4-4. 福島県域の浄法寺類型

4-4-(1)会津地方の浄法寺類型

  • 浄法寺類型が安定的に分布する地域。
  • ほとんどの土器の主文様は基隆帯によって表現され、① 横 “S” 字文、② 単方向の渦巻文、③ 対向渦巻文の 3 種類。

 

 

 

4-4-(1)-① 横 “S” 字文;

 

 

 

 

  • 基隆帯表現を欠くものが法正尻遺跡 SK404 から出土。(これは堀之内1式? 堀之内1式は関東に残る火炎型土器の影響なのか?(*゚Д゚*))。

 

 

 

 

4-4-(1)-② 単方向渦巻;

 

 

 

  • 単方向の渦巻文が弧線化したもの(第 10 図 8・16・27・31)もある。(連弧文の起源か?(*゚Д゚*))

 

 

 

 

4-4-(1)-③ 対向渦巻文;

 

 

 

4-4-(1)-④ 栃木県域の浄法寺類型との差異;

  • 波状口縁が多い。
 
 
 
  • 胴部の縦位沈線が密なものが目立つ点。

 

 

 

4-4-(1)-⑤ その他;

  • トンボ眼鏡状突起は安定して存在する (第 10 図 7・17・19・22・27・30)。
  • トンボ眼鏡状突起と鶏頭冠風の突起の両方を付けている。

 

 

 

 

4-4-(2)福島中通り地方の浄法寺類型

  • 出土例は少ないが、浄法寺類型が主体的に分布する那須地方の土器を考えるうえで重要な地域。
  • トンボ眼鏡状突起を付け、基隆帯による主文様を配す土器(↓2・7)もあるが、こうした範疇から外れる土器が多い。基隆帯表現を欠く土器(↓3)、鶏頭冠風突起と口縁に鋸歯状突起を巡らす土器(↓4)のほか、基隆帯を欠き、沈線による小渦巻文を口頸部文様帯に充填する土器(↓1)やキャリパー 形ではない樽形の器形に浄法寺類型の文様を配置する土器(↓5・8)等、栃木県域や会津地方にはみられない土器がある。 特に後者(樽形器形)は、妙音寺遺跡から複数出土しており、今後注意が必要。 

 

 

妙音寺遺跡@福島郡山市(中通り)

 

 

 

↑5;浄法寺類型壺形(妙音寺遺跡 SK-255) 『とちぎ縄文の夏』展@さくら市ミュージアム

 

 

 

 

 

人体像把手付深鉢 浄法寺類型(妙音寺遺跡 SK-277) 『とちぎ縄文の夏』展@さくら市ミュージアム

 

『とちぎ縄文の夏』展@さくら市ミュージアム

 

 

 

 

5. まとめ

  • 浄法寺類型の土器は、栃木県域および福島県会津・中通り地方が分布の主体。
  • 口頸部文様帯に基隆帯による横 “S” 字文単方向の渦巻文対向渦巻文を配する。
  • これらの文様は、中空の大突起粘土環を組み合わせた小突起を起点とすることが多い。
  • 火炎系土器を祖型として浄法寺類型が成立。
  • 浄法寺類型の中空の大突起は、トンボ眼鏡状の突起が主体を占める。一方、火炎系土器で主体を占めるのは、祖型となる火焔型土器にみられる鶏頭冠突起に類似する突起である。しかし、会津地方にはトンボ眼鏡状の突起が付く平縁の火炎系土器がある。
  • 浄法寺類型が土器組成の中で大きな割合を占める栃木県域には、トンボ眼鏡状突起が付く火炎系土器がほとんどみられない。浄法寺類型の成立を考える際、会津地方の土器を注視していく必要がある。

左上;浄法寺類型(湯舟台遺跡遺跡@大田原市)、右上;浄法寺類型(長者ケ平遺跡@大田原市)

下段;浄法寺類型(石生前遺跡遺跡@柳津町 奥会津)