俳句における2歳上と20歳下の指導者 | ここはいいところ

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「ここはいいところ」の「ここ」は私が行った場所であり、人生の一場面でもあります。
人生という旅のなかで、自分がよかったと思ったところやことを記録し、人に伝わればいいなと思います。
1か月に2~3回は新しいブログを書きたいと思います。

 私は2014年3月、高知県室戸市に単身赴任中に、民宿室戸荘の女将、室戸句会の安岡みさき様に誘われて俳句をはじめました。

 どうやって勉強したらよいかわからず、5月に仕事で上京したときに俳人協会に行き、勉強法を聞きました。染谷秀雄事務局長に丁寧に教えていただき、斎藤夏風の『夏風先生の俳句道場』を読み、NHKの通信講座を受けはじめました。さらに、定年で川崎へ帰ったときのために全国的な天為俳句会に入りました。

 

 それが室戸の豊かな自然から離れて川崎へ戻ると、眼前の発見や感動がなくなり、俳句が作れなくなりました。それでいろいろな本を読み、句材や読む主体も広げ、写生ではない方法も許すことで、作る意欲が起こるようになりました。現代俳句協会に入り、火曜教室で対馬康子先生の指導を受けたことも大きく、先生が会長である麦の会にも入りました。神奈川県現代俳句協会の句会にも出るようになりました。

 

 対馬会長は魅力的な俳句を作る、私より2つ上の知的な方です。2つ上ですが、私より若く見えます(客観的に)。『麦』2021年9月号(75周年記念特集号)で「75周年を祝って」で、次のように述べています。

 

 『麦』創刊号の(中島)斌雄の「俳句の本道」という文章に「俳句の本道をしっかり把握することによって、その作品は揺るがぬものとなり、その句境は自在を得るに至るのではあるまいか」とあります。俳句の「本道と自在」の関係は、言い換えれば「不易流行」「俳諧自由」です。

 そのことは「俳句は究極に於いて叙情詩である。ただそれ自身に固有な性格の為に他の抒情詩とは異なったあらはれ方をとる」ことにつながります。俳句もまた情を叙するもの、つまりこころを誘うものであり、芭蕉が最晩年に到達した境地として斌雄先生が示された「所思の表明」といえるでしょう。これこそ自己の内面をいかに具象化して詠むかということです。

 

 対馬会長の句で私の好きな句を10句あげます。 (*)

  十月の雨の匂いがして受胎

  遠景はいつも幼年いわし雲

  コスモスに出会う化石の部屋を出て

  蛇打たれ笑い崩るる如く死す

  いつもかすかな鳥のかたちをして氷る

  乳与う胸に星雲地に凍河

  春の雨降る平凡という明日

  国の名は大白鳥と答えけり

  半島はどこも淋しいポインセチア

  クラウドに慟哭満てり額の花

 

 対馬会長はよく、情を景で詠みなさい、と言われます。私もそうしたいとは思うのですが、私には俳句に詠みたくなるような情があまり起こりません。私の意識には抽象的な概念があることが多く、それはなかなか景や物に行きつきません。抽象的な概念のままで五七五を作ると警句(アフォリズム)のようになります。それでも、論理だけではない余韻のようなものがあれば、俳句にならないだろうかと思います。あわよくば、そこに抒情が生まれれば、と思います。絵画に具象画だけでなく抽象画があるように、俳句にもと思うのですが……。

 

 そんな悩みを抱えながら、今年6月、現代俳句協会の通信添削を受けました。AIや実体のない対象の句など6句で指導を受けました。

 その添削の担当が堀田季何氏でした。6句を俳句として添削してくださいました。AIを俳句の対象にすることも面白いと言ってくださいました。そのやりとりから、続けて指導を受けたいと思い、氏が主宰する楽園俳句会に入りました。氏は1975年生まれ、私より20歳若い方です。

 

 堀田主宰が八月に出した二冊の句集から、私の好きな句を7句。はじめの1句は『星貌』、残りは『人類の午後』です。

  楽園帰還雪に言語を置き捨てて

  戰争と戰争の閒の朧かな

  囀れりわが宍(しし)を喰ひちらかして

  地球儀のどこも繼目や鶴帰る

  萬緑を疾走す血の乾くまで

  人間を乘り繼いでゆく神の旅

  泳ぐなり水没都市の青空を

 

 なお、AIについての句を対馬先生がどう見るかと思い、麦例会通信句会に出してみますと、特選に採ってくださいました。

私の俳句:2021年8月 | ここはいいところ (ameblo.jp)

 

 最後に、私を日々感動させ続けた室戸の自然の写真から、海から見た室戸岬、その岬尖端の海岸にあるタービダイト層です。

 私のブログのテーマで「高知県」を開いて興味があるものがあれば、ぜひご覧ください。

 

* 対馬会長の句はすべての句集を読んだわけではありません。「現代俳句センター」がある荒川区の中央図書館である「ゆいの森あらかわ」にかなりありそうなので行かねば、と思っています。対馬康子会長は現代俳句協会副会長にして天為最高顧問です。荒川区在住で、地元である荒川区の「俳句の街」事業の推進にも貢献されています。

現代俳句センターの紹介/荒川区公式サイト (city.arakawa.tokyo.jp)