聖なる猫の額
駅のホームに立ってた。電車待ってて、いつも何考えていいかわかんなくて困るからだから待つのとかって好きじゃないんだけど、まあ待つしかない。で、猫がうずくまってて俺をじっと見てた。三メートルぐらい向こうで。三メートルって微妙な距離だな。普通の野良猫で、首の左側の毛が何か変にボサボサで、多分怪我してる。
他にホームには五人ぐらいいた。でも猫は俺を見てる。
さて、俺は今時点、生きてる。確信はある。つーか、つまり、俺の意識がある世界の中での俺のステータスで言えば生きてる、ってことで。
猫の首がゆっくり傾いた。
俺が生きてきたこの中じゃあ毎日大体同じことが起きてる。よく考えれば分かることが。俺は幽霊もUFOも知らないし、でもそういうのも今じゃあ日常的になってるからやっぱり毎日は大体同じだ、全体的に見れば。
猫の首の怪我は意外と深かった。傷口がぽっこりと見えた。赤い肉が生々しく覗いた。俺はちょっと目が離せなかった。変だなあと思ったのは猫が俺に傷口を見せようとしているように見えたことだった。
俺はいつからこの中にいるんだろう。死ぬということは中から外に出るということだろうか。だってこの中には生きてるモノの意識しかないんだもんな。死ぬってのはそういうことなのかな。
不思議ね、熱に浮かれて文章が頭に浮かんで書いてみてもその意味は本人にさえよくわかんないんだから。