喜びも悲しみも不安も恐怖も入り交じった私に対して、
ソーシャルワーカーのTさんは一度も不安になる言葉をかけてきませんでした。
ソーシャルワーカーがそういう役割なのか、Tさんがそうなのか。
この日のあとも何度も病院に行く機会はありましたが、常にお忙しそうで一度もお会いできていません。
Tさんの笑顔と言葉と雰囲気に、私はとても救われました。
常にマルチタスクで絶対にとても大変なお仕事だけど、本当に憧れました。
こちらの記事の続き
12:30 夫の運転で病院へ
いつも自転車で病院へ行くことが多い私だが、この日は夫の運転で。
というのも、帰りは介護タクシーに同乗するため。
猛暑日だったのと徒歩➡️電車➡️徒歩よりも車の方が早い距離ということもあり、朝から来てくれている義母に娘を預けて、夫と家を出た。
アキ「緊張する」
ユイチ「大丈夫だよ」
月曜日の夕方に母を手術室へ見送ってから、何があってもおかしくないと言われ、母を帰宅させてほしいと頼み込み、プチ引越をし、せん妄が出たと夜中の3:40に電話が来て、父のデイサービスを始め…寝ても覚めても常に"母はまだ生きてる?"を問いかけながら、ろくに睡眠もとれてなかった。
そんな母が、果たして…目が開くのか?私のこと分かるのか?
様子が全くわからない、面会ができない567禍を恨んだりもした。
そんなことを悶々と考えている間に病院に到着。
「14時出発予定だけど、出るとき連絡するから。スマホ見ててね」
トンボ帰りする夫へそう念押しし、普段は入院患者以外立ち入ることができない入院棟へ私は向かった。
12:55 入院フロア➡️精算
月曜夕方に待たされたエレベーターホールに着くと、同じ場所に立っている男性(おじさん)がいた。
明らかに医師や看護師ではなさそう。同じようにご家族のお迎えかな?と思いながら、とりあえず会釈。
ナースステーションに「14時退院予定のキミエの娘です」と声をかけると、すぐにソーシャルワーカーのTさんがやってきた。
Tさん「あ、アキさん!こんにちは。いまお母様、退院の準備してるのでちょっと待っててくださいね。あ、入院費の精算、終わりました?」
アキ「いえ、まだ何も…」
Tさん「確認してくる!ちょっと待っててねー」
いつもと変わらず明るいTさん。
受付「こちら、保険証と診察券です。外来の受付まで戻っていただいて、精算してきてください」と書類を受け取り、精算へ。
精算窓口では「退院の精算ですね~」と言われ、内心「この人は、母があと数日、なんて分かってないんだよな」とつまらないことを頭で考えながら精算が終わるのを待った。
隣では松葉杖をついた同年代の男性が「だからこれは労災だから自己負担の金額変わるだろ?」と食ってかかってる。窓口スタッフは3人がかりで対応中。
その様子を見て「元気でいいな…」なんてぼんやり考えていた。
13:30再び入院フロアへ
精算を終えて入院棟に戻ると、事務スタッフの方に封筒をいくつも渡された。
事務「こちらの○○と書かれた封筒はご自宅に戻られたらすぐお医者さんに渡してください。こちらの△△と書かれた封筒は看護師さんに、あこのCD-ROMもお医者さんに、これはご家族様で保管で…」
アキ「え、ちょっと待ってください」
と制して、封筒の左上に「医師」「薬剤師」「ケアマネ」などとシャーペンでメモした。
Tさん「あ、精算終わりました?お着替えとかで動いたらお母様痛みが出てしまったようで、おうちまで痛みが出ないようにいま多めに鎮痛剤打ってるから。もう少し待っててね」
"多めに鎮痛剤"・・・。
医療系のドラマも見れない私は、そのワードだけでもう戦慄モノだ
Tさん「あ、ご紹介遅れたんだけど、こちら介護タクシーの方です」
アキ「あ、そうだったんですね。キミエの娘です。今日はよろしくお願いします」
男性「よろしくお願いします」
最初にエレベーターホールに立ってた男性が介護タクシーの運転手さんだった。
優しそうな、でもきりっとしている男性。
そのあと、私が泣きそうな変な顔をしてたんだと思う。
Tさん「大丈夫?」
アキ「母がどんな状態かがわからないので怖くて。不安で」←半泣き
Tさん「そうだよね、面会できないもん不安だよね。大丈夫。頭ははっきりしていらっしゃるから、起きてる間はお話しできるよ」
アキ「そうなんですか?間に合わないかもって何度も言われたから…」
Tさん「娘さんに会うの、とっても楽しみにしてたよ!…あ、きたきた!」←泣いた
13:45 母とご対面!
Tさんの言葉を聞いて、運転手さんがさっと母のベッドにかけより、エレベーターに乗せやすいように方向転換を始めた。
Tさん「キミエさん、ようやくご自宅帰れますね」
母はTさんの手をにぎって、「ありがとうね」と言った。
そのとき私は何と声をかけてよいのか分からなかったのと、「なんだちゃんとしゃべれるんじゃん」と思ったのと…
色んな思いが脳内ぐるぐるしすぎて、母の足元に立ちすくんでた。
アキ「お母さん…」
キミエ「あれ?アキ~!誰かと思った!」
「あ、いつものお母さんだ」と嬉しいのと悲しいのとあと数日なんて想像できなくて…また泣いた。
でも明るい声で母に話しかける。
「迎えに来たんだよ」
母はTさんの手をにぎったまま、話し続ける。
キミエ「ありがとうね。この方(Tさん)にね、とってもお世話になったんだよ」(あ、ちゃんと覚えてるんだ)
アキ「うん。私もこの数日、とってもお世話になったんだよ」
Tさん「そんな~!嬉しいな~!!えへへ」
そんな(涙の)再会をしながらエレベーターに乗り込み、エントランスフロアまで運転手さんとTさんがベッドを押し、私は母の横に付き添い、キャリーバッグをがらがらしながら移動した。
運転手「車まわしてきますので、こちらでお待ちください」
そう言って、母と私とTさんを残して駐車場へ出て行った。
何と話しかけようか、話したいことたくさんあるのに、と悶々と考えていると
キミエ「モモは?」
アキ「家にいるよ。今週ずっとお義母さん来てくれてるの」
キミエ「そっか。悪いことしちゃったなぁ」←この期に及んでまた人の心配してる。
Tさん「ご自宅に帰られたら、お医者さんがちゃんと診てくれますからね。移動の間、痛みが出ないように痛み止め多めに追加しておきましたので」
キミエ「ありがとう」
アキ「Tさんも家まで来てくださるんですか?」
Tさん「ごめんなさい、私はお見送りまでで…」
アキ「え、あ、そうなんですか…!」⬅️車中で運転手さんと母と私だけになることを知り、緊張。何かあったらどうするんだ…と急に不安に。
Tさん「大丈夫。おうちについたら頼りになる先生がくるからね」
アキ「あ、はい。。。」
Tさん「ところでキミエさん、まつエクしてます~?笑」
キミエ「(笑ってうなずく)」
アキ「退院するたびに毎回通ってたんですよ」
Tさん「えぇ女子力高すぎる!私より全然美意識ある!おしゃれだもんなぁキミエさん」
アキ・キミエ「(笑)」
どうしても「こんな普通の会話もできるんだ…本当にあと数日なの?」という気持ちのまま会話を続ける。
アキ「ねぇ、今日お父さんデイサービス行ったんだよ」
キミエ「?!」←声を出さないまでも、目をまん丸にしてとっても驚いてた(笑)
アキ「すごいでしょ~お母さんもがんばったけど、私もがんばったんだよ(笑)だから家でも少しゆっくりできるよ、安心してね」
キミエ「(うなずきながら、涙を流してた)」
アキ「なんで泣くの(笑)」←と言いながら私も泣く(笑)
14:00 介護タクシーで退院
こんな会話をしている間に運転手さんが現れ、ストレッチャーごと母は車に乗せられた。
まるで救急車みたいなつくり(乗ったことないけど)。
「ご家族はこちらから」と誘導され、Tさんに「本当にありがとうございました」とご挨拶して左側から乗り込んだ。
「事前にナビで道は確認していますが、途中もし経路が違ったら教えてください」と言われ出発。
夫に「いま病院出るよ、受け入れよろしく」とLINE。
窓の外を見ると、Tさんが満面の笑みで手を振っていた。
その光景がいまでも目に焼きついている。
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