サザエさんの面白い落ち(127)
バスに乗ろうと懸命に走っている人を見て、乗るか!乗らないか!と賭けるのは止めましょう。
朝日文庫版26巻〔63頁〕・昭和38年
『傘を持った、鼻の長い、細身の会社員風のオジサンが、鼻の頭を赤くし、大汗をかいて、血相を変えて走っていきます。マスオさんとサザエさんが、歩いています。2人は会社員風のオジサンを見て、マスオさんが、「のれない!」と言うと、サザエさんが「のる!」と言っています』
『バス停があり、バスが走ってきました。バスが停まると、車掌さんが、ドアーを開きました。間に合ったオジサンが乗り込んでいます。サザエさんは、「ほらのった百円!わるいわね」と、マスオさんがシブシブと財布から取り出した百円札を受け取っています』
『バスは、発車しました。ところがオジサンは、停留所に傘を杖がわりにして立っています、マスオさんとサザエさんは、間に合って、バスに乗って行ってしまったと思った会社員のオジサンを見て驚き、怪訝な顔をしています』
『走り去るバスを見ると、行先表示器に【回送】と出ていました。会社員のオジサンは停留所に疲れた様子で立っています。マスオさんは、「だからじんせいっておもしろいよな」とサザエさんから、さっき渡した百円札を取り返しています。サザエさんは、ベソをかいて財布から取り出した百円札2枚を渡しています』
体力のなさそうな会社員風のオジサンは、遠くから走ってくるバスに乗ってやろうと、懸命に走っています。
マスオさんは、サザエさんに言いました。
「おい、あの細いおじさん、バスと追いかけっこしているよ!あのバスに乗ろうと走っているんだ。間に合うかな。俺は、絶対に間に合わないと思うよ。」
すると
サザエさんは、
「だいじょうぶよ、バスは、そんなにスピードだしていないようだから、私は、絶対間に合うと思うわ」と反対する。
すると賭けごとが大好きなマスオさんが、
「賭けをしよう。俺は間に合わず、乗れない。君は間に合って乗るにかける。負けた方が、買った方に百円だぞ」
と言うと
「いいわよ!」
と直ぐに成立する賭けごとが好きな二人でした。
オジサンは、懸命に走り、バスも走っています。
バスは、止まり、オジサンは「乗りました」、いや乗ったと思ったのです。
サザエさんは、「勝った。百円頂戴」と賭けに勝ったと、マスオさんから百円貰いました。
ところが、オジサンは、バスに乗っていなかったのです。
走っていくバスをよく見ると「行先表示器」に「回送」と出ています。
回送車には、客は乗せません。頼んでも駄目です。
オジサンは、バスに乗れませんでした。
オジサンが、バスに乗れないとした、マスオさんの勝ちです。
マスオさんは、サザエさんに渡した百円を取りかえし、そしてサザエさんから百円もらいました。
サザエさんは、財布に入っていた2枚の百円札を取り出しマスオさんに渡しました。
マスオさんは、駆けで二百円得した気持ちでした。
こんな、バスに乗るか乗らないかと言う賭けごとに、人生を重ねるのはオーバ過ぎないかマスオさんと思います。
私は、デパートの1階にある大きなバス発着場で始発のバスを待ちます。
終着のバスが来ます。そのバスを始発と思い振り向くと、行先表示器に「回送」と表示し、たバスが走りまわっています。
そんなバス停で次の始発バスが来るまで待っています。
そんな「回送」と表示したバスが、行先を変えて表示し、走ってくるまで、イライラとして待つのです。その時間の長いこと、来たと思って振りむいたバスの行先表示器に表示された「回送」と言う字が何とはなく誇らしげに走っているのが、嫌になります。
「回送」と表示したバスで、こんなこともありました。
バスの始発駅です。
停留所には、沢山の人が列をなして待っています。始発時間を過ぎても、バスがきません。並んでいる人達が騒ぎ始めました。
時刻表を見て、時間が過ぎているが、まだ、来ない。おかしい!
並んでいた一人の人が
「あそこに止まっているバスが、そうじゃないか」
と言いだし、
「運転手が眠っているよ」
とバスの方に走って行きました。
その人は、運転席の外から窓をたたき、何事か言って戻ってきました。
その人は、戻ってくると、並んでいた人達に
「運ちゃん昼寝していましたよ」
と言いました。
そのバスの行先表示器には、【回送】と表示されていました。
間もなく、行先表示器の行先を正く表示して、沢山の人が待っている停留所に走ってきました。
回送車の運転手さんは、待ち時間に、つい寝込んでしまい、バスの中の昼寝で、眠気もすっかり飛んでしまったのか、いつものように軽快に運転し、何事もない、春の陽気な日の出来事でした。