僕はもうだめだ -14ページ目

境界例の女 20


颯爽と出て行ったように見えたR子ですが

実はただ単に

体内に残る「それ」をMへ見せるため

急いでMの元へ向かっただけでした



もはや刀どころではありません

R子は核爆弾を落としました

僕は知らぬ間に

爆弾を作る手伝いをしていたのです

そして核弾頭には僕の・・・



僕の名前が隣の部屋から聞こえてくるのを

じっと息を潜めて待ちました

もう、覚悟は決まっていました

二人は激しい喧嘩をしているものの

R子は僕の名前を出すつもりはないらしく

まるで僕が聞き耳をたてているのを

見透かしているかのように

大きな声で何度も

「Mの知らない人だって!」

「放っておいたMが悪いんだ!」

と繰り返していました



もう、帰ろう・・・

入ってきた窓から出る前に

玄関のカギを締めようと

ドアに近づいたところ

ドアポストの内側にビニール紐で

この部屋のカギがぶら下がっていました

おそらく、複数の不動産仲介業者による

部屋案内のためでしょう

R子はこれを使って中に入っていたのです

僕は窓から出るのをやめて

玄関の外から

ドアポストに手を突っ込み

ビニール紐の先にあるカギを手繰りよせ

しっかりとドアにカギをかけて

再びポストにカギを戻しました

アパートの廊下にまで漏れ聞こえる

二人の喧嘩の声に背中を押され

早足にアパートを後にしました



この夜の常軌を逸した

R子の行動を目の当たりにした僕は

ここぞとばかりに

自分の負い目を都合良く

恐怖の向こうに放り投げて

この日を境にR子とMから少しずつ

距離を置くようになりました



< 第19話 | 第21話 >




境界例の女 19

みなさん、お元気ですか?
先生は風邪をひいてしまいましたよ
いつもことだけど、食欲はなくならないので
さきほどテキサスバーガーを2個、ナゲット・ポテトなど
さらっと食べましたが、足りないくらいです
みなさんも風邪と食べ過ぎには気をつけてくださいね!


前回のあらすじ:
空き部屋に潜んでいたR子との異常なセックス
R子は終わるとすぐに、颯爽とドアから出て行き
そのままMの部屋に入っていきました
僕は一人暗い部屋に取り残されて・・・





二人の声が微かに聞こえる

部屋を隔てる壁に背をつけ

カーテンのない部屋の窓から

ぼんやりと月を眺めていました



月は僕の過ちを責めるように

心臓までつき刺さるような

無数の針のような光を放っていました



3人の不毛な関係は

続ければ続けるほど

まるで刀を研ぐように

鋭さを増すばかりでした

R子が言った


『あまりMと仲良くしないで』


この言葉の真意を推しはかるまでもなく

誰かが大ケガをする前に

僕が身を引こうと決心しました



しかし、もうすでに

その刃は鎧の上からでも

簡単に骨まで達するほど

鋭利になっていたのです



しばらく静かだった隣の部屋から

甘い吐息が聞こえたような気がしました

やれやれ、と部屋を出ようとした

まさにその時


Mの怒声が聞こえてきました


「R子!これ誰の精.液?フザケンナ!」





僕のです






< 第18話 | 第20話 >




境界例の女 18

みなさん、お元気ですか?
いよいよ学校が始まりました
久しぶりに頭を使って知恵熱が出そうです
それにしても、新しい事を知るというのは楽しいものですね
自分が納得できるまで、やります

前回のあらすじ:
投げ込まれたDVDはR子が出演しているものではなかった
帰り際に覗いた隣の空き部屋で見たものは
壁にベッタリと耳をつけて
Mの部屋の様子を盗み聞きしているR子の姿でした





壁に耳をつけてMの部屋の様子を伺うR子


この時ほど生きている人間に


恐怖を感じたことはありません


月明かりに照らされたR子の顔は


能面のように無表情でした


僕は恐怖のあまり2、3歩下がりました



ジャリッ ・・・



耳が痛くなるような静寂の中で


砂利を踏む音は


いともたやすくR子の耳まで届いてしまいました


R子はとくに驚いた様子もなく


ゆっくりとした動作で青白い顔を向け


こっちへおいでと


まるで魔界へいざなうように


ヒラヒラと手招きしました


僕が戸惑っているとみたR子は


おもむろに立ち上がり音もなく窓を開け


白くて細い腕を差し出しました




氷のような冷たい床に座り


僕が口を開こうとした刹那


R子は言葉をさえぎるように


唸るような低い声で


『あまりMと仲良くしないでほしいんだけど』


と、僕に詰め寄ってきました


「え?・・・・なに言って・・・」


『シッ』


隣の部屋でMがシャワーから出てきたようでした


やがてドライヤーの音が聞こえてきたと思うと


R子はいきなり僕を押し倒して


キスをしてきました




R子の手は


流れ落ちる淫らな液体のように


スルスルと下へ伸び


器用に片手でベルトをはずし


僕のジーンズのジッパーをおろして


中に入ってきました




音を立てられない状況で


僕は身動きがとれず


R子のなすがまま


そう


いつだって僕はR子のなすがままでした


やがてR子はもったいぶるように


ゆっくりと僕の上に腰を沈め


『ふふふ、壁叩いてみようか?』


と悪魔のような顔をしました




服を着たまの異常なセックス


R子は前回成し得なかったことを


まんまとやり遂げ


満足気な顔で僕から降りると


抜け殻のように横たわる僕を置いて


颯爽と玄関のドアから出て行きました


月だけが見ていました



深海のように


暗くて息苦しい部屋


隣の部屋から聞こえる


二人の会話


僕は


悔しさのあまり


臍を噛む




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