境界例の女 8
この時の判断が最良だったのか
最悪だったのか
僕は引き際を誤ったのか
あの結果は防げなかったのか
数年経った今でも答えは闇の中です
その闇は真夜中に突然姿を現せて
僕の身体にのしかかります
じわり、じわりと
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「もしもし?」
『・・・・・』
数秒の沈黙の後、搾り出すような声で
『・・・R子と付き合っているMといいます・・・』
げーーーーーーーー
R子め、あの夜のことを喋ったな!
と、思いましたが
下世話な予想に反してMは
『いつもR子がお世話になっています』
『・・・あの、お願いがあるのですが』
とても丁寧な口調で続けます
あれれ?
『R子の様子がおかしいので、様子を見てきていただけませんか』
なんだなんだこの展開は?トラップか?
でもあのR子のことだ
何があっても不思議ではないんだよな
くそー、もう考えている時間はない
ええい、ままよ!
僕は車に飛び乗りました
R子のマンションのロビーに着くと
そこにはR子のものと思われる靴や
割れたビール瓶が散乱していました
嫌な予感・・・
インターホンを何度も押しましたが
応答はありませんでした
玄関のドアに鍵はかかっていなかったので
勢いに任せて一気にドアを開けました
・・・充満する血の臭い・・・・
「R子さん?いるの?」
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正直に言うとこの時はとても怖かったです
奥から凶器を持った奴が飛び出してくるんじゃないか
そもそも最初から仕組まれていたんじゃないか
僕死んじゃうのかな?いや、まだまだ死ねないぞ
いろんな事が頭をよぎりました
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何かあった時に身を守らなくてはなりません
ないよりはマシかと玄関にあった傘を手に
土足で部屋にあがりました
『大丈夫だから!騒がないで!』
声がするほうを見ると
真っ暗な部屋の隅で
お腹と二の腕から血を流しているR子がいました
境界例の女 7
「境界例の女」というタイトルですが
これは境界例(ボーダー)の病気
そのものについてのお話しじゃありません
R子の特異な行動すべてが
境界例の症状という訳ではないのでご注意ください
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憧れていた人とのセックスは
とてもあっけなく終わってしまいました
本気で女性に惚れたことがある
男性ならわかるであろう
大好きな女性と
深い関係になれたときに湧いてくる
達成感や欲情とは別の
「あの」感覚もありませんでした
僕は本当にR子と寝たのだろうか
後日何事もなかったように接してくるR子
しばらくは平和で充実していたのですが
ある日R子の部屋で飲んでいたとき
突然、運命の歯車が動き出しました
R子は僕の前に1冊のノートを置いて
「読んでみ」
ノートを開くとそこには彼氏(!)と思われる人への
罵詈雑言が小さな字でびっしりと書かれていました
えーーーー!
彼氏いないって言ってたのに!
しかも、なにこの怨念ノート
彼氏がいたことを
隠していたことなんて気にする様子もなく
彼氏が重い病気(病名伏せます)の元カノに
隠れて連絡していたのが許せないの、と
ノートをバンバン叩きながら怒っていました
突然現れた彼氏という大きな存在
僕は放心状態になってしまいました
ポケーーーーー
目の前で怒っているR子の姿が
違う世界の出来事のようにぼんやり見えて
その声はくぐもって聞こえなくなってきました
ポケーーーーー
ああ、頭がボンヤリする・・・
「そうか・・・・彼氏いるのか・・・」
「僕はいったい何だったんだろう」
ポケーーーーー
数日後にその彼氏から電話がきました
「もしもし?」