吹きガラスうんちく<基礎編その3>
前回の記事では下玉の種類について解説をしました。
今回はさらに踏み込んで、
実践で役に立つような情報にしてゆきたいと思います。
下玉の肉厚において、注意しなければならないことが形以外にもあります。
竿元の突込み加減やガラスの被り方です。
これが見た目以上に大きな影響力があります。
下の図はガラス玉のボリュームとしてはほぼ同じですが
理想としては左右が均一な肉厚で
温度分布にムラがないというのが好ましいということを
頭では分かってはいても
実際には左下や右の絵のようになってしまいがちです。
肉が厚い部分は最初熱持ちがいいという利点がありますが、
一旦冷めてしまうと、焼けるのに時間がかかり、
コップであれば最終的には飲み口が分厚いものになってしまいます。
さらに片肉であれば、シンメトリーな形状にはなりませんし、
斜めに傾いだ仕上がりとなってしまいます。
想像しただけで、気持ちが萎えますね。
解決策としては玉巻きの正しい練習をひたすらやり込むことになります。
工場では「玉巻き3年」といわれ、
毎日それのみを続けたとしても3年かかるものとされています。
教室ではちょっとキツイ練習量かもしれません。
認めにくいのですが、
本質的には、ボタンの掛け違いはやはり最初に戻らないと
直りません。
次回は「玉巻き」についてです。
吹きガラスうんちく<基礎編その2>
うんちくシリーズの新しい試みとして
”実践で使える”をテーマに書いてみたいと思います。
第一弾は「下玉」についてです。
竿に熔けたガラスを巻き取り、
膨らましつつ器にしてゆくというのが吹きガラスの基本です。
サイズが大きい場合、核となるガラス玉を冷ました後に
複数回、その上に熔けたガラスを何層も巻き足してゆきます。
デザインやアイテムによって、
「下玉」にバリエーションが生まれます。
中心に近い核になる層を「下玉」と呼び
それに対して外側の熱を帯びた柔らかい層を
「上玉」または「上ダネ」と呼びます。
ここまでが、「下玉」についての説明ですが
言葉にすると、すごく難しい響きがしますね。
吹きガラス経験のある方にしてみれば、
反対に当たり前の内容ですので
「早う、本題に行け!」というツッコミが入りそうデ怖いです。
さて、下玉の種類です。
便宜的に上から「総肉タイプ」「ベネチアン・タイプ」「砲弾タイプ」とします。
それぞれ、一長一短がありますので
自分が求める仕上がりに合わせて
ケースバイケースで臨機応変に使い分けるのが良いでしょう。
「 総肉タイプ 」から解説をします。
ガラス玉の肉厚がどの部分も均一であり
形状が球ですので、上ダネとのなじみも良く
誤ってねじってしまっても、片肉になりにくいという利点が有ります。
初心者にはこのタイプがお勧めです。
リスクが少ないのがこのタイプだからです。
敢えて短所があるとすれば、底肉を残すために仕込が必要になります。
(この部分に関しては、温度分布の話になりますので、後日に譲ります。)
次に「 ベネチアン・タイプ 」
薄く、均一にカッチリ作りたい場合はこちらです。
側面に複数の色ガラスの装飾を施したい場合もこのタイプを選択するのがいいでしょう。
側面が均一に分厚く、先端の肉が薄いのが特徴です。
先端をくくり落すと全体が側面の肉厚で構成され、先端の中心軸付近だけ
ピンポイントで肉厚となります。
モールを多用する人はこのタイプがスタンダードです。
「 砲弾タイプ 」は職人的な技量が要求されます。
飲み口は薄く、コップ底は肉厚とすることが手っ取り早く!!可能です。
生産量を上げたい場合はこのタイプになります。
成功条件としては作業温度帯をワンランク上げて、
回転軸をずらさず、一気に吹き上げることが重要になるので
精度が求められます。
器底を肉厚にするために、下玉先端に肉を残すのですが結果的には
抜けてしまったり、方肉になってしまったりと思うように上手くゆかない
ケースが多いような印象があります。
なぜなのか??を解説しようとすると
「こいつナニ言ってんだ?」
と思われるような展開が予想されるので
回を追って少しずつ、埋めてゆきたいと思います。
吹きガラスうんちく<基礎編その1>
昨年末から、新幹線に乗って教室に通っておられる生徒さんがいます。
過去には横浜や青梅など遠方から片道2時間かけての生徒さんがいましが、記録を大きく更新したことになります。
そこまでのエネルギーを費やしての習い事ですから、
指導する身としては気持ちを引き締めてゆかねばなりません。
授業ではデモを見せ、イラストを交えての説明を毎回しておりますが、
やはり、家に帰ってからの復習がしたいということもあり、
かねてより、「テキストください!!」と言われておりました。
実はこれまで、授業ではテキストを配布したことはありません。
もらってしまうと、そこで満足してしまうからです。
授業では
理解した分だけ、技を習得できるのではなく
習得することによって、理が伴い、技になる
ということを何度も言ってまいりました。
理論の構築が先だという人も、
もしかしたら、いらっしゃるのかもしれません。
そこで、この場を借りて吹きガラスの理論を
ヘンテコな喩えではなく、真面目に語ってみたいと思います。
次回から第一弾として基礎編と銘打って
下玉からスタートします。
吹きガラスを知るきっかけになる方がいれば幸いです。
2015 トリニティー (その4)
トリニティー・シリーズその4です。
2015年の目標を
「心」と「言葉」と「行動」を一致させる
に設定しました。
昨年末に展開した「回転軸」理論のみでは
特殊なケースによっては十分に機能しないことに気付いたからです。
そこで、人生の羅針盤として長く活用するために
より精度の高い自分ルールを作ることにしました。
前回の記事http://ameblo.jp/7thmonolith/entry-11980404116.html
で妥協なき探求者の最後を極端に描いてみましたが、
いささか、やり過ぎたかもしれません。
敢えて、この話から教訓を引き出そうとすると、
何事も節度をわきまえ、行き過ぎず、
程々が大事だよね~
みたいな中庸を良しとする流れになるかと思います。
もちろん、そのことについて反論はありません。
しかし、この結論では
2極を行き来する運動を戒め
回転軸を定めようという、昨年末の論点を踏襲することとなってしまいます。
例えばですが、右と左の真ん中、寒さ、暑さの間など、
バランスを考えた折衷案として
「白」、「黒」ではなく、「グレー」で行きましょう。
という案は容認できます。
ところが、対となる反対語や対義語が難解な場合
「現象」に対しての「本質」
「空間」に対しての「時間」など、
それらの中間が容易に設定できない場合、
最終的に、どう対処するべきか悩んでしまうことになります。
そこで、考えたのが座標軸を3つに設定する方法です。
3点を定めれば、おおよその事は絞り込めます。
現実に行き詰まり、どうしていいか分からず、
途方に暮れて、たそがれる。
そんな時
「トリニティ」が新たな扉を開いてくれるかもしれません。
Light everywhere. Like the whole thing was built of light.
Save Zion.
Yes, you can. You will.
第4の革命
最近は3Dプリンターでのものづくりが話題になっておりますが、
今後は加速度的に産業ロボットや人工知能の導入が進むことでしょう。
一人の天才の仕事を数値化してマシーンが再現して見せることは
もはや難しいことではありません。
もちろん、厳密に言えば人間が勝る領域はまだまだ残されています。
しかし、複数の端末から情報をオンラインで常時収集して
継続的にアップデートを重ね、進化し続けるとなると、
驚異的なスピードで発展してゆくことが考えられます。
「蒸気」による第一次産業革命から「電気」「IT」と続き
現在、第4の革命に差し掛かっている途中であると言われております。
将来の伝統工芸の役割を考えると、
早急に意識を改め、方向転換をしなければならない
時期に来ているのかもしれません。
自分のような、個人生産者が出来ることは極めて
微力ではありますが、
お客様より感謝のお手紙をいただき、
毎日、愛用いただいているとの文面を読むと
何かしらの使命感のようなものがこみ上げてきます。
近所のお得意様から卒業のお祝いに
スマホ・ホルダーとしてお皿を制作してもらえないかという依頼がありました。
手作りの良さというものは確かに存在します。
今後はどうやって価値の本質を広めて
次世代に継承してゆくかが課題になるでしょう。
真心といった目に見えない
領域をデジタル情報に変換して、表示できるとしたら、
模造品や海賊製品などの脅威を押さえ込めるかもしれません。
誠心誠意をモットーとした製品をブランド化できないものかしら・・・・
と妄想する今日この頃です。