2026.3 臨時号 NO.241 しょうひざい VS
しょうひぜい
2/8付衆議院総選挙は、自民党の大勝(198→316)、中道改革連合における旧立憲民主党の大惨敗(144→21)で終わる。
予想外の結果に高市首相自身が一番驚いているかも。今選挙を私なりに振り返ってみたい。
年明け衆院解散の噂が流れてきた頃、台湾有事発言で高市丸が出航の出鼻を挫かれた中、旧統一協会問題の再燃(文春による高市首相、最側近佐藤啓官房副長官の協会との蜜月報道)、2005年以降7回の衆院選で高市氏自身が代表を務める自民党支部から計6,474万円の寄付を受けた政治資金問題など、さらなる高市首相の高支持率を下げる要因が浮上していた。
今般の衆院解散は高市首相の、党利党略、ではなく、個利個略と野党から批判された。
高市首相は、自民党の正月三が日明けの世論調査で勝てると思い、野党に奇襲をかけたつもりが、立憲民主党と公明党の合流という急襲を受ける羽目に。加え、選対委員長の勝手に禊は終わったとして「裏金議員の比例復活容認方針」という悪手も(裏金議員43名「議員公認」+「比例重複」で帰結)。
こうした中で、メディアは1/19高市首相の解散会見に注目した。2005年小泉首相の「郵政解散」会見は逆境を跳ね返し小泉旋風のきっかけとなった。その再来があるかと。
小泉首相時代拉致問題を担当した元外務省審議官田中均氏はこの解散会見をうけ「高市首相の弁を聞いて空恐ろしくなった」と書き出した。そして「総選挙は自分が総理に相応しかどうか決める為という。責任ある積極財政も外交安保も実績を示すべきなのに、まず選挙と言う。対外関係は国際法無視を厭わないトランプ政権や、悪化した日中関係をどうするかという課題に一切言及ない」と指摘した。
直言居士の田中真紀子元外相とか、しがない一大学の先輩にすぎないのに「積極財政」ではハナから適任でないと言う不遜な私とかは例外として、主権者たる国民が判断するには当該政権による1年ほどの実績を見ないと首相にふさわしいか判断出来ない。
今段階で「私が首相にふさわしいか」はメディアの世論調査で支持率が低いのならまだしも高支持率なのに700億円前後の税金を使って総選挙で問うことか。自身のSNSで国民に問えば済むこと。「首相の専権事項」と自民党が拡大解釈する「7条解散」のさらなる乱用、私物化と言われても仕方ない。他の同僚議員のことも考えない。自民党議員に嫌われるのは当たり前ではないかと思った。
同じく、維新との連立を国民に信を問うというが、それは連立する前に信を問うべき。中選挙区でもないのに同じ選挙区にお互い候補を立てる連立なら、今意見を問われたら、自維連立は高市氏自身が首相になる為としか答えられない。
出来ないと言っていた消費税減税について高市首相は消費財の内軽減税率8%の飲食品について消費税の対象外とすることを2年間やると言い出した(財源は国民会議へ丸投げか)。それなら与野党の基本的な考えが一致するから選挙よりそれを先行すべきと国民は思う。
私はただでさえ財政難の中社会保障四経費(年金、医療、介護、少子化対策)に充当する消費税は廃止できないと思っている。実施すれば、さらなる円安、債券安・金利上昇をもたらすだけ。(5兆円規模のタラレバ財源にて)大風呂敷の消費税減税を焦点にして多額の税金を使って総選挙で論戦すべきものではない。
与野党とも富裕層も含めたバラマキ減税を取り下げ、飲・食料を提供する店側にも迷惑をかけない、低所得者に限って現金給付すればよいだけと思うのだが(選挙となると与野党とも富裕層を外せないのか)。
風吹けば桶屋が儲かる。消費税減税の風吹けば、庶民の暮らしは悪くなる。消費税減税をするという兆候だけで、外国市場は反応し、円の価値は下がり、金利は上昇する。さらなる物価高をもたらし、住宅ローンの金利も上がる。
自民党は消費税減税が応急措置にもならない逆効果だと理解しているのでは。だが、あてにしてしまっている国民にそんな説明はできない。仕方なく消費税減税を主張する野党各党と足並みを揃えるフリをしているのでは(後で公約違反と言われないように「検討を加速」と)。ただ、危機感からか高市首相は年度内の成立を目指すと前のめり発言。後々自身の首を締めることになるのかも。
国会で与野党が議論すべきは、抜本的な対策として「国家財政をこれ以上悪化させず、いかに経済を底上げさせるか」(民間企業に対して企業家精神を喚起させ、積極的に投資させる、その環境整備を図る)という難しい課題だ。
8年に亘る安倍首相ー黒田日銀総裁体制の終焉時点で大きな負の遺産が今日の事態を招くことは分かっていたこと。国会議員は一体何をしていたのか。
結局、高市首相は、頑張って、頑張って、演説文を用意して、長々と話したが、なぜ今解散総選挙なのかとの国民の問いに答えることが出来なかった。大義が見えない、長たらしい話に響くものは私にはなかった。会見を観ていた視聴者も沸いたのは「働いて 働いて・・・」の所だけでは。それも“二匹目のどじょう”で、「それなら解散せず早くやれ」との声も少なくなかったようだ。
選挙の目標と言えば、与党で過半数(233)という。現状と同じ。自民党単独で過半数と言うべきところではないのか。わざわざ解散する意味があるのか。それも首相生命を賭けた背水の陣という。まるで負け戦に向かう武将みたいではないか。それでは、小泉首相のようにオセロの大勢を占める黒石を一挙に裏返し白石にするようなことは到底出来ない。
会見翌日、時事通信も『「政治止まる」「ピンとこない」 有権者に戸惑い、諦めも 高市首相解散表明』との記事をうつ。小泉首相の会見との比較を口にしなくなった大手メディアも不発に終わったと感じたのであろう。
実際左派毎日新聞の調査では、昨12月の調査より内閣支持率が10ポイントも下落し、57%になったと報じている。
乾坤一擲の大勝負を左右する解散会見で高市首相は解散の大義を示すことが出来なかった。本来専門分野でない?中国研究大家の遠藤誉女史までも、1/22に発信し、解散の目的は高市人気が高いうちに裏金議員を復活させて、もともと派閥に入っていなかった高市氏が自らの派閥を「復活させてあげた裏金議員」で固め、党内基盤を強化して長期政権を維持したいという個人的野心でしかないと看破する(「高市政権である限り習近平の日本叩きは続く」ともいう)。
さらに危機感からか1/28にも言わずにいられないと、高市氏は今や「世界の端っこで孤立する高市外交」へと転落しつつある。サナエ・ショックをスルーする日本の危なさを浮き彫りにしたい、と発信した。
就任当初は国内にて「高市トレード」ともてはやされたが、「サナエ・ショック」で今や高市首相の「株」は大きく値下がりした。日本の波及効果(マイナスの影響)を受け、米国で株式・債券・為替が売られる「トリプル安」が起きている。米政権の高市政権の評価は台湾有事発言の頃よりさらに下がったのではないか。またもや誤算。
本音を隠す表向きの大義を発信できないのは、タカ派も、積極財政も、借り物に見え、信念や信条がないポピュリストということも関係していると言えるか。その意味では、韓国の李在明大統領と似ている。
李大統領は、政治家として下から這い上がるため極端な発言や犯罪(容疑)までしてきたがトップに立った以上無茶する必要がない。進歩派の中ではイデオロギーもない異端児?であろうが、米中関係の変化に即応して上手く立ちまわっているとして国内で評価が高い。
高市首相も世襲でもなく数が少ない女性議員でハンデがある中他者を踏み台にして来たなど同じ境遇でポピュリスト同士気が合う。日韓関係は上手く行くだろう。
上を見てがむしゃらに山を登っていくのはよい。頂点に立ったら、富士山のように国民から見上げられる。トップに立てば李大統領のように変わらなければ。だが、高市首相は頭にプロペラを付けて独り舞い上がっていくように見える。
これからは下を見るのだ。国民はもちろん、自身の為に働いてくれる自民党議員も官僚も。いつまでも自己チューで、他者に気遣いができないなら、トップに立つ者が持つべき資質がないと言われるだろう。高支持率はバブルでしかない。国民が首相の本質に気がつけばバブルは泡と消える。
高市首相が他者の意見を聞かないのは、同じポピュリストのトランプ大統領とも似ている。
他者の意見を聞かないトップのタイプには二通りある。一つは、自身より賢い者はいないと思う天才タイプ。さしずめテック企業の雄と言うべきイーロン・マスク氏。このタイプの経営者はトップダウン型の経営となる。
もう一つのタイプは、自身の思い通りにしたいが、賢い者には言い負けるので、イエスマン以外賢い者を排除する。このタイプがトップダウン型の運営をすれば裸の王様になる。まさに今のトランプ大統領のごとく。
頭が悪いと自覚する私が見ても、高市首相は今のままでは賢者とは言い難い。謙虚になり、自民党議員や有能な官僚たちに働いて、働いて貰えばよいのに。トランプ大統領を反面教師とするべきだ。
高市首相は生みの親とも言える麻生副総裁にも解散について相談していない。筋を通す麻生副総裁は激怒したという。高市首相は野党に奇襲をかけたつもりだか、公明党と立憲民主党(以下「立憲」)が組み「中道改革連合」(以下「中道」)の立ち上げという反撃にあった。
この時点では高市首相は一言も解散を口にしていない。読売新聞の誤報として読売新聞に借りをつくることもできた。
なのに、表向きは、麻生副総裁は、高市首相の判断に賛同し、公明党票を当てにする議員のことに記者が触れると、公明党嫌いもあってか「選挙に強い議員は公明党の票をあてにしていない」と一喝した。公明党票頼りの議員の神経を逆なでして。
筋を通す麻生副総裁は、安倍首相であれ、高市首相であれ、「首相」に対しては反対しても最終的に同意することを矜持とするという。結果としては「吉」と出ても、今の永田町村には、議員も官僚も正しい方向に導ける、元官房長官故後藤田正晴のような政治的、精神的支柱となる長老がいない。
選挙では、今まで自民党に入ってた公明党の票が中道に流れる。自民と維新との与党同士が85選挙区で潰し合う。冬将軍の中で高市親衛隊の若者・受験生が思うような力が発揮できるのか(ナチス・ドイツがソ連に奇襲をかけだが、冬将軍がナチスを追い返し、ヒトラーの権勢退潮への節目に)。
さらに、ホクホク発言に有識者達は頭から湯気を立てる。
政治学者中北浩爾氏は、政治評論家としては選挙期間中は中立スタンスかと思ったが、高市首相の「円安により外為特会の運用がホクホク状態」発言に対して2/1付「結局、高市政権の『積極財政』は、国と輸出産業が最優先で、消費者や輸入企業は二の次です。・・(中略)・・高市政権が物価高対策に熱心だというのは、イメージにすぎないと思います。」と批判投稿していた。
また、翌日2/2付にて選挙期間中には異例の、みずほ銀行が「高市演説を受けて〜危うい現状認識〜」と題した、チーフマーケット・エコノミスト名義のリポートを発信した。
高市首相はまたしても自身の発言がいかに内外にハレーションを起こすか思慮する能力に欠けることを露呈した。円安を止めるために介入した米国側も高市首相への心証をさらに悪くしたのではないか。
何にしろ価値が下がって良いモノはあるか。円の価値が下がって喜ぶのは、首相以外は輸出業者と証券マンぐらいか。
世界的投資家ジム・ロジャーズ氏は「通貨を下げた国に未来はない」と日本を悲観視している。
さらに、2/1付NHK日曜生党首討論での高市首相ドタキャン、裏金議員公認等への反発など、総選挙で、与党が過半数を確保する可能性はあるも、自民党単独での過半数超えはない。迫力のない解散会見では小泉郵政解散の時のような風が吹いていないと思っていた。
しかし、前後して、かの朝日新聞が自民党単独で大勝すると予測してから状況は一転した。ただ、創価学会の女子部の大攻勢がまだ始まっていないからとも思われたが、選挙の終盤になっても中道が巻き返したとの報道はなかった。
そして、12/8総選挙の投票日を迎える。私自身は安倍政権以降自民党への批判票として基本自民党には入れない。が、前回2024年衆院総選挙では、直前の総裁選で私が初の女性首相ならこの人と思っていた上川陽子元外務大臣が立候補していたが、上川氏の東大の後輩にあたる松島みどり議員が推薦人に名を連ねていたこともあり、地元小選挙区は自民党の松島氏に投票していた。今回も、大学の後輩でもなく年下の(松島氏自身とはタイプが真逆の)高市首相を誕生させる為に身を粉にして奮闘した松島議員のその「利他精神」に敬意を表して、一票を投じた。比例は中道に。
選挙結果は、自民党が大勝した。多くの有識者が批判しているのにこれ程の高市旋風になるとは思いもよらなかった(風はそんなに強く感じないが、旧立憲民主党の自滅の為か)。
高市首相は、自ら信を問うと解散しておきながら、選挙中にも拘わらず政策面にほとんど触れず、唯一の党首論戦もドタキャン(したままでは「逃げた」と批判されても仕方がない。それが男性党首なら、その時点で信頼と支持を失う)。
投票日の前日、英紙に「日本で選挙に勝ちたければ『はっきり話して、何も言うな』」と皮肉られた。それで大勝では日本の政治的民度も問われかねない。
期待感だと言い株価も高騰しているが、一体何に期待が持てると言うのか。人民の生活を犠牲にして軍備を拡充する北朝鮮を目指すのか。米国からの要請に応えざるを得ないとしても、財政難の中経済力向上→防衛力の強化であるべきで、中国とは外交により良好な関係を構築すべき時なのに、不用意な発言で中国を怒らせ、それを放置し、却ってタカ派の人々の支持が増すとでも。高市首相は、有能だとしても、今必要とされる首相役としてはミスキャストではないのか(競馬で言えば、軽い馬場が得意な名牝が重馬場で走るのと同じ)。
今回の選挙結果が出てからも、辛口で高市自民を支持した人々に呼びかけ続ける池田清彦先生を初め、批判した有識者達は歯がゆい思いをしているだろう。
とくに学生や若者の情報弱者は、大手メディアに相手にされずSNSに活路を見出し大手メディアをオールドメディア(命名した青山繁晴議員の思いとは関係なく)と攻撃するネット右翼やインフルエンサーに感化され、「元気がいい」「話が短くわかりやすい」等イメージやキャラクターで高市首相を支持し、首相としての資質、政策の妥当性は顧みてないように見える。将来国の負債を余計に背負わされるのも気づかずに。
中道は存在意義を認めてもらう時間がなかった。政策論議も高市首相に上手くかわされた。学会の女子部も立憲民主党支持者の大量離反を前にしてさすがになす術がなかったか。
旧公明党は、高市首相を退陣させるつもりが、旧立憲の自滅(支持層が離反した)を招いただけに。
これを見て、バブル崩壊後の銀行救済を思い出した。小さい銀行が大きい銀行を吸収する方式となった。それだと、大きい銀行の行員はプライドが許さず大勢辞めていく。
ネーミングも旧代表同士の共同代表も、それでは斬新さが演出出来ない。共同代表を副代表としてその上に玉木国民民主党首をトップに立てるなら、国民の見る目も変わっていたかも。同じ連合という母をもつ兄弟ながら確執があり可能性は低かったが。
勝てば官軍。高市首相は続投する。ブレーキのない高市与党が世論の追い風に乗って暴走するのが懸念される。
ただ、選挙民は裏金問題、旧統一教会問題に強い関心を示さなかったが、野党から高市首相の個人的問題を追及される(師匠の安倍首相の「モリカケ」、桜を見る会のごとく)。
少数与党から脱却しても高市首相のやりたいことができる訳でもない。日本の為政者は、国内の有識者の批判は無視出来ても、外圧に弱い。高市首相の「積極財政」「対中国強硬」は、国際市場に加え、「ドル安、円高」「対中国対話・協調」を志向するトランプ大統領に阻まれよう。
なお、どさくさに紛れて、リフレ派が「我々はデフレの時、今はインフレで積極財政はすべきでない」と高市政権を批判し自らを正当化する。リフレ派の大罪は、超低金利の下では量的拡大が(当たり前だが)効果がないと判かっても、止めようとしなかった、それが今日の円安の元凶であること。
来月3月19日?に高市首相は訪米予定だという。世界に強固な日米同盟関係をアピールする為日本の首相としては国賓待遇だが裏では、選挙に大勝し若葉マークは取れたもののまだ危なっかしいとトランプ政権に高市氏本人が釘を刺されるだけかも。防衛費GDP比5%を要求されるも円安政策は容認されない。看板の積極財政は思うようにできない。高市首相は国民の目を逸らすよう防衛力の強化、憲法改正を国民に訴えていくのか。
高市首相批判の急先鋒小沢一郎氏は、人格はともかく発言は的を射ている。高市首相の「当たり前の憲法改正」の行き着く先は「戦争を平然とできる国へ。公の秩序の名の下に人権が制限される国へ。自由にモノが言えなくなる国へ」であると、警鐘を鳴らしている。
若者たちにとっては、スパイ防止法の制定や裁量労働制の見直しも高市政権への期待となるのか。
自民党が大勝したのは、国民全体が右傾化しているとも言える(高市首相続投よりもこの方が怖い。戦争もバブルも世代が替わると同じ轍を踏む)。小沢氏は議員でなくなったが、戦争世代が全ていなくなる中警鐘を鳴らし続けてほしい。
高市首相唯一の誤算、村上誠一郎元総務大臣も地獄の底から生き延びた。党内野党として大いに批判してもらいたい。
中国は、高市首相の退陣を期待していたが、国民自体も右傾化し反中が国民の意思と捉え、より態度を硬化させるのか。欧米の中国詣でが続く中日本の孤立化が懸念される。
今回の総選挙では自民党は解党的出直しとは言っていなかった。高市氏の高支持率下での選挙であるからか。
しかし、いわば体格が大きくなっても中身が良くなるわけではない。高市首相人気だけが生命維持装置にて多臓器不全の状態は変わらない。依然として自民党は解党が避けられない段階にあると私はそう思っている。
私は、2024年10月石破政権での衆院総選挙で惨敗した後の2025年4月号NO.224(「かんこくVSかんごく」)にて次のように述べている。
日本はこれまで英米の二大政党制を手本とし、二大政党化を目指して、小選挙区制にも替えた。とくに小沢一郎議員が、自民党内の権力闘争に破れたこともあり自民党を離れたのち、主導的役割を果たし、紆余曲折のあと、旧民主党が創立され、二大政党制が実現した。
しかし、その結果はどうか。オセロゲームのように簡単に政権交代が起こり、たまたまその時に与党の代表の者が首相となってしまう。生煮えの上素材が良くなければ、それをありがたく頂戴する国民はたまったもんではない。
小選挙区制は、1強の自民党に有利となり、さらに一人区では世襲議員が有利となる。選挙での公認という生殺与奪権を握り、賢者でない世襲議員による長期独裁政権を可能とする。金権政治とか問題が多いと中選挙区制から替えたが、その中選挙区制より小選挙区制の方が問題が根深い。
自民党が長期単独与党であった黄金時代では、能力と人望がある議員が派閥の長となり、派閥同士が競い合う。その中で、大企業の社長のごとく、幹事長、大蔵大臣、外務大臣等主要ポストを歴任した者(首相としての、いわば有資格者)の中から首相が選ばれる。と同時に派閥同士の牽制が民主主義のガードレールのもう一つである「組織的自制心」を維持させていた。
立憲民主党の躍進により二大政党制が復活するかと思われたが、米韓の酷い現状を見るならば、短絡的としても噂される自民党と立憲民主党の大連立の方がよいかと思ってしまう(ゆくゆくは合同し“自立党”に)。
民主主義の限界が今問われている。民主主義(多数決)の問題点の一つは、民主主義(多数決)は民度が一定という理想を前提としているが、実際は民度の高い層<民度の低い層(その矛盾をカバーすべく「間接選挙」がある。日本はそれが機能しているとは言えない)。
もう一つの問題点は、多数決の限界。世論が80対20であれば、多数決に異論はなく、少数意見も尊重してと万事めでたし、めでたしで終わる。しかし、51対49では。49の方は多数決を認めず、接戦であればあるほど暴力行為に走ることが起きる。米国がその危機にあった。
2020年の大統領選にて敗北したトランプ支持者たちが連邦議会議事堂を襲撃したが、2024年の大統領選ではトランプ氏が敗北すれば内戦になるとまで危惧されていた。韓国においても懸念された。大きな暴動は起きなかったが。
政治的民度が深化すればするほど、支持者は陣営への支持が先鋭化し両陣営が対立激化となる傾向にあり、国民が二分する。米国、韓国に加え、政治的民度が高い英国においても2016年EUからの離脱(ブレグジット)で国民が分断した。
日本は、上記の国ほど政治的民度が成熟していない為そんな状況にはないが、二大政党制がそんなリスクを抱えているなら、あえて二大政党制の確立を目指す必要はないのでは。
限界を迎えた民主主義に代わるものが見つからないのであれば、二大政党制、小選挙区制以前の時代に回帰するのがよいと思うのだが。
奇しくも、二大政党制を主導した小沢一郎氏、初の二大政党制の相手方旧民主党の重鎮達が落選した。
今は1955年~1993年の自民党と社会党との一党優位政党制(1と1/2政党制)の状態に近くなった。高市政権の運営如何ではまた自民党が議員数へ減らす可能性もある。その場合自民党と国民民主党と維新とが合体することもありうるか。
中道は昔の社会党の位置づけでどうか。立憲と“雪駄の雪”でない本来の公明党とは、「護憲」「反世襲」「弱者に優しい政治」という面で相性がよいハズ(今回立憲が政権交代に目がくらみ公明党の歩調に合わせたのか。沖縄を見捨てたのかと言われては、本分を見失えばその存在価値は? 自民党と変わらないなら自民党だけでよい。公明党が本来の公明党に戻り立憲に合わせるべきだったと私はそう思う)。
二大政党制を旗を降ろせば、中選挙区制に戻せはよい。自民党総裁が党内議員に対して「公認」という生殺与奪の権を行使できず独裁はできない。世襲議員の優位性もなくなる。
中選挙区制であれば、旧立憲もこれほど議席数を減らしていない。
大自民党には、「組織的競争原理」(切磋琢磨)と「組織的自制心」(相互理解・相互牽制)が前提となるが(黄金時代の自民党にはあった)、その為には、派閥に変わるグループが不可欠となる。今のままでは、新人議員も増え、ますます“”烏合の衆”化する。総理・総裁の暴走を制御できない。
日本の与野党は、米国の共和党VS民主党ほどの主義・主張に差がない。官僚も、米国は大統領が直接上級職の官僚約3,500人?を指名できる。日本の官僚は変わらない。わざわざ二大政党化して、国民を分断させていく必要はどこにあるのか。「和をもって貴しと為す」大和の国と呼ばれた日本が。
中国の共産党一党独裁政権は、日本の黄金時代の自民党一党長期政権とよく似ている。その中国の権威主義体制が見直され評価され始めた矢先、慶応大小嶋華津子法学部教授よれば、(清廉潔白な賢者と私が思う)胡錦濤前総書記がいわば民主主義とも言える「党内民主」を推し進め党員の無記名投票を実施したことが却ってアダになったとする。
この投票の結果、習近平氏の得票が李克強氏の得票を上回ったことにより、胡錦濤総書記は、自らの腹心である李克強氏への権力委譲をあきらめざるを得なかったとする。
李克強氏が亡くなってから、人民は天才肌・経済通の李前首相の方がよかったと言い出し、「死せる李克強生ける習近平を走らす」との事態を招いていた。
日本の大企業は、トップを決めるのに従業員に選ばせることはない。経営能力が高く従業員とその家族の生活を守ってくれるが近寄りがたいと思う候補より、経営能力は低いが優しく親しみやすい候補を選びがちになる為もある。
政界再編の前に、自民党は、来る総裁選の前に、間接選挙の趣旨に沿い国民の縮図に過ぎない党員・党友を総裁選に参画させる現行制度を見直しすべきだ。
「首相人気」という生命維持装置に頼って今の自民党が生きながらえても、それでは日本国は生き残れない。
(次回242号は3/10アップ予定)