2026.3 NO.240 ミンジー・リー VS
ミンウー・リー
2026年度の米女子ゴルフツアー(LPGAツアー)が米時間1/29に開幕している。本号では、遅ればせながら、昨年度を振り返りたい。
まず、選手個人のトピックスを挙げれば、前季未勝利に終わった女王ネリー・コルダ選手(パットが不調との印象。とくにショートパットが。本人は否定。たしかに数字を見れば、平均パット数29.540 で42位。7勝もした前の年度は30.0で74位)に代わって22歳のジーノ・ティティクル選手が世界ランク一位に返り咲いた。
もう一人の主役と言える、前季から長尺パターを使用し復活した姉のミンジー・リー選手がメジャー3勝目を挙げ、弟で米男子ツアー(PGA)でプレーするミンウー・リー選手と同じ年に姉弟優勝を果たした。同じく双子の岩井明愛・千怜姉妹がLPGAツアーで共に初優勝した。
25年度のLPGAツアーを一言で総括するならば、日本の女子選手が旋風を巻き起こしたと言えるたろう。
国別の優勝数を見れば、日本が7勝でトップ。韓国6勝(内1勝はダブルス戦)、スェーデンが4勝、米国が3勝、豪国3勝(内1勝は国別対抗戦)、泰国3勝(すべてジーノ選手)と続く。
年齢別の優勝試合数(全33試合の内、国別対抗戦と中止になったウォルマートNWアーカンソー選手権を除く計31試合。年齢は優勝時点)を見ると、「30歳~」3試合、「29歳~25歳」14試合、「24歳~20歳」14試合、「~19歳」0試合。初めて、「24歳~20歳」が中心世代の「29歳~25歳」と並んだ。
最終戦終了11/24時点の年齢で日韓を比較すると、日本選手は、6名で、26歳の畑岡奈紗選手以外の竹田麗央選手、西郷真央選手、岩井明愛選手、岩井千怜選手、山下美夢有選手(2勝)は皆「24歳~20歳」に該当する。韓国の6勝の内3勝は、30代のキム・セヨン選手、キムアリム選手、キムヒョージュ選手。ダブルス戦のイムジンヒ選手とイソミ選手は共に「29歳~25歳」。ユヘラン選手とファン・ユミ選手が「24歳~20歳」。
メジャー優勝は、日本は、2年連続となる2勝(西郷真央選手:シェブロン選手権、山下美夢有選手:全英女子) 、豪州も2勝(ミンジーリー:全米女子プロ、エビアン選手権:グレース・キム選手)、スェーデン1勝(全米女子オープン)。
日本は、前季西郷真央選手が シェブロン選手権に勝ち、
5大メジャー勝利をコンプリートした(全米女子オープン:笹生優花選手の2回、全米プロ:樋口久子選手、エビアン選手権:古江彩佳選手、全英女子オープン:渋野日向子選手、山下美夢有選手)。
私は昨年初の2025年2月号 NO.221(「リディア・タ― VS リディア・コ―」)でこう書いている。
「これまでの最低身長(以下:最小)メジャーチャンピオンは全英女子オープン2回優勝の韓国申ジエ選手(155㎝)。それを153㎝の古江選手がエビアン選手権で優勝し、新たに最小メジャーチャンピオンの座についた(最高身長のメジャーチャンピオンは185㎝のミッシェル・ウィー選手)。今季から米ツアー参戦の150㎝の山下美夢有選手にはさらなる更新の美しい夢が有る。」「日本女子選手の中で先輩格の畑岡奈紗選手はメジャー優勝では後輩たちに先を越されてはいる。が、米本土で開催されるメジャー3大会では160㎝未満の優勝者はまだいない。158㎝の畑岡選手は全米女子など好成績なので、それを目指して欲しい。昨季ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた西郷真央選手も158.5㎝で同じく目標にして欲しい 」
その山下選手(全英女子オープン)と西郷選手(米本土のシェブロン選手権)が揃ってその2025年にメジャーに勝つとは想像もしていなかった(今季2026年度は竹田麗央選手、岩井選手姉妹が続くか)。
毎年の如くメジャー優勝を挙げていた韓国は、一昨季梁熙英選手の全米プロだけで、前季は優勝者は出なかった。
最終戦終了時の世界ランクを40位内で見ると、日韓共に8人。韓国の現役メジャーチャンピオン(敬称略)は、皆30歳以上。8位キムヒョージュ30歳 、10位キムセヨン32歳、24位コジンヨン30歳、29位キム・アリム30歳(ランク外の 61位申ジエ37歳、70位梁熙英36歳、産休中?朴仁妃37歳、100位外チョン・インジ31歳)
メジャー未勝利の40位以内の韓国選手は、12位ユヘラン24歳、17位チェへジン26歳 30位ファン・ユミン22歳、39位ユ・ヒョンジョ40歳。
日本の現役メジャーチャンピオン(敬称略)は、皆20代。3位山下美有夢24歳、9位西郷真央24歳、26位古江彩佳25歳(100位内にも入っていない、笹生優花24歳、渋野日向子27歳)。
メジャー未勝利の40位以内の日本選手は、14位竹田麗央22歳、18位畑岡奈紗26歳、23位岩井明愛23歳、31位岩井千怜23歳、37位勝みなみ27歳。
日いずる日本、日没する韓国という様相と言えるか。
韓国においては、韓国女子ツアーも隆盛しわざわざ遠い米ツアーにいかなくてもと思う選手がいるのか。加えて、韓国の協会(KLPGA)の姿勢にも問題があるのでは。
2022年から韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)は「非公認海外ツアーの案内」と題して、米ツアー(LPGA)の秋季開催の「BMW女子選手権」をKLPGA が公認とせず、LPGAシード選手以外は参加させない。違反した選手は最大10試合出場停止、最大1億ウォンの罰金が科す」と改正した。と言うより、改悪したと言えよう。韓国女子選手にとっては、事実上BMW女子選手権に優勝しLPGAに行くチャンスを奪われた。
さらに、KLPGAは昨11/3に開催した理事会で、「KLPGAレギュラーツアーで10年連続で活動した選手が加入する『K-10クラブ』、または生涯獲得賞金25億ウォン(約2億6500万円)以上の選手のうち、翌年のシード権を持たない者を対象とし、成績・協会への貢献度・認知度を評価し翌年のレギュラーツアーシード権を付与する」と決定した。前季シード権を失ったツアー通算6勝のイ・ソヨン選手(28歳)ら5名が救済されることに。「レギュラーツアーの選手たちが、長い間協会に貢献してきた選手たちが、シニアツアー・チャンピオンズツアー出場(満40歳から)までに発生する5~6年の空白期間を最小化し、長期安定的にツアー活動を続けられる為だ」という。
日本にもガラパゴス問題がある。JLPGA(日本女子ゴルフ協会)はLPGAへのいわば輸出は好調だが、LPGAからの輸入はない。日米共催で米ツアーでもあるTOTOジャパンクラシックでさえ、賞金もドル建で円安での目減りもないのに直前の世界ランク40位までで参戦したのはミンジー・リー選手たった一人。隣国韓国の選手は当時40位内に10名もいたのに皆参戦せず(日本野球も米国野球のマイナー的位置づけだが、メジャーリーガー達が日本に来ている)。
韓国の有望な若手女子選手が韓国ツアーに失望し、日本女子ツアーに参戦してもらえれば(プロテストなしでもQTが受けられるように戻すべきだ)。
そんな折、JLPGAが韓国黄アルム選手の失格騒動を起こした。“トリプルボギー不倫”でのコンプライアンス意識の欠如を露呈したことを勘案すれば、女子プロOGを中心とする運営体制を見直す時期にあると思うのだが。
私は新世紀世代と呼ばれる21世紀(2001年~)生まれの女子プロの中で、孫のように下記三姉妹を応援している。長女に当たるのが、最高峰の全米女子オープン(以下「全米女子」)を2度勝利の笹生優花選手(24歳)。前季全米女子で優勝を期待したが、あえなく予選落ち。それだけではなく、18試合でマッチプレーを含め賞金を得たのが5試合で得た賞金はたった80,760ドル。ポイントランキングは132位。2024年の全米女子優勝で5年シードがなければ最終予選会に向かうところ。
大不振と言えるが、本人は平静を装っている。我々は21年、24年に続いて27年に全米女子を優勝するのを待つべきなのか。ネット民が3年に一度自栽のサボテンに花が咲くと言っていた。笹生選手も“サボテン優花”と名づけようか。その優勝争いが笹生選手とジーノ選手なら最高だ。その時は私も日本人の端くれなので、笹生選手を応援するが。
2026年の初戦も序盤から苦戦。先が思いやられる。2026年度も“天気晴朗なれども逆風強し”となるのか。
二女に当たるのは後述するジーノ選手(22歳)。三女は、米国のアレクサ・パノ選手(21歳)。アレクサ選手は19歳の誕生日に1勝を挙げた。が、それ以降優勝がない。
前季は試合が進む毎にポイントランキングを落とし100位まで下がり秋のアジアシリーズに参加できず、親日派ながらTOTOジャパンクラシックにも出れなかった。身長が180㎝を超えるのはバスケットと違い優位ではないのか、何とか97位で準シードに踏み留まった。今季はリベンジを期待したい。
二女ジーノ選手は前季メージャー・エビアン選手権(以下「エビアン」)で最終ホールに向かう時点で90%の確率で優勝すると誰もが思った。が、逆転負けしメジャー初優勝を逃した。敗因として下記3点を挙げたい。
まず、技術面から言えば、プロとしての総合力である平均スコアは4年連続1位であるように現役では最強であると言える。ドライバー、アイアン、アプローチ等どれも秀逸でオールラウンダーと呼べるが、あえて弱点と呼べるのはパターか。前々季平均パット数が世界ランク46位(29.7)であった。
前季春先から好調でエビアン直前にて15位29.030で15位(最終戦後は28.710で4位に)だったのだが、肝心の最終日パット決まらなかった。決まっていれば楽勝だったのだが。
次に戦略面。敗着に、最終日最終の18番のセカンドで2オンを狙わなかったことをネット民は挙げていた。最近ジーノ選手はロングホールだからとしてむやみに2オンを狙わなくなっていると私は感じていた。弱冠22歳で既にコースマネジメントにおいて熟練の域に達しているのかと思っていた。
同組のグレース・キム選手とは2打差あったので、キム選手がバーディをとっても1打差あるので、池前に刻んだのは冷静なプロとしての判断とも言える。ただ、本来ジーノ選手の方がドライバーが飛ぶハズ(エビアン終了時点のドライビングディスタンスのランクはジーノ選手52位267.010yd、キム選手86位260.110yd)だが、ファーストカットに落ち、フェアウェイのキム選手より数㎝飛んでいなかったのが不運であった。
そうでなければ、本来先に打つキム選手がイーグルチャンスにつけたのを見届けたなら、2オン狙いに切り替えることが出来たのだが。圧倒的有利な立場から一転追い込まれた。
最後は天才的側面。14歳で欧州女子ツアー優勝のジーノ選手は天才肌。私のような才能がなく下から這い上がって行くような者が持つ根性のキツさがない(私に似たタイプの選手には親近感を覚えるより自身の嫌な面を見ているようでファンにはなれない。申し訳ないが)。たえず穏やかで、記者に対する発言も明るくそつがない。挑発的な、あるいは不快になるような話はしない。ファンサービスも手を抜かない。野球の天才大谷翔平選手と相通ずるものがある(大谷選手の方は強い闘争心を内に秘めてはいるが)。女子プロゴルフ界の顔になる資格があると思う(何でもNO.1でないと気が済まない米国人ではあるが、彼女への風当たりはさほど強くないか)。
それだけに、マッチプレーになっても相手をねじ伏せるような態度は取らない。常に高いレベルでプレーしているから火事場の馬鹿力とも無縁。メジャー大会ならではの相手の神懸ったプレーには屈することも起きてしまう。
WOWOWの担当MCが何度も「5勝しているが、一度もメジャーには勝っていない」と言っていたが、世界ランクについては全く触れていなかった。エビアンを勝っていれば世界ランク1位になっていたのかも。
その後の2試合で続けて逆転負けしたので、解説者に、勝ちきれない、ツメが甘いと言われれば反論出来ない。女王ネリー選手はサラブレッドで言えば日本競馬界の至宝ディープインパクト。独走状態でゴールを駆け抜ける。そんなタイプのネリー選手は一打ミスしても優勝はゆるがない。ジーノ選手は英国ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、凱旋門賞等の4戦無敗で引退し “神の馬”と呼ばれたラムタラに似ているか。ラムタラはすべて1馬身以内。ジーノ選手もリードは1、2打差程度が多い。それでは何が起きてもおかしくない。だからと言って、体が大きくない162㎝のジーノ選手がディ―プインパクト型に変身してはショットの精度が落ち、持ち味の安定性を損なうかも知れない。結局敗因のパットの精度を上げるしかないかと思っていた。
数週間後の休みを経て、出場した10/9~の中国で開催の「ビュイック LPGA 上海」でどのようなプレーをするか注目されたが、初日出だしの1番でボギー、2番ダブルボギーで、ショックが尾を引いているのかと思った。が、その後の16ホールで10個のバーディをとった。2日目はそれを上回る12バーディ(1ボギー)で勝みなみ選手がトップに躍り出た。
最終日13番までで2位のジーノ選手とは4打差あり勝選手が初優勝する。ジーノ選手はミンジー選手より上であればよいと思っていた。しかし、そこから快進撃が始まる。14番バーディの後15番グリーンの外からチップイン・バーディを波に乗る。16番も取り3連続バーディの後1打差となった17番のロングでグリーンの外からチップイン・バーディを勝選手が奪い、万事窮す。と思われたが、なんと曲がって下る難しいイーグルパットを決め並び、プレーオフ(PO)へ。
どちらもPOは分が悪い同士だが、ジーノ選手が、池に打ち込むも1ペナ後の第3打をグリーンの傾斜を使いカップ近くに寄せる。別のホールでも20ヤードもあり、二つも段がある難しいパットも寄せワンさせた。ジーノ選手が優勝した(これほどのゾーンに入っているのを見たことがないジーノ選手を相手にした勝選手はただただ不運としか言いようがない)。
鬼門のショートパットもことごとく決め、心配されたイップスは天才肌のジーノ選手には無縁で私の杞憂は余計であった。最終戦後の平均パット数ランクは4位となった。弱点が無くなった。
ジーノ選手はエビアンに勝てなかったが、2位となり、世界ランク1位のネリー選手のポイントが下がっていった(2024年度末12.59→エビアン前10.48→エビアン10.38→スコッチオープン10.31)のに対して、ジーノ選手の方は同6.45→同8.97→同10.10→同10.12と急接近した。
そして、全英女子オープンで36位のネリー選手が9.96に落ち、30位でフィニッシュしたジーノ選手は10.12と変わらず、ついに逆転した。
ジーノ選手は世界ランク1位なっただけではなく、最終戦に勝ち年間女王(レース・トゥ・CMEグローブ・チャンピオン)の連覇を果たした。
ジーノ選手は、世界ランク1位、年間女王に続いて、賞金400百万ドルを加算し、獲得賞金は7,578,330ドル(150円換算で約11億37百万円)となり賞金女王にも。
さらに年間最優秀選手(プレーヤー・オブ・ザ・イヤー)にも輝いた。加えて、平均スコアもひとり68台(68.681) となりベアトロフィー(アニカソレンタム選手が持つ最小記録2004年68.697をも抜いた)にも輝き主要部門5冠となった(この他、独壇場が続く「ベスト10」も14回と1位の定位置に)。
なお、世界ランクを決めるロレックス・ランキングは、複雑であるが、簡単に言えば、各大会のレベルに応じて、過去2年間(104週間)で、とくに直近の13週間の結果を重視し、それ以前の91週間については一定の割合でポイントが減っていくという。
最終戦後の更新時点において、世界ランク1位になって以降2勝し、その他の試合も優勝争いしていたジーノ選手は世界ランク1位になった時点から10.12→13.69(+3.57)、一方ネリー選手は同9.96→8.66(△1.30)とポイントを下げていき、たった3ヶ月の間でこんなに差(5.03)がついた。
シーズンオフに入っても、既ポイントは減価していくので、1/27の更新時点で、ジーノ選手13.69→12.18(△0.168)、 ネリー選手は同8.66→7.03(△0.181)とさらに差が広がった。
ネリー選手は、2024年の1月~5月において5連続優勝を含む6勝(11月にも1勝、年間7勝)を挙げているが、そのポイントが既に減化してきている。さらに今季2026年前半には、そのポイントがすべて消えてしまう。
ジーノ選手は、2022年19歳で世界ランク1位になったとき三日天下(2週間)に終わったが、今回は長期に亘って君臨できる可能性が高い。
ネリー選手は、アジアシリーズ4試合も参戦せず(体調が万全でないようだが、アジア軽視とも噂される)、その間に開催された韓国での国別対抗戦も辞退し、米チームは決勝戦で豪チームに敗退する。
世界ランク1位の称号を何としても取り戻すとの感じを受けない。米国ファンの中には「今はゴルフよりも水着モデルに関心が向いているのか」と心配する向きもいるのでは。
そう書いた時点で、ネリー選手の婚約報道が目に入った。なるほど!と合点がいった。
前季末のジーノ選手の生涯獲得賞金は17,369,400 ドル(150円換算で約26億円)に上る。プロにとって死活問題のシード権の優先順位の2番目(1番目は「ポイントランキングトップ80 」)にあたる「キャリア賞金ランキングトップ20」において、ネリー選手(9位:16,109,558 ドル)を追い越し、すでに7位に位置する。弱冠22歳(来年2/20で23歳)で日本で言う「永久シード」を得たようなものである。
賞金は近年高額化の傾向にあり、生涯獲得賞金のトップ、レジェンドのアニカ・ソレンタム選手22,583,693 ドルの更新も視界に入ってきた。2位で28歳のリディア・コー選手(21,316,768 ドル)や5位でこの5月で30歳になるミンジー・リー選手(18,656,560 ドル)に先を越されるかも知れない。が、今季最終戦3連覇するならば、今季中にも。より確実なことはジーノ選手が30歳になる頃にはダントツの1位に君臨していることでは。
ジーノ選手は、14歳で欧州ツアーで優勝した前後から家族の大黒柱としての強いプレッシャーの中LPGAの賞金だけでもこれだけ稼いできたのであればその肩の荷を下していよう。が、韓国流に言えばタイの“国民の妹”的立場であるならその期待に応えなければと思う気持ちが今後の原動力に。
これまでも天才少女ゴルファーとマスコミに持ち上げられ、煽られ、周りからチヤホヤされても、自らを見失うことがなかった。金のなる木となったジーノ選手のキャディーを批判して替えようとする輩に対しても「私にとってよいキャディー」と言い意に返さない。そんな彼女であれば。
150㎝の山下選手が、ルーキーイヤーで2勝(内メジャー1勝)を上げ、「ルーキー・オブ・ザ・イヤー2025」輝いた。世界ランク4位の山下選手に宮里藍さん以来の世界ランク1位になることを期待する声が大きい。
英国とマレーシアで優勝した山下選手が1位のジーノ選手を抜くには、まず、平均スコアの差を埋める必要があるのでは。山下選手の平均スコアは69.811(4位)で1位のジーノ選手のは68.681と1.130差がある。4日間の1試合で4打差つく。
さらに、LPGAトーナメント33試合の内21試合を占める米国の比較的距離が長いコースで勝つことができるか否かにかかっていると言えようか。
女子プロゴルファーの160㎝は、MLBでいえば180㎝と言える。178㎝しかない山本由伸投手は筋トレによるパワーピッチング、高めのストレートを活用が主流の中で、専属トレーナー矢田修氏の指導の下、体のバランスを重視し、低めのゾーンで勝負する。無駄のない、制球も優れたその投法により、唯一無二の大谷翔平選手をして“世界一の投手”と言わしめる。身長による先入観を持ってはいけないと悟った。
世界ランク1位のジーノ選手も身長は162㎝と高くない。ジーノ選手は平均スコアも1位。世界ランク2位のネリー選手も平均スコア2位。
身長の高低やキャリアの長短に関係なく、平均スコアがLPGAでの成功の鍵と言える。
初出場でメジャーを優勝した、渋野日向子選手(全英女子を勝利する出場権を放棄し後年最終予選会を受けた)、笹生優花選手を除いて、米ツアーの最終予選会に挑戦した日本選手のその年末の日本の平均スコアを見ると、次の通りとなる。
2021 古江彩佳70.3664(メジャー優勝)
2022 勝みなみ70.5170(未勝利)西村優菜70.4655(未勝利)
2023 西郷真央70.6076(メジャー優勝)吉田優利70.5513(未
勝利)
2024 山下美夢有選手69.1478(メジャー優勝)、岩井明愛選
手69.9040(初優勝)、岩井千怜70.2580(初優勝)、吉田優
利選手(受け直し:未勝利)、馬場咲希選手(下部ツアー:未
勝利)の5名が合格。不合格原英莉花選手71.1254(前季下
部ツアー・エプソンツアーでの平均スコアは位の69.91。
今季は米ツアーのシード入り)。
なお、日米共催TOTOジャパンクラッシックで優勝した竹田麗央は予選会が免除されていたが、渡米前の平均スコアは69.2378で、渡米後すぐにまた1勝を挙げている。
こうして見ると、日本女子ツアーで平均スコア70.0前後の選手は渡米してもすぐに優勝争いができると言える。その意味では、昨季平均スコア70.0585 (1位) の佐久間朱莉選手も今季も同様のスコアなら胸を張って米女子ツアーに挑戦できるのでは。ジャンボ軍団の先輩西郷選手もいることであるし。
なお、その尾崎将司氏がガンで亡くなった。誠に残念であった。2014年4月号NO.34(「ウッズとキッズ」)にて「石川遼君はゴルフスタイルや性格が尾崎プロに似ていると言われる(松山英樹君は青木プロに)。尾崎プロのように日本のスーパースターになって、日本のキッズたちのあこがれの的になってほしい。女性ファンも多いので、早く帰ってきて男子の日本プロゴルフ界を再興してもらいたいと思う。」と書いた。あれから12年、いつまでドン・キホーテを演じているのか。彼の自由とはいえ。
なお、今回米最終予選会に10位で合格した櫻井心那選手の日本の平均スコアは72.3168(66位) 。LPGAツアーでの成績を注目したい。華々しい活躍を見せるのか、今回再受験をぎりぎりパスし渋野日向子選手と西村優菜選手とが涙の抱擁をしたのを眺めた場面を思い出すのか。
日本選手の活躍を見て、これから米ツアーに挑戦したい女子プロが益々増えてこようが、トップ選手が次々と米ツアーに転戦して、ベテランも新人も誰が勝ってもおかしくない、ぬるま湯のガラバコス化した日本ツアーで1勝や2勝したぐらいで挑戦しようと思うのはどうか。米ツアーに行けばゴルフが上手くなるとは限らない。レジェンドの岡本綾子さんもそう言っている。
菅楓華選手(20歳:平均スコア70.5500)は将来米ツアー参戦を目指すが、今は日本で実力を磨くという。彼女のように、成功の鍵と言うべき、ゴルフの総合力指標である平均スコアを70.0に近づける努力を日本ツアーで続けるべきでは。
それまでは、日本ツアーにいて日本女子プロとの相性がよい欧州の2大メジャー(エビアン、全英女子オープン)を中心にメジャー大会にスポット参戦するのが良いと思うのだが。
(次回241号は2/20アップ予定)