Little Friends -608ページ目

「北斗星」の旅路~個室A寝台「ロイヤル」にて⑩

(続き)ワインに続いて、ウイスキーのミニボトルも飲み干し、すっかり酔っ払った頃、杜の都仙台に到着。本州最後の停車駅だ。

札幌を除けば、東京以北で最大の都市だが、夜11時半の仙台駅のホームは、どれも閑散としている。

仙台がイナカだと言っているのではなく、一晩中、人、人、人の東京の方が異常だという意味だ。

「北斗星」は定刻に仙台を発車、万里の長城のようにそびえ立つ東北新幹線の高架をくぐり、ひたすら北へと急ぐ。

仙台でも運転士が交代した。乗客の安全をたった1人で背負いながら、運転士は盛岡までの約200㎞、「北斗星」を走らせる。

ほとんどの乗客が眠りについているはずだ。乗客たちの夢や憧れを乗せて、「北斗星」は北の大地へ、そして明日に向かってひた走る。

我ながら名文だなぁ(酔)。

仙台発車後、僕もベッドにもぐりこんだ。このままだと、次は「目が覚めると、函館だった」になってしまう。

車内の僕が寝ている間、今の僕が「北斗星」の夜間飛行を書き綴っていこう。

ずっと今の僕が書いてるだろ!などと突っ込まないこと。確かにそのとおりだが、一応、去年「北斗星」に乗った時の時間軸で書いているつもりだ。(続く)

「北斗星」の旅路~個室A寝台「ロイヤル」にて⑨

(続き)僕は夜行寝台特急に乗ると、ひそかな楽しみがある。個別照明の個室寝台でしかできないのだが、部屋の照明を全部消して外を眺める。

もちろん、宇都宮や仙台など大きな駅周辺は、ネオンや町の照明が眩しすぎる。

真っ暗な中、星のようにきらめく家々の灯や街灯、流れ星のように過ぎ去る車のライト。まるで、宇宙を旅しているような気分だ。

まさしく銀河鉄道…。


さあ行くんだ その顔をあげて

新しい風に 心を洗おう

古い夢は 置いてゆくがいい

再び始まる ドラマのために

The galaxy express999 will

take you on a jouney…


銀河鉄道というと、宮沢賢治ではなく999になってしまうのが情けないが、これは僕の人間性と精神年齢に起因するものだから仕方がない。

僕は、機械の体をもらいに行くのではないし、メーテルも鉄郎も乗っていない。車掌も普通の人間だ。

でも、部屋の照明を全部消して暗い外を眺めるていると、メーテルや鉄郎たちの見た宇宙の海のような気がしてくる。

馬鹿げているが、もちろん、いつもこんなことを夢想しているわけではない。「北斗星」の中だけだ。(続く)

「北斗星」の旅路~個室A寝台「ロイヤル」にて⑧

(続き)郡山21時52分着。遅い帰宅客がホームにちらほら。首都圏ほど列車の本数は多くないから、みんな疲れた表情でベンチでじっと列車を待っている。

駅のホームを見ただけでは、郡山に来たという実感はないが、構内の留置線には、首都圏では見かけない車両がたくさん並んでいて、確実に首都圏から抜け出したことはわかる。

慌しくドアが閉まり、郡山をあとにする。これからまだ半日以上の道のりだ。少しでも先を急いでいるかのように、速度を上げる。

札幌まで16時間?何をチンタラ走ってんだよ、ヒコーキなら1時間半だぜ!

そう思う人は、一度「北斗星」に乗ってみるといい。

電車より速度の劣る客車列車ではあるが、チンタラどころか、機関車の性能目一杯の力走だ。

東京と北海道の間には、広大な東北があり、海峡がある。ヒコーキでは、日本列島の長さはわからない。

でも、それだけ長いからこそ、狭い島国なのに多種多様の文化が存在する。

ヒコーキで手軽に往復できるようになって、便利になった分、逆に地方の良さが損われ、今や地方は崩壊寸前だ。

郡山を出ると、明朝の函館到着まで車内放送は中断する、という車掌の「おやすみ放送」が流れた。(続く)