フライドチキンと海のおと。 -31ページ目

旅先で僕はため息をついた その2

イタリアではこんなこともあった。


フィレンツェのホテルでの出来事である。
安いパックツアーでの旅行だったので、ホテルはもちろん二流。
部屋はお世辞にも素晴らしいとは言えなかった。
部屋の鍵は男の力じゃないと開かない。
もうその時点でおかしい。
便器に座ると、どうがんばって体勢を変えても膝が壁に当たる。
屈葬のような姿勢になるのだ。
これでは排便に集中できない。
シャワーは蛇口を全開にひねってもぼとぼとぼと、
と温水プールくらいの温度の水しか出ない。
サービスの行き届いた日本で暮らしているから、


『歌うこと、食べること、そして愛すること』


を人生の至上目的としている国民の運営するホテルに来ている場合仕方ないか、
とこれらにはあきらめがついた。




問題はこの後だ。
テレビが映らない。
イタリア人のタレントや、
ニュースキャスターが喋ることはもちろん理解できないが、
天気予報なら何となくわかるし、外国のCMを見るのも楽しい。
第一、外国で音が何も無いのはどこか心細い。


僕はフロントに電話し、カタコト英語でテレビが映らないことを伝えた。
フロントの男は、オーケー、すぐ行くからちょっと待っててくれ、
とカタコト英語で返してきた。


待つこと三分。

電話に出たフロントの男が部屋にやってきた。
その男の体がものすごく臭い。
ジャケットを着た上からでもぷんぷん匂った。
僕の奥さんは眉をひそめて、


(これ、この人の臭い?)


と、目で言った。


(おそらく、この人の臭いだろう)


僕は頷きながら目で返した。
男は額に汗してテレビの裏にある配線関係をいじっている。
そしてあろうことか、
ジャケットを脱いでシャツ一枚で袖をまくって作業をはじめた。
もちろん、臭気は格段にレベルアップした。
<つづく>

旅先で僕はため息をついた その1

ため息。
と一口に言っても、様々な種類のため息がある。



例えば、ほっとして優しい気持ちになった時のため息。
落とした財布が交番に届けられていた時。
何かの成績で、なんとか最下位をまぬがれた時。
発注ミスに気づいて暗い気持ちで会社に行ったら実はミスでも何でもなく、
クライアントからお礼の電話がかかってきた時。
オムライスがうまく作れた時。

などなど。



逆にがっかりしたり、精神的に疲れた時のため息。
落とした財布が結局見つからなかった時。
何かの成績で最下位になった時。
発注ミスをしてクライアントから怒鳴られた時。
直接的に自分が関与していないミスで、
上司からねちねち嫌味を言われた時。
明らかに失敗したと思しき、
母親のいびつなパーマ頭を見た時。
コンビニで毎日買っているプリンが今日に限って売り切れている時。
自転車のサドルを盗まれた時。

などなど。
こっちの方がちょっと多いな。まあいいか。



ところで、皆さんがため息をつくのはどんな時ですか?
ちなみに辞書には、
『力をおとした時に大量に出す息』
とある。
それもある。
僕がイタリアに行った時はそうだった。
バチカン市国の、

サン・ピエトロ大聖堂の内部に入った時や、
ミラノやフィレンツェのドゥオモ(聖堂)を見た時は思わずため息が出た。
荘厳というか壮麗というか、
文章を書いている人間の端くれとしては情けない限りだが、
生半可な言葉では到底表現することができない、
素晴らしく美しい建築物だった。
つまり『力をおとした』のではなく、
『すごすぎて体に力が入らなかった』のである。
<つづく>

旨いものが多すぎて

気がつくのが遅くてすみません。
気がつけば、読者数が100人を超えておりました。



本当に。
本当に、ありがとうございます。


皆様、愛しております。


白髪が増えても体重が増えても、
僕は書き続けますゆえ。
これからもご愛顧、よろしくお願いします。





というわけで、皆様に問いかけを。
最後の晩餐、についてよく友達と語ったりしませんか?
僕はよく語り合います。
もちろん僕も含めて、
周りには食に対して情熱的な人が多いからね。


『地球の自転が完全に停止しました。明日から連日猛暑日です』
とか、
『月が木っ端微塵に砕けたので、まもなく大津波が来るでしょう』
とか、
『スカイネットが世界中のコンピュータを制圧しました』
とか、
『日本に向けて諸国が核ミサイルを撃とうとしている模様』
とかいったニュースが流れたとする。
あ、こりゃもう終わりかな、という、その日の昼下がり。


あなたは何を食べますか?





友人Aは、馴染みの焼肉屋のハラミだと言った。
友人Bは、カツ丼だと言った。
友人Cは、ピッツァマルゲリータだと言った。
友人Dは、王将の餃子だと言った。
友人Eは、握り寿司だと言った。
友人Fは、ケンタッキーフライドチキンだと言った。
友人Gは、サバの味噌煮定食だと言った。
友人Hは、とにかく贅沢な食材ならなんでもと言った。
友人Iは、とにかくいつも食べなれているものだと言った。
友人Jは、すごく美味しい卵を使った卵かけごはんだと言った。
友人Kは、オフクロの料理だと言った。

平和だなあ。この議題。

僕は友人達のあげたものは全部好きだ。
だから決められない。
日本が平和なうちに、何とか決めておかなければ。



でも今は皆さんのコメントが大好物だ。

こんなにも甘美で、

かつホロ苦いものはちょっと見つからない。


魔人ゾロメ

こないだ、怖い話を書いていて熱中し、
時計を見たら偶然“4:44”だった。


少しぞっとした。


たまたまゾロ目を見てしまった時は、
なぜか損をした気分になる。
縁起が悪いのだ、僕的には。
見たくないと普段から思っているもんだから、
なんだかやたら見ているような気がしてくる。
1:11。2:22。3:33。4:44。5:55。
11:11。22:22。


でもやっぱり最悪は4:44だな。
6:66がなくてヨカッタ。

ダミアンダミアン。



自分だけの中にある“縁起の悪さ”というのがある。
ホチキスのタマが切れているのに、
力いっぱいホチキスをかちゃん、としてしまった時も縁起が悪い。
こいつはずっとタマ切れのまま、
じっと口を閉じてペン立てに刺さっていたのかと思うとぞっとする。


割り箸がヘンな形に折れるのもヤだな。
たぶん人それぞれあるんだろうな。
うーん。夜に雨が降るとこんなことを書いてしまう。





あ。時間が。


風呂はよきかな。

ホラーもの、もちろん好きで書いているのだが、
ちら、と疲れる時もある。


今夜なんかそうだ。
仕事でへとへとになった。
家に着くと11時30分だった。


でもテレビを見てすぐに眠っては時間がもったいないので、
とりあえず風呂に入る。
そしていろいろ考える。
小説のアイデア。
ブログのアイデア。
考えをまとめる、というつもりはない。
とりとめもなく、柔軟に考える。
そのほうが僕には向いているのだ。





うちの風呂は気持ちがいい。
夏の頃も記事にしたが、
風呂の外がベランダに面していて、
がばり、とドアを開けるともろに夜気が入ってくるのだ。
夜気はもうかなり冷たいので、
露天風呂のように頭と顔がひんやり気持ちよい。
そして今夜は、信じられないほど月が明るい。
ほぼ満月、のように見える。
銀色だ。
雲がびょうびょう、という感じで流れてゆく。
流れた雲は、そのフチの部分が月光でぼんやり明るい。
ときおり、ざあああ、と音がして木々が揺れる。
風が強いのだ。
しかし、他の音がしない。


耳に入るのは、風が木を揺らす音。


目に入るのは、瞳孔が痺れるほどまぶしい銀の月。


肌に触れるのは、あたたかいお湯と冷たい夜気。


贅沢な秋の夜だ。
こんなに気持ちがいい夜ならば、
素直に今日一日に感謝できる。


よし。明日も書こう。書いてやるぜ。