新選組副隊長・土方歳三の恋と苦悩・東映京都「維新の篝火」片岡千恵蔵/淡島千景・松田定次監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。

 

 

今晩20時開始の夜勤に備え夜更かし中です。当地は緊急事態宣言は解除されたものの二次感染の可能性も否定は出来ない上に、過去の例では(スペイン風邪等々)二次被害の方が大きかった事も…買い物のみ外出しましたがその事を意識している方々も多いのか、週末の人出は常時よりもかなり少なく感じます。

 

 

 

さて本日は、今月/令和2年6月の東映ch「新選組特集」の枠内で放映中の一作品ですが、史実では「新選組時代、女性人気が非常に高かった上に恋文も相当数送られていた」と言われている新選組副隊長・土方歳三の姿を元に創作された物語なのかと感じた次第です。

 

 

 

「維新の篝火」昭和36年10月14日公開・池波正太郎原作・結束信二脚色・松田定次監督・東映京都制作。

 

 

DVD化作品ですが有料動画配信は行われていません。尚、先述の通り東映chに於いて本日以降、5/26(火)11:00~12:30・6/3(水)11:00~12:30・6/29(月)11:00~12:30の三回放映されます(HD放映)。

 

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

※東映chの令和2年5月分の作品案内・放映日時案内は此方から/令和2年6月分の作品案内・放映日時案内は此方から

 

 

 

舞台は官軍・賊軍が入り乱れ街中には不穏な空気が漂い、経済も民衆の心身も疲弊していた幕末の京都(現在の全世界の状況と類似している様にも感じます)。大店の主人の未亡人で実子と実妹・丘さとみ/入婿・田中春男と一つ屋根の下に住んでいた淡島千景は、新選組副隊長・土方歳三こと片岡千恵蔵が人斬りを行う場面に遭遇したものの「鬼の副長」と恐れられているのとは裏腹に「世間で言われている程非情ではない方」と云う印象を抱きます。

 

 

そして千恵蔵御大との再会と誘いを切掛に二人は街外の休処で密かに逢う様になり、その情愛は日々深まりますが…新選組局長・近藤勇こと月形龍之介及び徳川幕府に殉じる姿勢を貫く為に私情を挟まない千恵蔵御大と、幕府及び会津公に対する不信感を抱いていた上に世論等々を軽視しては一般民衆の支持を得られないと察知していた山南啓介こと岡田英二との溝も深まる一方であり、更に自らの恋愛を棚上げにして恋人であった北沢典子と見張り番中に出逢っていた事が主因で倒幕側に関所を襲われた責任を切腹と云う形で里見浩太朗に取らせた行為が新選組内部の不協和音表面化と分裂の引き金となり、加えて或る夜偶然に入った履物屋の主人で里見さんの実父である志村喬に怨み言を浴びせられる結果に至ります。

 

 

そして遂に倒幕側は大坂城及び伏見城に迫り、戦闘突入直前の僅かな時間を縫って二人は最後の逢引に臨むのですが…

 

 

 

 

 

 

中盤迄は「表向きでは里見さんに同情したり、月形の御大のお供の為に淡島さんとの約束を反故にする描写も加えられてはいるものの、基本的には自分に甘く他人に厳しい恋愛感情の持ち主なのか?」と強く思わせる千恵蔵御大なのですが、終盤の逢引で「自らの恋愛にも厳しさを持って臨んでいた事」が明らかになり「儚く実らぬ一時の恋に燃えた千恵蔵御大・淡島さんの恋愛模様の重厚感と渋さ」に惹かれてしまいますし「戦の最中に「淡島さんと約束した一本の簪」を屋敷の小間使いで千恵蔵御大の理解者でもあった河野秋武に託す場面」が更にそれ等を味わい深いものとしています。

 

 

そして「日常会話等々の中で得た当時の京都の状況を家族に話す形態で観客に伝える役目を果たした田中さん」「千恵蔵御大に対して実子の里見さんを切腹に追い込んだ恨み辛みと、子供を宿していた恋人の北沢さんがショックで流産してしまった心情の代弁を数分の長台詞で涙混りに言い放った志村の御大の名芝居」も非常に印象に残ります。

 

 

 

「明るく楽しい娯楽時代劇の宝庫・東映」と広く一般には捉えられていたであろう当時から、当作品の様な「重厚な人間模様を鮮明に描いた時代劇」もそれなりに制作されてはいました。しかし当時の人気や注目度が低かった為なのか、黒澤明監督作品に代表される史実に忠実で描写が生々しい時代劇の陰に隠れてしまっている為なのか、取り上げられる機会及び日の目を見る事も非常に少なく、それが一般に対する浸透度・知名度等々の低さに繋がっているのでしょう。

 

 

しかし「黒澤明監督作品を凌駕する出来を誇りながらも観客目線に寄り添った傑作時代劇」は東映に留まらず大映・松竹等々にも多数存在!今後は「識者・評論家が高く評価した時代劇に我々が流されてしまう」よりも「日の目を見られずにいた傑作時代劇を我々が観客目線で評価を下し、それが口コミ等々で末広がりに浸透して行く形態」が望ましいと考えますし(勿論この思考は全ての類の映像作品に適用されるべきと思います)一時でも早くそれが実現する事を切に願います。

 

 

 

 

 

 

最後に、当作品終盤で描かれる「戦火を回避する為に京都の街を離れようと民衆が騒乱状態となるのを横目に、家族で京都に残り正常化を待とうと淡島さんが決断を下す場面」は、以前鑑賞済みの作品で当作の前年に当たる昭和35年秋公開の週刊新潮編集部原案・甲斐久尊脚本・日高繁明監督・梅宮辰夫/三田佳子主演・東映制作・第二東映(後のニュー東映)配給「第三次世界大戦・四十一時間の恐怖」(未ソフト化作品ですがAmazonビデオ内の定額制チャンネル「JUNKFILM by TOEI」で有料動画配信中です)の中盤以降とかなり似ている感を受けました(時代設定が幕末か、公開当時の現代かの差異しか感じない程)。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

「松田監督は日高監督の騒乱の描写を参考に京都を離れる一般民衆達の場面を構築し、結束先生は東京に残る決断をした一握りの人物の設定を淡島さんの脚色に生かしたのか」とも感じた程です。そして「仮に東映京都の巨匠の松田監督・東映時代劇の主要脚本家の結束先生が、格下と受け止めていた東映東京の作品の仕上げ方及び東映との縁が薄かった日高監督・甲斐先生の手腕等々を自らの作品に生かしたのであれば、東映時代劇の衰退を肌で強く感じていた事が自意識の変化に繋がった結果なのではないか」とも…