僕はもうだめだ -13ページ目

境界例の女 最終話




「好きになった女性は境界例だった」

傷 つけることが唯一の愛情表現
人間離れした美しさと、つかみどころのない性格に
僕らは翻弄され、とんでもない結末を迎えてしまいました

このシリーズは完結しました
最初から読んでいただく場合は
こちらからどうぞ







PM 8:30
病院到着



玄関ホールにいるMに事情を聞こうとする

興奮状態で話にならず

容態さえも教えてもらえない


なぜか、とても、怒っていて

何度も「帰ってくれ」と言われる

居合わせた他の人も同意見らしく

目が「帰ったほうがいい」と言っている


・・・


結局、僕は安否の確認もさせてもらえぬまま

夜の病院を後にしました



この夜がR子と関わった最後の日になりました

次の日からはR子、Mともに連絡がとれなくなり

そのうち、携帯も繋がらなくなり

二人の消息は完全に途絶えました



苦しくも幸せだったR子との日々は

半生を共に歩いたような

とてもとても長い時間だったような気がしますが

実際は混雑するスクランブル交差点で

すれ違いざまに目が合っただけのような

一瞬の儚い時間だったのでしょう



それでも僕は今でも

路上で振り返ったまま

雑踏の中へ消えていった

あの悪魔的に美しい

R子の姿を探し続けています






境界例の女 22



「いままでありがとう、さようなら」



瞬時に頭をよぎったのは

R子が「自分の人生を呪う」と言い始めた頃から

夢中になってやっていたネットサーフィン

R子が凝視するモニタを後ろから覗くと

自殺に使う睡眠薬の購入方法や

致死量などを説明しているサイトが表示されていました




Windows98の時代です

当時はネットといえども情報が少なくて

まともな情報は手に入らないだろうと

高を括っていました

市販の睡眠薬で死ねないのは知っていたし

R子は自殺をするようなタイプではないと

”勝手に”思っていました

たとえパフォーマンスだとしても

それは、ないと・・・





PM 3:30
R子からのメール着信
『いままでありがとう、さようなら』
ヘタレリミッター解除
仕事を早退してR子のマンションに向かう

PM 4:00
R子のマンションに到着する
インターホンは応答がない

PM 4:30
Mに電話をする
呼び出し音はするが、出ない
Mのアパートへ向かうことにする

PM 5:00
Mのアパートに到着
Mは不在
ドアの前で微かにR子の匂いがする
ここに、いたのか?

PM 6:00
ふたたびR子のマンションへ
裏手に回るとR子の部屋の窓が開いている?
カーテンがゆっくりと揺れている
よく見ると窓ガラスが割れていて
隣とを隔てるベランダの薄い板も破られている
つまり、隣の部屋から突入した形跡だ

PM 6:10
隣の部屋のインターホンを押す
5時頃Mが警察に連絡して突入したと聞く
しかしR子はそこにいなかったらしい

PM 7:30
Mに電話
電源が入っていない・・・

PM 8:00
近所の交番へ行くが警官は不在
署への直通電話で今回のいきさつを話す
R子の名前を伝えると
その人は確かに病院に担ぎ込まれたと
しかし病院名は身内にしか教えられないと言われる

PM 8:05
交番の外に出て
自分がケガをしたと虚実の119番をする
このエリアの緊急病院が判明する
すぐに病院に電話をする
女性が搬入されているとのこと

PM 8:30
病院到着
薄暗い病院の玄関ホールに

数人の人影が見えた

Mもいる

遠くから見る雰囲気から

ああ、ダメだなと思った



なぜこんなことに・・・



(次回最終話)

※「あとがき」はアメンバー限定記事になっています
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境界例の女 21


それは偶然でした

仕事で行った隣町で食事をしていると

窓から見える向かいの小さな薬屋から

R子が出てきたのです



数十キロ離れた隣町の薬屋まで

自転車で来ているという

不可解な行動に

以前の僕ならすぐに店を出て

R子のもとへ駆け寄ったでしょう

「なにやってるの?」と

しかし、あの核爆発の夜から

僕の中のリミッターは

他人に近いところまで

引き下げされました

リミッターで制御された

僕の心と身体は

尻に根が生えているかのように

立ち上がることさえもできませんでした



R子は買った物をショルダーバッグに放り込み

ヒラリと自転車にまたがり

首に巻いたスカーフをなびかせて

家とは逆の方向に走り去っていきました



僕はこのとき

大きな失敗をしました

どんなことをしても

R子が買ったものを確かめておくべきでした



それから1週間ほど経った頃

R子から不吉なメールが届きました

『いままでありがとう、さようなら』




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