2019.2 NO.109 たいざい VS たいがい
5月から新元号の世がスタートする。日本の権威天皇陛下は、2016年8月に国民にビデオメッセージを発せられた。「人の寿命が伸びる中天皇も生身の人間である以上終身在位は過酷であり、子孫にもそのような負担を負わせたくない。生前退位を認めてほしい」との旨を国民に訴えられた。保阪正康氏は「平成の人間宣言」「平成の玉音放送」と名付けた。
「一代限り」として陛下の想いに沿わなかった日本の権力者安倍首相はまだ首相の地位にある。何に胸を張ってか総裁3選を果たした。
3選がよくて4選がダメという理由はない。自民党の総裁は多選しようと何しようと自民党の勝手だ。しかし、総理(首相)も主権者たる国民の意思に関係なく(勝手に)延長することは許されてよいものか(予定通り退陣しても、ABE政治が続くなら、意味がないが)。
今制度の下では、参議院選で民意を発現するしかない。「自民党も大概にしろよ!?」と。
今般“徳少罵言”(前号参照)の私は平成における安倍首相の失政を5つの大罪にまとめた。
第1の大罪は、憲法解釈による安保法制の成立。それにより米国の戦争に自衛隊員等日本人が巻き込まれることが危惧されることになった。広く国民の間で議論されることなく、権力者の禁じ手憲法解釈で強行された。そのことに対して直接の言及はないものの、現憲法による平和を希求し続けてこられた天皇陛下は、象徴天皇として守り続けたあるべき姿を超えるかのようなギリギリのお言葉を発せられたと私は思っている。その平成の玉音放送に対して内閣が総辞職してもよい事態と思うが、それに対する鈍さは大罪の名に値する。
切れ者元参議院議員平野貞夫氏は、この憲法解釈による安保法制を手始めとして安倍首相を刑法78条「内乱予備罪」により昨年9月から東京高検に告発し続けているという。
第2は、米朝対立に際し米国に加担したこと。唯一の被爆国にとして非核化を求めるのは、北朝鮮だけではなく、それは米国、中国等に対しても同じことのハズ。北朝鮮が悪魔の書をマスターしてしまった以上、北朝鮮だけに非核化を求めても徒労に終わる。米国に追従し北朝鮮に圧力をかけ続けた結果は中国と北朝鮮の関係が元に戻っただけ。今の韓国が離米・反日を続けるなら宗主国中国の下に北朝鮮主導の南北統一も視野に入る(その折レーダー照射問題で首相が一番ムキになっているとの印象を韓国側に与えてどうするのか?)。
ノーベル委員会も会談は茶番と見たのかトランプ大統領に平和賞を受賞させなかった。米朝対立・会談の明確な結実は、一方の演出者米国が日本に(ミサイル連射では役立たない)核・ミサイル防衛装備を高値で買わしたこと。トランプ大統領は、買わせた以上おだて一辺倒である必要がないと、安倍首相に懸案の対日貿易赤字で厳しい顔を向け始めた。
第3は、カイロでの人道支援声明。2015年1月ISと闘う周辺各国に2億ドルの人道支援する声明を熟慮もなく発した。キリスト教宗主国米国からの自身の覚えをめでたくするために。ISが敵意を剥き出しにする十字軍側に日本が加担するのかとIS側を怒らせた。
その後起こったことは、人質の湯川遥菜さんと助けに行った後藤健二さんが殺害され、翌年ダッカでバングラデシュの為に尽力する無辜な日本人7名が殺害された。
その頃から政府関係者よりもネット上で「自己責任」論が喧しくなった。首相支持のネトウヨらに、首相のこの大失態や邦人保護という政府の「自己の責任」を果たしていないことに対する非難をかわそうとする意図があるように私には思える。
IS等のテロ行為は宗教戦争としての側面も見るべき。圧倒的な軍事力の差から、そういう方法しかとれないのでは。一神教を理解できない日本人にとっては、一神教はどこも残酷に思える。サウジ記者のトルコの総領事館での暗殺も残虐極まりないが、キリスト教側も残忍だ。古代エジプト女性天文学者ヒュパティアの虐殺、十字軍の遠征、聖バルテルミーの虐殺、開拓の名によるアメリカインディアンの大虐殺、日本への原爆投下等を見れば。
日本は、ルールもなく、場外乱闘もある宗教戦争では、日本の出る幕はない。宗教も敵味方もないナイチンゲールの役割しか果たせない。1890年トルコの軍艦エルトゥールル号が和歌山県沖で遭難した折漁村の人々が献身的に救助した。第二次大戦下ユダヤ難民に杉原千畝が命のビザを発給した、ように。
第4は、無駄にアベノミクスを吹かし続けたこと。3本の矢と言うけれど実質は1本だ。超金融緩和政策だけ。それについて本ブログ2017年3月号NO.69(「いたがりVS いいたがり」)で批判した。が、その後に発刊された『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)は、リフレ理論による壮大な実験が大失敗に終わったが、それを隠蔽するかのごとくGDPの改定に合わせかさ上げがなされたことなどを庶民の私らにも理解できるよう分かりやすく説明している(上梓したのはエコノミストではない。35歳前後のつい最近まで司法試験と格闘していたと思われる弁護士の明石順平氏だ)。読んでいな人でも、横ばいで推移するに過ぎないのに戦後最長の景気回復と言われても庶民に実感ができるハズもない。
頭の悪い私でも皮膚感覚で物価を上げる(前年比2%)のを政策目標にするのは変だと分かる(借金までして勉強部屋を増築すれば子供が勉強し成績も上がると思う甘い考えの親と変らない)。物価が上がっても名目賃金が上がらなければ実質賃金は改善されない。消費意欲も湧かない。賃金を上げられるよう景気をよくすることが「政府」の政策目標であり、その過程でインフレにならないように物価の安定を図るのが「日銀」の役目であるハズだ。
超金融緩和の結果は、円安により輸出企業が潤ったのと年金(GPIF)、日銀(ETF)、富裕層が株に走り、経済の実態に関係なく、株価が上がっただけ。一時日本のGDPが550兆円程度に対し株式の時価総額は675兆円(2018年9月末)まで乖離した。いずれ実体経済が株価に追いつくより株価が実体経済に見合うまで下がる公算が高い。株価が乱高下してきたのはその前触れともとれる。バブルは文字通り泡と消え、その時残るのは日銀保有の443兆円(2018年12月20日現在。第二次安倍政権発足時は100兆円にすぎない)にのぼる、金利0%に近い超低金利の国債の屑の山。
フローで見れば、超低金利の反動、トランプ政権からの円安是正要求から金利は反転していく。日銀の負債・当座預金の金利が上昇すれば、逆ザヤになり、直に日銀は債務超過に陥る。民間銀行なら間違いなく倒産だ。ストック面から言えば、金利が上がれば国債価格は下がるから売るに売れない。売れば暴落を呼ぶだけ。酷いツケを将来に持ち越しするしかない。一時的に株高でよい思いをした富裕層だけではなく、国民全体で背負わされる。
黒田日銀総裁は任期満了で泥船から逃げたかったと推察するが、叶わなかったようだ。戦後最低の自民党・日銀の総裁コンビとして歴史に断罪されるだろう。
第5の大罪は、官僚制組織を壊し、議論の場としての国会を形骸化させたこと。自身のモリ・カケ問題で、国会も1年以上も空転させたが、行政の長としての責任も反省もない。その後の労働裁量制案の撤回や(技能実習生の失踪多発、シンガポール型階級社会が日本に馴染むかとの問題等の吟味もしない)生煮えのままの入管法改正案の強硬採決を見ても。
5つの大罪に加え、この実質の移民拡大政策が第6の大罪として浮上して来よう。藤原正彦氏は週刊新潮の連載『管言妄語』終了直前の11/8号で(掉尾を飾るがごとく)「日本がなくなる」と批判し、「みごとな外交を展開してきた安倍首相だ。正気を取り戻すことを期待したい」と文を結んだ。正気を失った?権力者に精一杯の空世辞を言い翻意を求めていたが。
拉致問題、改憲もダメ。安倍首相が前のめりになる北方領土返還問題も、年金改革で人気が低下したプーチン大統領は2島返還など考えていないハズ。共同経済活動という日本側のGiveを急かしているだけ。その後の日本側が期待するTakeはのらりくらりかわすのでは(首相の「米基地置かぬ」発言報道に対し、米国も返還はないと見て問題視しないのか)。
この他、水道法改正(運営権の民営化)も強行されたが、これに限らず、『日本が売られる』(幻冬舎新書)とジャーナリスト堤未果女史は警鐘を鳴らす。暗澹たる気持ちになる。
安倍首相しかいないと思うのは大きな勘違いだ。経団連のスタンスも変ってきている。
新元号の世に、上皇陛下、新天皇陛下が安寧なお気持ちで国民を見守っていただけるよう我々国民がしっかりしなければならない。