境界例の女 14
突然の失踪から1週間
R子の行方は全くわかりませんでした
僕が警察へ捜索願いを出そうと言うと
Mは『それはダメです!』と
猛烈に反対しました
僕はMが何かを隠しているのを感じましたが
とくに追求しませんでした
なぜか?
僕はこのときすでにMの性格を掌握していて
放っておいたって
そのうち抱えきれなくなって、苦しくなって
僕に吐き出すのはわかっていたからです
1ヶ月経ってもR子の行方はわからず
MはR子の身を案じて憔悴しきっていました
僕は意地悪く何度も捜索願を出すように言いました
Mがあきらめて警察に行こうと考えはじめたとき
それを見透かすようにR子から僕にメールがきました
『明日正午に○○駅まで迎えにきて、Mには内緒』
駅内の待ち合わせ場所に立つR子は
少しやせて美しさに磨きがかかっていました
凛とした立ち姿は
雑踏に咲く薔薇のようで
R子の周りだけ空気が違っていました
遠くからでも見て取れる
息をのむような美しさに
均整のとれたスタイル
行き交う人の中には
何度も振り返ってまで
R子を見ている人もいました
僕はそんな様子を
しばらく遠くから眺めていましたが
やがて約束の時間がやってきたので
はやる気持ちを抑えながら
再会の喜びをを噛みしめるように
ゆっくりとR子のもとへ向かいました
「みんな心配してるよ、どこにいたの?」
・・・・
『AVに出演してきた』
荒れる予感
境界例の女 13
その夜、僕はR子の生い立ちを少しだけ知ります
母親はR子が小学生のときに亡くなっていて
その後から始まった父親との異常な関係
その鬼畜な父親はヤクザで刑務所で服役していること
それでも憎みきれないということ
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今までの疑問が解氷するように
R子の過去がドロドロと溶け出し
僕の足元に流れてきました
あの夜 の作業のようなセックス
やはりあの時
R子の目は僕を見ていなかった
卑しい僕はMが相手とのときはどうなのかと
そればかりが気になってしまい
不機嫌になってしまいました
R子はそんな僕を一向に介さず
ノートに絵を描いてはしゃいでいました
でも、目は笑っていませんでした
やがてR子は布団に入り
僕もそれに続いて滑り込むように
同じ布団で寝ました
R子は僕が着ているTシャツの裾を握ったまま
すぐに寝息をたてはじめました
僕はR子が手を離さないようにと願い
しばらくその美しい寝顔に見とれていましたが
いつの間にか眠ってしまいました
翌朝
テーブルの上にピンクドラゴンを残し
R子は失踪しました
境界例の女 12
Mからの電話の1時間後
僕はR子の部屋で
異様な光景に立ち尽くしていました
なんだこれは・・・・
床一面にびっしりと敷き詰められたゴミ袋
ソファの上にはおばあちゃんの遺影
電気のブレーカーを落とし無数のキャンドルが
部屋を怪しく照らしていました
部屋の中央では
全身入れ墨のR子が全裸で
家中の刃物を集めて
テーブルの上に並べていたのです
それはまるで何かの儀式のようでした
はっと我に返った僕は
あわてて刃物全てを
自分の車に持って行きました
電話で状況をMに伝えると
今夜は泊まってやってほしいと言います
・・・・ああそうか!
僕がR子のことを好きだって知らないんだ・・・
だからそんなに簡単に言うんだ
ということは
僕はどれだけMに嫉妬してるのかも知らないだろうな
Mは知っててトボけられるほど器用じゃない
逆にR子は確信犯のような気がする
「彼氏なんだから君が泊まりなさい」
とは言いませんでした
「OK、わかった」
僕はR子のかわいい寝顔が見たかったし
R子も僕がいれば少しは落ち着くだろう
微かな期待という小刀を懐深く忍ばせて
斬りかかるチャンスをじっと待っている卑怯者
信用なんてクソくらえだ
僕はいい人なんかじゃない
今思えばこのとき、いや最初から
僕はいつだって蚊帳の外でした
どんなときもR子の「対象」はMだったのです
恋愛の対象・憎悪の対象・攻撃の対象
僕は蚊帳の外