僕はもうだめだ -17ページ目

境界例の女 11


「安心させてくれる人」


僕はR子にかなり信頼されていました

一切の攻撃は受けず

言い方はおかしいかもしれませんが

大事にされていました

でもこれはMに対する

”当てつけ”

だったような気がします



逆にMは何かと理由をつけられ

いつも攻撃されていました

R子はMを罵倒するときに

僕を引き合いに出すらしく

すっかり洗脳されてしまったMは

数回しか会ったことのない

僕を信頼し尊敬し

挙句の果てには

僕のようにな男になりたい

とまで言い出す始末

これには参りました

でもこれは

R子の思惑通りだったようです



R子はMの奥にある

一番痛いところを

針の穴を通すように

ピンポイントで攻撃します

見ているだけでも

胸が痛くなるような

的確な攻撃の末に

愛想を尽かされそうになると

「Mがいないと生きていけないの!」

ですから

Mはたまらなかったと思います



彼はいつも

「俺が悪いんです」

と言ってました

そう、R子はMが嫌がることを

見つけるのが上手でした

これを憶えておいてください



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境界例の女 10


エリック・クラプトンが好きな僕に
B.B.キングが好きなR子が聴かせてくれた
二人の共演アルバムRiding with the King
僕らは”奇跡のアルバム”と呼んでいました
それを聴くことを理由にして
よくR子の部屋に遊びに行っていました
「R子さん、あれ聴かせてよ」
『そんなに好きなら買ってやるか?ん?』
イジワルそうな笑顔
買う予定も買ってもらうつもりも、ありませんでした
知ってたくせに

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Mが僕の電話番号を知った方法とは・・・


自宅に逃げ帰ったMが携帯をみると

R子からのメールが入っていたそうです


『テレビの裏をみて』


おそるおそる見るとそこには

まるで魔除けの札のようにベッタリと

R子の遺書が貼り付けてあり

遺書の中で僕は”大事な友達”として

別格の扱いで書かれていて

もしもの時は必ず連絡するように

所有しているCDをすべて僕に渡すように

記されていたそうです



Mは遺書を見て僕に電話をしてきたのです



Mはこんな状況なのにもかかわらず

『様子がおかしい』と都合よく

大まかに説明しちゃう

ちょっとズルい男の子なのでした



Mよ

僕はあの部屋に入るとき

本当に怖かったんだよ!



この切腹事件を境に

R子の様子はどんどんおかしくなっていきます

まるで坂道を転がり落ちるように

そして何故かMに信頼された僕は

この後、ことあるたびにR子の部屋へ駆けつける

救急隊員になってしまいます



このときは

「それでも逢えるなら」

と完全に自分を見失っていました

ほんとバカです



R子のお腹の傷がくっついた頃

Mからの電話が鳴りました



「Mです、今回はかなりヤバそうです」



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境界例の女 9


『大丈夫だから!騒がないで!』

ああ、なんてことだ!
血まみれのパジャマを着た女

ああ、なんてことだ!
むせかえるような血のにおい

ああ、なんてことだ!
床に転がっている血のついた包丁

血、血、血、血!

この現実離れした状況!

僕はさっきまでテレビを観て笑っていたのに!

僕は混乱した頭を必死にリセットして
この状況で二人きりはまずい、と判断しました

とにかく、誰か・・・・

あ、救急車を呼べばいいんだ
それと、警察
これはどう見ても事件だ

「救急車呼ぶ」

『や!め!て!』

『やめて!大丈夫だから』

R子はうつろな目でフラフラと立ち上がり
タンスの引き出しから
手術用?の針と糸を取り出しました
なぜそんなものが家にあるのか聞くと

『勤め先の歯科医院からくすねてきた』

は?何のために?

あらためて見ると
下腹部の傷は内臓までは達していませんでしたが
縦に5センチくらいの傷口はパックリと開き
中から黄色い脂肪がめくれ上がっていました
その奥から湧き水のようにドクドクと溢れ出る血

どう考えても病院直行レベルなのですが
R子は病院に行くのを頑なに拒み
鼻歌を歌いながら自分で縫合しはじめました

ザクザク

・・・・

「誰に刺されたの?」

『は?あははははは』

「おかしいこと言ってる?」

『自分で刺した・・・・だってMが・・・』

Mは数時間前までこの部屋にいて
R子がトイレに入っている間に例の元カノにメールをしたらしい
それを知って激昂したR子はMに暴力をふるった
あてつけのように自分の腕を包丁で刺しながら・・・
怖くなって逃げるMをマンションのエントランスまで追いかけて
手当たりしだいに物をぶつけたらしい
(後から知ったことだが、この時Mはケガをしていた)

最後はお約束の

『死んでやる!』

それでもMは自分の身に危険を感じ
怨念の叫びを背に逃げ帰ったのであろう
Mは何らかの方法で僕の携帯番号を知っていた
最後の叫びが気になったMは僕に電話をしてきた
そんなところだろう

この後Mと話をしましたが
R子が僕の存在と携帯番号を
Mに教えた方法を聞いて愕然としました



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