こんにちは。今回ご紹介する記事はこちらです。
Molecular targets of glucocorticoids that elucidate their therapeutic efficacy in aggressive lymphomas
Jaewoo Choi et al. Cancer cell 42, 833-849 May13, 2024
https://doi.org/10.1016/j.ccell.2024.04.007
リンパ腫の治療には長らくステロイドが使用されてきましたが、どのような機序で効いているのかは不明でした。この論文は、「ステロイドはどうもBCRシグナリングを阻害することでリンパ腫をやっつけているらしい」というのを解明した論文です。
・DLBCLとBurkittリンパ腫のcell lineに対してgenomic, proteomic, chemicalなスクリーニングをかけたところ、グルココルチコイドはB cell receptor(BCR)を介したシグナリングを阻害し、腫瘍の増殖を抑えていた。
・グルココルチコイドはグルココルチコイドレセプター(GR)を誘導し、BCRの安定性とPI3 kinase pathwayへのネガティブな制御を行う。
・GRは直接CSKの転写を阻害する。(*CSK:BCR-proximal Srkファミリーキナーゼ活性を制限する)
・CSKが阻害されるとBCR-proximal Srkファミリーキナーゼ活性が分解され、BCRシグナリングが抑制される。
結論として、ステロイドはBCRを阻害するため、BCR依存アグレッシブリンパ腫の治療に使われるのは妥当である。また、機序的にBTKやPI3、BCL2、CSK阻害薬とのコンビネーションが良いと考えられる。
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・基礎系の論文で私の理解が追いついていない部分が多い
・ステロイドがT細胞にも効く機序についても説明してほしい(パッと読んだ感じ、T細胞系リンパ腫には言及なさそう)
・違う機序の薬を組み合わせた方が良いかと思っていたけど、そうでもないんか?
と、すっきりしない部分もありますが・・・
研修医のとき「なんでリンパ腫にステロイドを?」と訳がわからなかったので、ちゃんと機序がわかってきたのは良いことだなと思いました。
おまけ画像:東京のポルトガル料理屋さんで食べた料理です。ジャガイモがホクホクしてました。