こんにちは。今回ご紹介する論文はこちらです。
Early-life infection depletes preleukemic cells in a mouse model of hyperdiploid B-cell acute lymphoblastic leukemia
Blood. 2024 Aug 22;144(8):809-821. doi: 10.1182/blood.2024025038.
小児のB-ALLは3-5歳で多い疾患です。一方で、前白血病細胞は新生児期にも見られるのですが、この前白血病細胞があっても特にALLを発症しない子供がほとんどです。また、感染症はB-ALL発症に関わっているのではないかと言われていますが、それが良い方向に関わっているのか、悪い方向に関わっているのかわかっていません。
筆者らは、この前白血病細胞から白血病が発症するまでの機序において、感染症(今回は小児ALLへの関与が特に疑われているCMV)がどう影響するのかどうかマウスモデルを使用して検証しました。
この論文の概要としては以下のようなものです。
・生まれて1週間内のマウスにB-ALL細胞細胞を注射し、その後CMV感染を起こすと、前白血病細胞が枯渇した。この現象は成人マウスでは起こらなかった。
・この年齢依存的な前白血病細胞の枯渇は、新生児期におけるSTAT-4上昇を介したサイトカイン反応によって引き起こされ、IL-12p40によってdriveされたIFN-γが前白血病細胞を死滅させた。
・大人のマウスにおいても、ウイルス排除を阻害することで同様の前白血病細胞の枯渇を誘導することができた。
・この発見は新生児期における感染がB-ALLの進行を抑制する可能性を示すものであり、新しい治療的予防的戦略に役立つ可能性がある。
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インフルエンザが流行った年は白血病が多い・・・というような論文を読んだことがあったので、個人的に感染症は白血病のリスク因子だと思っていたのですが、今回は感染症(正確には感染症への免疫反応)が白血病を抑えるという結果でした。
マウスモデルの話であり、ヒトに直接応用できるわけではないですが、非常に興味深い話です。
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おまけ画像:宗像の道の駅で食べた海鮮丼です。