Little Friends -607ページ目

「北斗星」の旅路~海底特急③

(続き)青森信号場から20分ほどで蟹田に到着。ドアは開かないが、上野から乗ってきたJR東日本の車掌が降り、かわりにJR北海道の車掌が乗込む。

ほとんどの乗客は、そんなことなど知らず夢の中だ。もちろん僕も、快適な「ロイヤル」のベッドで、だらしなく眠り呆けていた。

新中小国信号場で、三厩へ向かう津軽線と別れ、複線になった海峡線を「北斗星」は速度を上げて青函トンネルへと急ぐ。

ここはまだ本州だが、新中小国信号場以北はJR北海道の線路だ。したがって、青函トンネルの手前にある津軽今別駅も、青森県にありながらJR北海道の駅なのだ。

大小八つの陸上トンネルをくぐり抜け、油すましが、じゃなかった、中曽根元総理が書いた「青函隧道」の文字を掲げる青函トンネルに突入するのは、午前5時過ぎ。

先頭の機関車がひと声甲高く吠えると、ガタンガタンというジョイント音が消え、車輪がレールの上を滑るシャーッという轟音だけが、密閉された窓の外から響いてくる。

「北斗星」は、海底に向けての長い下り坂を、慎重にブレーキを操作しながら下ってゆく。

本州側の避難拠点である、竜飛海底駅を通過、海底最深部まであと少しだ。(続く)

「北斗星」の旅路~海底特急②

(続き)今後、新幹線が開業する予定なのは、九州新幹線の博多―新八代、東北・北海道新幹線の八戸―新函館、それに長野以北の北陸新幹線も工事中だ。

これらの新幹線が開業すると、平行在来線はJRから切り離されてしまう。

もちろん、JRは国鉄と違って民間企業だから、赤字を垂れ流すわけにはいかない。JR東日本が夜行列車を目の敵にするのも、コストがかかるからだ。

だが、民間企業が公共交通を担う限界が、こうした点に如実に現れていると思う。

華やかな新幹線開業と同時に、沿線の人たちは大きな犠牲を強いられる。それを一番理解していないのが、大都市に住む新幹線の乗客なのだ。

「北斗星」は、早朝4時過ぎに青森信号場に到着。

上野から、長駆「北斗星」を牽引してきたEF81形機関車が切り離され、青函トンネル専用のED79形機関車が先頭に立つ。

機関車特有の「ピィー」という、鋭い警笛が闇を切り裂き、「北斗星」は海峡への長いトンネルへと走り出す。

単線の津軽線に足を踏み入れ、駅を通過するたびに車体を軋ませてポイントを渡る。

行き違い可能な駅では、貨物列車が待っている。深夜早朝は、貨物列車のゴールデンタイムなのだ。(続く)

「北斗星」の旅路~海底特急①

(続き)深夜の2時過ぎ、「北斗星」は盛岡へ到着。ここでも運転士が交代し、電源車からはブルートレイン便の荷物が降ろされる。

ここから八戸までの道のりが、少し説明を要する。

「北斗星」はJRの列車だが、盛岡―八戸間はJR以外の線路を走る。もちろん、昼間の列車なら、たとえば伊豆急や東京メトロ、最近なら東武鉄道にも乗り入れているが、ブルートレインでJR以外の線路を走るのは「北斗星」と「カシオペア」だけ。

もともと、この区間はれっきとしたJR東北本線だったが、新幹線が八戸まで延びると同時にJRから分離され、第三セクターの「いわて銀河鉄道」「青い森鉄道」に転換された。

同様の例は、長野新幹線としなの鉄道(旧信越本線)、九州新幹線と肥薩おれんじ鉄道(旧鹿児島本線)がある。

昔みたいに、単に新幹線ができた、便利になったという図式にはならず、平行在来線はJRから切り離されてしまうのだ。

第三セクターになって、列車本数は増えて便利になるが、運賃は割高になり、しかも、それまで走っていた特急は全廃、デメリットの方が大きい。

「北斗星」も「カシオペア」も、この区間は全て通過で、沿線の人々には何の恩恵もない。(続く)