カラオケ行こうよ!!
俺 「夏子さ、仕事しないの?」
夏子 「ないんだからしたくてもできない」
俺 「いや、たまにハネのばすのもいいけど……」
夏子 「カラオケ連れてって!」
俺 「唐突過ぎる (´Д`)」
夏子 「いつもよく連れてってくれたのに」
俺 「付き合ってたときは、そりゃ連れてくでしょ」
夏子 「別れたから連れて行かないっていうの!?」
俺 「付き合ってたときよりはテンションさがるしなあ」
夏子 「別れただけでそんなに豹変するなんて」
俺 「豹変したのそっちだろ (´Д`)」
夏子 「夏子は歌いたいの! ふんふん、ふんぽこー!」
俺 「歌ってくればいいじゃん」
夏子 「誰と」
俺 「ほら、夏子のことフッた彼氏と」
夏子 「……最悪。いやみくさー!」
俺 「いやみだもん」
夏子 「ふんぽこ! ふんぽこ! ふんぽこ!」
俺 「……なに (´Д`)」
夏子 「ふんぽこ! ふんぽこ! ふんぽこ!」
俺 「……」
夏子 「ふんぽこ! ふんぽこ! ふんぽこ!」
俺 「……わかった、行こう (´Д`)」
夏子 「わーい♪」
オペラ座の怪人
夏子は無類の『オペラ座の怪人』好きだ。
DVD を借りてきては、たいくつしのぎに観ている。
夏子 「ファントォォォォォォォォォーーム!!」
俺 「!? (´Д`)」
夏子 「テュクテュクテュンテュンテューン♪」
俺 「……どしたの突然」
夏子 「映画の『オペラ座の怪人』大好きなの」
俺 「いや、それは知ってるけど、なんで歌うのよ」
夏子 「好きなら DVD 観ながら歌うでしょ」
俺 「でもほら、ここさ、壁うすいし……」
夏子 「ファントォォォォォォォォォーーム!!」
俺 「注意したらなおさら声出すって (´Д`)」
夏子 「好きなんだからいーじゃーん!」
俺 「まあ、落ち込んでる夏子よりいいよな」
夏子 「落ち込んでるよ!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺 「元気に言うことじゃないよ (´Д`)」
夏子 「こうしてストレス発散しないとまた泣いちゃう!」
俺 「うんうん、じゃあ歌えばいいよ」
夏子 「ファントォォォォォォォォォーーム!!」
俺 「…… (´Д`)」
夏子 「そういや、海外のあの子はどうなったの?」
俺 「チャットしてた子?」
夏子 「うん」
俺 「ああ、普通に友だちとして付き合ってるよ」
夏子 「ファントォォォォォォォォォーーム!!」
俺 「……人のはなし聞いてる?」
夏子 「テュクテュクテュンテュンテューン♪」
俺 「聞いてないね (´Д`)」
夏子 「聞いてる! でも良かった!!」
俺 「なんで」
夏子 「夏子だけ失恋して勇太郎だけラブラブはダメでしょ!!」
俺 「ダメって…… (´Д`)」
夏子 「あっ! そろそろ出てってよ」
俺 「20:00か……」
夏子 「うん♪」
俺 「メシ食ってくるからあとで文句言わないでね」
夏子 「何食べてくるのよ」
俺 「何かな。居酒屋でひとり焼き鳥でも食おうかな」
夏子 「夏子も行く!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺 「……おかしいだろそれ (´Д`)」
夏子 「ファントォォォォォォォォォーーム!!」
俺 「……わかったいこう (´Д`)」
夏子 「わーい♪」
俺 「自分勝手すぎるよマジで」
夏子 「ファントォォォォォォォォォーーム!!」
俺 「…… (´Д`)」
4.5畳のルール改定
夏子 「ねえねえ」
俺 「なに」
夏子 「夏子の居場所はどこにあるの?」
俺 「どういうこと?」
夏子 「こんなに悲しいのにいつも一緒にいるの?」
俺 「悲しいなら、一緒にいれば安らぐんじゃない?」
夏子 「一緒にいるから安らがないのよ!」
俺 「サラリとひどいこと言うよな (´Д`)」
夏子 「たまにはいなくなってよ……」
俺 「おれがいないとき何するの?」
夏子 「ひとりで泣きたいの!」
俺 「いつ泣いてもいいよ」
夏子 「嫌!」
俺 「……」
夏子 「20:00以降は24:00まで外にいてよ」
俺 「はい? (´Д`)」
夏子 「毎日4時間だけ外にいて!」
俺 「おいおい、どんな無茶言ってるかわかってる?」
夏子 「こっちも苦しいんだから、勇太郎も苦しんで!」
俺 「……いやな共同体意識だな」
夏子 「勇太郎が悪いから夏子にフラれたのよ?」
俺 「おいおい、浮気はタナあげかよ」
夏子 「浮気じゃなくて本気!!」
俺 「でも本気でフラれたよな」
夏子 「ひどい!」
俺 「ひどいことしたらひどい結果になるもんだよ」
夏子 「ひどいことしてないのにひどい結果になってる!」
俺「……」
夏子 「とりあえず、4時間だけ外!!」
俺 「もうわかったよ……そーしますよ (´Д`)」
夏子 「約束だからね! 明日からそうしてね!」
俺 「……はいはい」
翌日の夜 20:00
夏子 「時間! 早く出てって!」
俺 「……はいはい (´Д`)」
夏子 「24:00になったら帰ってきていいよ」
俺 「……はいはい (´Д`)」
そして 21:00
俺 「さ、寒い……。もう秋だからなあ」
プルルルルルル♪
プルルルルルル♪
俺 「は、はい。何?」
夏子 「うどん茹でて!」
俺 「はい?」
夏子 「お腹すいたから茹でて!」
俺 「茹でるくらいできるだろ! もうラーメン食ったよ」
夏子 「ひどい! なんで私呼ばないの!?」
俺 「す、すみません…… (´Д`)」
夏子 「茹でて! 汁も作って」
俺 「……はいはい(´Д`)」
別れてもポイント永久継続
近所に焼き鳥屋がある。
『ひかり鶏』という、やきとりの美味しい居酒屋だ。
特に、鶏の皮を薄くのばして油で揚げる“鶏せんべい”は格別!!
ここは、飲食代に応じてポイントカードにスタンプを押してくれる。
ポイントがたまると2000円引きになるという特典つき!!
いつも夏子と行っていたのだけれど……。
夏子 「勇太郎さ」
俺 「なに」
夏子 「あの『ひかり鶏』のポイントカードある?」
俺 「あるよ」
夏子 「チョーダイ♪」
俺 「なんでよ。行くとき俺が店に出せばいいじゃん」
夏子 「いや、夏子が行くの」
俺 「は? 俺も行くでしょ」
夏子 「夏子がほかの人と行くの!!」
俺 「友だちと?」
夏子 「アノ人と」
俺 「は? フラれたんでしょ」
夏子 「でも誘ったら行くって言ってくれてるの」
俺 「……それおかしいだろ」
夏子 「なんで」
俺 「フラれたのにまだ諦めてないの?」
夏子 「どうなるかわかんないでしょ!!」
俺 「……」
夏子 「いいからポイントカード!!」
俺 「待て待て」
夏子 「なによ」
俺 「『ひかり鶏』に行くとおれが払ってたよな」
夏子 「うん」
俺 「俺のポイントを夏子がほかの男とデートするために使うんだぞ?」
夏子 「えー! いいじゃーん。ケチすぎるヨー」
俺 「2000円引きが惜しいわけじゃない。気持ちの問題よ」
夏子 「夏子が喜ぶの嬉しいでしょ」
俺 「またそれか (´Д`)
」
夏子 「だって夏子は夏子なんだからいいでしょ!!」
俺 「意味わかんないし」
夏子 「早く出してよバカ!!!!!!!!!!!!!」
俺 「本性出たな!! ってか、おごってもらえよ!!」
夏子 「そんなこと頼めないでしょ!!」
俺 「こういうときは男がおごるもんだ!!」
夏子 「お金ない人なの! 夏子が出すときもあるの!」
俺 「おれのポイントまで出す気かよ」
夏子 「ケチーー!!!!!!!!!!!!!!!」
俺 「……もういいよ。あげるあげる」
夏子 「最初からそうしてよ」
俺 「……あれ?」
夏子 「ん?」
俺 「スタンプ2個しか押してねーや」
夏子 「……」
俺 「……」
夏子 「早くポイント増やしてよバカ!!!!!!!!!!!!!」
俺 「夏子が食って増やしてこい (´Д`)」
夏子 「たまったポイント勇太郎が使うんでしょう!!」
俺 「だめなの?」
夏子 「ダメに決まってるじゃん!!」
俺 「なんでよ。話がおかしいでしょ」
夏子 「勇太郎のものは夏子のものでしょ!!」
俺 「別れてもかよ!!!! (´Д`)」
夏子 「ズット!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺 「……」
『4.5畳の恋人。』について
炊いたらあとには戻れない
夏子は俺にタンカを切って浮気をしたはいいが、
その相手の男性にフラれ、けっきょく独り身に……。
俺は戻ってきてほしい気持ちがあるから復縁を申し出るものの……。
俺 「ねえ」
夏子 「なに」
俺 「その彼は諦めて、俺とまっとうに進もうよ」
夏子 「無理」
俺 「なんで」
夏子 「一度終わった人とヨリは戻さない主義なの」
俺 「そんなの意味のないポリシーだよ」
夏子 「お米だって炊いたら精米に戻らないでしょ」
俺 「夏子は米なのかよ (´Д`)
」
夏子 「いままで夏子は元彼に戻ることはなかったの」
俺 「それが意味ないことだって」
夏子 「戻りたくても戻れないの!!」
俺 「なんで」
夏子 「経験して成長したのよ。もう退化はできない」
俺 「俺が原始人みたいな言い方だな(´Д`)」
夏子 「大豆だって生長して納豆になったら大豆に戻らないでしょ!!」
俺 「それは成長じゃなくて菌のパワーな」
夏子 「夏子はもう戻れないの。そういう性格なの」
俺 「……わかった」
夏子 「……」
俺 「俺もダメモトで言っただけ」
夏子 「……台湾の子とはうまくいってるの?」
俺 「うまいもなにも、友だちだよ」
夏子 「……そう。よかったじゃない」
俺 「まあ、その関係もどうなるかわからないね」
夏子 「人と人なんてそんなものよ」
俺 「だから俺と夏子もどうなるかわからないよね」
夏子 「……うん、まあ、私は戻らないけど」
俺 「かたくなだな。持論に自信ありすぎ」
夏子 「だから米は大豆に戻らないでしょ」
俺 「うん、米は大豆に戻らないよね」
『4.5畳の恋人。』について
夏子ふられる
夏子が壊れた……。
俺 「夏子おかえりー」
夏子 「あぁぁぁくぁくくあぐああぁぁ……」
俺 「な、なに!? どした!!」
夏子 「……ふられた」
俺 「ええええええええええええ!!」
夏子 「あああぁぐあああぁぁぁぁ……」
俺 「告白したのか?」
夏子 「した……」
俺 「なんて言われたの……」
夏子 「“悪いけど女性として見れない”って」
俺 「ひ、ひでえ!!(´Д`)」
夏子 「……ああぁくぁくぐぐぐぁぁ」
俺 「もうちょっと、なんか、うまい断り方あるだろうにね……」
夏子 「断られたら同じでしょ!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺 「……まあ、そうかもしれないけど」
夏子 「今日もあの子とレッスン?」
俺 「は……はい」
夏子 「そろそろハッキリ言いなさいよ」
俺 「何を……?」
夏子 「あの子のこと好きなんでしょう?」
俺 「……まあ、嫌いではないよ」
夏子 「へぇ~」
俺 「……何が言いたいの?(´Д`)」
夏子 「私のクシャミひとつで終わる恋かぁ~」
俺 「おおおおお、おい!! 声とか出すのナシ!」
夏子 「ここ夏子の家なの! 何してもいいでしょ!」
俺 「夏子も同居のことは好きな人に言えない。俺も言えないの」
夏子 「……な、なにそれ」
俺 「つまり、同じ立場でしょう? なら協力し合おうよ」
夏子 「……いまからまたボイスチャットするんだよね」
俺 「……う、うん」
夏子 「……」
俺 「最近、夏子とてもカリカリしてるよね」
夏子 「当たり前でしょう!! 毎日30分くらい音出せないのよ?」
俺 「いや、ボイスチャットやりだす前からカリカリしてる」
夏子 「……」
俺 「ふられた影響もあるだろうけど」
夏子 「……勇太郎に関係ない!!」
俺 「……夏子のこと、俺は心配だよ」
夏子 「……いいからボイスチャットはじめて!! 今日は早く寝るの」
俺 「う、うん……」
夏子 「……あああぐぐぐぁぁ……ぁぁあぁ」
俺 「おいおい、頼むよ(´Д`)。そんな泣き声だしたら終わりだよ」
夏子 「……」
俺 「じ、じゃあボイスはじめるね」
夏子 「……」
……ボイスチャット開始。
勇太郎のボイス: こんばんは♪
RINGのボイス: こんばんは~♪ 今日も話せて嬉しいです。
勇太郎のボイス: 俺も話せて嬉しいよ。毎日ありがとう♪
RINGのボイス: お礼はいりませんよ。私も嬉しいから。
夏子 「……あぐぁぁあ……ぬぬぬぐっぬふっ……」
勇太郎のボイス: ぐああああああああああ!!
RINGのボイス: どうしたの!?
勇太郎のボイス: 熱いお茶こぼしちゃった!!
RINGのボイス: 大丈夫!? すぐにふきましょう!!
勇太郎のボイス: う、うん!! ありがとう。
その日は、いつもより早くボイスチャットをきりあげた。
夏子の気持ちを大切にするべきと考えたからだ。
とはいえ、俺も夏子につらい状況を強いているわけで、
今後どうするか、対策をたてなくてはならないと感じた。
『4.5畳の恋人。』について
英会話じゃなくて日本語会話
俺のボイスチャットでの英会話教室が開始。
ボイスチャットとは、すなわち電話と同じように会話をするもの。
もちろん俺の声は夏子に聞こえる。
でも……
夏子と一緒にいる4.5畳の部屋でボイスチャット
するしかないわけで……。
俺 「わかった?」
夏子 「ボイスチャット中、静かにしてればいいんでしょ!!」
俺 「そ、そう。ほんの20分だけだから」
夏子 「……」
俺 「いい? いまからするからね」
夏子 「はいはい」
※以下、勇太郎の声だけ夏子に聞こえます。
RING(リン)の声はイヤフォンで聞いているので夏子に聞こえません。
勇太郎のボイス: こんばんは~♪
RINGのボイス: こんばんは~♪
勇太郎のボイス: うわー、とても大人っぽい声ですね。
RINGのボイス: え~! そんなことないですよ。
勇太郎のボイス: しかも日本語上手だ。
RINGのボイス: 勇太郎さんには、恋人はいますか?
勇太郎のボイス: 恋人はいないなあ。出会いがなくて……。
夏子 …… (¬_¬)
RINGのボイス: そうですか。でも、声がカッコイイですよ。
勇太郎のボイス: 突然何を言うんですか(笑)。
RINGのボイス: 本当です。
勇太郎のボイス: リンさんだって、とても大人っぽい声ですよ。
夏子 …… ┐( -"-)┌
RINGのボイス: え~、ありがとうございます♪
勇太郎のボイス: それにしても日本語が上手すぎるね。
RINGのボイス: はい、日本の雑誌を買っていますし、日本のテレビも見ています。
勇太郎のボイス: すごいね!! 日本のモノってそんなに人気あるのかぁ。
RINGのボイス: 昨日はロンドンブーツの番組を観ました。
勇太郎のボイス: 台湾でもやってるのかぁ。
RINGのボイス: 『ケロロ軍曹』が大好きなんです。だから毎週観ていますよ。
勇太郎のボイス: なんでもあるんだなあ。俺は台湾のことありま知らないよ。
RINGのボイス: じゃあ、いろいろ教えますよ♪
勇太郎のボイス: いろいろ教えて欲しいよ~。リンさんのことも。
夏子 …… (-_-#)
RINGのボイス: はい、いろいろ教えます。よろしくお願いします。
勇太郎のボイス: うんうん、よろしく!!
RINGのボイス: 明日もボイスチャットしてくれますか?
勇太郎のボイス: うん、いいよ。何時がいい?
RINGのボイス: 日本時間の夜9時は大丈夫ですか?
勇太郎のボイス: じゃあ、明日の夜9時にボイスチャットしましょう。
夏子 …… !Σ( ̄ロ ̄lll)
RINGのボイス: ありがとう♪ では、また明日♪
勇太郎のボイス: また明日ね~♪ イエーイ♪
…………ボイスチャット終了。
夏子 「明日も?」
俺 「……お、おおおお許しを女王様(´Д`)」
夏子 「連日する気?」
俺 「え、英会話だから頻繁にしないとレッスンにならない……」
夏子 「っていうかさ勇太郎……」
俺 「な、なに」
夏子 「英会話じゃなくて日本語会話じゃん」
俺 「ううっ……(´Д`)」
夏子 「勉強っていうから音出さなかったりして協力してるのにさぁー」
俺 「まずはコミュニケーションをとる部分から……」
夏子 「へぇー」
俺 「や、焼肉で許して」
夏子 「焼肉苑で焼肉3回」
俺 「は、はい……(´Д`)」
『4.5畳の恋人。』について
夏子、機嫌が悪くなる
同棲していにたもかかわらず、
破局をむかえたカップルは星の数ほどいると思う。
その場合、数日の猶予はあるものの、
早急に男女のどちらかがその家を出て行くことになるのが
普通のことだろう。
しかし、俺と夏子は、8月に破局をむかえ、
12月までの4か月間も同棲……いや、
同居を続けなくてはならなくなった。
俺=勇太郎は彼女に浮気されたカタチになり、
元(?)彼女=夏子は他の男性にベタボレ。
……この状況でふたりの生活。
もっと根本的な問題がひとつ……
4.5畳のワンルームで同居しているということ。
俺 「おおおおっ!! 今日もいる♪」
夏子 「……なに?」
俺 「メッセンジャーで知り合った女性だよ。いまオンラインなの」
※オンライン=いまパソコンの前でインターネットをしている状態。
夏子 「ネット恋愛してるの?」
俺 「バカ言うなよ(´Д`)。英語教えてもらっているの」
夏子 「?」
俺 「ネットで知り合った台湾人の女性から英語教えてもらっているの」
夏子 「台湾って英語の国だっけ」
俺 「いや、その子が英語に堪能だったのよ」
夏子 「勇太郎に英語教えてその子になにかメリットあんの?」
俺 「厚意で教えてくれてるんじゃん!! メリットとか言うなよ」
夏子 「だって、おかしいじゃん。下心あるよ!!」
俺 「おいおい……台湾と日本だよ?(´Д`)」
夏子 「遠距離恋愛とか狙ってるんじゃないの?」
俺 「俺は英語を教えてもらうかわりに、日本語教えることになってるよ」
夏子 「そういうのメリットっていうのよ!!」
俺 「あ……そう。まあ、お互いに、純粋に勉強したい気持ちでやってるよ」
夏子 「へぇー」
俺 「なんか今日はトゲがあるな」
夏子 「トゲなんかない。夏子はいつもの夏子よ」
俺 「そう……」
俺は同僚の高橋のアドバイス通り、
インスタントメッセンジャーで
「英語を教えてください。私は日本語を教えます」
という看板をインターネット上に出した。
そこで知り合った女性はRING(リン)。
俺の看板を見てくれて、俺にメッセンジャーで
声をかけてくれたのだ。
彼女は台湾の台北に住む大学生で、
アルバイトで英語講師をしているという23歳。
英語の講師ならバリバリ英語を習える!
しかも、大学で日本語を専攻しているので、
日本語がとても上手だ。
勇太郎の発言: それにしてもあなたは日本語が上手ですね^^
RINGの発言: そうですか? そんなことないですよ。
勇太郎の発言: 本当は日本人なんでしょう?
RINGの発言: そんなことない……orz
勇太郎の発言: orzなんて日本以外で使う人いないよ!!
RINGの発言: え~@@'' 台湾でも使いますよ!
勇太郎の発言: 本当?
RINGの発言: うん。台湾には日本の文化が多く入ってきています。
勇太郎の発言: なるほど……。
RINGの発言: 仕事はなにをしていますか?
勇太郎の発言: 普通のIT系の会社で働いてるよ~。
RINGの発言: へぇー! すごいですね。
勇太郎の発言: すごくない(笑)。
RINGの発言: どこに住んでいますか?
勇太郎の発言: 東京の港区というところに一人暮らしだよ。
RINGの発言: そこは知ってます。六本木ヒルズのあるところ。
勇太郎の発言: そうそう、よく知ってるね!!
RINGの発言: 日本に一度だけ行きました。日本のことが好きなんです。
勇太郎の発言: へぇー。なんでも教えますよ^^
RINGの発言: 今日の体調はどうですか?
勇太郎の発言: 唐突だな(笑)。ちょっと二日酔いで頭痛かも。
RINGの発言: ヌルヌルしてますか?
勇太郎の発言: いや、ヌルヌルはしてない……。
RINGの発言: @@'' 頭痛いとき何と言いますか?
勇太郎の発言: あー、ガンガンとか? 頭がガンガンするっていう。
RINGの発言: 教えてくれてありがとうございます。ガンガンする?
勇太郎の発言: あ、大丈夫^^ 軽い頭痛だよ^^ ありがとう。
RINGの発言: いま、擬態語と擬声語を勉強しています。
勇太郎の発言: へぇー。日本語は情緒的な表現が難しいからなあ。
RINGの発言: いろいろ教えてください♪
勇太郎の発言: うん、俺も英語頑張るから、これからもよろしくね!
RINGの発言: はい^^ あ、ボイスチャットできますか?
勇太郎の発言: あー、マイクあるよ。
RINGの発言: 次から、ボイスチャットしましょう♪
勇太郎の発言: 本格的なレッンできるね!
RINGの発言: ^^ ではまた明日! See you!
夏子 「勇太郎は一人暮らしか」
俺 「覗き見かよ!(´Д`)」
夏子 「4.5畳の部屋に女性と二人暮らしって言わないの?」
俺 「言えるはずない」
夏子 「その子に恋愛感情ないなら、言ってもいいじゃん」
俺 「恋愛感情ないけど、なかなか言える“事実”ではないよ」
夏子 「あー、遠距離恋愛するつもりだ」
俺 「あのさ、恋愛ってさ、二人が相思相愛じゃないと成立しないの」
夏子 「相思相愛になるまでも重要よね」
俺 「夏子だって、いま好きな男に俺と同居してること言ってないでしょ?」
夏子 「言えるはずないでしょバカ!」
俺 「話して損しかない真実なら、真実でも話す必要ないよね」
夏子 「……まあ、夏子の恋愛の邪魔しなければいいわ」
俺 「あ、明日からボイスチャットで英会話レッスンするから」
夏子 「どういうこと?」
俺 「俺がボイスチャットしているとき、声とか音とか出さないでほしい」
夏子 「ハァァァァァァァァァァ!?」
俺 「な、なによ」
夏子 「ここ私の家よ?」
俺 「家賃とか半分払ってるんだから、それくらい許して」
夏子 「一人暮らしだなんて言うからそんなことしなきゃなんないんでしょう!!」
俺 「そ、そこは仕方ないでしょ……」
夏子 「鼻かんだり、トイレ行ったりもできないの?」
俺 「鼻をかむのはまずい。トイレは忍び足で移動して」
夏子 「……」
俺 「そこまでキツイことは言ってない。30分くらいでいいからさ」
夏子 「元カノと同居して一緒の布団に
寝てるって言いなさいよ!」
俺 「言えるかよ(´Д`)」
夏子 「頭、ヌルヌルしてんじゃないの?」
俺 「だから覗き見はやめて(´Д`)」
夏子 「最悪」
俺 「俺も、夏子の恋愛は邪魔しないから、おあいこで許してよ」
夏子 「……同居していること自体、邪魔してるのよ」
俺 「突然出てけって言うほうも悪いと思うよ。ね、音とか声とか出したりしないで」
夏子 「明日、そのときになってから考えるわ」
俺 「それ、すごく怖いんですけど……(´Д`)」
夏子 「……とにかく、早くカレー作って」
俺 「はい(´Д`)」
『4.5畳の恋人。』について
アルカリとマンガンぐらいの差
夜……。
ふたりの心がどんな心境だとしても、
ひとつの布団で寝なくてはならない毎日。
夏子 「ねえ……」
俺 「ん?」
夏子 「カップルじゃない男女がひとつの布団で寝るの変じゃない?」
俺 「いまさら気がついたのか(´Д`)」
夏子 「どうして一緒に寝てるの!?」
俺 「スペース2畳以下の部屋で別々に寝るのは無理でしょ」
夏子 「ありえない状況だわ」
俺 「そういう部分だけ常識的だな(´Д`)」
夏子 「ねえねえ勇太郎、あそこに寝てよ」
俺 「あそこってどこだよ」
夏子 「シャワールームあるじゃない」
俺 「マジ?(´Д`)」
夏子 「マジ」
俺 「……」
夏子 「ひとつだけ言っておくわ」
俺 「……なに」
夏子 「私は勇太郎と寝るのが嫌じゃないのよ」
俺 「……な、なら一緒に寝ていいじゃん」
夏子 「でも、絶対に変でしょう? 付き合ってないのよ!?」
俺 「付き合ってないけど、嫌じゃないならいいでしょ」
夏子 「常識を考えたら、一緒に寝るのはおかしいってことよ」
俺 「な、夏子が急に常識を語りだした……(´Д`)」
夏子 「苦しいの。好きな人がいるのに、別の男性と寝ているのが」
俺 「俺のことも好きなんでしょ?」
夏子 「好きにも度合いがあるでしょう?」
俺 「度合いって……その男性と、どんくらいの差があるのよ」
夏子 「アルカリとマンガンぐらいの差よ」
俺 「な、何を言いたいのかサッパリ……(´Д`)」
夏子 「だからシャワールームに寝て」
俺 「あのさ……トイレもあるんだよあそこ」
夏子 「うん」
俺 「ある意味、トイレで寝ろっていうことになるよ」
夏子 「……だめなの?」
俺 「夏子がトイレしてるとき、俺は横で寝てるのよ?」
夏子 「……それ変態じゃん!!」
俺 「……さ、寝ましょ(´Д`)」
『4.5畳の恋人。』について
愛してるほうがお金を払う
釈然としないまま、
時間だけは流れるわけで……。
<俺の気持ちをまとめてみた>
・突然の別れの宣告
・しかも2か月前から好きな人がいた
・付き合ってないのに同居
・しかも4.5畳の部屋に同居
・なぜか分かれても食費を払っている
・交友費まで払っている
・あっちはラブラブ
・こっちはションボリ
<たぶん、夏子の気持ち>
・勇太郎早く出ていってほしい
・出て行けばアノ人をこの部屋に呼べる
・もっとアノ人とラブラブになりたい
……orz
夏子 「今日は帰るの遅くなる」
俺 「あ、そう。デート?」
夏子 「勇太郎には関係ないでしょ♪」
俺 「確実にデートだな」
夏子 「秘密♪」
俺 「さびしいし、早く帰ってきてよ」
夏子 「なんでよ。無理に決まってるでしょ」
俺 「なんで」
夏子 「夏子は勇太郎のものじゃない! アノ人のもの!」
俺 「……」
夏子 「じゃあね。バイバイ」
俺 「う、うい」
……こんな状況、毎日続いたら精神崩壊しそうだ。
うーーーーん、もっとポジティブに考えるしかない。
この部屋には12月までいなくてはならないし、
12月までに夏子が俺のほうに、
振り向いてくれるかもしれない!
とりあえず、俺の気持ちの平穏のために、
何か趣味でも新しく始めようかな。
よし、英語だ!! 英会話!!
(もともと英語は習いたかったというのもある)
タイに行くだの海外に行くだの言う前に、
世界共通語の英語を話せなきゃ意味ないよな。
でも、英会話教室に通うお金なんかない。
実家にお金送らなきゃなんとかなるんだけどなあ。
実家も大変だし、いま俺が支えないといけないし……。
……うーーーーーーーん。
……うーーーーーーーーーーーーん。
思いつかない。でも、インターネットで何か
英語の勉強する手段ないかな……無料で!!
ネットに詳しい同僚の高橋に聞いてみっかぁ。
俺 「あのさ」
高橋 「何。1分100円やで」
俺 「なんでお前と話すの課金制なんだよ(´Д`)」
高橋 「何」
俺 「英会話したいんだけど」
高橋 「すればいいじゃん」
俺 「……」
高橋 「……」
俺 「いや、金ないからさ。ネットで無料で習う方法ない?」
高橋 「ある」
俺 「どんな方法?」
高橋 「情報量1000円やけど、聞く?」
俺 「もういいや。また明日」
高橋 「待って!! ジョークやって」
俺 「教えて」
高橋 「スタバのコーヒー1杯で教える」
俺 「……内容による」
高橋 「英語でもイギリス語でもなんでもわかる方法ある」
俺 「イギリス語って英語だろ」
高橋 「まあ、そうともいう。とにかくウハウハや」
俺 「意味がわかんない(´Д`)」
高橋 「インスタントメッセンジャー使えばすぐや」
↑これ
俺 「なんで? これでどうやって英語習うの?」
高橋 「“誰か私に英語を教えてください”って看板出すねん」
俺 「へぇー。でも、自分が登録してる友だちにしか看板見えないのでは?」
高橋 「全世界の人に見えるようにする設定あんねん」
俺 「まじか?」
高橋 「まじ。誰か検索してその看板見るかもしれへんやろ」
俺 「じゃあ、英語教えてって看板出せば、返事くるかも?」
高橋 「そやな」
俺 「おおおおお!! それはいいこと聞いた!!」
高橋 「スタバのコーヒーな」
俺 「okok!」
高橋 「トールやないで。グランデサイズやで?」
俺 「は、はい(´Д`)」
高橋 「それと、この電話代も払ってや」
俺 「俺が電話したんだけど」
高橋 「バレたか。最近賢くなったな」
俺 「……(´Д`)」
ということで、英語を習うべく、
インスタントメッセンジャーでさっそく看板を
出すことにしたのでした。
自分だけ英語を教えるのではなく、
相手に日本語を教えてあげるといいかもなあ。
どっちもうれしいし、教えてもらえる御礼になる。
ということで、以下の文を看板として
インスタントメッセンジャーの
自分のプロフィール欄に掲載してみた。
Please teach me English.
I teach you Japanese.
誰か看板見てくれるかなぁ……。
……と、そのとき、夏子が帰ってきた。
俺 「お、てってきり朝までコースかと思ったよ」
夏子 「ううん……、ちゃんと帰るわよ」
俺 「元気ないな。どした。フラれた?」
夏子 「フラれてない!!」
俺 「……?」
夏子 「自分がなんか不安になってきたの」
俺 「どうして? 夏子らしくないな」
夏子 「夏子が夏子らしくしているのが夏子は不安なの!」
俺 「禅問答みたいな話になりますか?」
夏子 「夏子、ひとりの人をずっと愛したことがないの」
俺 「……いまの話?」
夏子 「いまもそうだけど、いままでもずっとそう」
俺 「まあ、話は聞いてたからいろいろ知ってるけど」
夏子 「付き合っているときはとても楽しいの。愛してるの」
俺 「……」
夏子 「でも、次にもっと好きな人が出てくるの!」
俺 「……そ、それは困ったね(´Д`)」
夏子 「なんで出てくるの?」
俺 「しらんがな(´Д`)」
夏子 「このまま、ずっとこうなのかも」
俺 「いま好きな男性のほかに、好きな人いるの?」
夏子 「まだ出てきてない」
俺 「出てくるとか、幽霊みたいな表現やめよ(´Д`)」
夏子 「……すごいやだ。自分が」
俺 「……夏子らしくないな。笑顔のほうが夏子らしいよ」
夏子 「……夏子、お肉食べると元気出るの」
俺 「へ?」
夏子 「笑顔になるから焼肉連れてって!!」
俺 「彼氏に連れてってもらえよ~!!(´Д`)」
夏子 「まだ彼氏じゃない!!」
俺 「食費あげてるんだから、それで食べてきなよ」
夏子 「勇太郎さ、夏子のこと愛してるんでしょ?」
俺 「あ、愛してるよ。もちろん愛してる」
夏子 「愛してるほうがお金払うの常識でしょう!?」
俺 「どこの国の常識ですか(´Д`)」
夏子は、幸せすぎるいま、
また好きな男性が出てきて幸せが崩れることを不安に思っている。
つまり、俺と一緒にいた時間は幸せだったが、
新たに現れた男性によってそれが長くは続かなかった現実が、
また繰り返されたらどうしようと悩んでいる。
そう感じ取れた。
『4.5畳の恋人。』について