
孤独な放浪者
キャット・パワーは、1990年代半ばにデビューしたアメリカの女性歌手。やさぐれた独自の佇まいが気に入っている。
音はフォーク&ブルースが基本になっていて、パンクやヒップポップの影響もある。ベック、ニック・ケイブ、ボニー“プリンス”ビリーなどと近い匂いがするし、人間味のあるニコっぽい感じもする。
彼女は、基本的には静けさを持ったどこか不穏な音楽をつくる。
分かりやすいメロディやポップさはあまりないので、あまり一般受けはしないかもしれない。でも世界中のある種の人には人気者のようだ。
キャット・パワーの最初の名作は1998年にリリースした『Moon Pix』だと思う。ミニマムな音の中に彼女特有の緊張感がある。
Cross Bones Style
2003年のアルバム『You Are Free』では、シンプルな中にもいろいろな音楽の影響が見え隠れしていている。
キャット・パワーの声にはどこか孤立したニュアンスがあり、彼女には自分自身の個性は決して手放さないが、時代時代の音や雰囲気の影響は自然なかたちで受ける人という印象もある。
「Good Woman」という曲のゲストでは、パールジャムのエディ・ヴェーダー、ニック・ケイブとも一緒にやっているバイオリニストのウォーレン・エリスなどが参加している。
私は良い女になりたい
そしてあなたも良い男でいてほしい
それがあなたから離れる理由
それが二度とあなたに会わない理由
私はあなたの心がとても恋しくなるでしょう
そして私はこの愛を永遠に愛し続けるでしょう
Good Woman
2012年の『Sun』はそれまでとは大きくスタイルを変えながら、最大のヒット作になった。彼女のアルバムの中でこの作品は異質だが、実験性とエネルギーに溢れていて最高だと思う。
アコースティックギターの音はほぼ聞こえず、エレクトロニクスを多用しながら作りこまれていてフォークっぽさは皆無、ほとんど一人で制作している。
アルバムの制作資金は、作品に口を出させないためにキャット・パワーが自分で負担したそうだ。そんなエピソードだけでなく、いつもの長い黒髪を短く切って金髪に染め、どこかのパンク姉ちゃんのようになった姿も素晴らしい。
「Cherokee」の映像は彼女自身が撮っている。
もしも私が、私の時より早く死んだら
さかさまに埋めて欲しい
チェロキー・キサメ
私が倒れるときには
Cherokee
キャット・パワーはライブ・パフォーマーとしても素晴らしく、この頃の映像を見ると特にパンクな感じが強い。
アルバムの最後に入っている「Peace and Love」のライブを見ると、ギターやピアノを演奏しながら歌っているときの彼女とは全く別の人のようにも見える。
Peace and Love
『Sun』が売れたこともあってか、長く所属していたマタドール・レコードから売れるアルバムを出すように言われたキャット・パワーは、もちろん言われたことなんか聞かず、それどころかレーベルを辞めてしまった。
次のアルバム『Wanderer』は、レーベルを移籍したこともあってか6年間のブランクの後の2018年にリリースされた。
前のアルバムとはまた違って生音が中心となっていて、「放浪者」というタイトル通りの、どこか土っぽくブルース感覚の強い内容となっている。
私は出ていくよ
良いことは消えてしまった
私は出ていく
それは良いことさ
あなたが明日も留まればいいのに
あなたに留まってほしい
明日行ってしまわないで
どこにも行かないで
Me Voy
この後のキャット・パワーは、2022年にカバーアルバム、2023年にボブ・ディランのロイヤルアルバートホールのライブ全曲を再演奏したライブアルバムを発表している。
そろそろ多くの人が待っている、新曲ばかりのニューアルバムが出るころじゃないかな。
キャット・パワーの音楽には、彼女の持つ強いアウトサイダーの感覚が、声と音にそのまま出ている。ザクっとしたこの音は唯一無二だと思う。
Metal Heart
ちょっと似ているかも
孤独な心 -Nick Drake とBonnie "Prince" Billy









