2026.3 臨時号  NO.241    しょうひい VS   

        しょうひ

 2/8付衆議院総選挙は、自民党の大勝(198→316)、中道改革連合における旧立憲民主党の大惨敗(144→21)で終わる。

 予想外の結果に高市首相自身が一番驚いているかも。今選挙を私なりに振り返ってみたい。
 年明け衆院解散の噂が流れてきた頃、台湾有事発言で高市丸が出航の出鼻を挫かれた中、旧統一協会問題の再燃(文春による高市首相、最側近佐藤啓官房副長官の協会との蜜月報道)、2005年以降7回の衆院選で高市氏自身が代表を務める自民党支部から計6,474万円の寄付を受けた政治資金問題など、さらなる高市首相の高支持率を下げる要因が浮上していた。

 今般の衆院解散は高市首相の、党利党略、ではなく、個利個略と野党から批判された。
 高市首相は、自民党の正月三が日明けの世論調査で勝てると思い、野党に奇襲をかけたつもりが、立憲民主党と公明党の合流という急襲を受ける羽目に。加え、選対委員長の勝手に禊は終わったとして「裏金議員の比例復活容認方針」という悪手も(裏金議員43名「議員公認」+「比例重複」で帰結)。
 こうした中で、メディアは1/19高市首相の解散会見に注目した。2005年小泉首相の「郵政解散」会見は逆境を跳ね返し小泉旋風のきっかけとなった。その再来があるかと。
 小泉首相時代拉致問題を担当した元外務省審議官田中均氏はこの解散会見をうけ「高市首相の弁を聞いて空恐ろしくなった」と書き出した。そして「総選挙は自分が総理に相応しかどうか決める為という。責任ある積極財政も外交安保も実績を示すべきなのに、まず選挙と言う。対外関係は国際法無視を厭わないトランプ政権や、悪化した日中関係をどうするかという課題に一切言及ない」と指摘した。 
  直言居士の田中真紀子元外相とか、しがない一大学の先輩にすぎないのに「積極財政」ではハナから適任でないと言う不遜な私とかは例外として、主権者たる国民が判断するには当該政権による1年ほどの実績を見ないと首相にふさわしいか判断出来ない。
 今段階で「私が首相にふさわしいか」はメディアの世論調査で支持率が低いのならまだしも高支持率なのに700億円前後の税金を使って総選挙で問うことか。自身のSNSで国民に問えば済むこと。「首相の専権事項」と自民党が拡大解釈する「7条解散」のさらなる乱用、私物化と言われても仕方ない。他の同僚議員のことも考えない。自民党議員に嫌われるのは当たり前ではないかと思った。
 同じく、維新との連立を国民に信を問うというが、それは連立する前に信を問うべき。中選挙区でもないのに同じ選挙区にお互い候補を立てる連立なら、今意見を問われたら、自維連立は高市氏自身が首相になる為としか答えられない。
 

 出来ないと言っていた消費税減税について高市首相は消費財の内軽減税率8%の飲食品について消費税の対象外とすることを2年間やると言い出した(財源は国民会議へ丸投げか)。それなら与野党の基本的な考えが一致するから選挙よりそれを先行すべきと国民は思う。
 私はただでさえ財政難の中社会保障四経費(年金、医療、介護、少子化対策)に充当する消費税は廃止できないと思っている。実施すれば、さらなる円安、債券安・金利上昇をもたらすだけ。(5兆円規模のタラレバ財源にて)大風呂敷の消費税減税を焦点にして多額の税金を使って総選挙で論戦すべきものではない。
 与野党とも富裕層も含めたバラマキ減税を取り下げ、飲・食料を提供する店側にも迷惑をかけない、低所得者に限って現金給付すればよいだけと思うのだが(選挙となると与野党とも富裕層を外せないのか)。
 風吹けば桶屋が儲かる。消費税減税の風吹けば、庶民の暮らしは悪くなる。消費税減税をするという兆候だけで、外国市場は反応し、円の価値は下がり、金利は上昇する。さらなる物価高をもたらし、住宅ローンの金利も上がる。
 自民党は消費税減税が応急措置にもならない逆効果だと理解しているのでは。だが、あてにしてしまっている国民にそんな説明はできない。仕方なく消費税減税を主張する野党各党と足並みを揃えるフリをしているのでは(後で公約違反と言われないように「検討を加速」と)。ただ、危機感からか高市首相は年度内の成立を目指すと前のめり発言。後々自身の首を締めることになるのかも。
 国会で与野党が議論すべきは、抜本的な対策として「国家財政をこれ以上悪化させず、いかに経済を底上げさせるか」(民間企業に対して企業家精神を喚起させ、積極的に投資させる、その環境整備を図る)という難しい課題だ。

 8年に亘る安倍首相ー黒田日銀総裁体制の終焉時点で大きな負の遺産が今日の事態を招くことは分かっていたこと。国会議員は一体何をしていたのか。
 

 結局、高市首相は、頑張って、頑張って、演説文を用意して、長々と話したが、なぜ今解散総選挙なのかとの国民の問いに答えることが出来なかった。大義が見えない、長たらしい話に響くものは私にはなかった。会見を観ていた視聴者も沸いたのは「働いて 働いて・・・」の所だけでは。それも“二匹目のどじょう”で、「それなら解散せず早くやれ」との声も少なくなかったようだ。
 選挙の目標と言えば、与党で過半数(233)という。現状と同じ。自民党単独で過半数と言うべきところではないのか。わざわざ解散する意味があるのか。それも首相生命を賭けた背水の陣という。まるで負け戦に向かう武将みたいではないか。それでは、小泉首相のようにオセロの大勢を占める黒石を一挙に裏返し白石にするようなことは到底出来ない。
 会見翌日、時事通信も『「政治止まる」「ピンとこない」 有権者に戸惑い、諦めも 高市首相解散表明』との記事をうつ。小泉首相の会見との比較を口にしなくなった大手メディアも不発に終わったと感じたのであろう。
     実際左派毎日新聞の調査では、昨12月の調査より内閣支持率が10ポイントも下落し、57%になったと報じている。

 乾坤一擲の大勝負を左右する解散会見で高市首相は解散の大義を示すことが出来なかった。本来専門分野でない?中国研究大家の遠藤誉女史までも、1/22に発信し、解散の目的は高市人気が高いうちに裏金議員を復活させて、もともと派閥に入っていなかった高市氏が自らの派閥を「復活させてあげた裏金議員」で固め、党内基盤を強化して長期政権を維持したいという個人的野心でしかないと看破する(「高市政権である限り習近平の日本叩きは続く」ともいう)。

     さらに危機感からか1/28にも言わずにいられないと、高市氏は今や「世界の端っこで孤立する高市外交」へと転落しつつある。サナエ・ショックをスルーする日本の危なさを浮き彫りにしたい、と発信した。
 就任当初は国内にて「高市トレード」ともてはやされたが、「サナエ・ショック」で今や高市首相の「株」は大きく値下がりした。日本の波及効果(マイナスの影響)を受け、米国で株式・債券・為替が売られる「トリプル安」が起きている。米政権の高市政権の評価は台湾有事発言の頃よりさらに下がったのではないか。またもや誤算。
 

 本音を隠す表向きの大義を発信できないのは、タカ派も、積極財政も、借り物に見え、信念や信条がないポピュリストということも関係していると言えるか。その意味では、韓国の李在明大統領と似ている。  
 李大統領は、政治家として下から這い上がるため極端な発言や犯罪(容疑)までしてきたがトップに立った以上無茶する必要がない。進歩派の中ではイデオロギーもない異端児?であろうが、米中関係の変化に即応して上手く立ちまわっているとして国内で評価が高い。
 高市首相も世襲でもなく数が少ない女性議員でハンデがある中他者を踏み台にして来たなど同じ境遇でポピュリスト同士気が合う。日韓関係は上手く行くだろう。
 上を見てがむしゃらに山を登っていくのはよい。頂点に立ったら、富士山のように国民から見上げられる。トップに立てば李大統領のように変わらなければ。だが、高市首相は頭にプロペラを付けて独り舞い上がっていくように見える。
 これからは下を見るのだ。国民はもちろん、自身の為に働いてくれる自民党議員も官僚も。いつまでも自己チューで、他者に気遣いができないなら、トップに立つ者が持つべき資質がないと言われるだろう。高支持率はバブルでしかない。国民が首相の本質に気がつけばバブルは泡と消える。
 高市首相が他者の意見を聞かないのは、同じポピュリストのトランプ大統領とも似ている。
 他者の意見を聞かないトップのタイプには二通りある。一つは、自身より賢い者はいないと思う天才タイプ。さしずめテック企業の雄と言うべきイーロン・マスク氏。このタイプの経営者はトップダウン型の経営となる。
 もう一つのタイプは、自身の思い通りにしたいが、賢い者には言い負けるので、イエスマン以外賢い者を排除する。このタイプがトップダウン型の運営をすれば裸の王様になる。まさに今のトランプ大統領のごとく。
 頭が悪いと自覚する私が見ても、高市首相は今のままでは賢者とは言い難い。謙虚になり、自民党議員や有能な官僚たちに働いて、働いて貰えばよいのに。トランプ大統領を反面教師とするべきだ。
  高市首相は生みの親とも言える麻生副総裁にも解散について相談していない。筋を通す麻生副総裁は激怒したという。高市首相は野党に奇襲をかけたつもりだか、公明党と立憲民主党(以下「立憲」)が組み「中道改革連合」(以下「中道」)の立ち上げという反撃にあった。
 この時点では高市首相は一言も解散を口にしていない。読売新聞の誤報として読売新聞に借りをつくることもできた。
 なのに、表向きは、麻生副総裁は、高市首相の判断に賛同し、公明党票を当てにする議員のことに記者が触れると、公明党嫌いもあってか「選挙に強い議員は公明党の票をあてにしていない」と一喝した。公明党票頼りの議員の神経を逆なでして。 
 筋を通す麻生副総裁は、安倍首相であれ、高市首相であれ、「首相」に対しては反対しても最終的に同意することを矜持とするという。結果としては「吉」と出ても、今の永田町村には、議員も官僚も正しい方向に導ける、元官房長官故後藤田正晴のような政治的、精神的支柱となる長老がいない。

 選挙では、今まで自民党に入ってた公明党の票が中道に流れる。自民と維新との与党同士が85選挙区で潰し合う。冬将軍の中で高市親衛隊の若者・受験生が思うような力が発揮できるのか(ナチス・ドイツがソ連に奇襲をかけだが、冬将軍がナチスを追い返し、ヒトラーの権勢退潮への節目に)。

   さらに、ホクホク発言に有識者達は頭から湯気を立てる。

 政治学者中北浩爾氏は、政治評論家としては選挙期間中は中立スタンスかと思ったが、高市首相の「円安により外為特会の運用がホクホク状態」発言に対して2/1付「結局、高市政権の『積極財政』は、国と輸出産業が最優先で、消費者や輸入企業は二の次です。・・(中略)・・高市政権が物価高対策に熱心だというのは、イメージにすぎないと思います。」と批判投稿していた。

 また、翌日2/2付にて選挙期間中には異例の、みずほ銀行が「高市演説を受けて〜危うい現状認識〜」と題した、チーフマーケット・エコノミスト名義のリポートを発信した。

 高市首相はまたしても自身の発言がいかに内外にハレーションを起こすか思慮する能力に欠けることを露呈した。円安を止めるために介入した米国側も高市首相への心証をさらに悪くしたのではないか。

 何にしろ価値が下がって良いモノはあるか。円の価値が下がって喜ぶのは、首相以外は輸出業者と証券マンぐらいか。

 世界的投資家ジム・ロジャーズ氏は「通貨を下げた国に未来はない」と日本を悲観視している。
 さらに、2/1付NHK日曜生党首討論での高市首相ドタキャン、裏金議員公認等への反発など、総選挙で、与党が過半数を確保する可能性はあるも、自民党単独での過半数超えはない。迫力のない解散会見では小泉郵政解散の時のような風が吹いていないと思っていた。

 しかし、前後して、かの朝日新聞が自民党単独で大勝すると予測してから状況は一転した。ただ、創価学会の女子部の大攻勢がまだ始まっていないからとも思われたが、選挙の終盤になっても中道が巻き返したとの報道はなかった。

 
 そして、12/8総選挙の投票日を迎える。私自身は安倍政権以降自民党への批判票として基本自民党には入れない。が、前回2024年衆院総選挙では、直前の総裁選で私が初の女性首相ならこの人と思っていた上川陽子元外務大臣が立候補していたが、上川氏の東大の後輩にあたる松島みどり議員が推薦人に名を連ねていたこともあり、地元小選挙区は自民党の松島氏に投票していた。今回も、大学の後輩でもなく年下の(松島氏自身とはタイプが真逆の)高市首相を誕生させる為に身を粉にして奮闘した松島議員のその「利他精神」に敬意を表して、一票を投じた。比例は中道に。
 選挙結果は、自民党が大勝した。多くの有識者が批判しているのにこれ程の高市旋風になるとは思いもよらなかった(風はそんなに強く感じないが、旧立憲民主党の自滅の為か)。

 高市首相は、自ら信を問うと解散しておきながら、選挙中にも拘わらず政策面にほとんど触れず、唯一の党首論戦もドタキャン(したままでは「逃げた」と批判されても仕方がない。それが男性党首なら、その時点で信頼と支持を失う)。

 投票日の前日、英紙に「日本で選挙に勝ちたければ『はっきり話して、何も言うな』」と皮肉られた。それで大勝では日本の政治的民度も問われかねない。

 期待感だと言い株価も高騰しているが、一体何に期待が持てると言うのか。人民の生活を犠牲にして軍備を拡充する北朝鮮を目指すのか。米国からの要請に応えざるを得ないとしても、財政難の中経済力向上→防衛力の強化であるべきで、中国とは外交により良好な関係を構築すべき時なのに、不用意な発言で中国を怒らせ、それを放置し、却ってタカ派の人々の支持が増すとでも。高市首相は、有能だとしても、今必要とされる首相役としてはミスキャストではないのか(競馬で言えば、軽い馬場が得意な名牝が重馬場で走るのと同じ)。

 今回の選挙結果が出てからも、辛口で高市自民を支持した人々に呼びかけ続ける池田清彦先生を初め、批判した有識者達は歯がゆい思いをしているだろう。

 とくに学生や若者の情報弱者は、大手メディアに相手にされずSNSに活路を見出し大手メディアをオールドメディア(命名した青山繁晴議員の思いとは関係なく)と攻撃するネット右翼やインフルエンサーに感化され、「元気がいい」「話が短くわかりやすい」等イメージやキャラクターで高市首相を支持し、首相としての資質、政策の妥当性は顧みてないように見える。将来国の負債を余計に背負わされるのも気づかずに。

 中道は存在意義を認めてもらう時間がなかった。政策論議も高市首相に上手くかわされた。学会の女子部も立憲民主党支持者の大量離反を前にしてさすがになす術がなかったか。

 旧公明党は、高市首相を退陣させるつもりが、旧立憲の自滅(支持層が離反した)を招いただけに。

 これを見て、バブル崩壊後の銀行救済を思い出した。小さい銀行が大きい銀行を吸収する方式となった。それだと、大きい銀行の行員はプライドが許さず大勢辞めていく。

 ネーミングも旧代表同士の共同代表も、それでは斬新さが演出出来ない。共同代表を副代表としてその上に玉木国民民主党首をトップに立てるなら、国民の見る目も変わっていたかも。同じ連合という母をもつ兄弟ながら確執があり可能性は低かったが。   

 

 勝てば官軍。高市首相は続投する。ブレーキのない高市与党が世論の追い風に乗って暴走するのが懸念される。

 ただ、選挙民は裏金問題、旧統一教会問題に強い関心を示さなかったが、野党から高市首相の個人的問題を追及される(師匠の安倍首相の「モリカケ」、桜を見る会のごとく)。
 少数与党から脱却しても高市首相のやりたいことができる訳でもない。日本の為政者は、国内の有識者の批判は無視出来ても、外圧に弱い。高市首相の「積極財政」「対中国強硬」は、国際市場に加え、「ドル安、円高」「対中国対話・協調」を志向するトランプ大統領に阻まれよう。

 なお、どさくさに紛れて、リフレ派が「我々はデフレの時、今はインフレで積極財政はすべきでない」と高市政権を批判し自らを正当化する。リフレ派の大罪は、超低金利の下では量的拡大が(当たり前だが)効果がないと判かっても、止めようとしなかった、それが今日の円安の元凶であること。

 来月3月19日?に高市首相は訪米予定だという。世界に強固な日米同盟関係をアピールする為日本の首相としては国賓待遇だが裏では、選挙に大勝し若葉マークは取れたもののまだ危なっかしいとトランプ政権に高市氏本人が釘を刺されるだけかも。防衛費GDP比5%を要求されるも円安政策は容認されない。看板の積極財政は思うようにできない。高市首相は国民の目を逸らすよう防衛力の強化、憲法改正を国民に訴えていくのか。

 高市首相批判の急先鋒小沢一郎氏は、人格はともかく発言は的を射ている。高市首相の「当たり前の憲法改正」の行き着く先は「戦争を平然とできる国へ。公の秩序の名の下に人権が制限される国へ。自由にモノが言えなくなる国へ」であると、警鐘を鳴らしている。

 若者たちにとっては、スパイ防止法の制定や裁量労働制の見直しも高市政権への期待となるのか。

 自民党が大勝したのは、国民全体が右傾化しているとも言える(高市首相続投よりもこの方が怖い。戦争もバブルも世代が替わると同じ轍を踏む)。小沢氏は議員でなくなったが、戦争世代が全ていなくなる中警鐘を鳴らし続けてほしい。

 高市首相唯一の誤算、村上誠一郎元総務大臣も地獄の底から生き延びた。党内野党として大いに批判してもらいたい。

 中国は、高市首相の退陣を期待していたが、国民自体も右傾化し反中が国民の意思と捉え、より態度を硬化させるのか。欧米の中国詣でが続く中日本の孤立化が懸念される。


 今回の総選挙では自民党は解党的出直しとは言っていなかった。高市氏の高支持率下での選挙であるからか。

 しかし、いわば体格が大きくなっても中身が良くなるわけではない。高市首相人気だけが生命維持装置にて多臓器不全の状態は変わらない。依然として自民党は解党が避けられない段階にあると私はそう思っている。
 私は、2024年10月石破政権での衆院総選挙で惨敗した後の2025年4月号NO.224(「かんこくVSかんごく」)にて次のように述べている。
 日本はこれまで英米の二大政党制を手本とし、二大政党化を目指して、小選挙区制にも替えた。とくに小沢一郎議員が、自民党内の権力闘争に破れたこともあり自民党を離れたのち、主導的役割を果たし、紆余曲折のあと、旧民主党が創立され、二大政党制が実現した。
 しかし、その結果はどうか。オセロゲームのように簡単に政権交代が起こり、たまたまその時に与党の代表の者が首相となってしまう。生煮えの上素材が良くなければ、それをありがたく頂戴する国民はたまったもんではない。
 小選挙区制は、1強の自民党に有利となり、さらに一人区では世襲議員が有利となる。選挙での公認という生殺与奪権を握り、賢者でない世襲議員による長期独裁政権を可能とする。金権政治とか問題が多いと中選挙区制から替えたが、その中選挙区制より小選挙区制の方が問題が根深い。
 自民党が長期単独与党であった黄金時代では、能力と人望がある議員が派閥の長となり、派閥同士が競い合う。その中で、大企業の社長のごとく、幹事長、大蔵大臣、外務大臣等主要ポストを歴任した者(首相としての、いわば有資格者)の中から首相が選ばれる。と同時に派閥同士の牽制が民主主義のガードレールのもう一つである「組織的自制心」を維持させていた。
 立憲民主党の躍進により二大政党制が復活するかと思われたが、米韓の酷い現状を見るならば、短絡的としても噂される自民党と立憲民主党の大連立の方がよいかと思ってしまう(ゆくゆくは合同し“自立党”に)。

 民主主義の限界が今問われている。民主主義(多数決)の問題点の一つは、民主主義(多数決)は民度が一定という理想を前提としているが、実際は民度の高い層<民度の低い層(その矛盾をカバーすべく「間接選挙」がある。日本はそれが機能しているとは言えない)。
 もう一つの問題点は、多数決の限界。世論が80対20であれば、多数決に異論はなく、少数意見も尊重してと万事めでたし、めでたしで終わる。しかし、51対49では。49の方は多数決を認めず、接戦であればあるほど暴力行為に走ることが起きる。米国がその危機にあった。
 2020年の大統領選にて敗北したトランプ支持者たちが連邦議会議事堂を襲撃したが、2024年の大統領選ではトランプ氏が敗北すれば内戦になるとまで危惧されていた。韓国においても懸念された。大きな暴動は起きなかったが。
 政治的民度が深化すればするほど、支持者は陣営への支持が先鋭化し両陣営が対立激化となる傾向にあり、国民が二分する。米国、韓国に加え、政治的民度が高い英国においても2016年EUからの離脱(ブレグジット)で国民が分断した。 
 日本は、上記の国ほど政治的民度が成熟していない為そんな状況にはないが、二大政党制がそんなリスクを抱えているなら、あえて二大政党制の確立を目指す必要はないのでは。
 限界を迎えた民主主義に代わるものが見つからないのであれば、二大政党制、小選挙区制以前の時代に回帰するのがよいと思うのだが。

 奇しくも、二大政党制を主導した小沢一郎氏、初の二大政党制の相手方旧民主党の重鎮達が落選した。

 今は1955年~1993年の自民党と社会党との一党優位政党制(1と1/2政党制)の状態に近くなった。高市政権の運営如何ではまた自民党が議員数へ減らす可能性もある。その場合自民党と国民民主党と維新とが合体することもありうるか。

 中道は昔の社会党の位置づけでどうか。立憲と“雪駄の雪”でない本来の公明党とは、「護憲」「反世襲」「弱者に優しい政治」という面で相性がよいハズ(今回立憲が政権交代に目がくらみ公明党の歩調に合わせたのか。沖縄を見捨てたのかと言われては、本分を見失えばその存在価値は? 自民党と変わらないなら自民党だけでよい。公明党が本来の公明党に戻り立憲に合わせるべきだったと私はそう思う)。

 二大政党制を旗を降ろせば、中選挙区制に戻せはよい。自民党総裁が党内議員に対して「公認」という生殺与奪の権を行使できず独裁はできない。世襲議員の優位性もなくなる。

 中選挙区制であれば、旧立憲もこれほど議席数を減らしていない。

 大自民党には、「組織的競争原理」(切磋琢磨)と「組織的自制心」(相互理解・相互牽制)が前提となるが(黄金時代の自民党にはあった)、その為には、派閥に変わるグループが不可欠となる。今のままでは、新人議員も増え、ますます“”烏合の衆”化する。総理・総裁の暴走を制御できない。

 日本の与野党は、米国の共和党VS民主党ほどの主義・主張に差がない。官僚も、米国は大統領が直接上級職の官僚約3,500人?を指名できる。日本の官僚は変わらない。わざわざ二大政党化して、国民を分断させていく必要はどこにあるのか。「和をもって貴しと為す」大和の国と呼ばれた日本が。

 

 中国の共産党一党独裁政権は、日本の黄金時代の自民党一党長期政権とよく似ている。その中国の権威主義体制が見直され評価され始めた矢先、慶応大小嶋華津子法学部教授よれば、(清廉潔白な賢者と私が思う)胡錦濤前総書記がいわば民主主義とも言える「党内民主」を推し進め党員の無記名投票を実施したことが却ってアダになったとする。
 この投票の結果、習近平氏の得票が李克強氏の得票を上回ったことにより、胡錦濤総書記は、自らの腹心である李克強氏への権力委譲をあきらめざるを得なかったとする。
 李克強氏が亡くなってから、人民は天才肌・経済通の李前首相の方がよかったと言い出し、「死せる李克強生ける習近平を走らす」との事態を招いていた。 
 日本の大企業は、トップを決めるのに従業員に選ばせることはない。経営能力が高く従業員とその家族の生活を守ってくれるが近寄りがたいと思う候補より、経営能力は低いが優しく親しみやすい候補を選びがちになる為もある。
 政界再編の前に、自民党は、来る総裁選の前に、間接選挙の趣旨に沿い国民の縮図に過ぎない党員・党友を総裁選に参画させる現行制度を見直しすべきだ。

 「首相人気」という生命維持装置に頼って今の自民党が生きながらえても、それでは日本国は生き残れない。
(次回242号は3/10アップ予定)

2026.3  NO.240     ミンー・リー VS 

       ミンー・リー 
 2026年度の米女子ゴルフツアー(LPGAツアー)が米時間1/29に開幕している。本号では、遅ればせながら、昨年度を振り返りたい。
 まず、選手個人のトピックスを挙げれば、前季未勝利に終わった女王ネリー・コルダ選手(パットが不調との印象。とくにショートパットが。本人は否定。たしかに数字を見れば、平均パット数29.540 で42位。7勝もした前の年度は30.0で74位)に代わって22歳のジーノ・ティティクル選手が世界ランク一位に返り咲いた。
    もう一人の主役と言える、前季から長尺パターを使用し復活した姉のミンジー・リー選手がメジャー3勝目を挙げ、弟で米男子ツアー(PGA)でプレーするミンウー・リー選手と同じ年に姉弟優勝を果たした。同じく双子の岩井明愛・千怜姉妹がLPGAツアーで共に初優勝した。
 
 25年度のLPGAツアーを一言で総括するならば、日本の女子選手が旋風を巻き起こしたと言えるたろう。
 国別の優勝数を見れば、日本が7勝でトップ。韓国6勝(内1勝はダブルス戦)、スェーデンが4勝、米国が3勝、豪国3勝(内1勝は国別対抗戦)、泰国3勝(すべてジーノ選手)と続く。
 年齢別の優勝試合数(全33試合の内、国別対抗戦と中止になったウォルマートNWアーカンソー選手権を除く計31試合。年齢は優勝時点)を見ると、「30歳~」3試合、「29歳~25歳」14試合、「24歳~20歳」14試合、「~19歳」0試合。初めて、「24歳~20歳」が中心世代の「29歳~25歳」と並んだ。
 最終戦終了11/24時点の年齢で日韓を比較すると、日本選手は、6名で、26歳の畑岡奈紗選手以外の竹田麗央選手、西郷真央選手、岩井明愛選手、岩井千怜選手、山下美夢有選手(2勝)は皆「24歳~20歳」に該当する。韓国の6勝の内3勝は、30代のキム・セヨン選手、キムアリム選手、キムヒョージュ選手。ダブルス戦のイムジンヒ選手とイソミ選手は共に「29歳~25歳」。ユヘラン選手とファン・ユミ選手が「24歳~20歳」。
 メジャー優勝は、日本は、2年連続となる2勝(西郷真央選手:シェブロン選手権、山下美夢有選手:全英女子) 、豪州も2勝(ミンジーリー:全米女子プロ、エビアン選手権:グレース・キム選手)、スェーデン1勝(全米女子オープン)。

  日本は、前季西郷真央選手が シェブロン選手権に勝ち、

5大メジャー勝利をコンプリートした(全米女子オープン:笹生優花選手の2回、全米プロ:樋口久子選手、エビアン選手権:古江彩佳選手、全英女子オープン:渋野日向子選手、山下美夢有選手)。
 私は昨年初の2025年2月号 NO.221(「リディア・タ― VS リディア・コ―」)でこう書いている。
 「これまでの最低身長(以下:最小)メジャーチャンピオンは全英女子オープン2回優勝の韓国申ジエ選手(155㎝)。それを153㎝の古江選手がエビアン選手権で優勝し、新たに最小メジャーチャンピオンの座についた(最高身長のメジャーチャンピオンは185㎝のミッシェル・ウィー選手)。今季から米ツアー参戦の150㎝の山下美夢有選手にはさらなる更新の美しい夢が有る。」「日本女子選手の中で先輩格の畑岡奈紗選手はメジャー優勝では後輩たちに先を越されてはいる。が、米本土で開催されるメジャー3大会では160㎝未満の優勝者はまだいない。158㎝の畑岡選手は全米女子など好成績なので、それを目指して欲しい。昨季ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた西郷真央選手も158.5㎝で同じく目標にして欲しい 」
 その山下選手(全英女子オープン)と西郷選手(米本土のシェブロン選手権)が揃ってその2025年にメジャーに勝つとは想像もしていなかった(今季2026年度は竹田麗央選手、岩井選手姉妹が続くか)。
 毎年の如くメジャー優勝を挙げていた韓国は、一昨季梁熙英選手の全米プロだけで、前季は優勝者は出なかった。
 最終戦終了時の世界ランクを40位内で見ると、日韓共に8人。韓国の現役メジャーチャンピオン(敬称略)は、皆30歳以上。8位キムヒョージュ30歳 、10位キムセヨン32歳、24位コジンヨン30歳、29位キム・アリム30歳(ランク外の 61位申ジエ37歳、70位梁熙英36歳、産休中?朴仁妃37歳、100位外チョン・インジ31歳)
 メジャー未勝利の40位以内の韓国選手は、12位ユヘラン24歳、17位チェへジン26歳 30位ファン・ユミン22歳、39位ユ・ヒョンジョ40歳。 
 日本の現役メジャーチャンピオン(敬称略)は、皆20代。3位山下美有夢24歳、9位西郷真央24歳、26位古江彩佳25歳(100位内にも入っていない、笹生優花24歳、渋野日向子27歳)。
  メジャー未勝利の40位以内の日本選手は、14位竹田麗央22歳、18位畑岡奈紗26歳、23位岩井明愛23歳、31位岩井千怜23歳、37位勝みなみ27歳。
 日いずる日本、日没する韓国という様相と言えるか。

 韓国においては、韓国女子ツアーも隆盛しわざわざ遠い米ツアーにいかなくてもと思う選手がいるのか。加えて、韓国の協会(KLPGA)の姿勢にも問題があるのでは。
 2022年から韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)は「非公認海外ツアーの案内」と題して、米ツアー(LPGA)の秋季開催の「BMW女子選手権」をKLPGA が公認とせず、LPGAシード選手以外は参加させない。違反した選手は最大10試合出場停止、最大1億ウォンの罰金が科す」と改正した。と言うより、改悪したと言えよう。韓国女子選手にとっては、事実上BMW女子選手権に優勝しLPGAに行くチャンスを奪われた。 
 さらに、KLPGAは昨11/3に開催した理事会で、「KLPGAレギュラーツアーで10年連続で活動した選手が加入する『K-10クラブ』、または生涯獲得賞金25億ウォン(約2億6500万円)以上の選手のうち、翌年のシード権を持たない者を対象とし、成績・協会への貢献度・認知度を評価し翌年のレギュラーツアーシード権を付与する」と決定した。前季シード権を失ったツアー通算6勝のイ・ソヨン選手(28歳)ら5名が救済されることに。「レギュラーツアーの選手たちが、長い間協会に貢献してきた選手たちが、シニアツアー・チャンピオンズツアー出場(満40歳から)までに発生する5~6年の空白期間を最小化し、長期安定的にツアー活動を続けられる為だ」という。
 日本にもガラパゴス問題がある。JLPGA(日本女子ゴルフ協会)はLPGAへのいわば輸出は好調だが、LPGAからの輸入はない。日米共催で米ツアーでもあるTOTOジャパンクラシックでさえ、賞金もドル建で円安での目減りもないのに直前の世界ランク40位までで参戦したのはミンジー・リー選手たった一人。隣国韓国の選手は当時40位内に10名もいたのに皆参戦せず(日本野球も米国野球のマイナー的位置づけだが、メジャーリーガー達が日本に来ている)。
 韓国の有望な若手女子選手が韓国ツアーに失望し、日本女子ツアーに参戦してもらえれば(プロテストなしでもQTが受けられるように戻すべきだ)。

 そんな折、JLPGAが韓国黄アルム選手の失格騒動を起こした。“トリプルボギー不倫”でのコンプライアンス意識の欠如を露呈したことを勘案すれば、女子プロOGを中心とする運営体制を見直す時期にあると思うのだが。
 
 私は新世紀世代と呼ばれる21世紀(2001年~)生まれの女子プロの中で、孫のように下記三姉妹を応援している。長女に当たるのが、最高峰の全米女子オープン(以下「全米女子」)を2度勝利の笹生優花選手(24歳)。前季全米女子で優勝を期待したが、あえなく予選落ち。それだけではなく、18試合でマッチプレーを含め賞金を得たのが5試合で得た賞金はたった80,760ドル。ポイントランキングは132位。2024年の全米女子優勝で5年シードがなければ最終予選会に向かうところ。
 大不振と言えるが、本人は平静を装っている。我々は21年、24年に続いて27年に全米女子を優勝するのを待つべきなのか。ネット民が3年に一度自栽のサボテンに花が咲くと言っていた。笹生選手も“サボテン優花”と名づけようか。その優勝争いが笹生選手とジーノ選手なら最高だ。その時は私も日本人の端くれなので、笹生選手を応援するが。

 2026年の初戦も序盤から苦戦。先が思いやられる。2026年度も“天気晴朗なれども逆風強し”となるのか。
 二女に当たるのは後述するジーノ選手(22歳)。三女は、米国のアレクサ・パノ選手(21歳)。アレクサ選手は19歳の誕生日に1勝を挙げた。が、それ以降優勝がない。

 前季は試合が進む毎にポイントランキングを落とし100位まで下がり秋のアジアシリーズに参加できず、親日派ながらTOTOジャパンクラシックにも出れなかった。身長が180㎝を超えるのはバスケットと違い優位ではないのか、何とか97位で準シードに踏み留まった。今季はリベンジを期待したい。

 二女ジーノ選手は前季メージャー・エビアン選手権(以下「エビアン」)で最終ホールに向かう時点で90%の確率で優勝すると誰もが思った。が、逆転負けしメジャー初優勝を逃した。敗因として下記3点を挙げたい。
 まず、技術面から言えば、プロとしての総合力である平均スコアは4年連続1位であるように現役では最強であると言える。ドライバー、アイアン、アプローチ等どれも秀逸でオールラウンダーと呼べるが、あえて弱点と呼べるのはパターか。前々季平均パット数が世界ランク46位(29.7)であった。
 前季春先から好調でエビアン直前にて15位29.030で15位(最終戦後は28.710で4位に)だったのだが、肝心の最終日パット決まらなかった。決まっていれば楽勝だったのだが。
 次に戦略面。敗着に、最終日最終の18番のセカンドで2オンを狙わなかったことをネット民は挙げていた。最近ジーノ選手はロングホールだからとしてむやみに2オンを狙わなくなっていると私は感じていた。弱冠22歳で既にコースマネジメントにおいて熟練の域に達しているのかと思っていた。
 同組のグレース・キム選手とは2打差あったので、キム選手がバーディをとっても1打差あるので、池前に刻んだのは冷静なプロとしての判断とも言える。ただ、本来ジーノ選手の方がドライバーが飛ぶハズ(エビアン終了時点のドライビングディスタンスのランクはジーノ選手52位267.010yd、キム選手86位260.110yd)だが、ファーストカットに落ち、フェアウェイのキム選手より数㎝飛んでいなかったのが不運であった。
 そうでなければ、本来先に打つキム選手がイーグルチャンスにつけたのを見届けたなら、2オン狙いに切り替えることが出来たのだが。圧倒的有利な立場から一転追い込まれた。
 最後は天才的側面。14歳で欧州女子ツアー優勝のジーノ選手は天才肌。私のような才能がなく下から這い上がって行くような者が持つ根性のキツさがない(私に似たタイプの選手には親近感を覚えるより自身の嫌な面を見ているようでファンにはなれない。申し訳ないが)。たえず穏やかで、記者に対する発言も明るくそつがない。挑発的な、あるいは不快になるような話はしない。ファンサービスも手を抜かない。野球の天才大谷翔平選手と相通ずるものがある(大谷選手の方は強い闘争心を内に秘めてはいるが)。女子プロゴルフ界の顔になる資格があると思う(何でもNO.1でないと気が済まない米国人ではあるが、彼女への風当たりはさほど強くないか)。
 それだけに、マッチプレーになっても相手をねじ伏せるような態度は取らない。常に高いレベルでプレーしているから火事場の馬鹿力とも無縁。メジャー大会ならではの相手の神懸ったプレーには屈することも起きてしまう。
  WOWOWの担当MCが何度も「5勝しているが、一度もメジャーには勝っていない」と言っていたが、世界ランクについては全く触れていなかった。エビアンを勝っていれば世界ランク1位になっていたのかも。
 その後の2試合で続けて逆転負けしたので、解説者に、勝ちきれない、ツメが甘いと言われれば反論出来ない。女王ネリー選手はサラブレッドで言えば日本競馬界の至宝ディープインパクト。独走状態でゴールを駆け抜ける。そんなタイプのネリー選手は一打ミスしても優勝はゆるがない。ジーノ選手は英国ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、凱旋門賞等の4戦無敗で引退し “神の馬”と呼ばれたラムタラに似ているか。ラムタラはすべて1馬身以内。ジーノ選手もリードは1、2打差程度が多い。それでは何が起きてもおかしくない。だからと言って、体が大きくない162㎝のジーノ選手がディ―プインパクト型に変身してはショットの精度が落ち、持ち味の安定性を損なうかも知れない。結局敗因のパットの精度を上げるしかないかと思っていた。
 数週間後の休みを経て、出場した10/9~の中国で開催の「ビュイック LPGA 上海」でどのようなプレーをするか注目されたが、初日出だしの1番でボギー、2番ダブルボギーで、ショックが尾を引いているのかと思った。が、その後の16ホールで10個のバーディをとった。2日目はそれを上回る12バーディ(1ボギー)で勝みなみ選手がトップに躍り出た。
 最終日13番までで2位のジーノ選手とは4打差あり勝選手が初優勝する。ジーノ選手はミンジー選手より上であればよいと思っていた。しかし、そこから快進撃が始まる。14番バーディの後15番グリーンの外からチップイン・バーディを波に乗る。16番も取り3連続バーディの後1打差となった17番のロングでグリーンの外からチップイン・バーディを勝選手が奪い、万事窮す。と思われたが、なんと曲がって下る難しいイーグルパットを決め並び、プレーオフ(PO)へ。
 どちらもPOは分が悪い同士だが、ジーノ選手が、池に打ち込むも1ペナ後の第3打をグリーンの傾斜を使いカップ近くに寄せる。別のホールでも20ヤードもあり、二つも段がある難しいパットも寄せワンさせた。ジーノ選手が優勝した(これほどのゾーンに入っているのを見たことがないジーノ選手を相手にした勝選手はただただ不運としか言いようがない)。
 鬼門のショートパットもことごとく決め、心配されたイップスは天才肌のジーノ選手には無縁で私の杞憂は余計であった。最終戦後の平均パット数ランクは4位となった。弱点が無くなった。

 ジーノ選手はエビアンに勝てなかったが、2位となり、世界ランク1位のネリー選手のポイントが下がっていった(2024年度末12.59→エビアン前10.48→エビアン10.38→スコッチオープン10.31)のに対して、ジーノ選手の方は同6.45→同8.97→同10.10→同10.12と急接近した。

 そして、全英女子オープンで36位のネリー選手が9.96に落ち、30位でフィニッシュしたジーノ選手は10.12と変わらず、ついに逆転した。

    ジーノ選手は世界ランク1位なっただけではなく、最終戦に勝ち年間女王(レース・トゥ・CMEグローブ・チャンピオン)の連覇を果たした。
 ジーノ選手は、世界ランク1位、年間女王に続いて、賞金400百万ドルを加算し、獲得賞金は7,578,330ドル(150円換算で約11億37百万円)となり賞金女王にも。
 さらに年間最優秀選手(プレーヤー・オブ・ザ・イヤー)にも輝いた。加えて、平均スコアもひとり68台(68.681) となりベアトロフィー(アニカソレンタム選手が持つ最小記録2004年68.697をも抜いた)にも輝き主要部門5冠となった(この他、独壇場が続く「ベスト10」も14回と1位の定位置に)。
 なお、世界ランクを決めるロレックス・ランキングは、複雑であるが、簡単に言えば、各大会のレベルに応じて、過去2年間(104週間)で、とくに直近の13週間の結果を重視し、それ以前の91週間については一定の割合でポイントが減っていくという。 
 最終戦後の更新時点において、世界ランク1位になって以降2勝し、その他の試合も優勝争いしていたジーノ選手は世界ランク1位になった時点から10.12→13.69(+3.57)、一方ネリー選手は同9.96→8.66(△1.30)とポイントを下げていき、たった3ヶ月の間でこんなに差(5.03)がついた。 
  シーズンオフに入っても、既ポイントは減価していくので、1/27の更新時点で、ジーノ選手13.69→12.18(△0.168)、 ネリー選手は同8.66→7.03(△0.181)とさらに差が広がった。
 ネリー選手は、2024年の1月~5月において5連続優勝を含む6勝(11月にも1勝、年間7勝)を挙げているが、そのポイントが既に減化してきている。さらに今季2026年前半には、そのポイントがすべて消えてしまう。    
 ジーノ選手は、2022年19歳で世界ランク1位になったとき三日天下(2週間)に終わったが、今回は長期に亘って君臨できる可能性が高い。
  ネリー選手は、アジアシリーズ4試合も参戦せず(体調が万全でないようだが、アジア軽視とも噂される)、その間に開催された韓国での国別対抗戦も辞退し、米チームは決勝戦で豪チームに敗退する。
 世界ランク1位の称号を何としても取り戻すとの感じを受けない。米国ファンの中には「今はゴルフよりも水着モデルに関心が向いているのか」と心配する向きもいるのでは。

 そう書いた時点で、ネリー選手の婚約報道が目に入った。なるほど!と合点がいった。
 前季末のジーノ選手の生涯獲得賞金は17,369,400 ドル(150円換算で約26億円)に上る。プロにとって死活問題のシード権の優先順位の2番目(1番目は「ポイントランキングトップ80 」)にあたる「キャリア賞金ランキングトップ20」において、ネリー選手(9位:16,109,558 ドル)を追い越し、すでに7位に位置する。弱冠22歳(来年2/20で23歳)で日本で言う「永久シード」を得たようなものである。
 賞金は近年高額化の傾向にあり、生涯獲得賞金のトップ、レジェンドのアニカ・ソレンタム選手22,583,693 ドルの更新も視界に入ってきた。2位で28歳のリディア・コー選手(21,316,768 ドル)や5位でこの5月で30歳になるミンジー・リー選手(18,656,560 ドル)に先を越されるかも知れない。が、今季最終戦3連覇するならば、今季中にも。より確実なことはジーノ選手が30歳になる頃にはダントツの1位に君臨していることでは。
 ジーノ選手は、14歳で欧州ツアーで優勝した前後から家族の大黒柱としての強いプレッシャーの中LPGAの賞金だけでもこれだけ稼いできたのであればその肩の荷を下していよう。が、韓国流に言えばタイの“国民の妹”的立場であるならその期待に応えなければと思う気持ちが今後の原動力に。

 これまでも天才少女ゴルファーとマスコミに持ち上げられ、煽られ、周りからチヤホヤされても、自らを見失うことがなかった。金のなる木となったジーノ選手のキャディーを批判して替えようとする輩に対しても「私にとってよいキャディー」と言い意に返さない。そんな彼女であれば。

 150㎝の山下選手が、ルーキーイヤーで2勝(内メジャー1勝)を上げ、「ルーキー・オブ・ザ・イヤー2025」輝いた。世界ランク4位の山下選手に宮里藍さん以来の世界ランク1位になることを期待する声が大きい。
 英国とマレーシアで優勝した山下選手が1位のジーノ選手を抜くには、まず、平均スコアの差を埋める必要があるのでは。山下選手の平均スコアは69.811(4位)で1位のジーノ選手のは68.681と1.130差がある。4日間の1試合で4打差つく。
 さらに、LPGAトーナメント33試合の内21試合を占める米国の比較的距離が長いコースで勝つことができるか否かにかかっていると言えようか。
 女子プロゴルファーの160㎝は、MLBでいえば180㎝と言える。178㎝しかない山本由伸投手は筋トレによるパワーピッチング、高めのストレートを活用が主流の中で、専属トレーナー矢田修氏の指導の下、体のバランスを重視し、低めのゾーンで勝負する。無駄のない、制球も優れたその投法により、唯一無二の大谷翔平選手をして“世界一の投手”と言わしめる。身長による先入観を持ってはいけないと悟った。
 世界ランク1位のジーノ選手も身長は162㎝と高くない。ジーノ選手は平均スコアも1位。世界ランク2位のネリー選手も平均スコア2位。
 身長の高低やキャリアの長短に関係なく、平均スコアがLPGAでの成功の鍵と言える。
 初出場でメジャーを優勝した、渋野日向子選手(全英女子を勝利する出場権を放棄し後年最終予選会を受けた)、笹生優花選手を除いて、米ツアーの最終予選会に挑戦した日本選手のその年末の日本の平均スコアを見ると、次の通りとなる。
 2021   古江彩佳70.3664(メジャー優勝)
 2022    勝みなみ70.5170(未勝利)西村優菜70.4655(未勝利)
 2023   西郷真央70.6076(メジャー優勝)吉田優利70.5513(未

             勝利)
 2024  山下美夢有選手69.1478(メジャー優勝)、岩井明愛選

         手69.9040(初優勝)、岩井千怜70.2580(初優勝)、吉田優

        利選手(受け直し:未勝利)、馬場咲希選手(下部ツアー:未

  勝利)の5名が合格。不合格原英莉花選手71.1254(前季下

  部ツアー・エプソンツアーでの平均スコアは位の69.91。

  今季は米ツアーのシード入り)。

 なお、日米共催TOTOジャパンクラッシックで優勝した竹田麗央は予選会が免除されていたが、渡米前の平均スコアは69.2378で、渡米後すぐにまた1勝を挙げている。
 こうして見ると、日本女子ツアーで平均スコア70.0前後の選手は渡米してもすぐに優勝争いができると言える。その意味では、昨季平均スコア70.0585 (1位) の佐久間朱莉選手も今季も同様のスコアなら胸を張って米女子ツアーに挑戦できるのでは。ジャンボ軍団の先輩西郷選手もいることであるし。 

 なお、その尾崎将司氏がガンで亡くなった。誠に残念であった。2014年4月号NO.34(「ウッズとキッズ」)にて「石川遼君はゴルフスタイルや性格が尾崎プロに似ていると言われる(松山英樹君は青木プロに)。尾崎プロのように日本のスーパースターになって、日本のキッズたちのあこがれの的になってほしい。女性ファンも多いので、早く帰ってきて男子の日本プロゴルフ界を再興してもらいたいと思う。」と書いた。あれから12年、いつまでドン・キホーテを演じているのか。彼の自由とはいえ。 
 なお、今回米最終予選会に10位で合格した櫻井心那選手の日本の平均スコアは72.3168(66位) 。LPGAツアーでの成績を注目したい。華々しい活躍を見せるのか、今回再受験をぎりぎりパスし渋野日向子選手と西村優菜選手とが涙の抱擁をしたのを眺めた場面を思い出すのか。

  日本選手の活躍を見て、これから米ツアーに挑戦したい女子プロが益々増えてこようが、トップ選手が次々と米ツアーに転戦して、ベテランも新人も誰が勝ってもおかしくない、ぬるま湯のガラバコス化した日本ツアーで1勝や2勝したぐらいで挑戦しようと思うのはどうか。米ツアーに行けばゴルフが上手くなるとは限らない。レジェンドの岡本綾子さんもそう言っている。
 菅楓華選手(20歳:平均スコア70.5500)は将来米ツアー参戦を目指すが、今は日本で実力を磨くという。彼女のように、成功の鍵と言うべき、ゴルフの総合力指標である平均スコアを70.0に近づける努力を日本ツアーで続けるべきでは。

 それまでは、日本ツアーにいて日本女子プロとの相性がよい欧州の2大メジャー(エビアン、全英女子オープン)を中心にメジャー大会にスポット参戦するのが良いと思うのだが。
(次回241号は2/20アップ予定) 

2026.2  NO.239  だいし VS  だい
  国分太一氏の人権救済申し立てに対して日弁連が門前払いとした。理由は不明だが、本来弱い立場の人の為の駆け込み寺なのだろう。国分氏の場合、強い立場にあった本人が番組スタッフになした行為に起因しており、馴染まないのか。

 自分で蒔いた種は自分で刈り取るしかない。家族の人権を守る闘いは裁判でしかないだろう。


 さて、将棋の羽生善治棋士が史上初の公式戦1,600勝を達成した。爺の我らの大棋士と言えば羽生先生だ。将棋連盟会長を昨年6月に退任した時、もっと長くと思っていたのにと訝しんだ。が、昨12/23付けNumber Webによると、「まだ50代なので、棋士として頑張っていきたい意欲を持っています」と答えたという。私からすれば、当代の大棋士藤井聡太現七冠を倒して、タイトル戦99期の壁を破り100期を達成されたいのではと思うが。
 「引退は投了と同じくらい難しいんですよ。辞めようと思っても、やっぱり続けようと考え方が変わったりして、そのときにならないと分かりません」ともいう。
 いずれその日が到来し引退しても、永世七冠の称号は消えない、大棋士のままであるが。  
 政治家(ここでは「国会議員」を指す)も先生と呼ばれるが、「落選したら、ただの人」と言われてしまう。その国会議員には、代議士と呼ばれる衆議院議員と参議院議員がいる。
 参議院議員は戦前貴族院と呼ばれ、華族や学識経験者等が議員となり選挙で選ばれるわけではなかった。選挙で選ばれた衆議院議員が「国民に代わって議事に携わる」ことから、「代議士」と呼ばれたとする。

 予算先議権や内閣不信任決議が認められるなど衆議院の優越性が与えられており、首相になる資格として、衆院議員選挙の小選挙区から立候補して当選した議員の中からという暗黙の了解がある。次期首相候補との呼び声もあがる林芳正現総務大臣も参議院から衆議院に鞍替えしている。
 国会議員は、国家公務員でありながら、官僚や裁判官・検事とは違い国家資格を有していない。選挙で選ばれたら国会議員になれる。それは簡単なこととは言えないが、落選してしまえば、ただの人に落ちてしまう。逆説的に言えば、そんな人が国会議員になるべきではない。スポニチによれば、前大阪市長の松井一郎氏は、「国会議員になると人は変わってしまう?お金を持つと…『特に女性なんかは』」と皮肉る。

 世襲議員がとやかく言われる昨今、とくに代議士においては官僚のように国家資格が必要だと思う。
 一方、国会議員に仕える身の官僚達は、とくにキャリア官僚は、東大卒が多く、今でいう国家総合職試験に合格しているので、誰しも俊英と認めており、官僚を辞めても、ただの人にはならない。東大を卒業後自治官僚となった片山善博氏は、鳥取県知事に転身し、多選によるしがらみ、権力の腐敗が問題になる前に2期で“賢知事”として退任し、その後民間人ながら総務大臣に就任した。現在は大正大学特任教授。 

 昔の東大生は、天下国家に奉仕するとの高い志や使命感をもつ学生が多く、頭の良さをひけらかすようなマネは慎んでいたのでは。東大卒住田裕子弁護士もTVでそう言っていた。

 官僚を目指すと言えば、庶民は好感し「日本の為に頑張ってくれ」と激励したものだ。今や低予算に喘ぐテレビ局に乗せられ、終了した『東大王』のごとく、スター気取りにと言えば、言い過ぎか。
 今東大生のトップクラスは、外資系企業に行くという。むべなるかな。安倍政権時代、人事の公正、適材適所を目的として創設されるべき内閣人事局が権力者の官僚を意のままに操る道具とされ、隷従・忖度した、いわゆるヒラメ・キャリア官僚が、自業自得とはいえ、問題が顕在化すると日頃の恨みを晴らさんとする野党議員にサンドバックのごとく滅多打ちにされている姿をTVでも観てしまえば。
 それ以上に、かつて情報番組でF氏らMCが億以上の年収を得ていながら、庶民面して庶民の嫉妬心を煽り、キャリア官僚たちが大企業に就職した大学の同期と生涯報酬で肩を並べられるようにする天下りシステムがその功罪を検証することもなく否定されてしまっては(森喜朗元首相はすこし触れたが、官僚出身の政治家は選挙民の反発を恐れ、沈黙したか)。
 それでも、早期退職せず5年以上官庁に在籍する東大卒を初めとするキャリア官僚は、自らをスーパーサイヤ人として自負し、激務をこなす。彼らは、学力があるのが前提の上で、頭がよい、仕事ぶりが的確で速い、人望があることで競う。

 夜遅くまで、寝てない、と言うのは、頭が悪い、能力が低いだけと思われ、それをひた隠す。私は「講釈師、見てきたような噓をつき」みたいだが。
 スーパーサイヤ人の世界だけではなく、我々凡人の世界でも、努力や姿勢が評価されるのは学生の間だけ、いわゆるアマの世界。プロの世界は(新人は別にして)結果がすべて。報酬を得るので一所懸命働くのは当たり前。
 上司が業績の悪い部下に聞く。努力したのかと。「私は懸命に努力しました」と返答すれば、上司は「そうか。それはご苦労さんだった。明日から別の人に代わってもらう」と言われるだけ。(能力がないと言われたら終わりなので)「いえ、努力が足りませんでした」と答えるしかない。

 「午前三時」「睡眠2時間、4時間」「働いての連呼」を評価するのは、学生か社会人になり立ての若者であろう。経営者は違和感を感じたのでは。トップは頑張ったが駄目だったでは済まされない。国のトップなら尚更に。
 それを売りにする首相に対して、スーパーサイヤ人の官僚たちは、首相など皆似たり寄ったりの凡人で、我々が考え、首相に実現してもらえればと割り切るのか。
 ところが、高市首相は国会で台湾有事発言をして中国側を激怒させた。それに対し、首相支持者らは、失言した首相より、いらいらさせた相手が悪いと言い出した。濡れ衣を着せられそうになった立憲民主党の辻元清美議員は、12/12に反論した。TBS NEWS DIGによると、「普通は、こういうの(=答弁資料)はあんまり出ないのに、(内閣官房が)持ってこられたのでびっくりして。内閣官房をはじめ、政府としては、今までと同じ、歴代政府と同じものをきちんと示していたということが明らかになった」と発言している。

 この辻元議員の発言が本当なら、これはどういうことか。辻元議員の求めに対して予想外のものが来たのか。結果として内閣官房は敵に塩を送ったということか。
 高市首相は、専門的に熟知しているスーパーサイヤ人に対して、用意してくれた資料を顧みず、気遣いもなく、自身が聞きたいことだけ聞く、AI以下の扱いをするのか。
 勝手に発言しても結果が良ければまだしも、経験も十分な知識も無いのに独走し、中国を激怒させたならば、頭の悪い私でも、この首相に日本の舵取りを任せるのはと思ってしまう。スーパーサイヤ人がどう動くか、推して知るべしか。
 民間企業は、「Fools rush in where angels fear to tread.」のようなタイプを男女を問わずトップに据えることはない。大企業と言えども経営破綻を恐れるから。
 国会議員は日本国は破綻しない(海外市場はそうとは思っていない)と高を括っているのだろう(自ら稼いだカネではなく国民の税金だから、平気でバラ撒くのであろう)。
  前中国大使の垂秀夫氏は、文藝春秋2026年1月号にて「台湾有事発言」の高市首相に関し次の主旨を述べている。
〇慣例に反し、習近平国家主席から祝電が送られなかった事実は、北京が当初より高市総理を“観察対象”と扱おうとしていたことを象徴していた。
〇“皇帝の善意”として演出された日中首脳会談の直後の高市総理発言は中国にとって「習主席の面子を潰した」ものと受け取られた。しかも、アメリカですら言わないことを日本のような同盟国が単独で“一線”に踏み込んだことは、中国からすれば、序列を乱す行動であり容認し難いものと映った。
〇安倍元首相も同じ発言をしたが、現職の時ではない。高市総理は現職であり、その発言は即座に「日本政府の政策」と扱われる。外交上は、「言えること」と「言えないこと」が厳然と存在することを理解しなければならない。高市総理の発言は単なる失言ではなく、戦略なき言動がいかに国家の立場を揺るがすかの典型例である。
 現職でない垂氏がこう「言えること」でも、現職の官僚たちにとっては「言えないこと」であるが、心ではそう思っているに違いない。
 ただ、垂氏は、高市首相発言の撤回は「最悪の前例」となる。中国側に「成功体験」と思わせてはならない。「保守・対中強硬派」とされる高市総理が、中国側の理不尽な圧力を受けて発言を撤回することになれば、今後の対中戦を構想する上で重大な制約となろうという。
 元外交官の立場からすればそうだろうが、それでは迷惑・災難を被る自国民はいつまで待てばよいのか。高市政権を倒すということが、中国側の狙いとするなら、高市首相が退陣するまでは日本に人気のパンダも貸出されないのか。手をこまねいているだけでは中国はさらに圧力をかけてくるが。
 そんな中国に対して米国は高市首相をどう見ているか。

 11/24の米中電話会談のあとトランプ大統領からの申し出による高市首相との電話会談において、日本の立場を支持する、最低限理解するとの発言がなかったのなら(あれば必ず首相が言及するハズ)、日本にとってかなり厳しいものだったと見ていると“知の巨人”佐藤優氏は週刊新潮コラムの25.12.18号に書いた。佐藤氏は明言を避けたが、高市首相がトランプ大統領に言われたことは「米中が歩み寄っている時に水を差すような不用意な発言は慎むように!」ではないか。
 トランプ大統領(1.0)の側近であった、超タカ派のボルドン元大統領補佐官は、大統領と対立し政権から離脱したことが却って見直され、今評価が高まっているらしい。そのボルトン氏が、12/1(同盟国が「米国の拡大核抑止(核の傘)は信頼できない」と懸念しているのを背景として) 高市首相の非核三原則見直しを問題視しているという。

 ボルドン氏は同盟国が核能力を保有すれば同盟関係は弱体化し、米国は危険な時に主導権を握ることが困難になり、同盟国だけでなく米国も危険に晒されることになる、同盟自体の抑止力が低下すると警告している。 
 なのに、12/18首相官邸の幹部が、個人的見解とするも「核保有発言」。12/23のBS-TBS『報道1930』にて今回は発言者名のオフレコだけなので報道したメディア側に問題がないと言っていた。12/24発売の週刊新潮新年特大号によれば、オフレコが徹底されず、上記「オフレコ」とすべて外部に漏らしてはいけない「完全オフレコ」との見解が各社によって分かれたとする。結局発言者の名前はメディアではなく、この週刊新潮が明かした。尾上定正首相補佐官で航空自衛隊出身の有能な人物だとする。
 問題は、なぜそんな有能な人物が、立場を弁えず、わざわざこんな時に、首相の足を引っ張る発言をしたいうこと。

 発言の背景の一つとして、上述12/10発売の文藝春秋2026年1月号にて『米国の敗北を直視して核武装せよ』と題したフランスの“知の巨人”トッド氏と日本の“知の巨人”佐藤優氏との対談の中で、佐藤氏の「トッドさんの日本への最大の貢献は、核兵器へのタブーを取り払って議論せよという問題提起をなされたことだと思います。」との発言にあるか。触発されたのか、あるいは、そんなことよりずっと以前から持論として言っていたとの自負心・反発心がそう言わしめたのか。
 何にせよ、高市首相の側近による「核保有発言」は当然中国をも刺激する。ボルトン氏だけではなく、トランプ大統領をも怒らせただろう。さらに、これに前後して、自民党の萩生田光一幹事長代行が訪台して頼清徳総統と会談している。それも当然中国は批判する。
 米国側は、師匠の安倍首相は米国にとって有益だったが、後継者と自認する高市首相は危なっかしく、早くも米国の利益にはならないと思い始めたのではないか。
 
 民間の識者においても、「台湾有事発言」問題は「高市政権の『能力不足』に帰結する」と手厳しく批判した経済誌プレジデントの元編集長・小倉健一氏が批判の急先鋒?として元旦からMINKABUにてサッチャー=高市とのプロパガンダは欺瞞と批判する。「『積極財政』という美名のもと、半導体、造船といった、どう考えても失敗しそうな特定産業へ巨額の官民投資をぶち上げている。これは、サッチャーが否定した「政府による産業の選別」そのものではないか。さらに、増税ラッシュ。防衛費増額、扶養控除縮小、社会保険料の引き上げ。これらはすべて、政府の肥大化を意味し、民間の自由な経済活動からリソースを奪う行為である。」と。
 黒田日銀の超金融緩和政策に対して日銀審議委員として独り反対した木内登英氏は今般の大型な経済対策について、このような主旨の指摘をしている。

  今回補正予算編成による経済対策の規模は18.3兆円で経済対策に含まれたガソリン暫定税率廃止などの減税分2.7兆円を加えれば、石破政権時より約5割増の規模に達し、その内11.7兆円の新規国債発行、つまり借金で賄われる。補正予算の歳出総額の約64%にも達してしまう。

 大規模な経済対策を策定することで財政への信頼が揺らぎ、円安が進めば、物価高対策の効果はその分削がれてしまう。やや長い目で見れば、全体として家計の負担を高めてしまう可能性もあるとして、経済対策で規模を追求する姿勢は適切ではないと批評している。

 私は、今回大きな花火を上げたが、物価対策中心では経済の晴れ間は見えず、円安、国債安(金利は上昇)の大雨が続く(株高はいずれ暴落はともかく下落する)中ではもう大きな花火は打ち上げられないのでは(解散総選挙にて衆院で少数与党の不安から解放されても状況の好転は期待しえない)。

 一方、下記識者達は首相を支持する大衆を批判している。
 フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』でお馴染みの池田清彦先生はTVでのイメージと違い危機感からか表現が過激だ。

 積極財政の高市首相を支持する人達に対して、11月下旬「首が回らなくなっても、中国のせいなので、中国を成敗せよという話に乗りそうだ。そうやって戦争はバカが後押しして始まるわけだ。真っ先に死ぬのはバカなのだけれどもね。頭が悪い人は本当に度し難い。そうやって日本は滅んでいくのかしら」とXにて発信している。 
 ひろゆき氏も12月上旬に「頭の悪い国民が自民党の積極財政を支持するので円安加速。円安政策のおかげでS&P500など外国に投資するだけでお金が増えていく。過去の日本は、真面目に働く人が評価された。現在の日本は、真面目な働き者がバカを見る。・・・ 」という。


 池田先生は“そんな人達”の耳には届かないと諦観気味だが、本来それは日本人だけの問題ではない。民主主義(多数決)は民度が一定という理想を前提としている。しかし、実際は民度の高い層<民度の低い層。その矛盾をカバーすべく「間接選挙」がある(政治的民度の高い米国、韓国でも直接選挙で政治家経験のない、問題ある大統領を選んでしまう)。
 日本での固有の問題は、米国や韓国と違って市民が闘って民主主義を獲得したのではなく、敗戦後GHQにより与えられた。その一方で、戦前の全体主義国家での「お上に逆らってはいけない」風潮が抜けきれず、学校教育もその延長線上にあると言え、日本の若者は「政治」に対する関する知識や関心が外国の若者と比べて低いとしか。

 安倍政権は、選挙権を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げ、「経済」を理解する前の若者をターゲットとした。
 高市首相の支持者は、タカ派だけではなく、こういう若い層の有権者も多いのだろう。若年層は政策への期待が大きい。アベノミクスを成功したと捉え、高市首相にもサナエノミクスを成功させてほしいと短絡的に思っているらしい。今の若者は書籍離れにてSNS上の狭い情報に洗脳されるのか。

 期待感だけで、政権スタート後3ヶ月で台湾有事発言等マイナス面が悪目立ちしているのに若者の支持率は82%と高いまま。「有権者」に相違ないが、AKBの元総選挙と訳が違う。
「選挙民」は、政権に期待する権利があると同時に政権の政策が有効なのか、権力者が私欲ではなく国民の為に働いているか注視する義務がある。そのためには、政治的教養を身につける必要があり、とくに高校教育においてはその涵養をもっと指導すべきであろう(自民党にとっては余計なことだが)。
 そう言ってる間に、すでに若者が高市政権の岩盤支持層になる勢いを見せている。東大生は高市政権をどう見ているのか。東大生も同じなら世も末だ。違う見方をしているなら、SNSで大いに発信してほしい。

 私は、現下日本に求められている首相像とは真逆の「積極財政・対中強硬派」の高市政権を誕生させた責任は、自らの拠り所である間接選挙の機能を放棄した自民党の国会議員にあると考えている(国民に現下の情勢を説明し理解を求める努力を怠り国民人気に迎合するだけ)。
 日本人は優秀だが政治的民度が低いので首相公選制(直接選挙)を採らず国会議員の中から国会議員だけで選ぶ、間接選挙方式。しかし、実態は実質自民党総裁=内閣総理大臣。
 我々は、自民党総裁よりも総理に誰がなるか関心がある。だが、総裁選では、自民党議員は自身が選挙で再選し易い、いわゆる人気の高い議員を総裁として選ぼうとするだけ。裏金問題で自民党離れの中党員・党友に迎合しようとする。現下の情勢において誰が日本の首相に相応しいかと考える議員はいないのか(今の自民党には日本を背負う与党としての責任感、気概が感じられない。高市首相だけが空回りしている)。
 次代を担うべき若手議員は、派閥の領袖に指導や選挙支援、経済的援助を受けておきながら、裏金問題で自民党が逆風に晒されると、裏金問題の派閥に属する議員ほど自由に総裁候補を選びたいと派閥解消の声を挙げた。
 高邁な志もなく、生活の糧を得る為に選挙で選ばれただけの議員は議員定数を減らせば真っ先に排除される。

 進め方に問題がある、実現性も?だが、現連立与党が議員定数削減を目指すのに賛同する。国会議員の本分は、地元への利益誘導にあるのではない。国会議員がいくら多くいても結局仕事は能力の高い者に集中するのが、世の習い。
 私が最も失望しているのは、齋藤健議員、加藤勝信議員の有力官僚派議員が、天才でもなく、主要ポストの経験もない小泉進次郎議員を総裁候補として担いだこと。
 2024年秋自民党総裁選において、より党員・党友の声が反映させるフルスペック型の選挙にてメディアの世論調査で人気が高い石破議員と高市議員が決戦投票に進み、国会議員間での「嫌われ者同士」が争い、石破氏が総裁になった。
 そして1年後早くも総裁選に。今度は「フルスペック型」より党員・党友の声が反映されない「簡易型」でよいのに、世論の縮図に過ぎない党員・党友に阿るべくフルスペック型にした。同じ轍を踏むことになるのに。今の時世において真に首相として相応しいと議員をと齋藤氏ら官僚派議員が声を上げるべきなのに、進次郎議員を担ぎ、「首相になったら心配」な、高市議員と進次郎議員との一騎打ちの、文字どおり片棒を担いだ。結果「嫌われ者」+「首相になったら心配」の高市議員が総裁・総理に。そして案の定中国を激怒させ、トランプ大統領からも叱責されたと見られる。
 齋藤氏ら官僚派議員は東大を出て高い報酬が得られる大企業ではなく、低い報酬ながら激務な官僚の道を選んだ。その志高い彼らが、永田町の住人になれば、朱に交われば赤くなってしまうのか。
 私は、革新的なことが言える知力もなく、ただ馬齢を重ねてき高齢者となった現在言えるのは「昔の方が良かった」ということだけ。自民党が単独政権の黄金時代、派閥同士が切磋琢磨し、さらに相互牽制しあって、その中で派閥の領袖が主要ポストを歴任し、前提条件を備えた領袖同士が総理へと競いあってきた。ただ、お金が飛び交うことで批判もされたが。
 今の自民党は学校に準えらえば、各クラスが無くたまにみんなで講堂で集まっているようなもの。
 私が60年前に入学した神戸高校は、1学年550人在籍し、クラスが10組あった。「質実剛健 自重自治」を校訓として、校長は人の上に立てる将来性のある者たちが持つべき心構え、矜持、気概について訓示し、そして各クラスには担任の教師と学級委員長がいた。
 自民党は、2025年(令和7年)7月29日現在、衆議院議員196名、参議院議員101名の計297名いる。維新支持者も呆れようが維新を離脱した3議員が自維連立与党入り。自民党に転籍すれば300名となる。それぐらいいるなら50人の6クラスあってもいい。
 なのに、校長と目される者は、自身のクラスを持ち自身の利害や好き嫌いを話すだけ。他はクラスもなく、よって担任の先生もおらず、学級委員長もいない。烏合の衆の中で人気があるからと「生徒会長」を選ぶようなものではないか(学校の生徒会長ならそんな選び方でもさしたる問題はないが)。
 来年2027年の秋にまた任期満了による総裁選がある。その時には高市総裁が現職として総裁選に出馬できるのか。
 為替市場・国債市場とトランプ大統領とにより、「積極的財政」と「対中強硬策」との高市政権の両翼をもぎ取られてはタカ派の支持が減ろう。
 もっとも、私は、高市首相は根っからのタカ派ではなく、ポピュリストだと、師匠の安倍首相より他人の意見を聞かないトランプ大統領に似ていると最近思い始めている(私はアンチABEであったが高市政権を見れば第二次安倍政権は思ってたほど悪くなかったのかと錯覚しまう)。高市首相は支持してくれる若者へのアピールを強めていくのだろう。
 その他の大衆も、実質賃金の改善がなく、生活が楽になったとの実感がなくとも、前政権よりもよくやっているとして、高市内閣の支持率はそれほど下がらないかもしれない(それが自民党の支持率に直結するか分からないが)。現総裁任期を全うする可能性は高いのかもしれない。
 有識者からの批判も多かったが2012年から2020年9月まで連続3期の安倍総裁がそうであったように(その裏でメディアも騒がず静かに日本が沈ずみ続けたが)。
  中国は、トップの習近平主席が高市首相を排除したいだけで、いやがらせが続く(国民は迷惑至極)が、経済不況の中地方の中国高官たちは日本企業が撤退するのは避けたいハズ。
 米国は、高市首相が米国中間選挙に負ければ弾劾もと口にするトランプ大統領の高ぶる神経を逆なでしなければ(4月の米中会談の前に大統領と会う予定だが、果たして)、ダッチロールする高市機にミサイルが飛んでくることはないだろう。

 両翼が壊れエンジンが不調になっても軟着陸できるかもしれない。胴体の故障(体の健康を損なう)がなければ、この方が支持者にとってはより気懸りとなるか。
 そうなると、次の総裁選は、前回と同様、人気の高い、高市現総裁と進次郎防衛大臣との一騎打ちになるのか。そうなれば、現職に有利な展開も。その時官僚派議員の齋藤氏や加藤氏はまたぞろ進次郎議員を担ぎあげるのか。
 自民党の黄金時代、官僚派議員が戦後の吉田茂首相を筆頭に首相になっていた。が、「東大法学部卒にあらずんば人にあらず」と言って憚らない宮澤喜一首相(1991年5月~1993年8月)を最後に(実際はその少し前に官僚派首相は時代の役割を終えていたが)官僚派首相が誕生していない。
 私は、その後党人派の首相が続き、とくに今世紀に入って清和会系首相が続いたことにより、小選挙区制の問題と相まって、日本が沈むと共に自民党議員が劣化した今、官僚派首相の再登場に期待をかけている。
 浪人中の齋藤氏ら有力官僚派議員は、官僚になったときの原点に戻り、高市政権のままでは国家財政がさらに悪化し失われた30年が40年へと沈みゆく日本の立て直しにはどうすべきか、自らは直ぐにトップに立てないならば誰を擁立すべきか、よくよく考えてもらいたいものだ。私ごときに言われたくないだろうが。
 (次回240号は2/1アップ予定)

2026.1 臨時号  NO.238  るいおんな  VS 

         るいおんな
 今回は「毎日が日曜」の一後期高齢者が今思っていることをオムニバス形式で三点述べてみたい。
   まず、高血圧について。私はかつて前立腺がんに罹患し、2012年9月から放射線治療を受けその後3ヶ月毎血液検査(PSA:前立腺腫瘍マーカー)を受けてきた。前立腺がんは10年経過しても再発することは珍しくない為。今年75歳になることを機に3ヶ月毎のPSA検査を1年毎にすることにした。再発しても寿命との競争になる。私にとって再発よりも恐れるのは、生きながらえて認知症になり家族に迷惑をかけること。
 それで10年以上電車に乗り通っていたクリニックから地元の〇〇会と付く病院に替えた。地元下町の町医者は患者を愚民扱いするので(あくまで個人的感想)出来るだけ行かない。
 前の病院では、PSA及び成人病予防を目的とした血液検査と尿検査だけで担当医師は血圧はスルーしていた。今度の病院の老院長は血圧にうるさい。診察の前に患者自身で測るよう張り紙があるが、医師自ら測り、冬でもないのに上が140台ではと、もっときつい降圧剤を服用するよう進めてくる。
 この前受診したとき、その院長に聞いてみた。「先生は日本高血圧学会に所属しているのですか」と。先生は所属していないと返答した。それで、私は「高血圧学会は評判悪いですね。週刊新潮のコラムで和田秀樹医師が猛批判していますよ」と話した。意外や院長は私の話に理解を示してくれた。
 今年、高血圧学会は高血圧の治療で血圧を下げる際の目標値について、75歳以上で上の血圧(収縮期)と下の血圧(拡張期)をこれまでより10引き下げ、上130、下80未満に抑えることを新たな治療指針とした。
 我々が若い頃上の血圧は、加齢に伴い上がっていくので、「90+年齢」が目安と言われていた。それでいくと、130は90+40(歳)。馬鹿言え、75歳以上が40歳の体になれるか。薬を服用せずにそれをクリアするとなるとどれだけ味気ない生活が強いられるか。皆薬漬けになる。働かずモノ言う高齢者は要らない。高齢者は家で塞ぎこんでいろとでも言うのか。

 かくして、一将ではなく、「三将(高血圧学会・病院・製薬企業)功成りて万骨(高齢者)枯る」となるか。

 他の医師らも疑問の声を挙げているのに、医療財政逼迫に苦慮する厚労省が黙認?しているのは理解に苦しむ。
 私は50代の頃仕事上のストレスから血圧が上がっていた。眼圧も。それ以降、弱い降圧剤と眼圧を下げる薬を続けている。75歳で上の血圧が140台~150台なら当たり前だと思っている。血管を丈夫にするため肉を摂るよう心掛けているが(肉4に対し魚3。魚を食べる時は嫌いな納豆も、1/2パックで)。
 強い降圧剤を服用したくないのは、業界団体に居た頃委員会の座長をお願いしていた先生からきつい降圧剤を服用していると鬱になる危険性があると聞いたから。
 故西木正明の近衛文隆の伝記小説『夢顔さんによろしく 下 ―最後の貴公子・近衛文隆の生涯』(文藝春秋)を読むと、主人公の近衛文隆(細川護熙元首相の伯父)は、勝手に日中戦争の平和的解決に動き、それを疎ましく思った軍部により近衛文麿首相の長男ながら徴兵され、終戦後シベリアに抑留されてしまう。文隆はソ連側のスパイになりそうもなく、かといってそのまま返すわけにも行かず、扱いに困ったソ連側は痔の呑み薬と称してきつい降圧剤を与えると鬱になった。が、死なず、別の方法で暗殺されたとする。
 私も最近実感した。日曜の夕方明日からの仕事に対する憂鬱感を感じるのを「サザエさん症候群」(アニメ「サザエさん」が終わる時刻と重なるとして)と呼ぶらしい。私も30歳前後の若き銀行員時代よく日曜の夕方にそんな感じになっていた。それから40年以上そんな事は記憶になかったのだが、75歳になって経験したのだ。「毎日が日曜」の身、ストレスは妻の小言ぐらいなのに。

 変だと調べたところ、朝に飲む降圧剤を夜にも飲んでしまっていた。夜に飲む高脂血症の薬とよく似ていた為。それが数日続いたことが原因だと判明した。それ以来サザエさん症候群は起きていない。ただ、高市首相の発言を聞くと(国を案じ)憂鬱になる「サナエさんシンドローム」が始まったが。
 抗がん剤が癌細胞だけではなく正常細胞も傷つけると同様、降圧剤も血圧だけではなく「気持ち」も下げるのでは。
 私がきつい降圧剤を服用すれば、モノ言う高齢者ではなくなる。大人しくなり妻は歓迎するかも知れないが。上の血圧が160を超えてくれば、どうするか真面目に考えてみたい。

 次は、ツンデレと古い女について。11月中旬公開の映画『平場の月』の井川遥さん扮するヒロインがひどいツンデレであった。ツンツンが9でデレデレが1という様体だ。
 この映画は、妻と観る予定だったが、直ぐ後に木村拓哉氏と倍賞千恵子さんが共演の『東京タクシー』が封切されるのを知り、二人で観るのをこちらに替えた。
 『平場の月』を一人で観たが、幼馴染が再会し、焼け木杭に火がついたごとく愛し合い、主人公(堺雅人氏) が結婚を申し込むと言わんでいいことなど露悪家的な言葉の末二度と会わないとヒロインは拒絶する。主人公は特段抵抗せず、一つの約束を取り付けて同意してしまう。私は共感出来なかった。

 後日観に行った妻に私の想いを告げたが、「フィクションだからしょうがないでしょ」とつれない返事。
 二人の意見が合致したのは、居酒屋の老主人がいい味を出していたこと。80代?の扮装にて誰だろうと思ったが俳優の塩見三省氏であった。二人を静かに見守り差し出がましいことはしないが要所要所で気遣いを見せていた。私もこんな80代爺になりたいと思ったが、要らん事を言っては妻を怒らせる私には無理だとすくに諦めた。
 私の妻も、映画のヒロインほどではないが、ツンデレだ。結婚して44年になるが最近ツンデレなのかと思い始めた。

 外出から妻が戻ってきたので向かうと「何しに来たの、アッチに行って」と言われる(私はストーカーか、濡れ落ち葉か)。台所に行くと「何しに来たの、用事が済んだら早く行って、シッシッ」と言いやがる(私はポチ犬か)。「仲良くしようね」と私が言っても「無理!」と即答する。
 そのくせ、私が告げずに外出し少し遅いと、どこへ、何しに詰問してくる。色気もカネも地位もない、NAI NAI NAI NANNIMONAI爺に女が相手にするかと言っても、そんな心配などする訳がないと切り返してこない。私が60代の頃高校の同窓会から帰ってきたら珍しく妻が可愛げな素振りを見せていた(同窓会で危ないのは30代、40代までか)。

 スーパーに行くと言うので、アイス買って来てと妻に頼むといや!とそっけない。それでも冷蔵庫の冷凍室を覗くと、ちゃんと入っている。
 ツンデレに対してネット民がこう分析する。「もともと照れ屋なのだと思います。 甘えることが恥ずかしいと思っているとそうなりますね。周囲に甘えることができない環境で育ったのかもしれません。」と。
 そういえば、義父母はアクセサリーの職人をしていて、高度成長期ガラスのダイヤモンド風ブローチが飛ぶように売れ、忙しく構ってもらえなかったと妻は述懐していた。
 もっとも、世の主婦からは「アンタが要らぬことを言ったり、変に構うだけのことよ。いい歳してガキやってないで素直に愛情表現すればいいだけ」と切って捨てられるかも知れない。
 妻は「古い女」でもあることは確かだと思う。これは軽侮の意味合いがあるか、「古風な女」と呼ぶべきか。
 すこし前旅行先での夜大喧嘩した。妻とは関係ないことで不快指数が100%を超え窘める妻と言い合いになり、あげく「離婚するから離婚届をもって来い!」と言い放った。妻はいいわよ、出すと返した。翌朝目が醒めまずいことになったと思っていたら妻から声がかかった。「昨日言ったこと覚えているわよね」と言われた。私は「覚えていない」と嘘をついたら「私は一言一句覚えているからね」と返された。あちゃーと頭を抱えた。
 しかし、それ以降何もなかった。私は相手にされていなかった。結婚生活44年の年輪の中で、「この出来損ないが私から離れられる訳がない」との自信があるのだろう。思うに、妻は口で損してしまう単細胞の亭主であれ、何であれ、一度契りを結べば生涯添い遂げると思う古風な女なのだ。
 私に振り回され、専業主婦から兼業主婦に変わりながら、三人の子供達を妻は育て上げてくれた(私は子供達が皆不惑の歳を超えるまで父としてこの世に存在したことぐらいか)。

 長男は順調な職業人生を歩み、次男、長女も後ろ指をさされない人生を送っている。
 妻は今や家ではマウントを取ってくる(口が減らなくなった。体重と同じで。本人も減るのは髪の毛だけだと)が、家から一歩外に出れば、以前と同様ちゃんと私を立ててくれる。
 妻には感謝しかない。妻とカラオケに行けば、布施明氏の『傾いた道しるべ』を歌う。「あー三叉路ばかりの あー道しるべもない僕の道を 君も歩いてくれるんですね」と。

 残り少ない時間の中でよき思い出を作ってあげたい。その舌の根も乾かぬうちに要らん事を言って、妻を怒らせるのではあろうが。
 大谷翔平選手の奥方真美子夫人も、古くはないが、いまどきではない女性と言えるか。
 チャラい男は嫌い(ましてやアウトロータイプなどは)とのことで、女優や女性歌手のように悪い虫がついてしまうことはない。美人で奥ゆかしく、しかも172㎝の私でも見上げてしまう180㎝もあるなら、文字通り“高嶺の花”となってしまう。まさに大谷選手と結婚するためにこの世に生を受けたというところか。
 ところが、週刊女性自身の3/26付けの記事が本当だとすれば、スーパースターである大谷選手からデートに誘われたものの、真美子さんは最初は断ったという。ナンパするチャラい男と思ったのかもしれない。
 普通の親なら、娘から聞いて「ばっかじゃないの!?  誠実な人に決まってる。何で断るのよ、結婚出来たらこれ以上の玉の輿はないんだよ!」と詰るところだが、ご両親もレベチ(レベルが違う) 。
 「本当はどんな人なのか、一度は会ってみたら?」諭すような両親のひと押しで、真美子さんは大谷選手と食事することにしたという。
  野球界でユニコーンと称される大谷選手だが、末っ子でもあり自宅では年下ながらしっかりした姉さん女房タイプの真美子夫人にすっかり甘えているのでは。知らんけど。
 憲政史上初の女性首相となった高市首相は、働き改革を後退させる風に見られるとともに「労働時間規制の緩和」発言や「最低賃金引き上げ慎重」姿勢からすると、国が国民の生活を守り向上させるのではなく、国の為に国民を動員させる、時代錯誤の戦前の全体主義への回帰を思わせる。戦前の「昭和の女」と呼ぶべきか。
 歴史家(昭和史研究)保阪正康氏も、「高市氏は、安全保障関連費(防衛費)増額を掲げて、安保三文書を前倒しで改定すると言っているが、これは軍事への傾斜であるとともに、監視や治安維持への過剰なこだわりを持ち『スパイ防止法』という戦前回帰的な呼称は極めて不穏当に響く」との主旨の懸念を表する。  
 そして「ずるい女」とも言えるか。

 公明党が連立与党から離脱したのは高市首相のタカ派色だけではないという。10/21の首相指名直後の24日デイリー新潮が、ご祝儀の提灯記事と思いきや、いきなりの冷や水。『「目的を遂げるためには、世話になった人の恩を顧みない」 高市早苗氏が公明党を激怒させたウラ事情 「裏では公明党や学会のことをボロクソに」』を表題にしてこのように報じた。
 1996年10月、初めて小選挙区制の下で行われた衆院選では公明党が一翼を担っていた新進党公認で出馬し、奥野元法相の元秘書・森岡正宏氏を破って2選した。ところが、当選後半月で高市氏は手のひらを返し、新進党を離党。自民党に移った。そのため選挙で全面協力していた公明党・創価学会、特に婦人部から大不興を買ったという。
 因果応報と言うべきか。公明党が連立与党から離脱していなかったら、台湾有事発言に端を発し態度を硬化させた中国との関係修復に一肌脱いでくれただろうに。
 私も前回237号(「サナエVSザザエ」)にて万事責任転嫁で済ませるのかと先が思いやられると書いた。その後の12/9の衆院予算委員会で評判が悪いお米券に関し高市首相は「農水大臣が大好きなおこめ券」と揶揄するような発言したことも。
 政治家はきれいごとでは済まない。ましてや、世襲ではない、女性の議員が首相にまで上りつめるには並大抵の事ではなかっただろう。罪ではないが1等減じて、「ずる賢い女」と呼ぶのだけは止めておこう。 
 
 最後は、元TOKIOの国分太一氏の人権問題。被害者の人権ではなく、加害者側の人権が問題となる。
 コンプランス違反で国分氏は日テレから解雇された。TV番組『ゴゴスマ』で元裁判官の清原博弁護士が国分氏は解雇不当を訴える立場にないと発言していた。
 私は銀行で20年(その内4年組合専従)、神戸から東京に居を移し官庁としての矜持を最も有した某省の許可を得た公益社団で10年在籍した後業界団体に事務局長として10年在籍し65歳でいわゆる定年退職した後も顧問として関わっていた。

 しかし、(言いたい放題だったくせにと言われても)40年に亘る、常に公共性を意識してきた宮仕えの身に限界を感じていたこともあり、(普段それなりに気を使って意見するのに)トップをメールでなんと馬鹿呼ばわりして、喧嘩別れとなったのだ。大人しく去るつもりはなく反撃もしたが、業務委託契約は、雇用契約とは違い、理由が何であろうと「Fire!」と言われたら、それでおしまいということを知った(そのトップは次の改選時退任した上、一理事としても残らなかった。そこまでは望んでおらず、嬉しい誤算とは思えなかった)。
 国分氏も不当解雇では争えないことを代理人弁護士から説明を受けていたハズ。それで日弁連への人権救済の申し立てを選択したのであろう。
 そして、その記者会見の席上、国分氏は、「日テレと対立したい気持ちはなく、自分がやったことの答え合わせをさせてほしいと思っている」と発言した。会見を観た視聴者にはいろんな意見があろうが、私からすれば、この期に及んでまだ日テレに阿るような発言をするのか。「弱きをたたき、強きにへつらう」性格なのか。そう思った。
 視聴者の中には、弱みを握られており、申し立ては世間へのスタンドプレーに過ぎないと見た人もいたのではないか。
  「申し立て」自体が日テレと対立している。「答え合わせ」は、受験生が塾の先生に言う言葉だろう。大学受験に一度やそこら失敗しても人生が終わる訳ではない。国分氏は社会的に葬られようとしている。だからこそ日テレに反抗することになる人権救済の申し立てをしたのであろうに。
 人ひとり殺しても、密室ではない傍聴人が見守る中裁判で被告人は弁明の機会が与えられるし、有罪となり一定期間ムショに入り、務めを果たしシャバにでれば罪を償ったとして社会復帰が許される(世間の風は冷たいとしても)。

 国分氏の場合、一方的な公開裁判により、目に見えない檻に家族もろ共閉じ込められ、それもいつ檻が消えるかまったくメドがたたない状況に置かれている。
 殺人罪で起訴されても、極めて残忍かつ身勝手な犯行なら1人でも死刑になる、情状酌量の余地ありと通常より減刑になる、正当防衛で無罪となる、このように判決が分かれる。
 芸能人は公人に次ぐ準公人かもしれないが、日テレは我々に著名芸能人M氏、N氏のケースと同じなのか違うのか判断されるのを拒むのか。今後ともその姿勢が続くなら、日テレ側の「被害者の人権」を盾に守ろうとしているのは、日テレ自身ではないかと私にはそう見えてしまうが。
 国分氏はすべてを失ったとも言う。が、家族がいるではないか。過去の言動が思いがけず批判に晒され、萎縮しているが、それは深く反省する(何をしたか不明だが、これからは「弱きを助け強きを挫く」のだ)として、国分氏がすべきことは、夫として、父として、何の罪もない妻と子の名誉と人権を守ることだ。たとえ自身がどうなろうともとの覚悟で。
 人権の救済申し立てでは、非公開、調査に1年はかかり、挙句不措置になる可能性もある。たとえ勧告等が出ても強制力がなく日テレ側が従わないこともありうる。
 日弁連に頼るのではなく、代理人弁護士をセコンドにつけて裁判というリングで闘うべきだと思う。「加害者に人権はないのか」「正当な手続きも踏まず公然と一方的に断罪されたのに、個人的な名誉回復する機会すら与えられず、家族とともに石投げられながら一生過ごすしかないのか」と日テレ側を相手に人権侵害で訴えるべきだ。
  (テレビ局という強い立場の者による弱い立場の一芸能人に対する言動において)芸能界の問題に詳しい河西邦剛弁護士は「プライバシーを保護するかどうかは当事者本人が決めていくものなのに日テレ側がプライバシー権を主張している。また日テレがヒアリングの際に国分さんに対して『特定につながるような情報は一切出さないように』と強く求めている。日テレ側にとって不都合なことがあったとしても、『関係者のプライバシー保護』を理由に隠せてしまう構造になっている」という主旨のことを述べている。
 私には法律にド素人にて素朴な疑問がある。被害者が加害者の示談に応じ示談金を受け取る代わりに守秘義務を課せられるのはよくある。が、被害者が特定されてもおらず、代理人でもない日テレが、解雇した相手の口を封じる権利はどこにあるのか。「おんどりゃー、オレんところのスケに何さらしてんねん、ボケー」「オイ、コラッ、首になったらそれで済んだと思てへんやろな。ええか、ベラベラしゃべってみ、どうなるか分かってるんやろな!?」と脅す反社とどう違うのか。
 いきなり独り四面楚歌に置かれ怯え切り頭が真っ白になっている国分氏にそんな約束させたとしたら、それは公共の電波を扱うテレビ局のコンプライアンスに適合するのか。
 元特捜検事の若狭勝弁護士も「降板という重い処分をしながら、きちんとした、何が問題になっているか本人にも告げないのはバランスを失する」とした一方、「日テレ側に『法律違反、法的問題があるかというと、ここが問題とは言えない』ともコメント。だが『法律的に違反しなくても、公正な手続きっていう点については、問題なしとはしないと』、と私は思います」とTV番組の中で述べている。
 上記二人の弁護士は「問題がある」と言うも、裁判の可能性には触れていない。現在の法律や制度で違法でなければ、裁判に勝つことは難しいということか。そうであれ、本件を悪しき慣習の前例(テレビ局による出演者へのパワハラ)とさせない為にも裁判を起こすべきだ。 M氏やN氏のごとくケジメをつけずに復帰を模索する流れに乗らず、これからは「弱きを助け強きを挫く」男らしく生きる覚悟を示す為にも。

  国分氏の盟友“漢”松岡昌宏氏もようやく口を開き、週刊新潮12/11号で「何も説明しない日テレさんのやり方はコンプライアンス違反にならないでしょうか」と言い、続いて「何の説明もしないまま番組を降板させられるのであれば、国分さんの次は自分、その次は城島、世の中のタレントさんみんながそうなってしまうのではないか、という危惧があります」と懸念表明というより日テレに反旗を翻したと言える。

 これを機に潮目が変わって来るのでは。松岡氏以外にも芸能人等が疑問の声を挙げ始めている。世間の風向きも変わってくるのでは。 
 国分氏は、既に闇討ちにあったようなものだと暴露しており、日テレに喧嘩を吹っ掛けているではないか。裁判になれば自らも返り血を浴びるかもしれない。裁判で勝てないかも知れない。しかし、妻と子は家族の為に闘ってくれた国分氏を誇りに思っても恨むことはないのでは。
 一方、解雇は日テレ側の権利であり、もっとソフトランディングさせる方法があったろうに(フジを他山の石にしたか、一罰百戒を狙ったか)。日テレだけではなく国分氏は芸能界から追放された状態にさせられた。
 国分氏を家族もろとも社会的に葬るマネをしておきながら、自らを安全な所に身を置き「時期がきたら国分氏の話を伺いたいし、自分の気持ちをお話しできればと思っている」とのナメた口をきく(コメントを出す)日テレの社長をリングの上に引きずり出し闘うべきだと思う。
 年甲斐もなく、と言うよりも、相変わらずガキっぽく、少し熱くなり過ぎたか。血圧も上がったかも。私と同じ意味か分からないが、過去国分氏と共演したという北斗晶さんは芸能人であり微妙な立ち位置ながらも「私だったら戦うべきだと思うんですよ」と国分氏にエールを送っている。

 さすが元プロレスラー。そして優しい。彼女は癌と闘った。人生にとって何が大切か悟ったのかも知れない。

(次回239号は1/10アップ予定)

2026.1   NO.237 エ VS  サ
 先の自民党総裁選の決選投票で小泉進次郎氏を破り、自民党の総裁となり、総理となった。11月初め左派のTBSのJNN世論調査で内閣支持率は何と82%になったという。その人気は小泉純一郎首相を彷彿させる。
 とくに若い層が支持しているように見える。が、私を含め政治的民度が低い中でZ世代等若者たちが経済、政治の側面からではなくイメージ(アニメのサザエさんのごとく)にて支持しているのではと私には思える(東大生らは無礼なこと言うなと怒るかもしれないが)。
 Wikipediaによると、サザエさんは、快活でそそっかしく気性も激しい。そこは(タカイチ)サナエさんも似ているか。

 さらにサザエさんはお世辞に弱く「若い」とか「美人」などと言われると途端に機嫌が良くなるという。サナエさんはどうなのか。 10/28にトランプ米大統領と米軍横須賀基地を訪れ、米空母を視察。米兵らの喝采を受け飛び跳ねるように腕を突き上げた姿が、「はしゃぎすぎ」との批判されたが。 
 高市氏は総裁選で勝利したその挨拶で、「ワークライフバランスという言葉を捨てる。働いて働いて働いて働いて働いて、まいります」と語った。
 「ワークライフバランス」は被雇用者の為のもの。それに必要な「働き改革」を後退させると言っているとの印象を受ける。師匠の安倍政権の施策なのに。
 そんな矢先、「高市首相は7日、衆院予算委員会の準備のため同日午前3時から首相公邸で勉強会を開いたことについて、『秘書官、SP(警護官)さん、ドライバーの方にはご迷惑をかけたと思っている』と陳謝した」と11/7付けにてFNNプライムオンラインが報じた。

 国家公務員は労働基準法等労働関連法が適用されない(国家公務員法があるが)が、こき使っても構わないものではない。

 (国会質問の在り方に問題があるにしろ)歴代首相の中にもやむを得ない場合があったろうが、誇るべき行為ではなく、表沙汰にならないようにしていただろう。
 民間の大企業のトップが同じことをして報道されれば、「専制君主きどりか!?」「働き方改革を逆行させる気か!?」と大炎上するだろう。

 どうも、高市首相はスタンドプレーだけではなく、本気で働き改革を後退させるつもりなのか。それも一存で。

 「労働時間規制の緩和」発言や「最低賃金引き上げ慎重」姿勢を勘案すると、国が国民の生活を守り向上させるのではなく、国民がいかに国に奉仕するか、戦前の全体主義に回帰させるつもりなのかと疑ってしまう。時代錯誤なことを。
 なのに、高市首相に対してはネット民は擁護する。政治家も識者も皆、午前3時を指示した首相の健康を気にかけ、指示された秘書官らのことには気遣わない(深夜にせっかくレクチャーしたのに、TBSの星浩氏によれば、「戦艦」という官僚が使わない言葉を使い用意された答弁以上のことまで自らの見解を交えて踏み込んでしまったという。中国側の激怒を招き、高市首相に対する秘書官からの心証は如何に)。
 サナエフィーバーの世相を、週刊新潮11/13号の新刊本紹介コーナーにてコラムニスト林操氏は『サッチャー』(中公新書)の紹介文の見出しに「奇病・サナエ熱につけるサッチャー論という薬」と書いた。

 もっとも、働き方改革を本気で後退させる気なら兼業主婦を初め同じ女性から醒めていくのでは。石破前首相と並んで「嫌われている」と言われるのは、トップとして不可欠な「他人への気遣い」ができないからでは(さらに、公明党から逃げられ、首相になる為に引き入れた維新が実家の自民党の反発を招く火種に)。
 民間企業のトップは会社との委任契約。(本来無報酬で)24時間365日会社の為に働く。内閣総理大臣は国家公務員。当然一職員ではなく、内閣の特別職の職員。位置づけは、民間のトップと同じ。「四六時中働きます」と大声で言うことではなく、当たり前のこと。
 高市首相の一番の仕事は、ジタバタして疲れてる姿を見せるのではなく、最悪の国家財政状態、少数与党の現状の中で、如何に日本経済を浮揚させるか、どうすれば国民の生活を改善させられるかを考えること(自慢にもならない睡眠2時間の頭で考えられるのか)。内閣内の議員、国家公務員試験を合格した有能な官僚を、こき使うことではなく、最大限に活用し、自由自在に使いこなすこと(官僚達にこの首相なら苦労も厭わないと思ってもらうことが、まず先決)。
 高市首相のこれまでの言動では、自身の能力に自信が持てず、頑張っている姿を見せるしかない。そう思っているように見えてしまう。
 ゴルフの人気女子プロがトーナメントで夜遅くまでパットの練習する。それをマスコミが美談として報じる。私はそんなのは努力とは思わない。修正、調整の必要はあるが、夜遅くまではスタンドプレーとみなす。

 大天才大谷翔平選手は基本努力している姿をファンに見せない。彼だけ特別扱いなのを他の天才選手たちが嫉妬しないのは、自身では到底マネできない努力を日々しているのを傍で見ているから。努力している姿を公に見せないのが真のプロ。選手時代の故長嶋茂雄しかり。
 
 我が母校から二人も首相を輩出したのは喜ばしい限り。だが、第75代故宇野宗佑は、首相としては有能と評価されていたが、“指3本”で失脚し、内閣から早期排出された。

 第104代高市首相はいかに。政治評論家田崎史郎氏は、82%もの高支持率は今後下がっていくけれども、見せ方が上手いので、短命政権で終わらない可能性もあるとしている。 
 ただ、早くも試練が訪れた。高市首相が国会で台湾有事発言をして中国がハレーションを起こした。中国側は、首脳会談の直後に面子を潰され、しかも核心的利益という逆鱗に触れたと激怒している。

 この国会発言に対して、経済誌プレジデントの元編集長・小倉健一氏は11/24付け集英社オンラインにて「米国には勝手な軍事介入の予言による不信感を与え、中国には関係崩壊の決定的な口実を与え、台湾には現状変更を迫られる迷惑と恐怖を与え、そして日本国民には経済的損失と戦争に巻き込まれるリスクを与えた。」「これらを引き起こした原因は、すべて高市政権の『能力不足』に帰結する。複雑な国際情勢を読み解く知性、法律の整合性を保つ論理性、相手国の立場を想像する共感力、そして経済的リスクを計算する経営能力。」と私の駄文とは違い格調高くかつ手厳しい。

 高市首相を敵対すべき相手として再認識した習近平国家主席は、関心のない人民と違って、ことさらこの問題を大きくかつ長引かせるとの見方も出てきた。

 経済への影響が大きく発言を撤回すべきとの声も高くなってきた。だが、従来からの曖昧戦略を踏み越え地雷を踏んでしまったとはいえ、間違っていないことは撤回はできないと言うならば、問題は長期化し、困るのはリスクを負う国民。

 官房長官は否定しているが、トランプ大統領から米中歩み寄っている中水を差すことは控えてと注意されたとの見方が大勢だ。首相として度量の見せ所だが、タカ派から支持された首相としては動くに動けずか。結果的には女の意地を通したとなってしまうのか。

 結局事態の収拾には首相交代しかないとなるのか。中国側も振り上げた拳を下せる口実に(中国側が友好関係にある公明党を与党に戻す障害を取り除く意味でも)。

 ともあれ、米・中・露との外交は、天才肌かつタフネゴシエーター(敵役ながら相手にあっぱれと思わせる)の茂木外相に任せた方がよいと思う。
 

 しがない一大学の先輩でしかない私は、陰ながら応援をすべきところではあるが、如何せん安倍政権の二の舞になると思う気持ちが強い(執拗に批判する小沢代議士も同じでは)。
 高市首相は「責任ある積極財政」と謳う。“責任ある”と、なぜ当たり前のことにそんな修飾語を付けるのか。

 昔言われた“明るい農村”と同じで、積極財政は無責任なものと暗に仄めかしているのか。それとも財政難の中では大した財政支出はできないと予防線を張っているのか。
 「夏のサザエは口ばかり」の諺は、旬を過ぎたサザエは身が痩せてしまって、大きさの変わらない殻の口が相対的に大きく見えることから、口先だけの人を揶揄する。「首相のサナエ(さん)も口ばかり」になるのか。 
 かの小沢一郎代議士が個人的に何かあったのかと思うほど、高市首相に執拗に噛みついている。高市首相が立憲民主党の物価対策としての「食料品の消費税率0%への引き下げ」を否定したことに対しても。11/6のよろず~ニュースによれば、小沢氏は首相就任前の今年5月時点で高市氏が「食料品の消費税率ゼロを確信」との立場を示していたことを矛盾点として引き合いに出し「就任前は散々講釈を垂れて人を批判していたのに、総理になった途端、それまでの持論を封印し、結局は何もできず何もやらずに終わる。そうならば、高市総理も石破前総理と全く同じということになる。一体、何のために総理になったのか?」と批判する。
 国会でも野党から今年5月『国の品格として食料品の消費税率は0%にするべき』と発言されているのにと追及されると、自民党税制調査会の賛同が得られなかったからと自民党総裁でもある首相が部下に反対されたからと平然と答える。

 さらに、公明党が議員定数削減がなぜ1割かと問うと高市首相は維新の提案だと答える。万事責任転嫁で済ませるのかと先が思いやられる(首相にならなければ、小沢代議士や私ごときにこんな言われ方されないのにとも思う)。

 小泉進次郎大臣も、「殷鑑不遠」、高市首相を他山の石とすべし。首相になれば発言が変わるだけで批判されるだけではなく、首相でない時と同じ発言でも首相としてなら大問題となる。「そんなことになるとは」では済まされない。

 大臣が失言しても後ろに首相がいる。少なくとも首相なる前に主要ポストを経験する必要があるのだ。

 進次郎氏も、天才でないと自覚するなら、人気があっても、担がれても、自身が一歩づつ階段を上り外相、財相等主要ポストを経ないと首相は務まらないものと悟ってもらいたい。支持者たちもそう理解すべきだと思う。

 私は安倍首相を現役時代からずっと批判してきたが、不慮の死を遂げたので、批判を封印するつもりだった。が、高市現首相が安倍首相の後継を公言したので、安倍政権の批判を再開せざるを得ない。
 2000年4月小渕首相急逝を受けて故村上正邦参院議員会長ら5人組の密談により、森喜朗首相が誕生した。そして21世紀に入り当時傍流に追いやられていた清和会が主流となり、小泉政権、安倍政権と人気の高い政権が続いたが、バブル崩壊後の失われた10年が30年になっただけだった。ようやく岸田政権が誕生して、その後も石破政権が引継ぎ清和会政権が終焉したと思ったら、また清和会政権に戻った。清和会のDNAなのかまた見せ方が上手い首相が誕生した。
 しかも、安倍政権を教訓としてと言うならともかく、ABEイズムを継承すると言うから吃驚仰天。失われた30年が40年に向かうのかと愕然とする。
 安倍首相-黒田日銀総裁体制での無駄に終わった超金融緩和の後遺症として、2024年度の名目GDPの615.9兆円に対する国債を主とする国の借入金は1,323.7兆円。国の借金が国のいわゆる売上の2倍以上にもなってしまった。
 日本より悪い国は、内戦に明け暮れ、数千人の命が奪われ、数百万人の避難民がいるアフリカのスーダンだけ。 
 GLOBAL NOTEによれば、2025.10.25付け政府総債務残高対GDP比の国際比較を見ると、スーダンは261.43%。日本は236.11%。2倍を超える国はこの2国だけ。この比率が低下傾向にあるからよいというレベルの話ではない。国際通貨ドルという打ち出の小槌を有する米国でさえ122.32%(11位)。
 こんな最悪な状況でも積極財政を主張する、その拠り所はMMT理論だろうが(現代貨幣理論;私に言わせればオワコンと同じ)、簡単に言えば(難しくは私には言えないが)自国通貨を発行し円建て国債を発行する信任が政府にある限り、どんなに円通貨や円建て国債を発行しても国(政府)は破綻しない。メリーゴーランドは廻り続けるというもの。
 日本が江戸時代のように鎖国しているなら、そうかも知れない(それでもメリーゴーランドはいつか止まるが)。が、海外の国や評価機関は日本は大丈夫とは見ていない(現に積極財政を謳う高市政権下、直近対ユーロで史上初の180円台まで円安が進み、対ドルでも157円台まで下落している)。
 私が昭和48年に銀行に入行し翌年新宿支店に転勤となり貸付事務係に配属となったとき、「手形割引(銀行が手形を買い取る)は自身のお金で買い取るつもりで手形をよく信用調査せよ」と並んで上司から教えられたことは、「企業の借入総額が年商と同じレベルならその会社は倒産予備軍」ということ。
 それを承知ながら支店長が貸出続けて相手企業が倒産し銀行が損害を被ったとき支店長は会社法の特別背任罪に問われる。銀行はそれを未然に防ぐ為に倒産予備軍の企業への融資の権限を支店長決済から本部決済に移行させる。

 本部の姿勢も倒産企業を出したくないとの姿勢があればそれに歯止めをかけるべく、自己資本比率規制等(バーゼル規制)がある。銀行等の経営の健全性を判断するための国際的に統一された基準(自己資本比率、流動性比率等)により金融庁から監督されている。
 各国の財務内容を直接規制する国際制度はない(G7財務大臣・中央銀行総裁会議は、経済・金融情勢や国際通貨制度、金融規制・監督等意見交換しても強制力は持たない)。が、国債評価の機関が、デフォルト(債務不履行)に関する情報を投資家に与えるとともに一国の財政破綻が世界同時不況(大恐慌)の引き金にならないよう監視する役割を果たしていると言える。とくに影響力の大きい日本は注視されているだろう。
 三菱UFJ銀行のシンクタンクBUFGの7/22付けの調査レポートは、こう警鐘を鳴らしている。
 ● 減税が実施されれば、日本国債格下げリスクは高ま

  る。
 ● 現在高格付けであることは、信用問題を引き起こさな

  い保証にならず。
  ・ イタリアの国債格付けは、欧州債務危機でAA格から

   一気にBBB格に。 
  ・ イタリアの政府債務残高(対GDP比)は2011年

   119%と日本(240%)と比べ低い。 
 ● 格付に敏感な海外投資家の日本国債への影響力は着実

  に高まっている(なお、海外投資家の所有比率は12%近く

  になっているという)。  
 ● 欧米では、運用対象をA格以上と規定している年金基

  金も多く、A格を失った場合、自動的に売却される可能

  性は高い。 
 野村総研の木内登英氏も7/25付けにて自社メディア・未来創発ラボにて「参院選後に積極財政傾向が強まる可能性と日本国債格下げのリスク」と題して、参院選後に積極財政路線が強まる場合、特に消費税減税が決まれば、日本国債の格下げの動きが10年ぶりに再開される可能性が出てくるのではないか。投機的格付けであるS&P社のBB格、Moody’s社のBa格までにはなお距離があるが、ともにあと3ノッチの格下げで投資適格最低ゾーンのBBB格に入っていく。」とこれまた注意喚起している。 
 国債の格付けが下がり、債権が売られ、債券価格が暴落するとともに金利が暴騰する。株式も暴落し、さらなる円安が待ち受ける。
 2つのシンクタンクが同じ時期に同じ危惧を発信するのは、10年前の2015年9月16日にS&P社がAA-からA+(最高格付けのAAAに続きAA+、AA、AA-の下)に引き下げたのが最後の格下げで、その後も状態が悪化していることからいつさらなる格下げがあっても不思議ではないとの危機感から。 
 今の物価高の主因は、貿易収支の赤字ではなく、この日本財政への信頼の低下に基づく長期化する円安が問題なのだ。
 「ディマンドプルインフレ」(供給<需要によるインフレ)なら、景気がよいので税収増も期待できる。それであれば、一時的な消費税減税も有効であろう。しかし、現状は円安による輸入物価上昇の「コストプッシュインフレ」であり、一時的な消費税減税では済まない。国債格付けのさらなる低下が懸念される折消費税減税は出来るものではない。
 たとえ、食料品に限って消費税を10%→0%にしたところで、今までスーパーで1回の支出が2,200円の低所得者のメリットは200円だけ。1回の支出が2万2千円の(生活に困っていない)富裕層は2,000円のメリットを享受する。批判されるバラマキ給付と変わらないのでは。 

 今できる事は、自業自得であろうとなかろうと、憲法第25条(「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」)で保障されている、日本人としてその最低限の生活がままならない人達を救済することだ(しかし、政府は「児童手当、子供1人あたり2万円上乗せ」方針をとる。この期に及んでまたぞろ富裕層にもばら撒くという。子供はおろか結婚もできない人々を見捨てると言うのか。山上被告人の犯行に対しては旧統一教会問題に矮小化していないか。一度落ちたら貧困から抜け出せない社会に対する絶望感と憤怒も関係しているのではないか)。
 それ以外の我ら低所得者層は、政府をあてにせず自ら生活防衛するしかない。付け焼刃なもので政府の失政に免罪符を与えず、このような事態になったのは我々主権者たる国民が政府の実情に関心を持たず放置した責任もあると思うならば。恩恵を受けた富裕層より何倍も多い低所得層の有権者が政治に関心を持たず選挙のときに人気やイメージだけで安倍政権を支持してきたのであれば(適菜収氏は『日本崩壊 百の兆候』の中の池田清彦氏との対談で、「安倍政権の特徴は国民に対する丁寧な説明を行わず、社会に一定数いる“騙されやすい人間”を嘘やデマを最大限利用することで動員し、権力基盤を強化していったという構造がある」という)。 
 

 誰かに八つ当たりしたいなら、その矛先はメディアに向けたらいい。「超金融緩和」は効果がないと分っていても止めようとしなかった黒田東彦日銀総裁に対して当時敢然と反対や批判していたのは上述の木内登英審議委員と日銀出身の日本総研河村小百合女史だけではなかったか。

 それに対して、メディアは一体何をしていたのか。有能なのは政治記者にいても経済記者にはいないのか。そうではなく、皆権力を監視する第四の権力を放棄していたのか。

 2017年任期満了で木内審議委員は退任し、後はすべてイエスマンになってしまった(その中の一人が今ゾンビのごとく蘇生し無責任な発言をしているのか? それを木内氏はどう思っているのだろうか)。
 日銀には独立性が担保されている。とはいえ、政府の意向に反して独走することがあっては困るので、政策金利の変更など重要議題を協議する為の日銀政策委員会を設け木内氏のごとく外部からも人材を入れている。

 ところが、安倍政権への追従を鮮明にする黒田総裁体制の場合においては政策委員会が総裁の独裁専行を隠す、いわば隠れ蓑になってしまっている。そして責任を引き継ぐべき者たちが貧乏くじを引こうとせず、お鉢が廻ってきた経済学者の植田和男現総裁が尻ぬぐいに苦慮している。
 特殊銀行である日銀の黒田前総裁は、会社法の適用を受けることはなく叙勲も許される。だが、叙勲は植田総裁が無事に総裁を卒業した時にこそ授与されるに値する(金利を上げざるを得ない中で、パウエルFRB議長に対するトランプ大統領ほどではないにしろ高市首相からの金利抑制圧力に耐えて)。
 そして、今頃になってメディアは木内氏を経済・金融の解説に重用している。
 
 高市首相は責任ある積極財政と言いながら、プライマリーバランス(PB;社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費を、税収等で賄えているかどうかを示す指標)における、これまでの「単年度での黒字化」の旗を降ろし、中期的に債務残高対GDP比の引き下げを安定的に実現するという。これは明らかに改悪ではないか。何もせずとも金利上昇下国債の借り換えに対し金利の上昇分だけ借金が増える。
 健全財政のドイツの首相がそう言うなら納得できるが。

 ドイツの政府総債務残高対GDP比はなんと63.47%でしかない。国債格付けも最高ランクのAAA。 

 ドイツには、マーストリヒト条約(欧州連合条約)の安定成長協定で定められた債務上限が課せられている上に、憲法には均衡財政を想定した「債務ブレーキ」条項があるという。
 日本は、「単年度での黒字化」を標榜しても赤字になるのに、それを緩めてしまえば、放漫財政にならないか。

 GDP増大への経済対策にAIや宇宙産業など17項目を挙げている。これは「手段」ではなく「課題」の列挙に過ぎない。これから、①どの項目を優先するか、優先順位決め、②その課題に対する具体的施策を決定し、③その予算を算定する。
 財政支出は確実だが、GNPの増大は成功するか不確実。将来日の目を見ても、日本の陽が沈んでるかもしれない。その前に国債が格下げされてしまって。
 なのに、積極財政派は高を括っているとしか思えない。

 2024年12月末の家計金融資産は2,230兆円。構成比は現預金50.9%。国の借入金1,323.7兆円(国の負債)に対して同程度の預貯金(国民の債権)があるから大丈夫。いざとなれば、国の負債と国民の債権を相殺すればよいと思っているのか。
 それを容易にさせるのが「緊急事態条項」。災害対策を目的としても、「戦争」と「国家の破綻」以上の緊急事態はあるのか。緊急事態を発令すれば、徴兵制がなくとも国民皆兵を指示できる。国の債務と国民の債権を相殺できるのでは。

 実際自民と維新との連立合意文書に「緊急事態条項」が載っているという。国民投票になれば富裕層も「緊急事態条項」には反対するだろう。
 超富裕層は、最悪の事態を想定して、海外に脱出するかすでに手を打っているだろう。その下の富裕層は海外資産への逃避や貨幣価値の下落を見越して、預金や株式等の金融資産を不動産等実物資産に替えていくだろう(円安下中国投資家の需要もあり都内の新築マンションの分譲価格が上がり、どこも1億円以上とか)。

 娘の進学の為社宅から文教区、否、文京区のマンションへ移ることを考えていた長男が「とても手が出ず都内だがもっと遠方、超長期のローンで」と言う話を「そうなのか」とただ聞き置くことしかできない、無い袖は振れない私のような爺は、物価高で日増しにひも爺になっていくだけ。
  
     同志社大学名誉教授浜矩子女史はアベノミクスを「アホノミクス」と揶揄したが、実態からすれば、的外れではなかった。私はサナエノミクスを「サザエノミクス」と別称しよう。
 よもや、万が一、高市政権が短命に終わらず、しかもサナエノミクスが成功したなら、土下座はしないが、積極財政派から「バ~カ」と嗤われても甘受する。

 その方が、国民にとって良いことではあろうから。

 (次回238号は12/20アップ)

2025.12 NO.236 ーロン  VS  ーロン
 ワールドシリーズ(WS)でのドジャース連覇(MVPは山本由伸投手)をもってMLBの今シーズンの全日程が終了した。

 本号ではレギュラー・シーズンについて振り返りたい。

 MLBでアーロンと言えば、一昔前までは故ハンク・アーロン(通算755本塁打で初めて故ベーブ・ルースの大記録を抜く)。今はヤンキースのアーロン・ジャッジ選手か。

 世界でイーロンと呼べば、テック企業の雄である天才イーロン・マスク氏を思い起こす。ウーロンと言えば、ウーロン茶。なんのこっ茶。
 そのジャッジ選手は、5月頃までは、打率4割は無理にしろ三冠王になるかと思われた。私も三冠王を阻止するのは、他の選手ではなく、ケガと思っていた。しかし、突如マリナーズのカル・ローリー(Cal Raleigh:NHKはラリーと呼ぶ)捕手が本塁打王争いに名乗り出てきた。これまで昨年の34本が最高の選手なのに(スイッチヒッターで左打席で38本塁打。左打席だけ使う魚雷バットの効用か)。
 MVPを左右するOPS、fWARを見ると、ジャッジ選手は夫々1.144、10.12に対してローリー選手は0.948、9.06。

 早い段階からジャッジ選手が優位にありMVPはジャッジ選手で確実かと見られていた。が、Regular Season(RS)の終盤、何かと負担の大きい捕手でありながら60本の本塁打を放ったローリー捕手(最終的には打点王との2冠)を推す声が大きくなった(捕手によるベーブルースと並ぶ60ホーマーは大谷選手のDHでの「50-50」)と匹敵するのでは)。
 ジャッジ選手としては地区優勝を逃したのは痛かった。どちらが栄冠に輝くか分らなくなっていた。なお、ポストシーズン(PS)での早期敗退は関係ない。RS終了直前に記者投票は終わっている。発表が11/13(日本時間11/14)と遅いだけ(WS終了後に最終候補を発表するから記者投票はこれからと勘違いする人が出る)。
 一方、ナ・リーグの方は、大谷選手が3年連続4回目の満票でのMVPを受賞すると見られている。2冠王でもシュワーバー選手はDHでfWARは低いし(4.93。大谷選手は9.41)、OPSも大谷選手1.014に対し0.928。打率(0.240)も低すぎる。
  

 大谷選手は、史上初で投手が50本塁打の大台( 55本)記録した。しかも、過去5人しかいない2年連続50号を達成した(少し遅れてジャッジ選手も。2年間で111本「今季53本、昨季58本」となりトップのベーブ・ルースの「1920-21年113本」に2本差までに迫った)。
 さらに、大谷選手は、昨年史上初の「50本塁打(54)ー50盗塁(59)」を達成したが、今季の2年連続「50本塁打(55)ー20盗塁(20)」も史上初。さらに今年はこれまた史上初の「55本塁打(55本)ー55奪三振(62個)」を記録している。 
 大谷選手は得点も両リーグで1位で、55本塁打・146得点となり、「50本塁打ー140得点」としては史上7人目(ジャッジ選手は得点が137得点で140得点に届かず)。

 なお、大谷選手は6人目のA-ロッド(アレックス・ロドリゲス)選手の54本塁打・143得点の記録を18年ぶりに上回った。
 大谷選手は投手としては、リハビリ登板ながら、14先発47イニングを投げ、防御率2.87、WHIP1.04。奪三振率11.87 は、イニング数が少ないものの、サイ・ヤング賞最有力候補のパイレーツのスキーンズ投手を凌駕している。
 投手成績も加味されるfWARでは他の選手は太刀打ちできない。打者と投手両方超一流なら、大谷選手が二刀流を続けている限りMVPになってしまう(唯一対抗出来るのはジャッジ選手だが、共に名門チームの顔であり、同じリーグに戻る可能性は低い)。
 7度MVPのバリー・ボンズ氏含めてMVP殿堂を設け、今季受賞が前提であと3度計7度に到達すれば、大谷選手をMVP争いから除外する方がよい。大谷選手が6度目の受賞すればMVP殿堂を本気で検討してみてはと思う。
 

 同僚の山本由伸投手は30先発で201奪三振、防御率2.49、WHIP0.99 でドジャーズのエースとなった。今季で引退したカーショー投手は息子に自身ではなく「目標とすべきは山本投手」と言っている。
 山本投手は、打線の援護率が最低らしく(相手投手もエース級が多く打線は湿りがち)で、12勝8敗に終わるも、打線の援護がありリリーフの失敗が無ければ最低17勝はしただろう。
 山本投手は大谷選手にもっとホームランをと言っていたが、30先発の中で8本大谷選手に本塁打を打ってもらえている。なお、カーショー投手に対しては、22先発の中で12本塁打大谷選手は打っている。9月には大谷選手は10本放っているが、その内6本がカーショー投手の先発登板日(カーショー投手は深謝の念を抱いていることだろう)。

 ちなみに、解説者では、最多は、武田一浩氏の時の8本、伊東勤氏の時も8本(昨季は11本)。そして、カーショー投手最後のホームでの先発登板の折も武田解説で、大谷選手が54号放ちカーショー投手の負けを消している。162試合目の最終戦はカーショー投手と伊東解説で、大谷選手が自己最多の55号を放つ。来季カーショー投手と武田解説・伊東解説とのコンビが見られないのは残念だ。

 

 ここからは、大谷選手を取り巻く環境変化について語りたいと思う。
・家庭環境 
 昨年(2024年)の開幕の前に真美子夫人との結婚が報じられ驚いた。たしかレジェンドA・ロッド氏が「独身でないと二刀流は無理だ」と言っていた。私もストイックな大谷選手なら同じくレジェンドのジーター選手のごとく引退後結婚するのではと思っていた。
 私は大谷選手の人生設計ノートに26歳で結婚すると書かれていたことを知らなかった。3年遅れの29歳で結婚したのは不思議ではなかった。大谷選手でなくても美人で奥ゆかしい真美子夫人を見染めてしまえば誰でも直ぐにでも結婚したいと思うだろう。
 水原一平氏巨額詐取事件もあった昨季は真美子夫人に精神的にも支えられ、前人未踏の「50(本塁打)-50(盗塁)」を達成した。
 前季は打者に専念したが、今季は二刀流への復帰を目指す。その中で4月に長女が誕生した。家事・育児も積極的に関わるハズの大谷選手は独身時代の10時間ぐっすりとはいかないだろう。年齢は31歳になり、二刀流は約2年間のブランクがある。
 その影響はどうなるかと観ていたら、5月下旬から投手としてのリハビリ登板が始まると、それまで3割台を維持していた打率は5/24(米時間、以降もすべて同様)に3割を割り、途中1度3割ちょうどに戻ったが、そのあとは3割に戻ることはなかった。最終的に0.282に終わった。

 リハビリ登板の影響か大谷選手は「バッティングは今季調子がいいと思ったことはなかった」と言っていたが、それでも詰まっても本塁打にすることができるパワーと技術により3試合に1本のペースでホームランを打っていた。OPSは途中1.0を切ることがあっても、最終的に1.014とナ・リーグでは大谷選手だけが1.0台に乗せた。

 8月からは出塁がなかったのは1度だけ、9月は出場試合すべて出塁(月間打率は両月3割台)。真美子夫人の献身、愛娘、愛犬の癒しが復調の力になったことだろう。
 投手としては、2度の手術で大谷投手のフォーシームのスピードは落ちていないか心配した。
 マーリンズのサイ・ヤング賞投手アルカンタラ投手は手術・リハリビ明けの今季手術前のパフォーマンスを見せ高額移籍する野望が潰えた。11勝12敗、防御率5.36のあかんたれの成績では。同じくブレーブスの剛腕ストライダー投手は2023年20勝(5敗)、281奪三振で最多勝、最多奪三振の二冠なるも手術・リハビリ後の今季7勝14敗、防御率4.45、奪三振131に終わる。6月頃フォーシームの球速が2キロ前後落ちていると言われていた。

 しかし、大谷選手においては、2度目の手術を経て、さらに進化を遂げていた。自己最速を更新する101.7マイル(約163.7キロ)を2度投げたのを始め、力むことなく、100マイルを超える速球を小気味よく投げ、しかもコントロールも向上している。 フォーシームの平均球速と平均回転数については、下記のとおり、手術前よりも、速度も球の質も向上している。     <8/18付け Number Web>
     2023年:155.8km/h 2259rpm 
     2025年:158.0km/h 2435rpm 
    

・野球環境1(ドジャース)
 企業組織から見れば、エンゼルスは中小オーナー企業、ドジャースは大企業と言える。
 エンゼルス時代は、4人の監督に使えているが、監督たちは大谷選手の意向を最優先していた。いわばオーナーの甥っ子に接するがごとく。
 中小オーナー企業ならばこそ、マドン監督の二刀流の決断が通るし、二刀流としての開花を辛抱強く待ってくれたとも言える。そして2018年の入団から3年目にして二刀流が花開した。翌2022年には規定投球回(162イニング)に規定打席数(502打席)をク リアした完全二刀流での15勝・34本塁打の金字塔を打ち立てた。100年経っても破られない記録を。
 翌2023年3月のWBCにおいて大谷選手は先発投手及び打者として躍動し、決勝戦の最終回においてはクローザーとして登場。9回2死のクライマックスの舞台で兄貴と慕うトラウト選手を三振に打ち取り、胴上げ投手になる。そしてMVPに輝いた。 
 休む暇なく2023年のレギュラーシーズンが始まり、7/27のタイガースとのダブルヘッターで第一試合で被安打1の完封勝利。続く第2試合で2ホーマーを放つ離れ業をなした。

 しかし、好事魔多し。体が悲鳴を上げ、二刀流は実質2年間不可能となった。
 2024年ドジャースに移って大谷選手は、エンゼルスと違う組織風土に順応している。
 監督とは親しい関係にはあるが、指示には従っている。監督は褒めるだけではなく、大 谷選手であろうと問題があれば指摘する。監督に従わなければ、先輩格のベッツ選手 やフリーマン選手が黙っていない。

  9/16のフィリーズ戦で、大谷は先発し5回までノーノ―で降りた。まだ68球 で6回も投げられたが(解説者も投げるべきと言ったが)。監督から交代と 言われて、素直に応じている。

 最終盤シュワーバー選手とホームラン王争いの最中俄か大谷ファンの元テレ朝社員玉川徹氏を初め日本人ファンはラス前の161試合目で大谷選手が休むと聞いて驚いた。監督から休養は?と聞かれると監督の思うようにと返事したという。

 2026年3月にまたWBCがあるが、エンゼルスは認めたが、同じ轍を踏みたくない(PSでの登板も勘案すれば)ドジャースは認めないのでは。二刀流としてはリハビリ明けであり、3度目の手術がないのならできるだけ長く投手生命を維持させる為にも。それに大谷選手も従うと思う(来季の目標にはWS最終戦でのスリーラン被弾降板のリベンジもあるか。2026年WSではチャンピオンリングを渇望するジャッジ選手を擁するヤンキースとの再戦が見たいところだ)。
   
 2025年大谷投手が二刀流に戻ったが、ドジャーズでは、エンゼルス時代の「なおエ」とは無縁と思った。だが、そうではなかった。
 9/5のロードでのオリオールズ戦、グラスノー選手に代わって、体調が悪い中急遽先発に回り、3回2/3を零点に抑えた。大谷選手の美談で終わるところであったが、クローザーとして失敗が続くスコット投手がさよならホームランを打たれしまった。
 まさかドジャースに「なおド」が起きるとは。孤軍奮闘する大谷選手は孤高の中でイライラする運命にあるのか。翌朝山本由伸投手が登板する前に、そう下書きしていた。
 そして、数時間後山本投手は快投をみせノーヒット・ノーランの達成が近づいた時、達成できれば嫌なムードを吹き飛ばしチームの心が一つになると期待した。
 しかし、9回2死あと一人になったのだが、なんとホームランを打たれてしまう。代わったトライネン投手は、まさかの登板とはいえ、あと1つのOUTがとれず、1点差、満塁にしてマウンドを降りた。何という巡り合わせかまたスコット投手がヒット打たれ、逆転サヨナラ負けに終わる(山本投手はスコット投手のクローザー失敗で4勝?も失う羽目に)。
 最悪の「なおド」になるとは。しかし、それが最後ではなく、最悪は続く。上述の9/16のフィリーズ戦で大谷選手は5回ノーノ―で4-0で勝利投手の権利を持ち降板したが6回にすぐ逆転される。8回先頭打者の大谷選手がホームランを放ち、同点への口火を切り同点に持ち込んだが、最終回トライネン投手がスリーランを打たれTHE END 。
 9/23の大谷投手レギュラーシーズン最終登板においても6回を無失点で勝ち投手の権利を持って降板するも9回1点差でスコット投手がクローザーとして登板。嫌な予感通りサヨナラ負け(PSにおいては佐々木朗希投手がクローザーとして獅子奮迅の活躍をしたが)。
 監督の継投策が批判に晒されたが、ファンをいらだたせる起用の4人の内トライネン投手を使い続けたのは過去の貢献に囚われた監督の意思と言えるだろう。

 今季を通じて不調の、コンフォート野手、スコット投手、イェイツ投手の3人を使い続けたのは監督の意思とは思えない。この3人はフリードマン編成本部長が昨年オフに獲得したもの。監督が不可解に使い続けたのは、編成本部長の意向に沿わなければならないのか。契約上出場機会を義務付けされてしまっている為か。

 どちらにしろ、采配への批判に対して本音を吐露できないとしても、大谷選手の批判は口にするので、「采配ミスは反省しないのか、解任すべき!」とファンを激怒させてしまう。

 名門チームの監督でさえ、上層部とメディア・ファンとの板挟みに煩悶する中間管理職に過ぎないのか。大企業ならではの側面を垣間見た気がする。
  
・野球環境2(パドレス) 
 メジャーリーグでも日本野球でも投手が打席に立った場合インコースに厳しい球を投げない暗黙の了解ある。とくに大谷選手には当ててケガでもされたら世界中のファンから批判され自身の野球人生が終わってしまうと緊張する。

 しかし、それでは二刀流で打者としても超一流の大谷選手を打ち取ることが出来ない。インコースに投げるつもりが、手元が狂いデッドボール(死球)になることがある。が、故意でなければ責められない。
 しかし、6/16~の4連戦において地区ライバルであるパドレスの投手から大谷選手は二度の死球を受けた。
  一度目は6/17の3回裏バスケス投手から放たれた150キロのストレートが右太股に。TV番組で元巨人捕手のデーブ大久保氏は「投手が大谷選手にストライクを投げた」と言っていた。引っかかったら地面近くにボールが行く、故意と断言していた。
 二度目は6/19の9回裏2アウト・ランナー3塁・バッター大谷選手で、ノースリー(No Strikes Three Ball )からスワレス投手が投げた160キロの直球が大谷選手の右肩下に当たった。当試合は警告試合で投げたスワレス投手は即退場となった。
 大谷選手は、痛みに耐えながら、乱闘を防ぐため自軍の選手が飛び出して来るのを制した。

 だからといって、大谷選手は黙ってはいなかった。試合後マルドナード捕手のインスタグラムのフォローを外した。それ以降シルト監督には第1打席に相手監督へ挨拶するルーチンを大谷選手は一度も見せていない。シルト監督は全30チーム監督の中で唯一大谷選手から挨拶されない監督になった。
 MLB本部も激怒したのではないか。NBAに圧され人気が翳って来たところ二刀流でベースボール人気を取り戻してくれる大谷選手の投手生命を奪おうとしたのかと。水面下ではパドレスにきついお仕置きをしたのではないか。

 PS敗退後シルト監督があと2年の契約を残して電撃辞任(解任か?)したのは、表向きの事情もあろうが、死球騒動も無関係ではないだろう。
 その警告試合後始めての(ホーム)ドジャーズ対パドレス戦(8/15~の三連戦)にてマルドナード捕手の姿はなく大谷選手と対峙することはなかった。戦力外となっていた。
 大谷選手に危険球をとスワレス投手に指示した39歳の捕手を拾うチームはない。結局パドレスのファームに出戻った。が、護ってくれるシルト監督が辞任した後マルドナード捕手は引退表明した。
 シルト監督、マルドナード捕手からの指示と見られるとはいえ危険球を投げ投手生命を奪ったかもしれないクローザーのスワレス投手に対して大谷選手はオールスターの折肩が痛いふりして自らスワレス投手に近づき笑顔でハグした。スワレス投手は、許してくれるのかと喜ぶとともに、右肩に剛速球を投げつけたことをつくづく後悔していることだろう。
 8/24アウェーでのパドレス戦の最終回ホームランを放った大谷選手がハイタッチで待ち受けるロバーツ監督をスルーし、ドジャース側ベンチに隣接する席からずっとヤジを飛ばしていたパドレスファンに笑顔でハイタッチしたことも併せ、自然に神対応できる大谷選手はMLBの顔にふさわしい。

・外部環境1(ESPN)
 2024年の東京での開幕戦においてスポーツ専門局ESPNの報道を契機に大谷選手の通訳水原一平氏が大谷選手の銀行口座から少なくとも450万ドル(約6億8000万円)が野球賭博の胴元へ送金されたとして、水原氏の詐取事件が表面化した。
 大谷選手は無関係であるハズないとの声も上がり我ら大谷ファンを心配させた。
 捜査当局は内偵により大谷選手をシロとの確証を得ていたが、賭博事件の黒幕を突き止めるべく水原氏を泳がせていた。ESPNの報道がなければ、水原氏の詐取は 約1,700万ドル(約26億4200万円)に止まらなかっただろう。その時点ではESPNに大谷選手への悪意はないと感じていた。
 だが、今年の7/20「米スポーツ界のアカデミー賞」とも称される年間表彰式「ESP Y賞」をESPNが開催。野球界では大谷翔平が「ベストMLB選手」として5年連続で選出された。

 そのおめでたい式典の中で欠席した大谷選手のことをMCでコメディアンのシェーン・ギリス氏は「今夜、ショウヘイ・オオタニはここに来られませんでした。」「まぁ、あの通訳が彼がここに来ると賭けてなかったことを願うよ。とにかくショウヘイは一世代に一度の才能だ。投手、打者、そして……ブックメーカーとしてもね(笑)。彼が達成したことを成し遂げた人間は他に誰もない」と揶揄したという。
 MCが何を喋るかESPN側が事前に把握して了解していたハズ。把握していなければ、ESPNは驚きあわてて大谷選手側に謝罪するものではないか。
 謝るどころか、8/17には、メッツとマリナーズの一戦とともに同日にペンシルベニア州で開幕したリトルリーグ・クラシックにオーストラリア代表で出場しているモニカ・アルキ選手のインタビューを二元生中継した。そこで彼女は、ある時大谷選手のホームランボールを彼女の弟が手にしたと言い「翌日、私たちは最前列のVIPボックスへ行き、オオタニにサインをお願いしました。でも、彼は横目でチラリと見るだけで、好意的な視線は向けてくれませんでした。それ以来、私は彼を好きになったことはないです。彼はあまり謙虚ではありませんでしたし、あれは私のスタイルではありません」 と言ったという。
 リトルリーグ・クラシックの対象年齢は通常9歳~12歳ではないのか。普通悲しかったと言うぐらいでは。日本語への翻訳が適切だとすると「謙虚ではない」は上の者が目下の者に言う言葉で違和感がある。予め発言内容についてサジェスチョンがあったと見るべきではないか。
 大谷選手に悪意があるのでは。穿ち過ぎだろうか。否、そう言えば、水原詐取事件もESPNは大谷選手に直接取材していなかったと思い起こした。

 ESPNは、全社的ではないにしろ、大谷選手に悪意があると思うに至った。米国の国技である野球界の顔がアジア人ではとの差別意識があるとまでは言うつもりはないが。
 
・外部環境2(代理人)
 大谷選手が広告塔になってPRしていたとも言われる、不動産投資家2人から訴えられたハワイ不動産問題について記者から問われ、大谷選手は「フィールドに集中したい」と答えた。それは、記者にではなく、大谷選手を広告塔に仕立てる代理人のネズ・バレロ氏に言うべきではないか。
 水原一平氏の問題も代理人が対処できていなかった。エンゼルス時代も暗号資産(仮想通貨)交換所大手のFTXの経営破綻で被害を受けた投資家らが集団訴訟を起こされ、大谷選手や大坂なおみ選手も対象となっていた。
 メディアにとって、大谷選手が犯罪容疑に該当しなくても、スキャンダルとして話題になれば、それでよい。

 大谷選手はMLBの顔であり、その彼が度々スキャンダルに晒されるのは避けなければならない立場。もう一人の顔ジャッジ選手には野球における打席での不正疑惑(目だけを自軍ベンチに向けるサイン盗み疑惑)が取り沙汰されたことがあるも野球外でのスキャンダルはないのでは。
 大谷選手を利用しひと儲けしたい者は山ほどいる。私に言わせれば、代理人バレロ氏も同じ。水原氏のような悪意はないにしろ。韓国の歴代大統領も、家族や親戚に足を引っ張られている(そんなことをしない大谷選手のご両親や兄弟たちは例外。ならばこそ大谷選手という稀有な存在が生まれる)。
 大谷選手が他人を信頼してしまうのは、悪いこととは言えないが、水原氏の一件で社会常識が欠けていると思うファンを心配させてはいけない。子供達の夢を穢してはいけない。
 一般論として、大きな不動産は権利関係が込み入り、怖い人達が介在しやすい。そんなものに大谷選手は関与するべきではない。「君子危うきに近寄らず」を肝に銘じてほしい。
 まだ水原詐取事件を疑う、大谷選手に嫉妬する米国のアンチ達なら、グラウンド外でまたスキャンダルがあれば、大谷選手が「アフルエンザ」に罹ったと筋違いに囃し立てるかもしれない。
 それは「アフルエント(affluent)」と「インフルエンザ(influenza)」の合成語で、いわゆる「金持ち病」。10年1,000億円の年俸がほとんど後払いにしても年間150億円のCM収入を得るセレブになった大谷選手はそれに飽き足らずもっと富を得たいのかと揶揄されるかもしれない。 
 よりフィールドに専念し、現役の間はサイドビジネスに手を出さず(本人にそんな気はないだろうが)、副収入は、日本大手企業や世界的著名企業のCM収入(私はグラウンドで躍動する大谷選手が観たいだけで多くのCMに登場する大谷選手を観たいと思わないが)に限る。そうバレル氏に大谷選手は申し渡すべきだと思う。
 エンゼルス時代、拝金主義と縁のない大谷選手は実績に見合わない年俸に過ぎないのに自身のことはさておき(裏で何をしているかも知らず)通訳の水原氏の報酬を上げてと申し入れしていた。信頼しお世話なっていると思うバレロ氏にもっと報酬をと思っているだけに違いないが、その善意がアダになる前に。    

 大谷選手のMLBでの人生を四季に例えるなら、「春」(2018年~2021年)は二刀流が開花するまで。「夏」(2022~ )は

二刀流が確立され、2923年WBCで優勝しMVPを獲得した。2024年はドジャースをワールドチャンピオンに導いた。

 しかし、今季エンゼルス時代よりは二刀流に耐えられる体力が落ちているのかと思った上PSでの不調を見て「今は秋の訪れを告げるツクツクボウシが鳴く頃か」と訝しんだ。

 だが、10/17のナ・リーグ優勝決定の最終戦10奪三振・3ホーマーの偉業を観た後では、晩夏ではなくまだ盛夏だと思い直した。

   「ニューズデー紙」は「GOAT」(Greatest Of All Time=史上最高)と大谷選手を掛け合わせた造語「GOATANI」をタイトルをつけて報じた。それで、思いついた。 故Chuck Berryのスタンダード・ナンバー『Johnny B. Goode 』( ジョニー B. グッド)の中の歌詞「Go Johnny go go」はゴータニゴーゴーと聞こえる時がある。軽快なこの曲をGOATANIこと大谷選手の登場曲にしてはどうか。「GOATANI go go !!」

 ともあれ、早晩大谷選手にも秋が到来する。体力の低下、動体視力の衰えに加え冷たい風も吹いてくる。大谷ルールへの異議、WSにおける審判団の二刀流大谷選手への時間的配慮に対する不満等監督・選手の大谷選手への見方が羨望から“オオタニ疲れ”を通り越して敵対視・嫉妬に変わる予兆も出てきた(WS連覇したのであればなおさらに)。

 日本の四季のように秋が短くなるのか、それとも、いつもながら常識を覆し、長い実りの秋になるのか。

 人生が冬入りしている爺の私は大谷選手の秋の行く末を見届けたいと思っているのだが。果たして。

(次回237号は12/1アップ予定)

2025.11 臨時号NO.235 ろう VS ろう
 歌舞伎を題材にした映画『国宝』が空前のヒットとなった。来年3月開催の2026年度日本アカデミー賞においては、誰に聞いても一番手に『国宝』を挙げるのではないか。最優秀主演男優賞は吉沢亮氏で最優秀助演男優賞は横浜流星氏(前年度『正体』にて最優秀主演男優賞受賞)で決まりと思う人も多いのではないか。
 歌舞伎役者が子供の頃からの厳しい修行を経て会得した所作を俳優が2年足らずで習得するのは並大抵の努力では成しえないが、それに立ち向かう執念みたいなものを映画の中で感じ取った。
 白塗りの女形姿の役に二人が選ばれたのは、どちらもイケメンで似合っているからであろう。が、より彫が深い顔立ちの横浜氏より吉沢氏の方が女形に向いているとは思った。
 私は銀行の支店長をしているとき白塗りになったことがある。銀行の周年記念運動会で地区の支店長と一緒にタカラジェンヌの仮装をしたが、白塗りにすれば誰でもそれなりになると思っていたが、そうでないことを理解した。土台が良くなくては様にならない。
 血筋が何よりもモノを言う歌舞伎界で、横浜氏扮する俊介は門閥の御曹司でありながら父親から後継者とみなされないと苦悩する。吉沢氏が演じる喜久雄は悪魔に魂を売ってまで芸に精進するも血筋がなく後ろ盾が無くなれば役が廻ってこないことに懊悩する。兄弟のごとく育ってきた二人が互いに嫉妬し葛藤していく。
 歌舞伎界では、親子が師匠と弟子となり厳しい修行が行われる。それでも名跡にふさわしい芸に達しなければ親からも贔屓筋からも世襲が認められる訳ではない。
 歌舞伎界と比較される政界でこそ親から厳しい指導が必要であるが、選挙地元ではなく東京でボンボンと育ち、親から厳しくしつけられているとも見えない。子に厳しく躾する政治家もいようが、当たり前のことはメディアから流れてこないから、悪い見本しか我々庶民は知る由もない。
 人類は、「種」の存続において、1000歳の天才アインシュタインを、彼の一族に託すことを、望まない。「天才は天才を生まない」ようになっているとしか。「鳶が鷹を生む」(凡才から秀才が。なお、我ら凡才から天才は生まれない。生まれたらそれは突然変異)という諺があっても「鷹が鳶を生む」が諺にないのはそれが当たり前だから。(故水谷八重子の娘

好重・2代目八重子さんの好例はあるも)世紀の美人女優の、故原節子、若尾文子さん、吉永小百合さんに娘さんがいないことに残念がる声が上がらないのは、天才から天才は生まれないことを我々は理解しているからではないか。
 天才大谷翔平選手に娘さんが誕生した。夫妻は男の子も望んでいることだろう。しかし、生まれてくる男の子は大変だ。天才故長嶋茂雄の長男一茂氏は、絶えず父親と比較され、また子供の頃から父に群がる大人のいやらしさを見せつけられ(子供心に人間不信が芽生えるか)、TVでのキャラと違い私生活では苦悩し続けた人生とお見受するが。
 天才が天才を生まないとしたら、政治家の世襲により才能の減化(減価率20%と想定)をみると、初代→2代(1×0.8)→3代(0.8×0.8=0.64)→4代(0.64×0.8=0.512)。初代の政治家が有能だとしても4代目の曾孫の代で能力は半減してしまう。
 現実の世界はこんな単純な話ではないが、政治家の4代目をみていると案外そんなものかと思ってしまう。

 世襲は人類の「種」存続の摂理に反するものと言え、日本の進むべき道を導く首相が世襲という狭い枠の中から選ばれることは避けなければならない(鰻やすっぽんの名店の一子相伝とは訳が違う)。
 ドイツ移民三世のトランプ大統領を反面教師とするなら、日本の政治家に求められる資質は一に知性、二に教養(歴史観)、三に公共性(倫理観、私欲の抑制)、四に人望。とくにトップの首相となれば、知性と教養は欠かせない。
 今回の自民党総裁選にて、決戦投票に高市氏と小泉氏とが進出した。大方の予想どおり「(心配で)総理・総裁になっては困る人」同士の競いであり、世襲VS非世襲の争いでもある。そして前評判は進次郎優位であった。その時『自民党の大罪』(祥伝社新書)の中で著者の適菜収氏が小泉進次郎氏のことを「政治資金も下半身も管理できない男が『将来の総理候補』って悪い冗談である」と書いていたことを思い出した。冗談で済まなくなった(総理になったとき適菜氏はどんなコメントをするのかと頭によぎった)。
 民間のオーナー系でない大企業ではこんなことは起きない。私には“永田町村”の住民が大半賢い人達と思うだけに理解できない。過去私が賢者と思しき総理候補として挙げていた、上川陽子氏が指示に従い?進次郎氏支持を表明し、齋藤健氏が進次郎氏を神輿に担いだことに、失望した。
 進次郎氏が優位と予想したオールドメディアや政治評論家も、ステマ問題もスルーし歓迎している風であり(私は違和感を感じていた)、だからこそ読み間違えたのではないか。
 しかし、世襲議員の進次郎氏は敗北した。勝者はだれか。世襲議員のドン・麻生自民党最高顧問(現副総裁)。
 麻生氏の今総裁選の目的は、福岡権力闘争の仇敵古賀誠元宏池会会長をバックとする林芳正政権誕生を阻止することだと思う(林政権が誕生すれば、公認を与えられず地盤を長男に世襲することをつぶされると危惧したか)。

 進次郎氏を麻生氏が推していると見えたのは、進次郎氏を評価しているのではなく、進次郎氏が辞退するなり支持が減るなりして林氏が2位となり決戦投票に進出することを阻止する為ではないか(実際古賀氏が進次郎氏の後見人菅義偉元首相に辞退を働きかけたが断られたという)。
 1回目の投票で麻生氏の真の目的は達成された。そして、

林候補以外の候補に、推薦人、1回目投票をばらまき恩を売ったことが決勝投票に生きてくる。また、決戦投票前に高市支持を指示するのに党員・党友票の一番多かった候補へと言ったのは上手かった。
 党員・党友票の内訳は保守・高市氏25万931票、穏健保守の進次郎氏17万9130票、同林氏13万888票、穏健保守の合計は31万18票で保守高市氏の票を上回っている。が、穏健保守の間で票の奪いしていたら、高市氏が一番となってしまう。

 本ブログ前号で私は自身の利害で総裁選を考える麻生氏を「老害」扱いしたが、手練手管を弄し、キングメーカーに返り咲いた、その「老獪」さは、見事と言う他はない(キングメーカーとしての我が世の春をもう少し謳歌すべく長男への世襲は先延ばしか)。

 ただ、自民党、ひいては国民にとって麻生氏が有益かどうかは怪しい。26年間“雪駄の雪”と揶揄されても夫婦関係(連立)を維持してきた公明党は政治とカネの問題では関係ないのに自民党に連座しクリーンな政党とのイメージを損ない国民の支持を減らした。もう離婚するか思案していたところ、(公明党を毛嫌いする)麻生副総裁ー(彼女は困ると自民党に伝えていた)高市総裁体制が誕生したことにより、吹っ切れたか。

 親からの指示もあり、国交大臣ポストも捨てる、割の合わない選挙協力もしないと、熟年離婚を妻から申し出た。

 本当の熟年離婚夫婦は「夫が未練タラタラ、妻が吹っ切れサバサバ」の関係が少なくない。

 自民党としては、冷静になれば、公明党の選挙協力なしでは落選する議員が多く出ると理解する。復縁は無理にしても選挙協力だけは何とかと頭を下げるところではあるが。
 高市総理実現のため(全国区でなく選挙協力が期待しえない。いずれ使い捨て?の)維新と組むという。そして維新が求める「議員定員削減」は衆院比例代表で行うのか。

 また神経を逆なでされた(比例代表主体の)公明党は、離縁しても選挙協力はしないだけで邪魔はするまいと思っていたが、来る衆院選では自民党候補の対抗馬に選挙協力するかもしれない。自民党候補ボギー、対抗馬パーが、自民党候補ボギー、対抗馬バーディとさらに差が開く恐れがある。

 一方、立憲民主党から担がれそうになった国民民主党の玉木雄一郎党首は、記者等から問われる毎に冒頭「私には総理になる覚悟はある」と言わずもがなのことを言っていた。

 I am prepared to become Prime Minister,but・・・なのだ。

 維新に恨み節だが、自身が一番大事なナルシストに見える玉木氏は、目立つことはウエルカムも、自民とは支持母体・連合との関係があり、野党との数合わせの野合政権では祭り上げられていつ梯子を外されるかもと、前々から現状では総理になれそうもないと自身が置かれた立場をよく理解していたと思う。未熟さを直視せず誤魔化すばかりで、ホイホイと神輿に乗っかると見える進次郎氏とは出来が違う。

 進次郎氏を担ぐ有力議員達は、高市氏を選択しないことはいいとしても、進次郎氏のことを、国のことを、真摯に考えているのか。冷や飯を喰いながらよく自省してもらいたい。

 あるいは、進次郎氏と接点のない私が誤解しているなら、担ぐ政治家は進次郎氏が人気だけではなくなぜ国のトップとしてふさわしいか国民にもっと説明すべきではなかろうか。

 

 維新の協力(当面閣外協力)を得て、高市総理が誕生し、高市政権が発足しても、麻生氏の傀儡政権になる恐れがある。

 ミスタ―財務相(第17代~第20代)の麻生副総裁とその義弟で幹事長鈴木俊一元財務相(第21代、第22代)の下で、果たして望む積極財政ができるのか。防衛力強化も思うようにできるのか。随分前だが私が社団に居た頃に知る高市氏は今とは違っていたと思う。師匠と仰ぐ安倍首相のマネをしているとしか私には思えない。タカ派等の支持を得るために。

 アベノミクスのようなことを目指しても8年に亘る安倍首相-黒田日銀総裁体制にて国家財政を大幅悪化させた後では。

 思うようにいかず、あげく「総裁選において私は穏健保守と言っていた」と逃げるなら、保守派は離れていくだろう。

 さらに、政治とカネの問題も手がつけられないなら、保守派だけではなく、人心が離れていく(維新が一番厳しい「禁止」を掲げていた「企業・団体献金の禁止」を公明党を含め野党が結集すれば実現するのに、自民と組むとなると、組む絶対条件を「議員定数の削減」に変えた、節操なき維新も)。

 初の女性総理誕生を謳い文句による早期の衆院解散・総選挙もできなくなった。一小選挙区あたり2万票前後あると言われる公明党の選挙協力で当選した自民党議員は真っ青だろう。高市政権も短命に終わるかも。

 

 国民の民意の縮図と言える党員・党友の声を反映して石破総理総裁が誕生し案の定1年という短命に終わった。それに懲りず党員・党友の声を聞いて高市総裁を誕生させた。

 党員・党友の希望を優先するなら、党員・党友による直接選挙をすればいいだけのことだ。

 内閣総理大臣は(通常自民党総裁が総理になるが)国会議員の中から国会議員が選ぶ「間接選挙」(国民から信託された国会議員が総理を選ぶ。その総理を評価し支持するかは総選挙で意思表示する。主権者たる国民の正式な民意として)。

 民主主義(多数決)は民度が一定を前提としている。だが、現実には民度の高い層<民度の低い層。矛盾がある上にしかも米国や韓国に較べ私も含め政治的民度が低い(家族で政治談義に花を咲かせる家庭がどれだけいるか)日本は、直接選挙はすべきではない。 

 派閥を悪として廃止してしまうと、「自身の政治家としての将来ではなく、国の将来を考えて選ぶべし」と指示する真面な領袖もいなくなる。国会議員が国民の人気評に迎合するなら所詮国民の縮図に過ぎない。間接選挙の意味がなくなる。

 間接選挙が正常に機能しているなら、今回の決選投票が高市氏vs小泉氏になることはないと思う。
 党員・党友の総裁選の参画のあり方は見直した方がよい。 

 

 また、世襲議員の問題においては、親の躾姿勢、地元後援会の応援姿勢(既得権が確保出来れば世襲議員の資質は問わない)を鑑みれば、議員の世襲が悪とは決めつけられないとしても(世襲議員に限らないが)政治家に足らない議員候補を排除する手立てが必要では。
 国家権力側にある国家官僚、裁判官・検事も国家公務員試験や司法試験の国家資格を有している。政治家も、国家公務員であるが、選挙民の審判の受けるからか国家資格を免除された状態。
 参議院議員はともかく、代議士と呼ばれる衆議院議員には国家資格の代議士試験(国家公務員試験、司法試験及びそれに準ずる国家資格者はペーパーテスト免除)を設けては。一つの方策ではないか。
 (次回236号は11/10アップ予定)

2025.11 NO.234 モテ VS  モテ 
 石破首相の退陣表明を受けて自民党臨時総裁選が3日後の10/4に行われる。
 石破首相は参院選の惨敗を受けて即退陣表明をするかと思われたが、あにはからんや続投したいと言い出した。同じ立場にあった先輩首相から国民から批判の矢を向けられてるところに後ろから銃口を向けた(退陣を迫った)と恨みを買ってる身なのに。そして自民党が混乱した。
 政治家は、武士の末裔だと私はそう思っている。徳川家康が全国統一を果たし天下太平の世に変わって、武士は、戦闘士ではなくなり、いわば政治家になった。

 しかし、武士道精神は忘れず自らを厳しく律していた。問題が起これは潔く責任をとり切腹した。見苦しいマネは末代までの家の恥として決してしなかった。
 石破首相は、世間を騒がせる県知事や市長に身の処し方の範を示すところであったが、県知事や市長でもしないようなマネをした。総裁選の前倒し要求には、記名式、議員本人による届け出、それも時間を限定しメディアのカメラの前を通らせるとして、要求が過半数に至らないように画策した。

 それでも総裁選の前倒し阻止が難しいとなるや大義のない衆院解散を口にするに及びこれ以上見苦しい切腹逃れをするなら打ち首にすべきとの声が高まるに至ってようやく石破首相は自刃(退陣)した。
  メディアも変だ。先に劣化?したメディアが世界に誇る日本民族の劣化を助長させるつもりなのか。

 大企業もトップに問題が無くても社員が大不祥事を起こせば、引責辞任する。何も武士の話まで持ち出さなくても、大きな問題が起きれば、トップが責任を取るのは世界共通で議論の余地はない。
 直近の参院選の投票者数6061万人の投票結果が自民党及び総理・総裁に対する正式な「民意」である。
 自民党の問題がとくに安倍政権時代にあったとはいえ、その改革を非主流の石破氏ならと期待したが期待はずれ。さらに衆院選、都議選と併せて3連敗。しかも、衆院、参院とも少数与党に転落したのは、「裏金議員にも実質2,000万円支給」とかトップの失敗であるなら辞任にしかありえない。
 メディアは、「無用な混乱により政治の空白を作るな!」と批判すべきところなのに、石破首相は辞めなくてよいような世情を醸成させるかのごとき動きを見せる。
 たかだか1,000人くらいの「石破首相は辞めないといけないのか」とのニュアンスのアンケートでは、「辞めなくてよい」との答えは増えてきてもおかしくない。
 あるネット民が「左派系メディアは石破政権の続投を後押しする為に世論調査と称した世論誘導を繰り広げている感じがします。左派系メディアとしては必ずしも石破政権を支持している訳ではないと思いますが、総裁選が前倒しされた場合、候補者の中に左派系メディアとして絶対に総裁になってほしくない人物が含まれるからなのではないかと思います。引き続き左派系メディアの報道を注視したいです。」と投稿していた。一つの見識だと思う。

 自民党も、この期に及んでも、危機意識がない。臨時総裁選は簡易型でよいのにフルスペック型でやるという。1年前の任期満了によるフルスペック型での総裁選は、人気は高いが、国会議員に嫌われている石破茂議員と高市早苗議員の決戦投票となり石破候補の方がまだましと選ばれた。結果はこのざま。国民がなぜ石破首相が嫌われているかを理解しただけ。
 自民党がすべきことは、人気の高い議員で看板を替えることではなく、自民党を日本を抜本的に改革する期待がもてる総裁を選ぶこと。国民もそれを期待している。
 なのに、フルスペック型にしたのは、自民離れの中党員・党友に阿る意味があるとともに10/4の総裁選まで自民党に国民の眼が注がれることのねらいであろう。これで解党的出直しと言えるのか。
 日本は国のトップを決めるのに直接国民に選ばせる「直接選挙」ではなく、国民の代表である国会議員の中から国会議員が総理を選ぶ「間接選挙」となっている。
 しかし、実際には、これまでほとんど自民党総裁=内閣総理大臣。今回においても自民党が少数与党に転落しても野党がバラバラで自民党の新総裁が総理になると見られている。
 本来自民党の総裁を選ぶのにどんな方式だろうと自民党の勝手ではある。が、国のトップ・総理も実質選ぶことになるなら、間接選挙の趣旨に合致している必要があると思う。
 総裁選に党員・党友を参加させるのはどうなのか。私に言わせれば「党友」は自民党のファンクラブ会員に過ぎないのに「総裁選への参画」という特典が与えられている。AKB選抜総選挙の投票権じゃあるまいに。
 党員の中には、一部60歳以上の真剣に自民党のあり方を考えている党員もいようが、毎年末まで自民国会議員1人に1,000人以上の党員を確保するノルマが科せられているのであれば、党友と変わらない党員も多いのではないか。 
 党員・党友による投票は、日本人は優秀であるが私を含めて政治的民度が低い中で形成される世論(メディアによる詳細不明の調査)の縮図と見るべきでは。
  今まで、2012年9月の総裁選にて石破VS安倍の総裁選のように1回目国民から人気の高い石破氏が1位になったものを2回目の決選投票で2位の安倍氏が3位の石原伸晃氏らの票を得て安倍氏が総裁になったように、2回目に逆転させてきた。

 しかし、前回のように国民から人気が高くても国会議員に嫌われている者同士が1位と2位を占めることが起こりうる。2回目は消極的選択になってしまう。
 私は前回の総裁選の結果を受けて本ブログ2024年11月号NO.216(オバタリアンVSリバタリアン)にて現行の総裁選の問題点を指摘し、総裁選のあり方について改善案を提示した。 

 自民党総裁選を本選に進む候補を決める予備選(直接選挙)と総裁を選ぶ本選(間接選挙)の二つに分ける。
 予備選は党員・党友も参加させることにする。本選では予備選(前回立候補者9名)の1位~5位までの候補者の中から「国会議員だけ」で投票させる。過半数に達する候補者がいない時は上位2名の決戦投票とする。
 なお、今回のように5名前後の立候補が普通だとすれば、4人以下の立候補の場合、予備選は実施せず、国会議員による本戦のみとすればよいのではないか。

 ともあれ、今回総裁選に5名の候補が立った。出馬会見順に挙げると、小林鷹之氏 、茂木敏充氏、林芳正氏、高市早苗氏、小泉進次郎氏となる。
 私は、責任感、決断力は皆同じとの前提に立ち、総理・総裁に必要な主要4要件を挙げ下記の通り5人の候補者を評点の高い順に並べてみた。
  評点(10点満点)=①知性4点+②教養(歴史観)3点+

         ③主要ポスト歴任2点+④人望1点
  ・林氏10点①知性○+②教養○+③主要ポスト歴任○+

       ④人望○
  ・茂木氏9点①知性○+②教養○+③主要ポスト歴任○+

       ④人望× 
  ・小林氏8点①知性○+②教養○+③主要ポスト歴任×+

       ④人望○
  ・高市氏7点①知性○+②教養○+③主要ポスト歴任×+

       ④人望×
  ・小泉氏1点①知性×+②教養×+③主要ポスト歴任×+

       ④人望○
 小泉氏の評点が酷く、支持者は激怒するかも知れないが、各項目all or nothingなので、そうなる。実際はこれほど酷くないと申し添えて起きたい。 
 私自身は、今度の総裁選は秀才エリート林氏と天才肌茂木氏との決戦投票になることを期待している。
 とくに今回は茂木氏が総裁になるのが良いと思う。厳しい国家財政の中での目先の消費税減税等では物価対策になっても、日本経済は浮上しない(与野党とも、新しいケーキを開発もせず物価高の中赤字覚悟で値下げして顧客に媚びる、そんな売上が不振なケーキ店の店主みたい。長続きしないし、そんなことで顧客も買わない)。
 難しい経済の浮揚は茂木氏に一番可能性を感じる。トランプ大統領への対応も、大統領からタフネゴシエーターと評価されている茂木氏が最適。
 「平時の林、非常時の茂木」と言える。茂木氏が日本機(経済)をtake offさせ、シートベルト着用ランプが消え安定飛行に入れば、林氏が操縦席に座るのが良いと思っている(その林氏は討論会「ひろゆきと語る夜」で「自分以外に、この人が総理大臣になってほしいと思う人を指さしてもらいたい」とひろゆき氏から無茶振りがあり、林氏だけがそれに応え茂木氏に指さしている)。
 茂木氏はyou tube で知名度を上げ、議員間でも人望を高める努力をしている。が、モテ期までには至らず総理になれない場合においても、茂木氏を外務大臣に登用し、経済もカバーすべく副総理として処遇すべきだ。誰が新総理になってもそうすべきだと考える。
 今回のフルスペックの総裁選で危惧するのは、決選投票で高市氏と小泉氏の二人の争いになること。私からすれば、また消極的選択となる。違いは、前回の「嫌われ者同士」から「(心配で)総理・総裁になっては困る者同士」になること。
 ただ、政治評論家の意見などによれば、今回高市氏が1回目投票にてに多くの党員・党友票を得て仮に一位になっても候補5人では過半数はとれない。決戦投票では2位と3位の連合軍に勝てる見込みは低いと見られているようだ。
 同じ保守の小林サイドは高市氏に投票しないハズ。岸田サイド、茂木サイドも入れないだろう。頼みの旧安倍サイドは半減し、それも高市氏に反感を持つ議員もいる。
 注目の石破サイドは前回決戦投票後ノーサイドと党の要職を高市氏に打診するも蹴られ挙党体制を打ち出せず恨みを抱えているという。麻生派は今回勝ち馬に乗る。推薦人を林氏を除く4候補にばら撒いている。前回は麻生氏が石破氏を蛇蝎の如く嫌っており高市氏に投票しただけと見られている。
 連立を組む公明党も高市氏を歓迎していない。
 どうも小泉総理・総裁が誕生しそうな雲行きではある。国民が本当にそれを望むなら、天才宰相故田中角栄でさえ、王道である、幹事長、大蔵(現財務)大臣、通産(現経産)大臣等を歴任した。小泉氏も同じ道を歩ませるべきだと思う。
 44歳の小泉氏本人が「まだ未熟で主要ポストを経てから総裁選に望みたい」(父親純一郎氏は50歳になってからと言っていた)と言うなら、見直すが、仲間の国会議員に担がれ神輿に乗ればなんとかなるでは、心もとない(担ぐ議員も神輿は軽い方が良いのか、本当にそれでいいのか)。
 自民党の重鎮麻生太郎氏が、新総裁には「選挙に勝てる人。野党と組める人」と解党危機のこの期に及んでまだそんなことを言っている。自民党支持者が、ひいては国民が求めるのは、自民党の問題を解決させるだけではなく、経済を浮揚させる総理・総裁なのに。

 日本政治の問題の一つに世襲議員による政治支配があると思うが、世襲議員の首領と呼ぶべき85歳の麻生氏が、好き嫌いや自身の利害で総裁を選ぼうとする。解党的出直しの初手は麻生氏に身を引いてもらうことではないか。
 

 自民党が“腐っても鯛”から“腐敗した鯛”への瀬戸際の時に小泉氏にそんな重い責務を担わせる必要があるのか。

 小泉氏は側近や官僚が作るペーパーを読む分には問題がないが、首相には発言を求められるケースが多い。予算委員会等で「進次郎構文」が出れば立ち往生する。
 トランプ大統領、プーチン大統領、習近平国家主席等外国の要人と通訳だけの二人だけの会談に耐えられるのか。非常に心配だ。
 政策面は側近や閣僚に任せ、小泉氏自身は安倍首相の二番煎じになるのではないか。
 総理・総裁に必要な主要4要件から見ると、安倍首相と小泉氏とはよく似ている。
 故安倍晋三は神戸製鋼で職業人生を終えるハズだった。政界入りは本人の希望ではなく、病に伏す父親に地元後援会が懇願したのだろう。
 父方、母方双方の祖父が東大法学部卒、父親晋太郎も東大法学部卒。安倍首相は学歴コンプレックスはあったが、アンチの識者が言うほど知性は低くなかったのでは。要領はいいし、弁も立つ。しかも、人たらし。人望もある。
 「私は立法府の長」「ポツダム宣言を読んでいない」との発言は、知性の問題より政治家として持つべき教養を積んでこなかったことによるものと言える。
 初めからタカ派ではなかったのでは。強気の発言をすれば、タカ派や防衛族や防衛省などから支持されることを悟った。拉致問題で官房副長官として北朝鮮へ小泉純一郎首相に随行し強気の発言すれば国民から喝采を受けると知った。
 拉致問題で首相になったようなものだが、「拉致問題の解決」が政治家としてのライフワークには見えず、北朝鮮を怒らせただけ。門前払いの目に遭い、首相になってから拉致問題を進展させる事はなかった。そんな安倍首相より、よほどライフワークとしていた、拉致被害者蓮池薫氏の兄で大企業を辞め拉致問題にのめり込んだ透氏に暴露本を出され安倍首相の欺瞞を批判された(安倍首相だけ批判すればよかったのに、関係者全員を批判した。拉致被害者の帰国側と非帰国側とに一枚岩だった家族会が分断し、孤立化した透氏の断末魔の叫びであり絶望感からくる錯乱状態かと読者は共感するより引いてしまったのでは)。
 安倍首相の評価は、タカ派や防衛族・防衛省の人々には高い。私のような国内問題、とくに経済を重視する人々からは評価は低いのでは。二分されていると思う。
 安倍首相も主要ポストを経ていない。難しい経済問題は、友人案件など関心案件以外官邸内官僚に任せたのでは。

 アベノミクスは三本の矢と言われたが、日銀の実質(禁断の)財政ファイナンスによる超金融緩和だけであった(効果がないと分っても超金融緩和を止めようとせず日銀を機能不全状態にした黒田日銀(特殊銀行)総裁は民間銀行なら会社法「特別背任」の対象になるハズ)。
 本来第1の矢であるべき第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」は、大企業が円安による為替差益や正規雇用→非正規雇用により内部留保を厚くしたに止まる。失われた10年は20年となり、安倍政権はそれを30年にしたと言える。今隣国のインバウンド客から物価が安いと言われてしまっている(そんな安倍首相を恩恵を受けた富裕層ならともかく大多数の低所得者層が選挙で支持した。政治家を観る目が芸能人に対するのと同じ様では直接選挙は無理というもの)。
 主要ポストの経験がない小泉氏も、総理になれば安倍首相を真似て、難しい「経済」よりも取っ付きやすい「国防」に走り、タカ派、国防族、自衛隊の支持を得ようとすることが懸念される(トランプ大統領に迫られたのか「23年度〜27年度にかける防衛費を総額43 兆円に」を安倍首相はトランプ大統領に約束したという。バイデン大統領に確認された岸田首相は「約束通り」と答え、うい奴とお褒めに預かったか。

 大義名分として「敵基地攻撃能力」、不評で「反撃能力」と言い換え、国民に承知させると、その後「何をもって敵国が武力攻撃に着手したと判断するか」などについて議論がなされていないのでは(左派メディアも裏舞台を知るから批判しようとしないのか)。
 小泉新総理なら、国民から支持率が下がれば、電撃北朝鮮訪問を画策するのでは。小泉親子なら特別扱いで進次郎氏は歓迎されるだろう。いいように利用されるだけに終わることが懸念される。
 立候補会見で、小泉氏は経済政策では「2030年度までに国内投資135兆円、平均賃金100万円増を目指す」とし、物価高への対応として「ガソリン暫定税率の速やかな廃止」「所得税を見直し、物価や賃金の上昇に対応し基礎控除等を調整する仕組みを導入」する、という。
 物価高には、決まり切ったこととはいえ、具体的施策が述べられているが、「国内投資135兆円、平均賃金100万円増」は具体的施策がなく、絵にかいた餅にすぎない。他の候補も似たり寄ったりだが、一番実現性が低く期待できない。
  
 それでも、討論会で、安全運転に徹し大きな失言もなく、このまま新総理になるかと思われた。が、ここにきて「ステマ指示疑惑」「シャインマスカットの海外ライセンス展開方針に県知事ら反発」「フィリピン出張=総裁選からの逃亡」の問題が浮上し、前回のように党員・党友から小泉離れが起きかねない状況になったきた。

 自身の責任と言いながら責任をとり総裁選を辞退することをしない者が責任は痛感するがと言いながら首相を辞めようとしなかった者の後任では、国民にとって喜劇ではなく悲劇(追及しょうとしない大手メディアは第四の権力を放棄しているのか)。

 今後小泉票がどれだけ減るか分からないが、ここにきて林票が急増しているならば、決戦投票は、「高市VS小泉」だけではなく「高市VS林」、「小泉VS林」の可能性も出てきた。
 私はやはり“非常時の茂木”が就任すべきだと思う。が、世襲議員なのに世襲議員が優位な小選挙区制から中選挙区制に戻したいとする林芳正新総理・総裁が誕生するなら、それはそれで歓迎したいと思うのだが。
(次回235号は10/20アップ予定)

2025.10  NO.233  Ilan  VS Iran
 世界から非難を受ける中、ガザ市制圧に向け攻撃を激化させるイスラエルには、英雄の一人に故イラン・ラモーンがいる。イスラエル空軍のパイロットで、イスラエル人初の宇宙飛行士。2003年2月スペースシャトル・コロンビアの大気圏再突入時の事故で亡くなる。

 イスラエルの英雄の名が宿敵国イランと同じとは驚く。
 しかし、カタカナでは同じだが、英語ではIlan(ヘブライ語: אילן  )で、国の方のイランはIran(ペルシャ語:ایران )であり、別もの。母国語では私には理解不能。
 中東問題は齧り出したばかりで、皮相的だと思うが少し触れてみる。

 現在イスラエルとイラン(・イスラム共和国)は鋭く対立している。パーレビ王政の時代は親米国同士良好な関係にあった。だが、1979年にイランでイスラム革命が起き、王政が倒されイスラム教シーア派の宗教指導者(初代ホメイニ師、2代目ハメネイ師)の主導するイスラム原理主義を理念とした政治が展開されてから対立することになる。
 イスラエルは、後述佐藤優氏によれば、国是は「全世界から同情されながら滅亡するよりも、たとえ全世界を敵に回しても生き残る」ことだという。そんなイスラエルに対して、イランはイスラエルをイスラム教の聖地でもあるエルサレムを占領した敵とみなし、アフマディネジャード元大統領に至っては、2005年に「イスラエルを地図上から抹消する」とまで公言している。
 しかし、双方とも直接衝突は避けてきた。とくに体制維持を最優先するイランにとっては、米国が後ろに控えるイスラエルとの全面戦争は回避したいと思っている。経済制裁による経済の低迷に加え、イラン国民も8年間のイラク・イラン戦争を経て厭戦ムードであり、他国と戦争する余裕はない。 
 高齢のハメネイ師の後継者と目されたライシ大統領が事故死したのを受けて、昨年7/5の大統領選にて改革派のペゼシュキアン氏が当選したが、西側は最高権力者ハメネイ師による不満が高まる国民へのガス抜きと見ていたが、それだけではなくやはり米国との関係修復をハメネイ師も期待していたと見るべきか。 
 また、イスラエルは所有の有無を明らかにしないが核兵器を保有していると世界からみられている。ロシアのプーチン大統領は核使用で脅すだけだが(バイデン米大統領が恐れる発言をするから)、私からすれば唯我独尊のイスラエルの方が危ない。世界を敵に回しても使用するかもしれない。イランも核武装できるまではイスラエルと事を起こすことは難しい。
 昨年4/1イスラエル軍がダマスカスにあるイラン領事館庁舎をミサイル攻撃し、革命防衛隊幹部を含む7名を殺害したことへの報復として同4/14イラン国内からイスラエルに空爆した。イラク、トルコ、ヨルダンの各国当局者によると、イランは攻撃について事前に警告を発し、攻撃の詳細についても一部伝えていたという。イスラエルもイラン領内に報復空爆を行ったが、イラン側は被害について多くを語らない。昨年は双方本格的な戦闘は避けていた。
 それでも一部にはイスラエルとイランの対立関係は新段階に入ったと見る向きもあったが、そのとおり今年に入って、イスラエルは、イランの核施設などを攻撃した。
 本ブログ2025年9月号 NO.231(「イラン VS  ウラン」)で書いたように、イスラエルは「タコと戦う場合、足だけでなく、頭部を攻撃するべきだ」との『オクトパスドクトリン』に基づき、ハマスやヒズボラ、いわゆる「タコの足」を切り取り、タコの頭であるイランを叩く好機(イランの核武装間近を大義名分に)としてイランを本格的に攻撃した。さらに、ノーベル平和賞を狙い紛争の停戦を目論むトランプ大統領があろうことかイスラエルにはないバンカーバスターを所有する米軍にイランの核施設の地下深くを攻撃させた。
 後述するサウジアラビア(以下「サウジ」)との関係をみても、内心では復讐の炎を燃え滾らせていても、今はイランは臥薪嘗胆するしかない。

 イランはサウジアラビアとも対立関係にある。少なくとも4点において相反する。サウジはイスラム教スンニ派、イランは同シーア派。サウジはアラブ人、イランはペルシャ人。サウジは親米、イランは反米。最後に、サウジは王政、イランは王政を倒した共和国政。
 サウジは“敵の敵は味方”とばかりにイスラエルに接近する。アラブ人もびっくり。米国にも頼る(米国は軍事兵器の上得意先として歓迎。バイデン大統領もトランプ大統領もムハンマド皇太子のカショギ氏殺害疑惑も目を瞑る。ここでも米国は人権問題においてダブルスタンダード)。
 イランは、イスラエル、サウジ、米国を相手に戦争はできない。サウジはイランの核武装のみならずそれを機に周辺国も核武装に走ることを恐れる。そして、2023年3月中国の仲介によりサウジとイランが国交正常化を発表した。サウジは、中東地域における盟主として君臨するために、インドのような全方位外交に舵を切ったように見られた。

 アラブ諸国とイスラエルの戦争は1973年の第4次中東戦争以来戦争は起きていない。国連がパレスチナの土地にユダヤとアラブの二つの国家を認める決議を採択し、翌年の1948年にイスラエルが一方的に独立を宣言したことにより第一次中東戦争が勃発。勝ったイスラエルが領土を拡大しそこに住むアラブ人(以下「パレスチナ人」)が難民となる。
 1956年ナセル大統領のスエズ運河国有化に反発したイギリス・フランス・イスラエルがエジプトを攻撃した第2次中東戦争では、イスラエルは戦争に勝ったが勝負に負けた。米ソ等の反対に遭い撤退する(国有化が認められたナセル大統領は名声を得る)。
 劣勢におかれ状況打開を窺うイスラエルは1967年ナセル大統領によるアカバ湾の封鎖の機を捉え、エジプトを急襲し6日間で圧倒的勝利した。ナセル大統領の中東での発言力が急速に弱まっていく。

 第3次中東戦争のイスラエルの圧倒的勝利後、1973年10月エジプト等の奇襲によるイスラエル軍不敗の神話が崩れ、副次的にイスラエルに味方する欧米諸国や日本にオイルショックをもたらした第4次中東戦争をもって、イスラエルとアラブ諸国との戦争は終わりを告げた。その後イスラエルとハマスとの戦闘に舞台が移る。
 第3次中東戦争でヨルダン川西岸地区とエジプト領のガザ地区がイスラエルに占領された以降、この領地に住むパレスチナ人はイスラエルの占領下に入る。1993年のオスロ合意でパレスチナ解放機構(PLO)とイスラエルが和平交渉に合意。ヨルダン川西岸とガザ地区はパレスチナ自治区となるも、21世紀に入ると、イスラエルは、両地区からのテロ対策の名目でヨルダン川西岸地区のパレスチナ人居住区との間に壁を設けた。ガザ地区も周囲を囲む壁が設けられた。ガザ地区は「屋根のない刑務所」と呼ばれるようになる。
 PLO主流派の穏健派ファタハと対立しイスラエルの打倒、イスラム国の樹立をめざす強硬派武装組織ハマスが台頭し2006年の選挙で勝利した。しかし、米国、EU、国連、ロシアが形成する「中東和平カルテット」と呼ばれたグループはハマスを承認しなかった。
 これに乗じて、2007年選挙でファタハがハマスの追い出し、追い落としを図る。だが、この結果ヨルダン川西岸地区ではハマスの追い出しに成功するが、ガザ地区では逆にハマスがファタハを追い出す形で実効支配を始める。                                                       
 2008年末からイスラエルとハマスの戦闘が本格化した。その裏にはイランがいるという。イランは、シリアを味方につけシリア経由でレバノンのシーア派テロ組織ヒスボラとの提携を強化するとともに、これまで良好な関係ではなかったパレスチナのスンニ派はテロ組織ハマスとも提携を強化した。
 佐藤優氏は著書『イスラエルとユダヤ人』(角川新書)の中で「イスラエル国家の消滅を目論むHISM(ヒズボラ、イラン、シリア、ハマス) という国際テロリズムの枢軸が形成されている。」という。
 
 そして、今まさにハマスとイスラエルが戦闘状態にある。国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官により、5/20にネタニヤフ首相とガラント国防相、ハマス指導者のヤヒヤ・シンワル氏、ハマス軍事部門のムハンマド・ディアブ氏、ハマス最高指導者のイスマイル・ハニヤ氏の計5人に対して逮捕状の請求がなされた(既にハマス側のシンワル氏とハニヤ氏はイスラエルに殺害されている。デイアブ氏も殺害されたとされるが遺体が確認されていないとか)。
 その4日後国際司法裁判所(ICJ)も、イスラエルに対してガザ地区南部のラファでイスラエル軍が行っている攻撃について、ガザ地区の住民に取り返しのつかない損害を与える恐れがあるとして、イスラエルに対して直ちに停止するよう求める暫定的な措置を命じた。
 ただ、法的拘束力があっても強制力がなく、ネタニヤフ首相が応じる気配はない。それどころか、ハマスをテロ組織と呼び(国と国との戦争における)国際法を無視した残忍な攻撃が今もイスラエルによりガザ地区に行われている。 
 とはいえ、戦争を起こした国のトップはいずれ捨てられる。戦争が終わりアドレナリンが収まった国民から。ナチスドイツに勝った英国チャーチル首相も、選挙のアヤもあるが、戦後首相の座を追われた。汚職事件の起訴が待ち受けるイスラエルのネタニヤフ首相なら、なおさらに。
  

 ホロコーストのナチスをトラウマとするドイツだけではなく、欧州諸国もユダヤ人を差別してきた負い目からイスラエルへの非難の声は弱い。
 米政府は、民主党、共和党であれ、イスラエルを擁護するが、米国の若いZ世代はイスラエルを非難し始めた。
 日本はどうすべきか。政府はこれまでイスラエル、アラブ諸国との共存を支持してきた。
 戦前ナチスドイツと同盟していた日本は、それでもユダヤ人捕虜にナチスと同調した扱いはしなかった。原爆を落したのは米国人だが、作ったのはユダヤ人と非難する日本人は少ない。日本人は今も肌の色や宗教で外国人を差別しない。
 日本が、ネタニヤフ・イスラエル政権を批判したところで、“反ユダヤ主義”呼ばわりされる筋合いはない。イスラエルを高く評価する佐藤優氏なら、批判はイスラエルをより意固地させるだけと反対するかもしれないが。
 我々庶民も遠いイスラエルに対しては、三種の神器はユダヤをルーツとするのか、大相撲の「はっけよいのこった」はヘブライ語に由来するのかなど、ぼんやりとした親近感を持っている。
 ユダヤ人はエジプトの奴隷からモーゼに導かれ「出エジプト」を果たす紀元前15世紀前後から「バビロン捕囚」など苦難続きであった。紀元後もローマ帝国においてキリスト教が380年に国教として定められ、392年には他の宗教が禁止されて以来「ユダヤ教徒はキリストを殺した責任を追うべき」との前からのレッテル貼りもありユダヤ教徒への迫害が本格化していく。その頃の日本は、中国の歴史書には3世紀には卑弥呼、5世紀には倭の五王が登場するが、4世紀の日本に関する記述はなく、空白の4世紀と呼ばれている。流浪のユダヤ教徒は東の果て日本に流れついたかもとロマンを感じさせる。
  それよりもずっと前からユダヤ人は日本に渡来してきていると『日本にやって来たユダヤ人の古代史』(文芸社)の著者田中英道氏は説明する。神武天皇の即位した年を皇紀元年とされている。それが紀元前660年とされているが、紀元前722年に滅亡したイスラエル王国から離散した十士族のうち一部が日本に到達したユダヤ人が日本建国に関与した可能性について触れている。田中氏はユダヤ人の一部が日本列島に到達し、もともとあった日本文化に(日本は天皇を初めユダヤ人を排斥しなかったこともあり、ヤハウェの神に絶望したユダヤ人がユダヤ教を捨て)同化したとの立場をとっている(日本人とユダヤ人とのDNA的関係は?)。その同化ユダヤ人がもたらした文化や技術により中国や朝鮮半島に見られない独自の文化が日本に育ったとする。
 そんなこと以上に、私も尊敬する故杉原千畝が発行したビザは2,139枚もあり、そのビザにより日本へ行き命の助かった ユダヤ人は約6,000人に上るという。 ユダヤ人は杉原に感謝し、イスラエルは親日との印象を抱く。
 そんなイスラエルが占領するガザ地区は、平時は「屋根のない刑務所」だが、戦時においては、住民は、殺されるか餓死するか、それしかない。それではまさに「ガス室のない強制収容所」ではないか。否、今やそれを通り越して「墓場」になるのではないか。
 天国の杉原は、「そんなことをさせる為に、職を、ひいては命を賭して離国の列車の中までに命のビザを発行し続けた訳ではない」と嘆いているのではないか。こんなことをしていれば、時代が変われば、またユダヤ人はアウシュヴィッツの時のような目に遭う日が来るのではないか。

  昨年5月に日本で公開された映画『関心領域』での、アウシュヴィッツ収容所のルドルフ・ヘス所長の夫人は、自宅の向こう隣の塀内に関心を持たず忌まわしい土地を天国と言い、栄転する夫を単身赴任させた。
 イスラエル人も同じではないか。音楽フェスティバルはガザ地区より数キロ離れているとしても(ハマスの攻撃は決して容認されないが)。
 米国の若者が批判しているのに相違してイスラエルの若者がネタニヤフ政権を支持しているのならなおさらに。
 
 最近西谷修氏の『戦争と西洋~西側の「正義」とは何か』(筑摩書房)、早尾貴紀氏の『イスラエルについて知っておきたい30のこと』(平凡社)を読んで、次のことを理解するに至った。
 イスラエルが「テロとの戦争」と称しハマスを掃討する為にガザ地区の街でも民家でも病院・学校でも躊躇なく破壊しているのは、米軍がアフガニスタンやイラクで行った同じことをしているだけ。そもそも先住民のインデアンを虐殺して建国した米国がイスラエルを批判することは自己否定になる。そして、イスラエルは、ハマスが隠れているから民間施設を攻撃しているのではなく、ハマスを口実にしてパレスチナ人を殲滅させることが目的なのだ。
 ユダヤ人による反シオニズムのネットワークの一つ『トーラー・ジュディイズム』も、「アメリカや世界中にはイスラエルとシオニズムに反対するユダヤ人が何十万人もいます」「すべてのユダヤ人がシオニストという訳ではありません」「イスラエルはユダヤ国家ではなく、ナチス国家です」と訴えている。
(次回234号は10/1アップ予定)

2025.9臨時号  NO.232   いしゃ VS いしゃ
 本ブログ2020年11月臨時号NO.142(「ますいVSまずい(2)」)で白内障の手術を受けると書いたが、実際に手術を受けているので、遅まきながら今回それに触れてみる。
 術後妻から「どう?」と聞かれた私は、「綺麗なものは、よりきれいに、汚いものは、より」と言いかけて妻に口をひねられた。妻のことを言っている訳でもないのに。
 私のことに限って言えば、世の中はこんなに澄み切っていたのかと驚いた。20歳の頃分厚い眼鏡からコンタクトレンズに替え、50年以上前バスの中で当時流行っていたミニスカートから太ももが眼前に大きく飛び込んできた時の衝撃を思い出し、少し若返ったように感じた。

 一方、私は年齢より若く見えると自負していたのだが、術後裸眼で右1.2、左1.0の視力があり、ホラー映画のように鏡に映り出された自身の顔を見て驚いた。こんなにも目の下がたるんでいたとは。手術する前は、元々嫌いで鏡で自身の顔を見ないし、見ても眼鏡のフレームでたるみは隠れるし、眼鏡を外すと何も見えないのと同然であった。

 今私はコンタクトレンズをしていた頃買った偏光サングラスを探し出し、外出時かけている。
 白内障手術は簡単。超音波で濁った水晶体を乳化して吸引し、水晶体の代わりになる人工の「眼内レンズ」を挿入するだけ。点眼麻酔後まず2ミリ幅の切開創を作り(術後眼内圧で自然に閉じる)、水晶体を包む透明な水晶体嚢の前面を丸く切り取り、上記超音波の作業。水晶体嚢の袋にレンズをはめ込むのでコンタクトレンズのように外れることはない。10分前後で終わる。入院するほどのこともない。
 視力も矯正され眼鏡が不要になるが、レーシックとの違いは、レーシックは、特殊なレーザで角膜のカーブを変え、視力を回復させる。ひと昔レーシックをすると白内障の手術はできないと言われていたが、今は可能とのことである。
 私が受けた眼科医院は片目の手術の後2週間後にもう一方の目を手術する。眼科医院によっては一度に両目を手術するところもある。仕事が忙しい人には向いているが、手術後の片方の見え方を確かめてから、もう片方の手術で調整することができなくなるデメリットがある。安全性を考えるなら分けて手術する方がとは思うが、一週間後でよいと思う(なお、術後一週間洗髪ができないので、手術は夏場は避けた方が無難)。二週間も空けるのは人気病院で需要に追い付かない医師側のキャパの問題ではと勝手に解釈している。                        
 ずいぶん前から妻に「魚の死んだ目」と言われていた私は「こんなことならもっと早く手術をしていれば」と思ったが、遅くなった経緯は次の通りである。
 20歳~50歳までコンタクトするのを主として(妻に眼鏡なしでは堪えられないと言われたこともあり伊達メガネをかけていた)途中何度か眼鏡に替えたりもしていた。50歳過ぎにぶどう膜(眼の中の虹彩、毛様体、脈絡膜からなる、非常に血管の多い組織)炎になり、地元下町の眼科医に加齢から免疫力が落ちてくるのでコンタクトを止める様説得された。その際その男性の眼科医から白内障に加え緑内障の疑いも指摘され、定期的に通院していた。
 当時その眼科医だけではなく地元下町の医師たちは患者を愚民扱いしていると感じ(今は少し再開発もあり他の医師も参入して変化していると思うが)、千代田区にある有名眼科医院に転院した。
 担当は女医となり5年以上診てもらっていた。白内障は老化。緑内障は病気(100万本ある視神経繊維が徐々に死滅していく。全滅すれば失明。進行を遅らせるしかないのが現状で、眼圧を上げないよう点眼液を毎日点眼している)。緑内障の方を重視し、3か月に一度眼圧を、6か月に一度視野検査を受けていた。この女医を信頼していたが出産の為担当医が変わった。もう少し若く見た目もいい女医であったが、そんなことは期待していない。どうしても前任者と比較してしまう。相性もよくない。それで2年ぐらい経って江戸川区にあるこれまた有名眼科医院に転院した。その医院でも女医が担当してくれることになった。その女医から前の病院の診断データーを貰ってくるよう指示された。仕方なく前の病院に電話し依頼すると転院の理由を聞かれた。データーを貰いに出向いた時にも受付からややしつこく理由を問われた。私は「卒職」を理由に挙げ一切余計なことは言わなかった。その女医に落ち度がある訳でもなく、迷惑をかけたくなかったので。
 今度の女医には1年余り見てもらったが、ある診断時に白内障の件で違和感のある発言があり怪訝に思っていた。そんな中次回診断日が近づいた頃都合が悪くなり変更の依頼を電話ですると「担当医師は出産で医師が変わる。当日まで誰が担当するか分からない」との窓口の返事を聞くに及び、私は切れた。「男の先生に替えてくれ!」と短気を起こした。
 女医として社会に貢献するだけでも立派なのに少子化の中子を産み育てることを否定するほど私は不見識ではない。ただ、担当医にとって私は患者のone of themでしかないが、患者の方にとって信頼を寄せる担当医はonly oneなのだ。

 出産は個人的なことで言う必要はないが、休職するなら告知し患者に「何かありますか」と聞いて欲しいのだ。

 最初の女医なら私は(緑内障の毎日点眼は終生続くので)「復帰したらもう一度診てもらえますか?」と答える。それなら転院することはなかったのかもしれない。求めているのはただそれだけのことなのだ。
 そして男性医師に代わった。この医師も緑内障の方を重視し、白内障手術を無理強いせず、手術時期は私の自由意志に任せられた。私も「欧米では老化なのであまり手術しない」と週刊誌の記事で読んでいたこともあり、焦らなかった。最初白内障を指摘されてから10数年経っていた。

 しかし、直近になると、晴天の時まぶしくて信号機が青の場合もう点滅しているかまだ余裕があるのかよく分からない。駅の階段で各階段の先が白とか違う色のラインとか引かれていないと踏み外しそうになる。めまいがしたかのように転んだこともある。
 宇都宮にある『大谷資料館』という大谷石の採掘場跡を見学したとき暗い洞窟のような中階段を下りていく際先導する妻の肩に手を置き指示されないと足を運べなかった。手術するときが来たと思った。

 そしてその担当男性医師に手術してもらった。手術して私は前からの思いを確信に変えた。

 私の緑内障は、ド近眼によるもので、怖い真の緑内障でどんどん進行して視野が狭まっているのではなく、白内障でより見づらくなり視野検査に上手く適応できなくなっていただけでないかと。神経細胞が死滅(再生しない)している箇所は確かにあるのだが、そこが拡がっている訳ではなかった。

 そして、また別の眼科医院に移り、そこの院長に私の確信を伝えたところ理解を示してくれた。

 我が人生の中で、女医に診てもらうことは少なくなかった。上述の眼科に加え、同じく比較的女医の割合が多い歯科、皮膚科において、皮膚科では女医にあたることはなかったが、歯科では小学生以降60年間で女医の割合は6割以上になるか。そして女医の方がよく記憶に残っている。
 今でも時々思い起こすほど印象深かったのは、内科の女性開業医のこと。10年以上前50代半ばですい臓がんで急逝した。顔の整った、感じのいい先生だった。私は前立腺がんの疑いで先生に相談に乗ってもらっていたのだが、先生自身は気づかないうちに既に末期がんだったのだろう。サイレントキラーすい臓がんは怖いと思うとともに誤解を解く機会を失い、それが心残りとなった。
 銀行を辞めて上京し社団設立に奮闘していた平成6年の春ストレスで平成4年に手術した右副鼻腔が再び悪化した。虫垂炎のように普通冷やして気持ちが良ければ冷やすのが正解なのだ。が、副鼻腔の炎症の場合冷やすと気持ちがいいものの、頬が大きく腫れあがってしまった。町医者に紹介されS大附属病院に向かった。神戸大付属病院歯科口腔外科で手術した(2020年11月臨時号NO.142「ますいVSまずい(2)」参照)ことを告げると担当医師は「チッ! 歯科口腔外科か!」と言った。今は手術できる環境にないと説明しているのに直ぐ手術だと言い張る傲慢な態度に腹を立て、二度と行かなかった(その後約30年経つが大事には至っていない)。
 耳鼻科は歯科口腔外科と縄張り争いしているのか、それとも医師は歯科医をDentistと呼ばわりする?その延長線にあるのか。そうではなく、単にこの医師の人間性の問題なのか。
 長い間頭の片隅にあった疑問を亡くなる前の女性開業医に聞いてみようとした。だが、私の聞き方が悪かった。「耳鼻科は歯科口腔外科を見下げてますよね?」と言ってしまった。すると先生は「そんなぁ」と言ったきり、それで話が終わってしまった。私は誤解されたかと思ったが、いつでも訂正できる機会があると思い、すぐには釈明しなかった。
 それからしばらくして病院に行った時先生は顔色が悪く様子も少し変だった。口の軽い私でも「お疲れなんですか?」とは声をかけられなかった。2か月後行くと先生が不在だった。その次の2か月後にも別の医師だったので、血液を採取される際看護婦さんに尋ねた。亡くなったと聞いて、大きなショックを受けたし、誤解を解く機会を失ったことに後悔を覚えた(私は、怒ると悪い頭でも回転が速くなり口もよく回るが、戸惑うとすぐに言葉が出ない。優秀な営業マンならそんな場合反射的に気の利いた切り返しができるのだろうが)。

 妻から「偉くない者ほど偉そうに言う」と咎められる私は、身勝手だが、敬意を払う相手とはいえ医師に偉そうに言われるのを嫌う。女医はむかつく言い方はしないし、しても(妻で慣れているのか)女医ならそんなに腹が立たないのだ。
 卒職して以来定期的に病院に行くのが仕事のような身の上だが、医師の手を離れ、僧侶の世話になるにはもう少し間があるだろう。またよき女医に巡り会える機会があるのかもしれない。

(次回233号は9/10アップ予定)