
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
スパイダーマン2 デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組)
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
スター・ウォーズ エピソード3 / シスの復讐
ポニーキャニオン
ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 コレクターズ・エディション