Little Friends -604ページ目

「北斗星」の旅路~「いかめし」のふるさと

(続き)森はかつてはニシン漁で栄えた漁業の町で、広い駅構内は昔の繁栄ぶりを思わせるが、人影はなくがらんとしている。

榎本武揚や土方歳三ら、旧江戸幕府の脱走艦隊も、箱館(江戸時代は函館ではなく、こう書いた)ではなく、このあたりから北海道に上陸し、箱館をめざした。

森と言えば、なんと言っても「森のいかめし」。でも、森駅のホームには立ち売りも売店もない。もっとも、停車時間が短いから、売っていても買うのは不可能だ。森駅で買うには、改札を出てキヨスクに行かないと買えない。

昼間の特急は、長万部の「かにめし」を車内で販売するけど、「いかめし」は扱わない。

ご存知のとおり。「森のいかめし」の販売数の9割以上は、全国のデパ弁大会や北海道物産展でのもので、森駅で売れるのは微々たるもの。

昔、宇都宮のデパートで「森のいかめし」のおばさんと一緒になり、毎日いかめしを分けてもらった。

僕はあまりいかめしは好きではないが、この時分けてもらったいかめしはいつもできたてで、普段食べる固いいかめしとは大違い、大変おいしかった。

このおばさんたち、1人で全国を渡り歩き、2ヶ月も北海道に帰れない時もあるそうだ。(続く)

「北斗星」の旅路~駒ヶ岳越え②

(続き)トンネルを抜けると、左に湖が見えてきた。

大沼国定公園の小沼で、列車は湖岸すれすれに走りながら大沼公園駅を通過。今度は右手に大沼が見え出すものの、途中から木々に遮られて見えなくなる。

小沼も大沼も、駒ヶ岳の噴火でせき止められてできた湖で、冬なら小沼に憩う白鳥の姿が見られる。

大沼国定公園は、北海道らしからぬ高原の趣が魅力で、温泉リゾートなどもあるのだが、飛行機で千歳に直行する観光客が多いせいか、人気は頭打ちのようだ。

大沼国定公園を過ぎると、駒ヶ岳が時には右に、時には正面に見える。

駒ヶ岳の麓を越えるため、この区間は急勾配と急カーブが続く難路で、「北斗星」も身をくねらせながら速度も上がらない。

下り坂に転ずると、今度は何度もブレーキをかけながら、慎重に下ってゆく。

少しづつ民家が増え、右手に海が見えだした。

噴火湾だ。正確には内浦湾というが、この湾沿いに火山帯が続いているため、噴火湾と呼ばれる。

でも、海底火山がいつも噴火しているような危ない場所ではなく、帆立や毛ガニなどの北海道らしい海の幸の宝庫だ。

噴火湾が見えると同時に「北斗星」は速度を落とし、森駅にすべりこむ。(続く)

「北斗星」の旅路~駒ヶ岳越え①

(続き)函館でまとまった数の乗客が降り、8分間の停車で息を整えた「北斗星」は、2両のディーゼル機関車を先頭に走り出した。

先ほどの五稜郭まで戻ると、今度は函館本線に入る。

函館中心部には市電やバスもたくさん走っているが、函館本線に関しては函館の主要交通機関とは言いがたく、ローカル列車然とした短編成のディーゼルカーが、ワンマンで走っている。本数も多くはない。

ひと駅通過するごとに、住宅の密度が下がり、新幹線の新函館駅ができる渡島(おしま)大野のあたりまで来ると、あたりは畑ばかりで民家がぱらぱらとあるだけ。

札幌を除けば、北海道の鉄道は都市間輸送が主役で、都市圏内の主役はやはり車。集落も駅の周辺より、国道沿いに広がる。

ただ、高齢化と温暖化、原油価格の高騰を考えると、北海道もいつまでも車社会のままでは立ち行かなくなると思う。

空洞化した駅周辺を再整備し、富山のようなコンパクトシティをめざすべきだと思うが。

渡島平野を抜け出すと、「北斗星」は高架橋に駈け上がり、そのまま深い山の中へ分け入る。これから函館本線最大の難所、駒ヶ岳越えに挑む。

駒ヶ岳は標高1131㍍、道南を代表する活火山だ。(続く)