3-2. 曽利 II式
- 大型長胴甕が極わずかになり、X字状把手の器形が完全に成立。
- 口縁斜行文土器や口縁つなぎ文土器の出現。
- 小型甕は本期で終了。
- 地文は 棒状工具による刺突文・4亀文 (結節・単節縄文)・ 櫛歯状工具による条線が中心となる。
3-2-① 長胴甕 (曽利 II式)
18.石之坪24J-SU2 19.石之坪15R-SD2 20.石之坪28U-SD13 21.柳坪A11住
IIa式期 (長胴甕):
- 口縁部は直線的に開き、口唇部付近で内側に折れるものが中心となり、口縁部全体が内湾するものはわずかに見られる程度。
- 頸部は粘土帯上に半裁竹管内皮により横位に直線的隆線を施文し、横位波状粘土紐文を貼付する場合が多い。
- 出土量的には前段階と比較して少ない傾向。
曽利 IIa式 長胴甕(鹿島台遺跡D区SI061 君津市 加曽利貝塚博物館) 頸部の粘土帯上に半裁竹管内皮により横位に直線的隆線を施文し、その上下に横位波状粘土紐文を貼付する。
曽利 IIa式 長胴甕(石之坪24J-SU2 @韮崎市)
曽利 IIa式 長胴甕(石之坪15R-SD2 @韮崎市)
曽利 IIa式 長胴甕(石之坪28U-SD13 @韮崎市)
曽利 IIa式 長胴甕(安道寺遺跡 @甲州市 山梨県立考古博物館)
曽利 IIa式 長胴甕(北原C遺跡 @南アルプス市 南アルプス市ふるさと文化伝承館) 頸部に多段化した横位波状粘土紐と半裁竹管内面によるかまぼこ形の横位隆線が巡る。
曽利 IIa式 長胴甕(釈迦堂/笛吹市 釈迦堂遺跡博物館) 口縁部が直線的に開き、口唇部付近で内側に折れる。頸部に粘土帯上に半裁竹管内皮により横位に直線的隆線を、また胴部にも同様の直線的隆線によるU字状懸垂文が施文される。
曽利 IIa式 長胴甕 (釈迦堂遺跡 笛吹市) 直線的に開く無文口縁。頸部に横位波状粘土紐文が巡る。胴部に垂直懸垂文とU字状懸垂文の結合を貼付し、その脇を波状粘土紐文で加飾。U字状垂直懸垂文の中にS字状隆帯を貼付。
IIb式期 (長胴甕):
- IIa式期とほぼ同内容であるが、地文に棒状工具による刺突文 (雨垂状)のものが出現。出土量は さらに少なくなる傾向にある。
- 地文には縄文と条線に大きく区分することができる。
- 縄文地文のものは口縁部が直線的に開くものが多い。
- 条線地文のものは口縁部が内湾するものが多い。
- 縄文地文の胴部文様は縦位波状粘土紐文など懸垂文が多く、U字状文などの曽利式発生当初からの系統を持つ。
- 文様が施文されることは少なくなる。
- 胴部文様の省略化の傾向は認められる。
- 頸部の横位波状粘土紐貼付文が多段化する傾向 がある。
IIa式期
- 胴部文様の一部であったX字状把手が頸部文様帯に組み込まれる。
- 把手が4単位のものとS宇状が連結し5~ 8単位のX字状把手を構成するものとがある。
- 口縁部が内湾するものもあるが、前段階よりもやや直線的となる。また完全に直線的に開き口唇部内面を屈曲させるものが現れる (「 口唇部内面粘土紐貼付」)。
- 胴部文様には人体文からの変化と考えられるU字状文などが施文される。隆線は半裁竹管内皮によるかまばこ状の断面であ り、連続押引文の施文は少ない。 地文には刺突文・縄文が施文される。 ↑10は人体文が崩れ、横位に文様が展開し始めているが、端部渦巻文となっていないことからこの段階に含めることとした。
曽利 IIa式 X字状把手付大型深鉢(唐渡宮遺跡21住 井戸尻考古館) 胴部文様には人体文からの変化と考えられるワラビ状文が施文され、隆線は半裁竹管内皮によるかまばこ状の断面を呈す。
曽利 IIa式 X字状把手深鉢(石之坪遺跡 @韮崎市)
曽利 IIa式 X字状把手深鉢(石之坪遺跡 @韮崎市) 人体文が崩れ、横位に文様が展開し始めているが、端部渦巻文となっていないことからこの段階に含める。
IIb式期
- 頚部の文様が消滅し、X字状把手のみで構成される。
- 器形は前段階と同様だが、口縁部が内湾するものはない。
- 胴部文様は人体文から変化した端部渦巻文のある文様が施文される。半我竹管内皮による断面かまばこ状の隆線。
- 地紋に刺突文が施文されるものもある。
IIb式;7.方城第一SD03,
斜行文 II式;8.柳坪A11住, 9.坂井 10.石之坪7住 11.柳坪B10住 12.姥神14住 13.清水端
曽利 IIa式 口縁重弧文土器(殿林遺跡 @甲州市 山梨県考古博物館)
曽利 IIb式 口縁重弧文土器 高67cn(真原A遺跡@北杜市武川町 北杜市考古博物館)X字状把手4つが付いた大形土器。口縁部に重弧文、胴部にU字状、J字状文がそれぞれ貼付される。地文は半裁竹管内側で刺突文が施文される。 住居址の出入口部に埋甕として逆位で埋められていた。底部は故意に割られている。
3-2-⑤’ 口縁斜行文深鉢(曽利 II式)
IIb式;7.方城第一SD03,
斜行文 II式;8.柳坪A11住, 9.坂井 10.石之坪7住 11.柳坪B10住 12.姥神14住 13.清水端
II式期
- 半裁竹管内皮による半隆起状の集合沈線文により施文。
- 胴部地文も同一工具により施文され ることが一般的。
- 胴部には粘土紐による縦位波状文や懸垂文に小渦巻文などを付加するものなど大型長胴甕の胴部文様との関係を認めることができる。
- II式期の中で型式学的には胴部文様の小規模化が認められる (櫛 原1999)が 、極めて漸移的な変化であり、別系列における時間的区分ほど明瞭ではない。
- 頸部隆線上に半裁竹管内皮による押引文を施文するも の (↑11等)をメルクマールとして III式期にする捉え方が多い。 しかし、この施文方法自体は I式期に見られたものであることや、柳坪遺跡A地区 1号住居では II式期のものと出土していることから、本期にも存在する施文方法として捉えておく。
曽利 II式 口縁斜行文深鉢(根古屋遺跡@北杜市白州町 北杜市考古資料館)
曽利 II式 口縁斜行文深鉢(寒風貝塚@松戸市 本庄早稲田の杜ミュージアム)
曽利 II式 口縁斜行文深鉢(清水端遺跡 北杜市)
曽利 II式 口縁斜行文深鉢(釈迦堂遺跡@笛吹市 釈迦堂博物館)