加曽利貝塚博物館企画展『あれもE これもE(外房地域編)』勉強メモ =その2=

  • 揺籃期の土器群;中期中葉末の阿玉台IV式と勝坂IIIb式。南下する大木8a式とこれを受けて生成する中峠類型などの多用な土器。そして、この時期に成立する加曽利EI式古段階の土器。
  • 類型;各土器系統が交錯し多様な折衷(キメラ)土器が生成される。その共通する要素をもつ一群のこと。
 
1. 原山遺跡(神埼町), 2.小六台第II遺跡(香取市), 3.多田遺跡(香取市), 4.神代夏方遺跡(東庄町), 5.粟島台遺跡(銚子市), 6.大堀切遺跡(芝山町), 7.古宿・上谷遺跡(芝山町), 8.小池麻生遺跡(芝山町), 9.中台貝塚(横芝光町), 10.東長山遺跡(横芝光町), 11.前畑遺跡(東金市), 12.羽戸遺跡(東金市), 13.養安寺(大網白里市), 14.一本松遺跡(大網白里町), 15.上引切遺跡(大網白里町), 16.神田山第Ⅱ遺跡(茂原市), 17.下太田貝塚(茂原市), 18加曽利貝塚(千葉市), 19.阿玉台貝塚(香取市)
 
 
 

1. 折衷(キメラ)土器; 

  • 058は、胴部懸垂文をもつ加曽利EI式土器だが、把手の上部は阿玉台式に特有な山形把手、把手の下部は勝坂式と中峠類型に多い眼鏡状把手で構成される。 ※火炎型土器(≒ 阿玉台Ⅱ式 ~ 加曽利EⅡ式)には類似した眼鏡状突起が観察され、その影響も想定される。 065は、大木式の立体的な楕円区画が阿玉台式の結節沈線(角押文)で縁取られる。
058.加曽利EI式土器(東長山野遺跡@横芝光町), 065.大木式の影響を受けた関東地方の土器(羽戸遺跡@東金市)
 
 
 
  • 110は、口縁部をめぐる崩れた弧状の隆線は房総に多い変容した勝坂式の特徴

 

 
 
  • 揺籃期に生まれた多様な類型のうち、北関東~東関東に分布するいくつかの類型からなる土器の一群。
  • 名称は松戸市の中峠貝塚に由来。
 
 
 
  • 045(境貝塚@芝山町)は、幅の狭い口縁部に縄文ではなく集合沈線が充填される。この構成は、中峠諸類型の中でも各地で出土数も多く、その他の構成も安定する『中峠0地点型』の特徴。
 
 
 

056.中峠類型台付土器(東中山野遺跡@横芝光町) 口縁に上下交互刺突文。赤彩が施される。2単位の透彫り大小突起は大木8a式の要素。

 
 
 
087. 中峠類型(安養寺遺跡@大網白里市) 055.三原田類型(中峠類型)横S字文を口縁に巡らせる大木8a式要素を呈す。
 
 
 

2-1. 神代夏方遺跡SK08(東庄町);浄法寺類型の影響を受けた中峠類型

  • 浄法寺類型は、津南・十日町・長岡など信濃川中流域で発達した火炎土器を母体として栃木・福島中通り地方で成立した土器群。
 
 
 
  • 014は、口縁部の横につながる渦巻文と2段の穴をもつ大小2対の突起は大木式、集合沈線は勝坂式の要素。 015は、口縁部に2対の大きな渦巻文が配置され、文様の隙間には立体的な彫り込みが重ねて充填。 これらの土器には浄法寺類型の影響がみられる。

 
 
 
2-2. 羽戸遺跡116号住居址(大網白里市);阿玉台式+大木式 +中峠類型
 
 
  • 066(羽戸遺跡116住)は、幅の狭い口縁部、交互刺突文を主体とする文様から中峠類型とされる。一方で、把手は阿玉台式の山形把手を持ち、胴部に配置された渦巻文には大木8a式の要素。
 
 
 
  • 067(羽戸遺跡116住)も、口縁部の幅は狭いながら全体として阿玉台式(口縁のエラの張り方と縄文の施文)と大木8a式要素の強い土器
 
 
 
2-3. 安養寺遺跡238号土坑(大網白里市);勝坂式・大木式・阿玉台式+中峠類型
  • 阿玉台式を主体として、大木式の要素を持つ土器など系統が異なる土器がまとまって出土。

 

 

 

  • 085は勝坂式要素(右目の十字文や屈折する底部)が強く、口縁のアンバランスな突起や頸部から胴部に垂れる隆帯は阿玉台式の要素

 
 
 
  • 086(中峠類型)は、左頬に交互刺突文、右頬に渦巻区画文が配置。左右非対称な文様は揺籃期の多様性を示唆。

 

 

 

  • 083;御霊前類型(※ 初耳、調査中)(大木式の影響を受けた北関東の土器)

 

 

  • 084;大木式と阿玉台式(縄文のない胴部)の要素をもつ土器。 

 
 
 
2-4. 羽戸遺跡113号住居址(東金市);変容/逸脱する土器
  • 阿玉台式・勝坂式・大木式の要素が融合して変化した土器 および 中峠類型として捉えられる土器が出土。
 
 
 
  • 071 変容した勝坂式土器。口縁に就く平たい山形突手は阿玉台式要素。口縁および隆線上の連続爪形文は勝坂的要素。

 
 
 
  • 072 変容した勝坂式土器;口縁部に勝坂式的な区画文を有しているが、文様構成は中峠類型(口縁部区画文中の上下連続刺突文)に近く、無文頸部に阿玉台式の要素がそれぞれ観察される。口縁部区画文も崩れた弧状の隆線に変容しており、勝坂式の範疇から逸脱。
 
 
  • 070 中峠類型;口縁部に楕円形区画の透彫りがめぐる。 069 変容した大木式;胴部に大木式起源の沈線渦巻文(蕨手文)ならびクランク文が施文。
 
 
 
  • 073.変容した勝坂式土器

 

 

 

2-5. 東長山野遺跡16号住居址(横芝光町); 変容のバリエーション

  • 変容した勝坂式にいくつかのバリエーションが看取される土器が出土。↓はいずれも似たような把手(突起)を持つ土器であるが、文様構成が異なる。

 

 

  • 054は、口縁部に連続する弧状線+渦巻文が隆線で描かれ、中には集合沈線と上下連続刺突文が充填される。文油構成は整っており、中峠類型や加曽利E式に近い印象(※ 私には浄法寺類型+阿玉台式+中峠類型のキメラに見えるが・・・( ・ω・))

 

 

  • 052は、口縁部に連続する弧状のモチーフをもつが、区画がより明瞭で装飾性に富むことから、054や羽戸遺跡113住の土器よりも勝坂式に近い要素をもっている。

 

 

 

 

  • 中峠類型

 

 

 

関連Links;

 

加曽利E式土器(外房地域編)(1/4) ; 大木8a/8b式インパクト