曽利 I式 曽利 II式 曽利 III式 曽利 V式

 

釈迦堂遺跡博物館

 

 

 

 

1. 曾利式土器の時期・標識遺跡・分布

  • 時期;縄文中期後葉の土器様式。 
  • 標識遺跡;曽利遺跡(井戸尻考古館は曽利遺跡内に建っている)
  • 分布;山梨県甲府盆地を中心に八ケ岳製南麓から富士川下流域、伊豆地方、西関東が主な分布域。 房総半島からも出土

 

 

 

3. 曽利式土器編年

 

 

今福2005b,曽利式土器大形甕の施文技法 -甲府盆地釈迦堂遺跡出土事例を中心に-:Ia式≒1類(2紐)、Ib式≒2類(1本棒状工具)、IIa/IIb式≒3類(半裁竹管内面)、IIIa式≒4類(2紐の両側を棒状工具で)、IIIb式≒5類(2紐の両側を指で)、IVa式≒6類(1本紐の両脇を指で)、IVb式≒7類(1本紐全体を指で)

 

 

 

3-4. 曽利 IV

  • 口縁部文様帯が省略されるものが現れる。口縁肥厚帯土器ないしは口縁つなぎ文土器の流れを汲むものと考えられる。
  • 地文は櫛歯状工具による刺突文・綾杉文・ 条線が中心。 
  • 2細分が可能。 

 

 

IVa式期 : 

  • X字状把手付大型深鉢;胴部文様は2本隆線から1本隆線へ変化。隆線脇は明瞭な沈線のものと 指ナデでやや不明瞭な沈線があり、後者が後出の施文方法と考えられる。 口唇部内面は折り返されており、断面が三角形を呈するものが多い。この傾向は口縁つなぎ文 土器や口縁肥厚帯土器にも当てはまる。
  • 口縁つなぎ文土器; 口縁つなぎ文土器の口縁部では、前段階に引き続き横位ワラビ手状文が見られるが、隆線は低く指ナデによる沈線施文が多くなる。 
  • 口縁肥厚帯土器; 肥厚は形骸化し、口縁つなぎ文土器との明確な区分が困難になる。胴部の大型渦巻文は本段階までであり、このことは口縁つなぎ文土器にもあてはまる。 社口遺跡14号住居、頭無遺跡 6号住居、石之坪遺跡 (西地区)37号住居などの資料が該当。 

 

 

 

IVb式期 :

  • X字状把手付大型深鉢; 胴部文様の隆線脇は不明瞭な指ナデ状の沈線となる。 
  • 口縁つなぎ文土器; 口縁部は横位ワラビ手状文と楕円文が独立して、渦巻文と精円文 とが横位に展開するものと楕円文が省略され幅の狭い横位ワラビ手状文となるものがある。
  • 口縁肥厚帯土器; さらに形骸化した突起が残る程度であり、出土量も少ない。 胴部の くびれは弱くなり、直線的に開く傾向。 口唇部内面の折り返しの無いものが多い。 頭無遺跡 4号住居、北後田遺跡A区 8号の資料が該当。

 

 

 

3-4-① 長胴甕 ; II式期で消滅

 

3-4-② 小甕 (曽利 III式); II式期で消滅

 

3-4-③ X字状把手付深鉢(曽利 IV式)

3-4-③-A; IVa式期(X字状把手)

27.中原 B1号土坑, 28.坂井, 29.石之坪25住, 30.坂井6土-1, 31.石之坪173住, 32.北後田A15住. 33.石之坪25住, 34.真原5土, 35.真原5土, 36.石之坪59住, 37.方城第一SB02-1, 38.方城第1SB02-2,

 

 

  • 胴部文様の隆線が2本単位から1本単位に移行。
  • 隆線側面には指ナデ又は半我竹管外皮による沈線を施文。
  • 地文は櫛歯状工具による条線で縦位が中心。
  • 口唇部はやや膨らみ、内面に稜のあるものが多い。

 

 

 

31. 曽利 IVa式 X字状把手大型深鉢 (石之坪173住) 胴部に1本隆線で渦巻文を施し、その両側に幅広(指ナデ or 半裁竹管内面)の沈線を添えている。地文に櫛状工具による従位条線。口唇部にやや膨らみをもたせている。

 

 

 

32. 曽利 IVa式 X字状把手大型深鉢(北後田遺跡 A15住@韮崎市) 胴部に1本隆線の渦巻文、その両側に幅広(指ナデ or 半裁竹管内面による)の沈線。 地文は櫛状工具による従位沈線。

 

 

 

34. 曽利 IVa式 X字状把手大型深鉢(真原遺跡5号土坑 @北杜市) 胴部に4単位の渦巻継ぎ文が大きく展開。文様を構成している隆線は 1本で、隆線脇にはナデによる沈線が施文。地文は条線で隆線→条 線→隆線脇のナデ という施文順序。 また、胴部過半の渦巻文からは隆線が垂下している。(竹田眞人 2001, 八ケ岳考古)。

 

 

 

35. 曽利 IVa式 X字状把手大型深鉢(胴部に1本の隆線による渦巻継ぎ文がおそらく4単位展開。地文は条線だが、摩減が激しいため詳細は不明。(竹田眞人 2001, 八ケ岳考古)。

 

 

 

37. 曽利 IVa式 X字状把手大型深鉢(坂井遺跡 5号土坑@韮崎市) 1本隆線による渦巻文が、また地文に櫛歯状工具による条線文が施文される。

 

 

 

曽利 IVa式 X字状把手付大型深鉢 (大深山遺跡@川上村 川上村文化センター) 頸部に横S字状に4単位の隆線を貼り、夫々の接合部でX字状把手を形成している。胴部に渦巻文を1隆線とその両側を指ナデ沈線で施文。地文に棒状工具で従位条線を施している。

 

 

 

3-4-③-B; IVb式期(X字状把手)

39.後田C2号配石,  40.後田C2号配石,  41.北後田A19住,  42.柳平北4号竪穴1埋,  43.次郎構5住,  44.石之坪31土坑

 

  • IVa式期との区分は困難な場合が多いが、地文が綾杉文・異方向
  • 口縁部内面の稜の消失
  •  隆線側面の沈線がナデ主体で隆線の稜も不明瞭となる

 

 

 

39. 曽利 IVb式 X字状大型深鉢(後田遺跡 C区2号配石 @韮崎市) 口縁部は無文。頸部に四個等分のX字状把手。胴部にうず巻状文を描きながら隆帯が垂下、その間に条線が縦や斜めに施されている。(↓の地文に綾杉文が入る深鉢と共伴)

 

 

 

40. 曽利 IVb式 X字状把手付大型深鉢(後田遺跡C区2号配石@韮崎市) 頸部に四個等分のX字状把手。 胴部に大きなうず巻文を描き隆帯が垂下し、その間に綾杉文が施される。↑と共伴。

 

 

 

41. 曽利 IVb式 X字状把手付大型深鉢(北後田遺跡A19住@韮崎市) 口縁部無文。 頸部に4個等分のX字状把手。 胴部に大小の渦巻文を描き、隆帯が垂下し、その間に綾杉文が施されている。

 

 

 

42. 曽利 IVb式 X字状把手大型深鉢(柳坪北遺跡1号埋甕@北杜市) 5号住居址の埋甕。胴部に1本低隆帯による渦巻文とその両側にナデ沈線を施文。地文は櫛歯状工具による綾杉文。

 

 

 

43. 曽利 IVb式 X字状把手付大型深鉢(次郎構遺跡5住@北杜市) 地文に綾杉文

 

 

 

44. 曽利 IVb式 X字状把手大型深鉢(石之坪遺跡31土@韮崎市) 地文に異方向の櫛状工具による条線。

 

 

 

 

3-4-④ 大型把手付(水煙文)深鉢 曽利 I式期で消滅

 

 

3-4-⑤ 口縁重弧文深鉢;曽利 I式期で消滅

 

 

3-4-⑤’ 口縁斜行文深鉢(曽利 IV式)

 

曽利 IV式 口縁斜行文深鉢(中原B1土)

 

  • 本系列の最低限の要素である口縁部斜行沈線文、器形や文様帯などは残るが、形骸化したもの。数量的には極めて少ない。

 

曽利 IV式 口縁斜行文土器(石之坪遺跡@韮崎市 韮崎市立民俗資料館)

 

 

 

 

3-4-⑥ 口縁肥厚帯土器/胴部区画文(曽利 IV式)

  • 肥厚帯が薄くなる。
  • 胴部には 1本隆線 による 冂字状区画文が主体。
  • 地文は櫛歯状工具による直線状ないしは異方向の条線。

 

3-4-⑥-A;IVa式期(口縁肥厚帯土器/胴部区画文

27.頭無6住,  28.頭無5住,  29.柳坪15住,  30.社口3次9住,  31.北後田A15住,  32.次郎構7住,  33.姥神遺構外,  34.次郎構132土,  35.柳坪Bl住, 36.柳坪Bl住,  37.柳坪B14住

 

 

  • 肥厚は形骸化し、口縁つなぎ文土器との明確な区分が困難になる。
  • 胴部の大型渦巻文は本段階までであり、このことは口縁つなぎ文土器にもあてはまる。
  • 社口遺跡14号住居、頭無遺跡 6号住居、石之坪遺跡 (西地区)37号住居などの資料が該当。 

 

 

31. 利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部区画文)(北後田15住@韮崎市) 口縁部は、山形把手と有円孔把手が交互に巡る。条線を地文として隆帯と蛇行沈線を垂下させている。

 

 

 

34. 曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部区画文)(次郎構132土@北杜市) 口縁部に4単位の小突起があ り、突起部には右回りの渦巻文があり、この下にも施されている。胴部は隆帯により8単位に縦に区画され、区画された中には沈線による蛇行懸垂文と櫛歯状工具による沈線が施されている。

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部区画文)(石之坪遺跡@韮崎市 韮崎市立民俗資料館) 地文に綾杉文

 

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(曽利 16住@富士見町)胴部は低い従位隆線で区画され、間に縦方向沈線の綾杉文が施文される。

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(梅ノ木遺跡@北杜市) 4単位のゆるやかな波状口縁。波頂下に渦巻文を配し口唇に沿って巡らせた沈線により連結される。胴部には低い隆線による冂文で区画され、地文は櫛歯状工具による綾杉文が施される。

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(西原遺跡@北杜市)

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(次郎構遺跡@北杜市)

 

 

 

 

3-4-⑥-B;IVb式期(口縁肥厚帯土器/胴部区画文

38.石之坪(東)280土,  39.石之坪178住,  40.石之坪50住,  41.石之坪(東)23住,  42.西原1住

 

  • 口縁肥厚はさらに形骸化し、突起が残る程度であり、出土量も少ない。 
  • 胴部のくびれは弱くなり、直線的に開く傾向。 
  • 口唇部内面の折り返しの無いものが多い。 
  • 頭無遺跡 4号住居、北後田遺跡A区 8号の資料が該当。

 

 

3-4-⑦ 口縁肥厚帯土器/胴部渦巻文(曽利 IV式)

3-4-⑦-A; IVa式期(口縁肥厚帯土器/胴部渦巻文

21.後田B2住,  22.後田B2住,  23後田B3住,  24.海道前Cll住,  25.塩川,  26.頭無11住,  27.後田B2住,  28.後田B3住埋,  29.石之坪128住,  30.石之坪82住,  31.後田B3住,  32.社口3次9住,  33.海道前C6住,  34.野添SB2,  35.方城第一遺構外,  36.社口3次9住

 

 

  • 肥厚は形骸化し、口縁つなぎ文土器との明確な区分が困難になる。
  • 胴部の大型渦巻文は本段階までであり、このことは口縁つなぎ文土器にもあてはまる。
  • 社口遺跡14号住居、頭無遺跡 6号住居、石之坪遺跡 (西地区)37号住居などの資料が該当。 

 

 

21. 曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(後田遺跡B区2住@韮崎市)

 

 

 

22. 曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(後田遺跡B区2住@韮崎市) 

 

 

 

23. 曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(後田遺跡B区3住@韮崎市) 

 

 

 

24. 曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(海道前C遺跡12住@北杜市)

 

 

 

27. 曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(後田遺跡B区2住@韮崎市) 

 

 

 

28.曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(後田B3住埋)

 

 

 

31. 曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(後田B3住埋)

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(上小用遺跡@北杜市白州町 北杜市考古資料館) あまり厚くしない平縁。口縁部に指ナデ沈線を巡らせる。胴部には低い1本隆線で渦巻文を施文、その両側を不明瞭な指ナデ沈線を添える。 地紋は櫛歯状工具による従位沈線。

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(井戸尻考古館) あまり厚くしない平縁。口縁部に指ナデ沈線を巡らせる。胴部には低い1本隆線で渦巻文を施文、その両側を不明瞭な指ナデ沈線を添える。 地紋は櫛歯状工具による従位沈線。

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(井戸尻考古館) あまり厚くしない平縁。口縁部に指ナデ沈線を巡らせる。胴部には低い1本隆線で渦巻文を施文、その両側を不明瞭な指ナデ沈線を添える。 地紋は櫛歯状工具による従位沈線。

 

 

 

曽利 IVa式 口縁肥厚帯土器(胴部渦巻文)(後田遺跡@韮崎市 韮崎市立民俗資料館) あまり厚くしない平縁。口縁部に指ナデ沈線を巡らせる。胴部には低い1本隆線で渦巻文を施文、その両側を不明瞭な指ナデ沈線を添える。 地紋は櫛歯状工具による従位沈線。