2019.1 臨時号 NO.108 りょうさい VS きょうさい
よく知らない男性と仕事をするような時その男性をよく理解するために、飲みに行ったり、麻雀をしたり、ゴルフしたりして、本性を探ったりすることがあるのでは。相手に奥さんがいる場合、奥さんを見て、本人を推し量ったりもするだろう。
今から10数年前業界団体のトップから事務局長にと指名がかかった時のこと。トップとは前からの知り合いだが、人となりをよく知っている訳ではない。就任するにあたり、トップ夫妻と会食する機会を得た。トップと中学からの幼馴染という奥さんは、多分少し派手な感じではと想像していた。が、会って一目見て学校の教師かと見間違えてしまった。
後で知ったことだが、奥さんの一族はみな教育者で、奥さんはそれに反発していて教師に見られるのは一番堪えられないとのことであった。しかし、DNAには抗えないものだ。こんな奥さんを娶るトップであれば大丈夫だろうとその時私は安堵した。
『やばい日本史』(ダイヤモンド社)によれば、清少納言は悪口三昧だったという。さしずめ安倍首相への批判ばかり書く私は、“徳少罵言”というところか。そんな私も妻に少し助けられていると思う。私の妻を知っている人なら「感じの良いあの奥さんが37年も連れ添っているのだから、少しは良い所もあるのだろう」と思う人もいてくれるのかもしれない。
庶民でこうなのだから、政治家の妻の持つ意味合いはすこぶる大きい。ファーストレディで真っ先に思い浮かべるのは、ローラ・ブッシュ(ジュニア)元大統領夫人だ。賢くもなく人気も低迷していた大統領に内助の功を発揮した。気さくで聡明なローラ夫人は米国民から高い人気を得ていた(ミシェル・オバマ前大統領夫人もここにきて人気に火が付いた)。
日本の賢首相夫人と言えば、故橋本龍太郎首相の久美子夫人だろう。久美子夫人も気さくで地元選挙区で人気が高く良妻賢母の鏡。橋本首相にまつわるハニートラップ等女性問題の醜聞も、11年前に夫人が上梓した『夫 橋本龍太郎 もう一度「龍」と呼ばせて』(産経新聞出版)にも触れているが、モテる男だからと割り切り消化してしまっている。今においても夫・龍に対し生前と変わらぬ厚い信頼と愛情を貫いている。
安倍首相夫人は首相の足を引っ張っていると皆がそう感じた(森友学園問題では疑いの眼差しを一身に受け健気に首相の盾になった感はあるが)。ファーストレディとは本来皇室のない米国の大統領夫人を指す。日本にファーストレディは不要。皇后陛下がおられるから。
夫の別称は良人、主人、旦那、亭主と敬意が込められる。封建社会では妻からの揶揄は御法度だったのか(私は、女房から、ダメ亭主、ハズレ、ポチ犬、ナメクジと呼ばれてきたが)。一方妻の方は良妻、愛妻、賢妻の他、恐妻、愚妻、悪妻、鬼嫁などと悪態をつかれる。
恐妻と言えば、プロ野球の選手としても、監督としても共に名声を得た、野村克也監督、落合博満監督の奥さんを思い起こす。沙知代夫人も、信子夫人も、姉さん女房。勝負師の妻としては、自身がピンチや不安な折「なんとかなるわよ」と背中をポンと叩いてくれる肝っ玉母さんタイプがよいのだろう。
沙知代夫人は昨年の暮れ思いがけず亡くなったが、恐妻と一口に言っても、いろんな側面がある。夫の言うことを聞かず夫を従わせた(強妻)。いつも夫を愛し盾にも矛にもなり夫を支え続けた(良妻)。罪に問われ夫に迷惑をかけた(悪妻)。そんな夫人を野村監督は年明けのお別れ会後の囲み取材で一言「いい奥さんだった」と締めくくった。野村監督は、「これからどうして生きていけば」と寂しそうに語っていたが、一気に老け込んだと見受けた。
本ブログの初号で書いたが、妻にとって夫の存在がストレスだが、夫にとって妻の死が大きなストレスになる。同じ頃保守派論客西部邁が入水自殺した。前から自裁を考えていたとするが、奥さんを亡くしてからは死にたいと周りに漏らしていたという。心情は理解できる。だが、賢人がほう助した逮捕者まで出してまで痛ましい“土座衛門”をなぜ選んだのか。保守としての「言論」が通じないとの抗議なのか。佐藤優氏は『平成史』(小学館)で「原点だったブントの活動家に立ち返って自分の生涯を終えた」(1979年マルクス主義者対馬忠行が瀬戸内海にフェリーから飛び込んだのを先行事例として)との見方をとるが。
なお、老人の自殺問題は次の機会に「あんらくし VS あんならくし」で考えたいと思う。
今や2人に1人が癌に罹ると言われる。夫婦の組み合わせで言えば、①夫も妻も癌にならない夫婦と夫も妻も癌になる夫婦。②夫が癌になり、妻は癌にならない夫婦。③妻が癌りなり、夫は癌にならない夫婦。
夫がもっとも心痛めるのは③の妻が癌になること。さらにそれで妻に先立たれるケースではないか。夫は妻に看取られることを想定している。思いがけず妻に先立たれると狼狽する。中には、妻の死を受け止められず、やり場のない怒りを担当医師にぶつける者もいる。が、多くの夫は生きる意欲を失い、鬱になるか、免疫力を低下させ病に伏せてしまう。妻の所に逝き急ぐ(俳優津川雅彦も朝丘雪路を看取った3か月後に逝去)。
さだまさしさんの『関白宣言』の「俺より先に死んではいけない 例えばわずか一日でもいい 俺より早く逝ってはいけない」という歌詞のごとく、私も7つ年下の妻に看取られことを願っている。「皆に迷惑をかけず早く逝くのよ」と言う妻(生き別れは青春返せと怒るが死に別れはもうウエルカム)は今まで病気らしい病気は罹ってないが、癌は分からない。
女性の死亡原因は大腸がんがトップ。5年前に亡くなった女優坂口良子も大腸がん(結腸がん)だった。亡くなる少し前に開いた尾崎建夫プロとの結婚披露宴(TV中継)で長兄尾崎将司プロがめでたい席の挨拶で急に嗚咽したので、エッ!?と違和感を覚えたが、後日そういうことであったかと理解した。
女性がとくに気にする乳がんは(男性の前立腺がんと同様)ホルモンが関係しているから、乳がんで死ぬ率は閉経前後にピークが来てそれ以降下がっていく。
我が妻は還暦を過ぎているので、乳がんより大腸がんの方をより気にかけるべきなのだ。ダメ亭主のせいで長年フルタイムで働いていた我妻は会社の人間ドックで毎年検便を受けていた。再検査は一度もなかったが、便潜血検査の陰性とは便に血液成分が含まれていないという意味でしかない。陰性だから癌やポリープがないとは限らない。一度大腸内視鏡検査を妻に受けさせようと思っている。胃の検査と違い、何もなければ3年に1度程度でよいらしい。私はポリープがあるので、2,年に1度受けている。良性のポリープでも1cmを超えると癌に変る確率は30%に上がるという(私の場合、2014年に分かった4mmのポリープが2016年には5mmに。今年2018年には8mmにもなり、他も併せ全て切除した)。
私の前立腺がん治療の主治医の弟君も医師なのだが、その奥さんが48歳で大腸がんで亡くなったという。医師や大企業社員は高給取りで奥さんは専業主婦が多いのではないか。それは夫の甲斐性かもしれないが、十分な生活費を渡すだけが夫の役目ではない。「後は良きに計らえ」ではなく、子供の教育に加え妻の健康にも十分留意してもらいたい。
私は過去人間ドックに懐疑的であった。歳とればどこか悪い所が出てくる。人間ドックは患者を釣るための撒き餌と思っていた。しかし、自身が前立腺がんに罹患して理解した。癌はサイレント・キラーで潜行する。気づいた時手遅れになるケースが少なくない。私の知合いの男性も腸ねん転で救急車で運ばれ、その時に初めて末期の大腸がんであることが判明した。それまで大腸がんとはまったく疑いもしなかったとのことだ。
癌は早期発見が一番だが、体の奥にある前立腺を診ることは容易ではない。癌が5mm未満ではMRIにも映らない。腫瘍マーカー(血液検査)の値の推移を見る(最終的には生検を行い細胞を採取して癌を探す)。それに比べれば、大腸内視鏡検査は簡単。肛門より直接腸壁を診ることができる。麻酔(鎮静剤)で眠っているから、不快さも感じなくて済む。
妻が逝くのは天寿かもしれないが、一人残された孤独と悔恨の日々は辛い。病院嫌いの(又は行くのが怖い)専業主婦を持つ旦那は無理にでも愛妻でも恐妻でも病院に連れて行こう。