<2日目>
鳥のさえずりと聖典の読誦で目覚める。
ここは市街地のホテルなのに、なぜか神聖なものを感じる。確かにインドなのだ。
デリー市内を観光。朝のラッシュを縫うようにオートリキシャーが駆け抜ける。
あちこちでクラクションが鳴り響く。路端には物乞いの姿も見える。
私の乗っていたタクシーが赤信号で止まった瞬間、小学生くらいの少女が座席の窓の隙間からボールペンを入れてきた。
私は何が起きたか分からず、とっさに窓を閉めたのでボールペンが車の窓の隙間に挟まってしまった。
慌てて窓を開けて少女にボールペンを返したが、どうやら少女は車が赤信号で止まる度にボールペンを売っているようだ。
学校に行けない貧しい子供たちが危険に身をさらしながら路上で働く姿に胸が痛んだ。
オールドデリーの繁華街チャンドニーチョークを散策。喧噪と雑踏の中、路上で昼寝をしている犬や乞食を踏みそうになる。
ジャイプールまで車で移動6時間、高速道路をなぜかラクダや象に乗った人が通行している。
日が暮れると、暗闇の中で眼光の鋭い人々が毛布にくるまって焚火で暖をとっている姿が見える。砂漠の夜は冷えるらしい。
ジャイプール市内のホテルに到着。地元で評判という占い師に手相鑑定を依頼。
占い師はホテルのロビーに到着後、開口一番、手相を見るための懐中電灯を忘れたので取りに帰るという。
何とも頼りない占い師だと思いながら、日本から持参した懐中電灯を渡して鑑定開始。
まずは名前と生年月日を紙に書いて、いくつか簡単な質問に答える。
私の手のひらを覗き込んで「結婚前に異性との交際があったが、その内の一人はこの世にいない」と意味深なことを言った。
仕事・恋愛・結婚など人間関係に支障があるため、エメラルド(水星)もしくはルビー(太陽)の指輪を身に着けることを推奨された。
インドでは占いは科学として認められ、大学では占星術・手相術の授業さえあるという。
優秀な占い師は国家から表彰される。
結婚の際は、お互いのホロスコープ(出生時の惑星配置)によって相性を占う。
占い師の助言によって、自分の運命・体質・気質に合う宝石を身に着ける人も多い。
2日目にして早くも、私の常識は大きく揺らいでいた。
(続く)