治療後に疲労感が出現することがあります。


原因はドーゼオーバー(刺激量過多)です。


特に鍼灸治療が初めての方は刺激を強く感じますので、疲労感が出現する可能性が強いです。

刺激に対する反応は個人差があります。


弱刺激が合う人・中等度の刺激が合う人・強刺激が合う人がありますが、弱刺激や中等度の刺激が合う人が大多数です。


まれに(1%位)弱刺激でもグッタリする人がいます。

初診時は軽い刺激にして、徐々に刺激量を上げていくことがコツです。


刺激量を少なくするには取穴を減らす・鍼は浅く・単刺・手技鍼をしない・灸の壮数を減らすなどの方法が有効です。

治療後のぼせが出現する原因として2つのパターンが考えられます。


1つは全体の施灸壮数が多かったり温補法をしたことによります。


特に熱証タイプで起こりやすいです。


2つ目のパターンは上方(特に頭部)に治療穴が多く配合された場合です。



鍼ではのぼせの出現は少ないですが、施灸では危険性が強いです。


のぼせを防止するためには


1. 熱証タイプは施灸を少なくする。


2.上方に取穴が多い場合は、太衝・中封・三陰交などにも刺鍼する。


等の方法があります。


のぼせが出現してしまった場合には、天柱・風池・天髎に単刺をした後太衝・中封・三陰交などに置鍼をします。


治療中にめまいが出現し、冷や汗・嘔気・顔面蒼白などを伴なう場合は?


脳貧血です。


対処法をお知らせします。


患者様を横に寝かせて下さい。


枕はない方が良いです。


水溝穴(人中)を押圧します。


足三里の鍼も有効です。


玉川病院で先輩の森ノ宮医療大学講師・佐藤正人先生の報告によると、座位での刺鍼、特にパルス通電をすると脳貧血が起こりやすいとの事です。


鍼に慣れていない人は特に要注意です。


詳しくは医道の日本200812月号の症例集積から見た急性腰痛治療上のヒント第5回をご覧になって下さい。

腹臥位で治療していると「手のしびれが出てきた。」と言われることがあります。


これは手を上方(額の方)へ挙げた姿勢で長く腹臥位になっていると起こります。


万歳姿勢であるライトテストをしたのと同じ事です。


胸郭出口症候群の方は特に起こりやすいので要注意です。


斜角筋・小胸筋の緊張が強いことが考えられます。


これらの筋緊張を緩和する治療を行なうと防止できると思います。

前回は、症状の多い方に対し、1穴で多くの作用を持つ経穴を利用する方法をお伝えしました。


今回は、1穴で複数の経絡に作用する経穴をお伝えします。


代表的なものとして以下の経穴があげられます。

百会-督脈・膀胱経・肝経が通っています。


関元・中極-任脈・肝経・腎経・脾経が通っています。


三陰交-肝経・腎経・脾経が通っています(有名ですね)。


風池・肩井-胆経・陽維脈が通っています。


照海-腎経・陰蹻脈


申脈-膀胱経・陽蹻脈

幾つかの経絡上に症状がある場合は上記の様に複数の経絡が通っている経穴を使ってみて下さい。

患者様の中には非常に症状が多い方がいらっしゃいます。


11つの症状に対応して治療すると多くの経穴を用いることになり、ドーゼオーバー(刺激量過多)になることがあります。


虚証タイプでは寝込んでしまうことにもなりかねません。


これを解決するには2つの方法があります。


今回は1つ目の方法をお知らせします。

例えば、眼精疲労・頭痛・めまい・肩こり・風邪・肘の痛み(テニス肘)を訴えている方があるとします。


風池で頭痛・風邪・めまいを治療し、曲池で眼精疲労・肩こり・肘の痛み(テニス肘)を治療します。


すると、2穴で治療できたことになります。


この様に1穴で多くの効果がある経穴を使うことは重要です。

皮内鍼は、軽い刺激で持続効果があるため非常に有効な治療法です。


しかし、時にはトラブルも発生します。

1.皮内鍼が気になる


 約12%位の確率で皮内鍼をすると、こり・痛みがが強くなったり、不快感を訴える人がいます。


このような方は皮内鍼をしない方が良いです。

2.皮内鍼の中の鍼だけが抜けてしまった。


 このトラブルを避けるためには円皮鍼に変えることをお勧めします。


セイリンからパイオネックスという小型の円皮鍼が出ており、非常に使いやすいです。


従来の円皮鍼は大きく、痛みが出やすく使いにくかったのですが、パイオネックスは全く不快感がなく非常に使いやすいです。


絆創膏から鍼がはずれることもありません。

3.皮内鍼を入れている部位が化膿した


 皮内鍼を入れるとまれに化膿する方がいらっしゃいます。


皮内鍼を入れる日数が長くなると危険性が高まります。


私は、1週間以上入れないようにしています。


糖尿病の方・痰飲傾向の方は特に注意をして下さい。


皮内鍼を止めるか、入れる期間を短くして下さい。

治療後悪化する原因として、患者さんの行動に問題があることがあります。

1)重いものを持つ


腰痛などで治療後痛みが軽減したり消失したりすると治ったと思い、重いものを持ったり無理をする方がいらっしゃいます。

2)炎症部位を暖める


とにかく暖めると血行が良くなるので患部を暖めるという人は患者さんのみならず、医療関係者でも多いです。


しかし、炎症がある部位(特に自発痛を訴えている部位)を暖めると悪化することがあります。


3)体操をする


五十肩で自発痛がある時に、肩が固まるのはまずいと考えて自分で勝手に体操をする方がいらっしゃいます。

あまり気にせずに無理をするタイプと、真面目過ぎて自分で治療をして悪化させてしまうタイプがあります。

1)~3)は予想できることなので、あらかじめ伝えておくと良いと思います。

治療後悪化する原因としては、治療者側に問題がある場合と患者さん側に問題がある場合があります。


今回は治療者側の問題について取り上げます。

1)理学テストのやり過ぎで悪化


 理学テストは椎間孔を圧迫したり、神経を牽引したりと症状を増悪させるものが多いです。


 ジャクソンテスト・スパーリングテストをやり過ぎて、悪化させたケースがあります。


理学テストを何度も行なうと症状が悪化しやすいです。

2)治療をしている時の姿勢で悪化


 腰痛患者に対して腹臥位で治療して悪化する場合があります。


 側臥位で治療をするか、腹臥位の場合は下腹部の下に枕を入れて下さい。


 五十肩では患側を長時間下にすると悪化することがあります。


 (普通患側を上にして治療しますが、両側に異常がある時は可能性があります。)

3)局所治療で悪化


 疼痛部位に強い炎症がある場合、局所治療をすると悪化することがあります。


 特に鍼の深刺、温灸で悪化しやすいです。


 例えば、扁桃炎の時に、咽の周囲に刺鍼をすると悪化したり、寝違えの時に頚部に刺鍼をすると悪化したりすることがあります。


 このような場合は遠隔治療をすることをお勧めします。

以上のことから、治療後の悪化は治療以外の要素で起こっている場合も多く、防止可能であるということが言えます。


次回は患者さん側に問題がある場合についてです。

1人の鍼灸師が同じ治療・同じ取穴をしても、患者さんによって全く効果が異なります。

13%非常に効果が出やすい人がいます。


誰が治療しても、刺鍼をすると即座に、劇的に筋緊張が取れたり、関節の可動域が改善したりします。

私の個人的な感想としては、性格が素直な人・常に感謝の気持ちがある人・人間関係を大切にする人が効きやすいという印象があります。

逆に13%非常に効果が出にくい人がいます。


ほとんどの人が効く治療を行なってもなかなか効果が出ないのです。

私の個人的な感想としては、疑り深い人・感謝できない人・人間関係を大切にできない人が効きにくいという印象があります。

以上をまとめると、鍼灸治療はある程度の精神レベルが必要だということになります。


実際、鍼灸治療を続けている方は、高学歴・高収入で人間関係を大切にしている方が多いです。


(私の鍼灸院ではクリスチャンの比率はかなり高いです。)

この効きにくい13%の人は鍼灸に向いていない人なので、無理に来院してもらおうとしない方が賢明です。

非常に効きやすいタイプ・非常に効きにくいタイプ・鍼灸の不適応症を除いた残りの方をいかに治していくかが、課題だと思います。