井戸尻考古館で『蛇込遺跡・広原遺跡 速報展』のミニ企画展示開催中(5/16~7/2)。 

今回の千曲川・中信博物・資料館巡り2023のテーマだった中信唐草文系土器(中期後葉)に関して興味深い発掘調査結果が報告されていた。

 

 

蛇込遺跡

  • 富士見駅南東約1km、立場川(たつば)と乙貝川(おっかい)に挟まれた尾根状台地の、標高約920mの平坦地に在り、八ケ岳南麓と西麓に画する立場川の右岸(西側)に立地。
 
 
  • 古くから大きな集落として認識されていた(1965年刊行の『井戸尻』に、地表観察だけで20圏もの住居址確認。周囲に大きな縄文時代の集落遺跡がないことから、縄文中期の拠点的な集落遺跡であると考えられていた。)
 
 
  • 2019年、太陽光発電事業に伴う発掘調査で4軒の住居址と、79基の小竪穴を確認。

 

 

  • 本調査で最も特徴的であったのは『唐草文系土器の出土量の多さ』。
中信唐草文系土器 第3段階(蛇込遺跡1号住居址)
 
 
  • 富士見町の縄文中期後葉の遺跡では主として八ケ岳南麓から西関東にかけて見られる曽利式土器が多く出土。唐草文系土器も発見されることはあるが、あくまで客体的な存在。
曽利遺跡出土の曽利式土器

 

 

  • 唐草文系土器は長野県中部・南部を中心に分布する土器で、その東端は ”八ケ岳南麓の西あたり と言われていたが、その境はどこにあるのか不明なままだった。

 

 

  • 蛇込遺跡から多くの唐草文系土器が出土することから立場川が唐草文系土器文化圏を画するひとつの境であることが明らかになった。
  • 蛇込遺跡から南南西に2km、釜無川左岸(西側)に位置する同時期の広原遺跡からも唐草文土器は出土するものの、それらは典型的な器形や文様のものは少なく、客体的な存在だと見做される(曽利式が主体)。

 

 

中信唐草文系土器(第3段階)深鉢 @平出遺跡

 

 

 

 

 

 

 

中信唐草文系土器編年

 

 

 

下伊那唐草文系土器編年

 

 

 

唐草文系土器文化圏と曽利式土器文化圏との境界が、今の長野県と山梨県の県境とほぼ同じ位置にあるのは興味深い。

これ、火焔型土器文化圏が信濃川上流域で止まり、県境を越えて長野県側(千曲川流域)に入ると急激に消えてゆくのとよく似ている。

 

 

 

 

関連Links

下伊那唐草文系土器 1/2段階 (1/3)

下伊那唐草文系土器 3段階   (2/3)

下伊那唐草文系土器 4段階    (3/3)