今回ご紹介する論文はこちらです。

Complete remission with partial hematological recovery as a palliative endpoint for treatment of acute myeloid leukemia

Robert Q. Le et al. https://doi.org/10.1182/blood.2023023313

 

急性骨髄性白血病の治療において、CRhという概念があります。これは骨髄を見ると寛解に入っているものの、末梢血血球の回復が不十分な状態です。分子標的薬を使用した臨床試験において、一つの効能エンドポイントとして使用されます。

ただ、このCRhという状態、臨床的に割と扱いに困る部分があり、喜んで良いのか悲しんで良いのかわからないところがあります。

筆者らはivosidenib、olutasidenib、enasidenib、gioteritinibの単剤療法の臨床試験でCRhに至った患者さんの臨床的な特徴をプール解析しました。

 

・841人の患者データを使用した。このうちCRhは6.2%含まれていた。

・64.6%が赤血球もしくは血小板の輸血をベースライン時点で必要とした。

・病気の治療に対する反応と予後との相関は、ロジスティック回帰モデルを使用してカテゴリ変数について解析した。time-to event変数についてはCox比例ハザードモデルを使用した。

・結果:CRhの患者は非寛解群と比べ、少なくとも56日間の輸血非依存状態が続きやすく(92.3% vs 22.3%)、112日間の輸血非依存状態も続きやすかった(63.5% vs 8.7%)。また、重症感染症や重症出血のリスクが低く、全生存期間も改善していた。

・この傾向は薬剤が違っても一致していた。

・CR群と比べた場合、CRh群は56日間の輸血非依存率や感染・出血のリスクは同水準だったが、112日間の輸血非依存率と全生存期間に関しては劣っていた(非寛解群よりは良い)。

・結論として、CRhはCR群には劣るにせよ、臨床的に意味のある緩和的な効果があると言えた。

 

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この論文ではCRhを「好中球が500/μLより多くて1000/μL未満and血小板が5万/μLより多くて10万/μL未満」としています。ただ、臨床的に「困ったなあ!」となるのは、非寛解とCRhの間のCRL群(骨髄中にblastはいないけど好中球500/μL以下かつ血小板5万/μL以下)の群ではないかと思います。

この論文ではCRLに関しても解析が行われており、非寛解群と比べると全生存期間も改善したと示されています(そりゃまあCRやCRhよりは劣りますが)。

CRhやCRLの場合、つい「せっかく治療頑張ったのに輸血依存や易感染状態から抜けられないのかよ〜」とがっかりしがちですが、非寛解よりは安全な状態に持って行けたのだと思って良いのかな・・・そう思わせる論文でした。

 

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おまけ画像:メロンタルトです。美味しかったです。