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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

破産宣告決定を相当であると認めた事例

 

 

破産決定に対する即時抗告事件

【事件番号】      東京高等裁判所決定/昭和32年(ラ)第731号

【判決日付】      昭和33年7月5日

【判示事項】      破産宣告決定を相当であると認めた事例

【参照条文】      民法113

             破産法126

【掲載誌】        金融法務事情182号3頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト106号22頁

             別冊ジュリスト252号8頁

 

民法

(無権代理)

第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

 

破産法

(定義)

第二条 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第十二章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。

2 この法律において「破産事件」とは、破産手続に係る事件をいう。

3 この法律において「破産裁判所」とは、破産事件が係属している地方裁判所をいう。

4 この法律において「破産者」とは、債務者であって、第三十条第一項の規定により破産手続開始の決定がされているものをいう。

5 この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。

6 この法律において「破産債権者」とは、破産債権を有する債権者をいう。

7 この法律において「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。

8 この法律において「財団債権者」とは、財団債権を有する債権者をいう。

9 この法律において「別除権」とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について第六十五条第一項の規定により行使することができる権利をいう。

10 この法律において「別除権者」とは、別除権を有する者をいう。

11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

 

(破産手続開始の原因)

第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。

2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

 

 

 (争 点)

 抗告人栗栖赴夫は相手方東京都商工信用金庫外十名に対して合計約金六百二十万円の債務を負担し、これが支払不能の状態にあるものとして昭和三十二年十一月二十日東京地方裁判所において破産の宣告を受けたが、(一)本件については、申立債権の存在が明白でなく、審理不当である、(二)抗告人は支払停止をしていない、(二)抗告人は支払不能ではない、から原決定は取り消されるべきであるとして抗告を申し立てた。

(決定要旨)

 (一)申立債権の存在が明白でないとの点について。

 証拠を綜合すれば、次の事実を一応認めることができる。すなわち、抗告人は昭和二十七年十月頃相手方東京都商工信用金庫小山支店の支店長南条正七に対し会社設立のため資金の必要ありとして金四百万円の融資を申し出た。右南条は抗告人と親戚関係にあつて、特に眤懇な間柄であり、且つ右申出に当り抗告人は借受金は会社設立のため単に見せ金に使うのであるから翌日にでも返還することを言明していたので、当時南条は小山支店長として相手方の本店に無断でこのうよな大金を融資することは許されていなかつたにもかかわらず、抗告人の言を信用して相手方の代理名義を以て同月三十一日金四百万円を数日中に返還すべき約定で抗告人に貸与した。しかるに抗告人は約旨に反して右借受金の返済をしないのみならず、同年十一月八日に至り、右南条に対し更に金二百万円の追加融資方を申し出で、若しこれに応じないときは前記四百万円の返済も覚束なくなる虞がある旨暗示したため、右南条は行きがかり上、これまた本店の諒解を得ないで相手方の代理名義を以て抗告人に対し前同様の約定で金二百百円を貸与したものである。

 もつとも、証拠によれば、日産メトロ交通株式会社は金額四百五十万円及び金額百五十万円の約束手形各一通を相手方宛に振り出し、抗告人は右各手形に手形上の保証をしたことを認めることができる。これによると、抗告人は相手方に対し、右約束手形の主債務者日産メトロ交通株式会社のためにその手形上の保証債務を負担しているにすぎないかの如く見えるけれども、原審証人南条正七の証言と相手方審問の結果を綜合すれば、南条正七は抗告人を厚く信用していたため、前記貸金を交付するに当り、抗告人から何らの証書類を差し入れさせなかつたところ、抗告人は約旨に反しその返済を遷延し、南条の厳重な督促により昭和二十八年六月頃に至り右貸金債務の支払方法として振出日附を遡及して作成された前掲の約束手形二通を差入たたことが窺えるので、右約束手形の存在することは、抗告人と相手方との間に消費貸借が成立したとの認定を妨げるものではない。

 してみると、南条正七が相手方の代理名義を用いてなした右消費貸借契約は本来無権代理行為に当るものであるが、本件破産申立書の記載によれば、相手方は南条のなした右消費貸借に基き抗告人に対し金六百万円の債権があることを主張し、これを申立債権として抗告人に対する本件破産の申立をしていることが明らかであるから、相手方は右南条のなした無権代理行為を追認しているものということができる。そうすると抗告人は相手方に対し右消費貸借契約に基き金六百万円の債務を負担するものであるから、本件申立債権の存在が明白でないとする抗告人の主張は採用できなか。

 (二)抗告人は支払停止をしていないとの点について。

 破産法は原則としズ支払不能を破産原因と定め、債務者が支払を停止したときは支払不能と推定しているのである。従つて裁判所は破産事件の審理に当り債務者が支払不能の状態にあるものと認めるときは、支払停止の有無の点につき判断するまでもなく破産を宣告すべきものである。本件においては債務者たる抗告人は後記説示のとおり支払不能の状態にあるものと認められるから、抗告人が支払を停止したか否かの点は判断の必要をみないのであり、原決定も抗告人が支払不能の状態にあるものと認めて破産宣告をしているのであつて、支払停止の有無につき判断を加えているわけではない。従つて抗告人の主張はすでにこの点において採用し難いのみならず、証拠によれば、抗告人は昭和二十八年八月当時においては、相手方以外にも他に多額の債務を負担して金融逼迫し、同年八月三十一日三和銀行神田支店を支払銀行とする金額四百十七万円の約束手形を不渡りにしたため遂に銀行取引の停止処分を受けるに至つたことを窺うことができる。従つて抗告人にはその頃支払停上の行為があつたものと認められるので、抗告人の主張は理由がない。

 (三)抗告人は支払不能の状態にあるものでないとの点について。

 およそ支払不能とは、債務者が一般に金銭債務の支払をすることができない客観的状態をいうのであつて、人の弁済力は財産信用及び労務の三者から成立するものと解せられるから、抗告人の所有する財産、その信用及び労務について順次検討してみる。

 (A)抗告人の財産-本件記録によれば、相手方は原裁判所に破産宣告前の保全処分として抗告人所有の有体動産の仮差押の申請をなし、昭和三十年二月十八日その旨の決定がなされ、同月二十一日抗告人の肩書住所において仮差押の執行がなされたのであるが、これによると、抗告人は右住所に家具、什器、書籍、書画、骨董類等有体動産を所有しその見積価額は合計金五十六万一千八百円であることを一応認めることができる。

 抗告人は、右見積価額は甚だ低額で、什器備品の総計は右見積価額の三倍ないし四倍の七十万ないし八十万を下らないし、抗告人所蔵の書籍には稀本珍本が多く、全書籍の価額は約二百万円と見積られ、更に書画、骨董類も少なくとも百五十万円を下らない旨主張するけれども、抗告人の右主張事実を認めるべき疏明はない。その他抗告人が特記すべき財産を有することを認めるに足る疏明は存しない。

 (B)抗告人の労務による収入-抗告人審問の結果によると、抗告人は現在財団法人経済政策研究所会長並びにビルマ企業会議、SS製薬株式会社、塚本商事株式会社の各顧間をしていて、その顧問料等の収入は月額約十万円であることを認めることができる。

 (C)抗告人の信用による支払能力-抗告人は株式会社日本興業銀行の理事、総裁を経て、昭和二十二年六月片山内閣の大蔵大臣となり次いで昭和二十三年三月には芦田内閣の国務大臣兼経済安定本部総務長官、物価庁長官等を歴任し、中央大学や慶応大学において教鞭を執つたこともあり、法学博士の学位を有するいわゆる名士であることは本件記録に徴し明らかである。従つて抗告人が多大の信用を博していたものであることは容易に窺知できるけれども、相手方提出の疏明方法を綜合すれば、抗告人は昭電事件以来漸次その信用を失墜し、昭和二十七、八年頃から一千万円以上の多額の債務を負担しながら金融意の如くならず、肩書住所や郷里に所有していた不動産を売却処分するに至り、現在においては抗告人の信用による支払能力は特に取り立てて論ずるほどのものでないことを推認することができる。

 以上の各点を綜合して判断すると、抗告人は現在相手方に対する債務を含め合計金約六百二十万円の債務を負担し、一方積極財産として前示有体動産(見積価額合計金五十七万円余)のほかは特記すベき財産とてもなく、抗告人の労務並びに信用の点を考慮に入れても、全く支払不能の状態にあるものと認めざるを得ない。

 以上のとおりであるから、抗告人に対し破産宣告をした原決定は相当であり、本件抗告は理由がないとしてこれを棄却した。

会社の業務財産状況の検査役選任請求が認められた事例

 

検査役選任即時抗告事件

阪高等裁判所決定/昭和55年(ラ)第254号

昭和55年6月9日

【判示事項】    会社の業務財産状況の検査役選任請求が認められた事例

【判決要旨】    会社が二期の営業年度にわたり定時株主総会を開催せず、同二期に関し法定の計算書類を作成し、その承認を求める手続をなさず、また、代表取締役の任期満了にかかわらず取締役選任手続を怠り、さらに、代表取締役に対する金員の支出、役員報酬額につき不正、法令違反の疑いがあるなど判示の事実があるときは、会社の業務執行に関し商法二九四条一項所定の事由があるものとして、検査役を選任するのが相当である。

【参照条文】    商法294

【掲載誌】     判例タイムズ427号178頁

          金融・商事判例614号18頁

 

会の法

(業務の執行に関する検査役の選任)

第三百五十八条 株式会社の業務の執行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、次に掲げる株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。

一 総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主

二 発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主

2 前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。

3 裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。

4 第二項の検査役は、その職務を行うため必要があるときは、株式会社の子会社の業務及び財産の状況を調査することができる。

5 第二項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。

6 裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第二項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。

7 第二項の検査役は、第五項の報告をしたときは、株式会社及び検査役の選任の申立てをした株主に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。

 

『弁護士13人が伝えたいこと―32例の失敗と成功』 2018/11/26

中山 嚴雄 (編集)

 

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コメント

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第6 「遺産の範囲は必ず確認しなければならないか」─遺産分割審判

第7 「形成判断はどれくらい正しいのか」─共有不動産分割訴訟

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第10 ビジネスモデル提案者の責任(その2)─オーダーメイド賃貸のビジネスモデル破綻の責任

第11 濫用的(詐害的)会社分割

第12 情報公開条例やSNSを活用して証拠を収集した事例

第13 強制執行停止命令により和解に至った事案

第14 少女への強制わいせつ被告事件(国選弁護事件)

第15 医事紛争における示談交渉の一事例

第16 初めて担当した医療訴訟から学んだこと

第17 ある少年事件の裁判官

第18 学者の論文を安易に引用する危険性

第19 相続の限定承認申述事件

第20 人身保護請求まで至った事件─「長男はどこ?」

第21 ダスキン大肉まん事件株主代表訴訟

第22 原告は7億3,000万円で何を買ったのか─売買契約の当事者・対象について争った事案

第23 完負け─三洋電機株主代表訴訟事件

第24 オリンパス有価証券報告書等虚偽記載事件

第25 23条照会により訴訟事件記録の閲覧申請に必要な事件の特定に関わる事項(事件番号,当事者の氏名等)を把握する方法とその可能性について

第26 訴訟の主張・立証における戦力の漸次投入の弊害とその改善について

第27 控訴審における和解勧告

第28 折れたバットの行方

第29 取立訴訟事件で原告適格の否定を勝ちとるまで

第30 一つの交通事故事件でみる和解の進め方

第31 裁判員裁判体験録

第32 詐害的会社分割事件での弁護活動

 

執筆者

久保井 一匡

中山 嚴雄

金子 武嗣

髙橋 典明

中 紀人

小谷 眞一郎

坂野 真一

松原 弘幸

加藤 真朗

東 忠宏

中山 博雄

太井 徹

宮下 泰彦

 

 

 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

中山/嚴雄

弁護士。昭和17年生まれ。京都大学卒業。21期(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

出版社 ‏ : ‎ 日本加除出版 (2018/11/26)

発売日 ‏ : ‎ 2018/11/26

言語 ‏ : ‎ 日本語

単行本 ‏ : ‎ 264ページ

ISBN-10 ‏ : ‎ 4817845244

 

第17章 特定利用者情報

改正法では、新たに「特定利用者情報」が規定され、定められた電気通信事業者は、この特定利用者情報を適正に扱う義務が生じました(改正法27条の5〜27条の11)。

 

「特定利用者情報」とは、以下すべてに当てはまるものと定められています。(改正法27条の5第1号、2号)

 

通信の秘密に該当する情報

利用者が識別でき、かつ、総務省令で定める情報

 

しかし、この「特定利用者情報」について、すべての電気通信事業者に「適正取り扱いの義務」が生じるわけではありません。

特定利用者情報を適正に取扱う義務は総務省令で定めるところにより、総務大臣から指定された、利用者の利益に及ぼす影響が大きいと判断される規模の大きな電気通信事業者にその義務が生じます。

 

【指定の対象となる事業者】

 

無料の電気通信役務の場合:利用者数が1,000万人以上である電気通信役務

 

有料の電気通信役務の場合:利用者数が500万人以上である電気通信役務

 

(参考:電気通信事業法施行規則などの一部改正について​​)

 

 

賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性

 

 

消費者契約法12条に基づく差止等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/令和3年(受)第987号

【判決日付】      令和4年12月12日

【判示事項】      1 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性

             2 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払等の事情が存するときに連帯保証人が賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

民法

(基本原則)

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

(催告による解除)

第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

消費者契約法

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

 

 

 

       主   文

 

 1 原判決主文第1項を破棄し、被上告人の控訴を棄却する。

 2 原判決中、別紙契約条項目録記載1の内容の条項に係る請求に関する部分を次のとおり変更する。

   上告人の控訴に基づき、第1審判決中、上記請求に関する部分を次のとおり変更する。

  (1) 被上告人は、賃貸住宅の賃借人となる消費者との間で当該消費者の賃料等の支払に係る債務の保証委託に関する契約を締結するに際し、別紙契約条項目録記載1の内容の条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行ってはならない。

  (2) 被上告人は、別紙契約条項目録記載1の内容の条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙を廃棄せよ。

  (3) 上告人のその余の請求を棄却する。

 3 上告人の別紙契約条項目録記載2の内容の条項に係る請求に関する上告及び同目録記載3の内容の条項に係るその余の請求に関する上告を棄却する。

 4 上告人のその余の上告を却下する。

 5 訴訟の総費用は、これを5分し、その3を上告人の負担とし、その余を被上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 第1 事案の概要

 1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。

 (1) 上告人は、消費者契約法(以下「法」という。)2条4項にいう適格消費者団体である。

 (2) 被上告人は、賃貸住宅の賃借人(以下、単に「賃借人」という。)の委託を受けて賃借人の賃料等の支払に係る債務(以下「賃料債務等」という。)を保証する事業を営む会社である。

 (3) 被上告人は、賃貸住宅の賃貸人(以下、単に「賃貸人」という。)、賃借人等との間で、「住み替えかんたんシステム保証契約書」と題する契約書(契約書ひな形が印刷された契約書用紙。以下「本件契約書」という。)を用いて、賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約(以下「原契約」といい、原契約の対象物件である賃貸住宅を「本件建物」という。)に関し、賃借人が被上告人に対して賃料債務等を連帯保証することを委託し、被上告人が賃貸人に対して当該賃料債務等を連帯保証すること等を内容とする契約を締結している。

 上記契約のうち、被上告人と賃借人との間の契約部分は、法2条3項にいう消費者契約に当たる。

 (4) 本件契約書には、次のような条項がある。なお、本件契約書において、「賃料等」とは、賃料、管理費・共益費、駐車場使用料その他の本件契約書固定費欄記載の定額の金員をいい、「変動費」とは、光熱費などの月々によって変動することが予定されている費用をいうものとされている。

 ア 被上告人は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて原契約を解除することができるものとする(別紙契約条項目録記載1の内容の条項。以下「本件契約書13条1項前段」という。)。

 イ 被上告人は、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、被上告人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められ、かつ本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる(別紙契約条項目録記載3の内容の条項。以下「本件契約書18条2項2号」という。)。

 (5) 被上告人は、本件訴訟において、賃料債務等につき連帯保証債務を履行した場合であっても、本件契約書13条1項前段に基づいて無催告で原契約を解除することができる旨を主張しているほか、原契約が終了していない場合であっても、本件契約書18条2項2号の適用がある旨を主張している。

 2 本件は、上告人が、被上告人に対し、本件契約書13条1項前段、本件契約書18条2項2号等の各条項が法10条に規定する消費者の利益を一方的に害する消費者契約の条項に当たるなどと主張して、法12条3項本文に基づき、上記各条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の各差止め、上記各条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙の各廃棄等を求める事案である。

 第2 上告代理人増田尚ほかの上告受理申立て理由第1(ただし、排除されたものを除く。)について

 1 原審は、要旨次のとおり判断して、上告人の本件契約書13条1項前段に関する請求を棄却すべきものとした。

 (1) 最高裁昭和42年(オ)第1104号同43年11月21日第一小法廷判決・民集22巻12号2741頁は、家屋の賃貸借契約において、一般に、賃借人が賃料を1か月分でも遅滞したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃料が約定の期日に支払われず、そのため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である旨を判示している。この法理は、本件契約書13条1項前段にも及ぶというべきである。したがって、本件契約書13条1項前段は、被上告人が賃料等(変動費を含む。第2において以下同じ。)の支払の遅滞を理由に原契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた条項であると解するのが相当である。

 (2) そうすると、被上告人が本件契約書13条1項前段により原契約につき無催告で解除権を行使するとしても、賃借人の不利益は限定的なものにとどまるというべきであるから、本件契約書13条1項前段が信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものということはできない。よって、本件契約書13条1項前段は、法10条に規定する消費者契約の条項には当たらない。

 2 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 (1) 本件契約書13条1項前段が法10条に規定する消費者契約の条項に該当するか否かを検討するに当たり、まず、本件契約書13条1項前段がいかなる内容を定めた条項であるのかを検討する。

 ア 前記事実関係等によれば、賃借人に賃料等の支払の遅滞がある場合、被上告人は賃貸人に対して賃料債務等につき連帯保証債務を履行する義務を負う一方、連帯保証債務の履行を受けた賃貸人は原契約を解除する必要に迫られないことから、被上告人が無制限に連帯保証債務を履行し続けなければならないという不利益を被るおそれがある。本件契約書13条1項前段は、このような不利益を回避するため、賃料債務等の連帯保証人である被上告人に原契約の解除権を付与する趣旨に出たものと解される。そして、本件契約書13条1項前段は、無催告で原契約を解除できる場合について、単に「賃借人が支払を怠った賃料等の合計額が賃料3か月分以上に達したとき」と定めるにとどまり、その文言上、このほかには何ら限定を加えておらず、賃料債務等につき連帯保証債務が履行されたか否かによる区別もしていない上、被上告人自身が、本件訴訟において、連帯保証債務を履行した場合であっても、本件契約書13条1項前段に基づいて無催告で原契約を解除することができる旨を主張している(記録によれば、被上告人は、現にそのような取扱いをしていることがうかがわれる。)。これらに鑑みると、本件契約書13条1項前段は、所定の賃料等の支払の遅滞が生じさえすれば、賃料債務等につき連帯保証債務が履行されていない場合だけでなく、その履行がされたことにより、賃貸人との関係において賃借人の賃料債務等が消滅した場合であっても、連帯保証人である被上告人が原契約につき無催告で解除権を行使することができる旨を定めた条項であると解される。

 イ 原判決の引用する前記第一小法廷判決は、賃貸人が無催告で賃貸借契約を解除することができる旨を定めた特約条項について、賃料が約定の期日に支払われず、そのため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解したものである。他方で、本件契約書13条1項前段は、賃貸人ではなく、賃料債務等の連帯保証人である被上告人が原契約につき無催告で解除権を行使することができるとするものである上、連帯保証債務が履行されたことにより、賃貸人との関係において賃借人の賃料債務等が消滅した場合であっても、無催告で原契約を解除することができるとするものであるから、前記第一小法廷判決が判示した上記特約条項とはおよそかけ離れた内容のものというほかない。また、法12条3項本文に基づく差止請求の制度は、消費者と事業者との間の取引における同種の紛争の発生又は拡散を未然に防止し、もって消費者の利益を擁護することを目的とするものであるところ、上記差止請求の訴訟において、信義則、条理等を考慮して規範的な観点から契約の条項の文言を補う限定解釈をした場合には、解釈について疑義の生ずる不明確な条項が有効なものとして引き続き使用され、かえって消費者の利益を損なうおそれがあることに鑑みると、本件訴訟において、無催告で原契約を解除できる場合につき上記アにおいてみたとおり何ら限定を加えていない本件契約書13条1項前段について上記の限定解釈をすることは相当でない。

 そうすると、前記第一小法廷判決が示した法理が本件契約書13条1項前段に及ぶということはできず、本件契約書13条1項前段について、被上告人が賃料等の支払の遅滞を理由に原契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた条項であると解することはできないというべきである。

 (2) そこで、本件契約書13条1項前段が法10条に規定する消費者契約の条項に当たるか否かについて検討する。

 ア まず、法10条は、消費者契約の条項が、法令中の公の秩序に関しない規定、すなわち任意規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するものであることを要件としている。

 一般に、賃借人に賃料等の支払の遅滞がある場合、原契約の解除権を行使することができるのは、その当事者である賃貸人であって、賃料債務等の連帯保証人ではない。また、上記の場合において、賃料債務等につき連帯保証債務の履行がないときは、賃貸人が上記遅滞を理由に原契約を解除するには賃料等の支払につき民法541条本文に規定する履行の催告を要し、無催告で原契約を解除するには同法542条1項5号に掲げる場合等に該当することを要する。他方で、上記の連帯保証債務の履行があるときは、賃貸人との関係においては賃借人の賃料債務等が消滅するため、賃貸人は、上記遅滞を理由に原契約を解除することはできず、賃借人にその義務に違反し信頼関係を裏切って賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為があるなどの特段の事情があるときに限り、無催告で原契約を解除することができるにとどまると解される。

 そうすると、本件契約書13条1項前段は、賃借人が支払を怠った賃料等の合計額が賃料3か月分以上に達した場合、賃料債務等の連帯保証人である被上告人が何らの限定なく原契約につき無催告で解除権を行使することができるものとしている点において、任意規定の適用による場合に比し、消費者である賃借人の権利を制限するものというべきである。

 イ 次に、法10条は、消費者契約の条項が、民法1条2項に規定する基本原則、すなわち信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであることを要件としている。

 原契約は、当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約であるところ、その解除は、賃借人の生活の基盤を失わせるという重大な事態を招来し得るものであるから、契約関係の解消に先立ち、賃借人に賃料債務等の履行について最終的な考慮の機会を与えるため、その催告を行う必要性は大きいということができる。ところが、本件契約書13条1項前段は、所定の賃料等の支払の遅滞が生じた場合、原契約の当事者でもない被上告人がその一存で何らの限定なく原契約につき無催告で解除権を行使することができるとするものであるから、賃借人が重大な不利益を被るおそれがあるということができる。

 したがって、本件契約書13条1項前段は、消費者である賃借人と事業者である被上告人の各利益の間に看過し得ない不均衡をもたらし、当事者間の衡平を害するものであるから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるというべきである。

 ウ よって、本件契約書13条1項前段は、法10条に規定する消費者契約の条項に当たるというべきである。

 3 これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。そして、前記事実関係等及び上記2に説示したところによれば、本件契約書13条1項前段に関する上告人の請求のうち、賃借人となる消費者との間で当該消費者の賃料等の支払に係る債務の保証委託に関する契約を締結する際における本件契約書13条1項前段を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示の差止め及び本件契約書13条1項前段が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙の廃棄を求める部分は理由があるが、その他の措置をとる必要があるとはいえないから、その余の部分は理由がないというべきである。

 第3 上告代理人増田尚ほかの上告受理申立て理由第2(ただし、排除されたものを除く。)について

 1 原審は、要旨次のとおり判断して、上告人の本件契約書18条2項2号に関する請求を棄却した。

 (1) 本件契約書18条2項2号は、①賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠ったこと、②被上告人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡が取れない状況にあること、③電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められること、④本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存することという四つの要件(以下「本件4要件」という。)を満たすことにより、賃借人が本件建物の使用を終了してその占有権が消滅しているものと認められる場合に、賃借人が明示的に異議を述べない限り、被上告人が本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定めた条項であり、原契約が継続している場合は、これを終了させる権限を被上告人に付与する趣旨の条項であると解するのが相当である。

 (2) そうすると、本件4要件を満たす場合、賃借人は、通常、原契約に係る法律関係の解消を希望し、又は予期しているものと考えられ、むしろ、本件契約書18条2項2号が適用されることにより、本件建物の現実の明渡義務や賃料等の更なる支払義務を免れるという利益を受けるのであるから、本件建物を明け渡したものとみなされる賃借人の不利益は限定的なものにとどまるというべきであって、本件契約書18条2項2号が信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものということはできない。よって、本件契約書18条2項2号は、法10条に規定する消費者契約の条項には当たらない。

 2 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 (1) 本件契約書18条2項2号には原契約が終了している場合に限定して適用される条項であることを示す文言はないこと、被上告人が、本件訴訟において、原契約が終了していない場合であっても、本件契約書18条2項2号の適用がある旨を主張していること等に鑑みると、本件契約書18条2項2号は、原契約が終了している場合だけでなく、原契約が終了していない場合においても、本件4要件を満たすときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、被上告人が本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定めた条項であると解される。

 そして、本件契約書18条2項2号には原契約を終了させる権限を被上告人に付与する趣旨を含むことをうかがわせる文言は存しないのであるから、本件契約書18条2項2号について上記の趣旨の条項であると解することはできないというべきである。

 (2) そこで、本件契約書18条2項2号が法10条に規定する消費者契約の条項に当たるか否かについて検討する。

 ア 被上告人が、原契約が終了していない場合において、本件契約書18条2項2号に基づいて本件建物の明渡しがあったものとみなしたときは、賃借人は、本件建物に対する使用収益権が消滅していないのに、原契約の当事者でもない被上告人の一存で、その使用収益権が制限されることとなる。そのため、本件契約書18条2項2号は、この点において、任意規定の適用による場合に比し、消費者である賃借人の権利を制限するものというべきである。

 そして、このようなときには、賃借人は、本件建物に対する使用収益権が一方的に制限されることになる上、本件建物の明渡義務を負っていないにもかかわらず、賃貸人が賃借人に対して本件建物の明渡請求権を有し、これが法律に定める手続によることなく実現されたのと同様の状態に置かれるのであって、著しく不当というべきである。

 また、本件4要件のうち、本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存することという要件は、その内容が一義的に明らかでないため、賃借人は、いかなる場合に本件契約書18条2項2号の適用があるのかを的確に判断することができず、不利益を被るおそれがある。

 なお、本件契約書18条2項2号は、賃借人が明示的に異議を述べた場合には、被上告人が本件建物の明渡しがあったとみなすことができないものとしているが、賃借人が異議を述べる機会が確保されているわけではないから、賃借人の不利益を回避する手段として十分でない。

 以上によれば、本件契約書18条2項2号は、消費者である賃借人と事業者である被上告人の各利益の間に看過し得ない不均衡をもたらし、当事者間の衡平を害するものであるから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるというべきである。

 イ よって、本件契約書18条2項2号は、法10条に規定する消費者契約の条項に当たるというべきである。

 3 これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。そして、前記事実関係等及び上記2に説示したところによれば、本件契約書18条2項2号に関する上告人の請求のうち、賃借人となる消費者との間で当該消費者の賃料等の支払に係る債務の保証委託に関する契約を締結する際における本件契約書18条2項2号を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示の差止め及び本件契約書18条2項2号が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙の廃棄を求める部分は理由があるが、その他の措置をとる必要があるとはいえないから、その余の部分は理由がないというべきである。したがって、これと同旨の第1審判決は結論において正当である。

 第4 結論

 以上のとおりであるから、原判決主文第1項を破棄して、被上告人の控訴を棄却し、原判決中、本件契約書13条1項前段に係る請求に関する部分を主文第2項のとおり変更するとともに、上告人の本件契約書18条2項2号に係るその余の請求に関する上告を棄却することとする。

 なお、上告人の別紙契約条項目録記載2の内容の条項に係る請求に関する上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。また、その余の請求に関する上告については、上告人が上告受理申立ての理由を記載した書面を提出しないので、却下することとする。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 堺 徹 裁判官 山口 厚 裁判官 深山卓也 裁判官 安浪亮介 裁判官 岡 正晶)

 

(別紙)

       契約条項目録

 次の各条項中、「甲」は賃貸人、「乙」は賃借人、「丙」は乙の丁に対する債務の連帯保証人、「丁」は被上告人、「原契約」は甲と乙との間の賃貸借契約、「本件建物」は原契約の対象物件である賃貸住宅をそれぞれ指す。

 (13条1項前段)

 1 丁は、乙が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて原契約を解除することができるものとする。

 (13条1項後段)

 2 甲・乙及び丙は、上記1の場合に丁が原契約についての解除権を行使することに対して、異議はないことを確認する。

 (18条2項2号)

 3 丁は、乙が賃料等の支払を2か月以上怠り、丁が合理的な手段を尽くしても乙本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められ、かつ本件建物を再び占有使用しない乙の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、乙が明示的に異議を述べない限り、これをもって本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる。

非営業貸付に係る貸付に係る貸付金元本の貸倒れ損失は必要経費に該当しないとされた事例

 

 

所得税更正決定処分取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和48年(行ツ)第31号

【判決日付】      昭和49年9月27日

【判示事項】      (1) 非営業貸付に係る貸付に係る貸付金元本の貸倒れ損失は必要経費に該当しないとされた事例

             (2) 特殊の関係がある者に対する資金の貸付行為が所得税法上の事業に当たらず、その所得は雑所得に当たるとされた事例

【判決要旨】      (1) 旧所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)一〇条二項の規定にいう「その他の経費」が必要経費とされるためには、それが、当該総収入金額を得るために必要なものであつて、家事上の経費等でないものでなければならないところ、同じく貸付金元本の貸倒れによる損失であつても、それが事業上の賃付から生じたものである場合には、右の要件に該当するものとみることができるけれども、それが非営業貸付から生じたものである場合には、これに該当するものとみることはできない。

             (2) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料76号867頁

 

所得税法

(事業所得)

第二十七条 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

2 事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

 

(必要経費)

第三十七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

2 山林につきその年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その山林の植林費、取得に要した費用、管理費、伐採費その他その山林の育成又は譲渡に要した費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

 

 右当事者間の東京高等裁判所昭和四六年(行コ)第一三号所得税更正決定処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四七年一二月一三日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人梅沢秀次、同安田秀士の上告理由第一点について。

 昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法(昭和二二年法律第二七号。以下「旧所得税法」という。)一〇条二項の規定にいう「その他の経費」が必要経費とされるためには、それが、当該総収入金額を得るために必要なものであつて、家事上の経費等でないものでなければならないことは、規定上明白であるところ、同じく貸付金元本の貸倒れによる損失であつても、それが事業上の貸付から生じたものである場合には、右の要件に該当するものとみることができるけれども、それが非営業貸付から生じたものである場合には、これに該当するものとみることはできない。非営業貸付から生じた貸付金元本の貸倒れによる損失が旧所得税法一〇条二項に定める必要経費に該当しないとの解釈のもとに行われた本件更正処分を是認すべきものとした原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の判断は正当であつて、その過程に所論の違法はない。なお、所論のうち違憲をいう部分は、本件更正処分に右条項の解釈を誤つた違法があることを前提とするものであつて、その前提においてすでに失当である。論旨は採用することができない。

 同第二点及び第三点について。

 原判決が、その適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人の本件資金貸付行為は所得税法上の事業に該当しないとした判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違法はない。なお、所論のうち違憲をいう部分は、原判決の右判断が違法であることを前提とするものであつて、その前提においてすでに失当である。論旨は採用することができない。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

    最高裁判所第二小法廷

破産を申し立てられた甲が、未だ銀行から融資を受けられる状態にあるからには、甲に破産原因ありとはいえない

 

 

              破産申立棄却決定に対する即時抗告事件

【事件番号】      東京高等裁判所決定/昭和33年(ラ)第623号

【判決日付】      昭和34年5月16日

【判示事項】      破産を申し立てられた甲が、未だ銀行から融資を受けられる状態にあるからには、甲に破産原因ありとはいえない

【参照条文】      破産法126

             破産法132

【掲載誌】        下級裁判所民事裁判例集10巻5号1008頁

             東京高等裁判所判決時報民事10巻5号112頁

             判例時報193号23頁

             金融法務事情210号6頁

【評釈論文】      金融法務事情225号10頁

 

平成十六年法律第七十五号

破産法

(定義)

第二条 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第十二章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。

2 この法律において「破産事件」とは、破産手続に係る事件をいう。

3 この法律において「破産裁判所」とは、破産事件が係属している地方裁判所をいう。

4 この法律において「破産者」とは、債務者であって、第三十条第一項の規定により破産手続開始の決定がされているものをいう。

5 この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。

6 この法律において「破産債権者」とは、破産債権を有する債権者をいう。

7 この法律において「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。

8 この法律において「財団債権者」とは、財団債権を有する債権者をいう。

9 この法律において「別除権」とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について第六十五条第一項の規定により行使することができる権利をいう。

10 この法律において「別除権者」とは、別除権を有する者をいう。

11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

 

(破産手続開始の原因)

第十五条 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。

2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

 

 

 

(決定要旨)

 本件記録によると、抗告人神奈川日産自動車株式会社の相手方深作幸兵衛に対する本件破産申立の基本債権は、七通の約束手形額面合計金二百二十四万三千円の債権であることを認めることができる。原審と当審に提出されている株式会社常陽銀行笠間支店の支店長の提出した書面によれば、株式会社常陽銀行笠間支店は相手方深作幸兵衛において抗告人との取引のため資金の必要を生じたときは、相手方のために金二百三十万円程度の融資申出に応じ貸出の準備があることを認めることができる。一方右約束手形は、相手方が坂本敏明又は同人と坂本英明両名を受取人として振り出したものであるが、その第一裏書の裏書人である坂本敏明の肩書には「東洋自動車整備工場責任者」という記載がなされているため、右手形は裏書の連続を欠くものであること、及び抗告人は右手形につき振出人を害することを知つて取得したものであることを理由として、相手方は抗告人に対して右手形金の支払を拒絶しているものであり、また抗告人の右債権はいわゆる無名義債権であつて、未だ債務名義を得ていないことも本件記録上明らかである。なお、相手方が本件係争の債権を除いては、他に債務を負担していることを認めるに足りる資料も存在しない。

 してみると、仮りに抗告人主張の申立債権が存在するものとしても、相手方はその支払をするため前記銀行から融資を受けるについて十分の信用を有しているのであつて、支払不能の状態にあるということはできない。

 抗告人は、銀行の支店長名義の融資証明書は抗告人の債権保護に何ら効力を及ぼさないと主張する。なるほど銀行のなした融資証明が抗告人の本件債権について支払保証の効力を有するものでないことは抗告人の主張するとおりであるが、あるものが破産原因としての支払不能の状態にあるか否かを判定するについては、そのものに対する資産、信用及び労務の点を考慮すべきであつて、銀行から融資が受けられることは、そのものに対する信用状態に深い関係を有することであつて、本件においては、前記認定の融資証明について、相手方が融資中止の措置を受けるような特別の事情を認めるに足る資料はないから、抗告人の右主張は採用できない。

 よつて本件破産の申立を棄却した原決定は相当であるとして、本件抗告を棄却した。

 

 

事案の概要

 抗告人(破産申立人)は相手方(被申立人)に対して二百二十四万余円の手形金債権ありとして破産を申し立てたが、原審は、銀行の支店長が二百三十万円の融資証明書を出しているから、被申立人に破産原因ありとは認められないとして右申立を棄却した。本決定もこれと同趣旨で、銀行の融資証明は支払保証の効力をもつものではないが、破産原因の有無の制定に当つて銀行から融資を受けられるということは大きなプラスであると判示している。

国籍国政府から直接迫害を受けるおそれはないが同国内の政治団体関係者から迫害を受けるおそれがあり,かつ同国政府から保護を受けられないため,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」として難民に該当すると判断された事例


    退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民不認定処分無効確認請求事件
【事件番号】    東京地方裁判所判決/平成17年(行ウ)第114号、平成17年(行ウ)第115号
【判決日付】    平成19年2月2日
【判示事項】    1 国籍国政府から直接迫害を受けるおそれはないが同国内の政治団体関係者から迫害を受けるおそれがあり,かつ同国政府から保護を受けられないため,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」として難民に該当すると判断された事例
          2 難民の認定をしない処分が無効であることの確認請求が認容された事例
【参照条文】    出入国管理及び難民認定法2
          難民の地位に関する条約1
          難民の地位に関する議定書1
          出入国管理及び難民認定法61の2
          行政事件訴訟法3-4
          行政事件訴訟法36
【掲載誌】     判例タイムズ1268号139頁

出入国管理及び難民認定法
(定義)
第二条 出入国管理及び難民認定法及びこれに基づく命令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 外国人 日本の国籍を有しない者をいう。
二 乗員 船舶又は航空機(以下「船舶等」という。)の乗組員をいう。
三 難民 難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)第一条の規定又は難民の地位に関する議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいう。
三の二 補完的保護対象者 難民以外の者であつて、難民条約の適用を受ける難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が難民条約第一条A(2)に規定する理由であること以外の要件を満たすものをいう。
四 日本国領事官等 外国に駐在する日本国の大使、公使又は領事官をいう。
五 旅券 次に掲げる文書をいう。
イ 日本国政府、日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関の発行した旅券又は難民旅行証明書その他当該旅券に代わる証明書(日本国領事官等の発行した渡航証明書を含む。)
ロ 政令で定める地域の権限のある機関の発行したイに掲げる文書に相当する文書
六 乗員手帳 権限のある機関の発行した船員手帳その他乗員に係るこれに準ずる文書をいう。
七 人身取引等 次に掲げる行為をいう。
イ 営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、誘拐し、若しくは売買し、又は略取され、誘拐され、若しくは売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、若しくは蔵匿すること。
ロ イに掲げるもののほか、営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、十八歳未満の者を自己の支配下に置くこと。
ハ イに掲げるもののほか、十八歳未満の者が営利、わいせつ若しくは生命若しくは身体に対する加害の目的を有する者の支配下に置かれ、又はそのおそれがあることを知りながら、当該十八歳未満の者を引き渡すこと。
八 出入国港 外国人が出入国すべき港又は飛行場で法務省令で定めるものをいう。
九 運送業者 本邦と本邦外の地域との間において船舶等により人又は物を運送する事業を営む者をいう。
十 入国審査官 第六十一条の三に定める入国審査官をいう。
十一 主任審査官 上級の入国審査官で出入国在留管理庁長官が指定するものをいう。
十二 特別審理官 口頭審理を行わせるため出入国在留管理庁長官が指定する入国審査官をいう。
十二の二 難民調査官 第六十一条の三第二項第二号(第六十一条の二の八第二項において準用する第二十二条の四第二項に係る部分に限る。)及び第三号(第六十一条の二の十四第一項に係る部分に限る。)に掲げる事務を行わせるため出入国在留管理庁長官が指定する入国審査官をいう。
十三 入国警備官 第六十一条の三の二に定める入国警備官をいう。
十四 違反調査 入国警備官が行う外国人の入国、上陸又は在留に関する違反事件の調査をいう。
十五 入国者収容所 法務省設置法(平成十一年法律第九十三号)第三十条に定める入国者収容所をいう。
十六 収容場 第六十一条の六に定める収容場をいう。

(難民の認定等)
第六十一条の二 法務大臣は、本邦にある外国人から法務省令で定める手続により難民である旨の認定の申請があつたときは、その提出した資料に基づき、その者が難民である旨の認定(以下「難民の認定」という。)を行うことができる。
2 法務大臣は、本邦にある外国人から法務省令で定める手続により補完的保護対象者である旨の認定の申請があつたときは、その提出した資料に基づき、その者が補完的保護対象者である旨の認定(以下「補完的保護対象者の認定」という。)を行うことができる。
3 法務大臣は、第一項の申請をした外国人について難民の認定をしない処分をする場合において、当該外国人が補完的保護対象者に該当すると認めるときは、補完的保護対象者の認定を行うことができる。
4 法務大臣は、第一項の申請をした外国人について、難民の認定をしたときは、法務省令で定める手続により、当該外国人に対し、難民認定証明書を交付し、その認定をしない処分をしたときは、当該外国人に対し、理由を付した書面をもつて、その旨を通知する。
5 法務大臣は、第一項又は第二項の申請をした外国人について、補完的保護対象者の認定をしたときは、法務省令で定める手続により、当該外国人に対し、補完的保護対象者認定証明書を交付し、同項の申請があつた場合においてその認定をしない処分をしたときは、当該外国人に対し、理由を付した書面をもつて、その旨を通知する。

難民の地位に関する条約
第1条【「難民」の定義】
A   この条約の適用上、「難民」とは、次の者をいう。
(1)1926年5月12日の取極、1928年6月30日の取極、1933年10月28日の条約、1938年2月10日の条約、1939年9月14 の議 定書または国際避難民機関憲章により難民と認められている者。国際避難民機関がその活動期間中いずれかの者について難民としての要件を満たしていないと決定したことは、当該者が(2)の条件をみたす場合に当該者に対し難民の地位を与えることを妨げるものではない。
(2)1951年1月1日前に生じた事件の結果として、かつ、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者またはそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを 望まない者。
二以上の国籍を有する者の場合には、「国籍国」とは、その者がその国籍を有する国のいずれをもいい、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するという正当な理由なくいずれか一の国籍国の保護を受けなかったとしても、国籍国の保護がないとは認められない。
B    (1)この条約の適用上、Aの「1951年1月1日前に生じた事件」とは、次の事件のいずれかをいう。
(a)1951年1月1日前に欧州において生じた事件
(b)1951年1月1日前に欧州または他の地域において生じた事件
各締約国は、署名、批准または加入の際に、この条約に基づく自国の義務を履行するに当たって(a)または(b)のいずれの規定を適用するかを選択する宣言を行う。
(2)(a)の規定を適用することを選択した国は、いつでも、(b)の規定を適用することを選択する旨を国際連合事務総長に通告することにより、自国の義務を拡大することができる。
C      Aの規定に該当する者についてのこの条約の適用は、当該者が次の場合のいずれかに該当する場合には、終止する。
(1)任意に国籍国の保護を再び受けている場合
(2)国籍を喪失していたが、任意にこれを回復した場合
(3)新たな国籍を取得し、かつ、新たな国籍国の保護を受けている場合
(4)迫害を受けるおそれがあるという恐怖を有するため、定住していた国を離れまたは定住していた国の外にとどまっていたが、当該定住していた国に任意に再び定住するに至った場合
(5) 難民であると認められる根拠となった事由が消滅したため、国籍国の保護を受けることを拒むことができなくなった場合
ただし、この(5)の規定は、A(1)の規定に該当する難民であって、国籍国の保護を受けることを拒む理由として過去における迫害に起因するやむを得ない事情を援用することができる者については、適用しない。
(6)国籍を有していない場合において、難民であると認められる根拠となった事由が消滅したため、常居所を有していた国に帰ることできるとき。
ただし、この(6)の規定は、A(1)の規定に該当する難民であって、常居所を有していた国に帰ることを拒む理由として過去における迫害に起因するやむをえない事情を援用することができる者については、適用しない。

D         この条約は、国際連合難民高等弁務官以外の国際連合の機関の保護または援助を現に受けている者については、適用しない。
これらの保護または援助を現に受けている者の地位に関する問題が国際連合総会の採択する国連決議に従って最終的に解決されることなくこれらの保護または援助の付与が終止したときは、これらの者は、その終止により、この条約により与えられる利益を受ける。

E         この条約は、居住国の権限のある機関によりその国の国籍を保持することに伴う権利及び義務と同等の権利を有し及        び同等の義務を負うと認められる者については、適用しない。

F         この条約は、次のいずれかに該当すると考えられる相当な理由がある者については、適用しない。
(a)平和に対する犯罪、戦争犯罪及び人道に対する犯罪に関して規定する国際文書の定めるこれらの犯罪を行ったこと。
(b)難民として避難国に入国することが許可される前に避難国の外で重大な犯罪(政治犯罪を除く)を行ったこと。
(c)国際連合の目的及び原則に反する行為を行ったこと。

難民の地位に関する議定書
第一条 一般規定

1 この議定書の締約国は、2に定義する難民に対し、条約第二条から第三十四条までの規定を適用することを約束する。

2 この議定書の適用上、「難民」とは、3の規定の適用があることを条件として、条約第一条を同条A(2)の「千九百五十一年一月一日前に生じた事件の結果として、かつ、」及び「これらの事件の結果として」という文言が除かれているものとみなした場合に同条の定義に該当するすべての者をいう。

3 この議定書は、この議定書の締約国によりいかなる地理的な制限もなしに適用される。ただし、既に条約の締約国となつている国であつて条約第一条B(1)(a)の規定を適用する旨の宣言を行つているものについては、この宣言は、同条B(2)の規定に基づいてその国の義務が拡大されていない限り、この議定書についても適用される。



       主   文

 1 被告法務大臣が平成17年1月24日付けで原告に対してした出入国管理及び難民認定法49条1項の規定による異議の申出には理由がないとの裁決を取り消す。
 2 被告主任審査官が同日付けで原告に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。
 3 被告法務大臣が平成15年11月14日付けで原告に対してした難民の認定をしない処分が無効であることを確認する。
 4 訴訟費用は,全事件を通じ,被告らの負担とする。

       事実及び理由

第1 請求
 主文と同じ。
第2 事案の概要
 本件は,本邦に不法残留していたとの理由で退去強制手続をとられ,被告法務大臣から出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)49条1項の規定による異議の申出には理由がないとの裁決を受け,被告主任審査官から退去強制令書発付処分を受けた外国人である原告が,難民である自分に対しては在留特別許可が与えられるべきであったからこれらの処分は違法であると主張してその取消しを求めるとともに(第1事件),難民認定申請に対して被告法務大臣がした難民の認定をしない処分が無効であることの確認を求める(第2事件)事案である。

 1 難民に関する法令の定め

 法務大臣は,本邦にある外国人からの申請に基づき,その者が難民であるか否かの認定を行う(入管法61条の2第1項)。

 入管法上,難民とは,難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)1条の規定又は難民の地位に関する議定書(以下「難民議定書」という。)1条の規定により難民条約の適用を受ける難民のことである(同法2条3号の2)。そして,難民条約1条A(2)及び難民議定書1条1・2によれば,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」は難民条約の適用を受ける難民であるから,この定義に当てはまる者が入管法にいう難民ということになる。

非営業貸付に係る貸付金元本の貸倒れ損失は必要経費に該当しないとされた事例

 

 

 

              所得税更正処分取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和48年(行ツ)第33号

【判決日付】      昭和49年9月27日

【判示事項】      (1) 非営業貸付に係る貸付金元本の貸倒れ損失は必要経費に該当しないとされた事例

             (2) 特殊の関係がある者に対する資金の貸付行為が所得税法人の事業に当たらず、その所得は雑所得に当たるとされた事例

【判決要旨】      (1) 旧所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)一〇条二項の規定にいう「その他の経費」が必要経費とされるためには、それが、当該総収入金額を得るために必要なものであつて、家事上の経費等でないものでなければならないところ、同じく貸付金元本の貸倒れによる損失であつても、それが事業上の貸付から生じたものである場合には、右の要件に該当するものとみることができるけれども、それが非営業貸付から生じたものである場合には、これに該当するものとみることはできない。

             (2) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料76号886頁

 

所得税法

(事業所得)

第二十七条 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

2 事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

 

(雑所得)

第三十五条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。

2 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。

一 その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額

二 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額

3 前項に規定する公的年金等とは、次に掲げる年金をいう。

一 第三十一条第一号及び第二号(退職手当等とみなす一時金)に規定する法律の規定に基づく年金その他同条第一号及び第二号に規定する制度に基づく年金(これに類する給付を含む。第三号において同じ。)で政令で定めるもの

二 恩給(一時恩給を除く。)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金

三 確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金(第三十一条第三号に規定する規約に基づいて拠出された掛金のうちにその年金が支給される同法第二十五条第一項(加入者)に規定する加入者(同項に規定する加入者であつた者を含む。)の負担した金額がある場合には、その年金の額からその負担した金額のうちその年金の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額に相当する部分に限る。)その他これに類する年金として政令で定めるもの

4 第二項に規定する公的年金等控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 その年中の公的年金等の収入金額がないものとして計算した場合における第二条第一項第三十号(定義)に規定する合計所得金額(次号及び第三号において「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」という。)が千万円以下である場合 次に掲げる金額の合計額(当該合計額が六十万円に満たない場合には、六十万円)

イ 四十万円

ロ その年中の公的年金等の収入金額から五十万円を控除した残額の次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額

(1) 当該残額が三百六十万円以下である場合 当該残額の百分の二十五に相当する金額

(2) 当該残額が三百六十万円を超え七百二十万円以下である場合 九十万円と当該残額から三百六十万円を控除した金額の百分の十五に相当する金額との合計額

(3) 当該残額が七百二十万円を超え九百五十万円以下である場合 百四十四万円と当該残額から七百二十万円を控除した金額の百分の五に相当する金額との合計額

(4) 当該残額が九百五十万円を超える場合 百五十五万五千円

二 その年中の公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が千万円を超え二千万円以下である場合 次に掲げる金額の合計額(当該合計額が五十万円に満たない場合には、五十万円)

イ 三十万円

ロ 前号ロに掲げる金額

三 その年中の公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が二千万円を超える場合 次に掲げる金額の合計額(当該合計額が四十万円に満たない場合には、四十万円)

イ 二十万円

ロ 第一号ロに掲げる金額

 

 

 右当事者間の東京高等裁判所昭和四六年(行コ)第一五号所得税更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四七年一二月一三日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人梅沢秀次、同安田秀士の上告理由第一点について。

 昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法(昭和二二年法律第二七号。以下「旧所得税法」という。)一〇条二項の規定にいう「その他の経費」が必要経費とされるためには、それが、当該総収入金額を得るために必要なものであつて、家事上の経費等でないものでなければならないことは、規定上明白であるところ、同じく貸付金元本の貸倒れによる損失であつても、それが事業上の貸付から生じたものである場合には、右の要件に該当するものとみることができるけれども、それが非営業貸付から生じたものである場合には、これに該当するものとみることはできない。非営業貸付から生じた貸付金元本の貸倒れによる損失が旧所得税法一〇条二項に定める必要経費に該当しないとの解釈のもとに行われた本件更正処分を是認すべきものとした原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の判断は正当であつて、その過程に所論の違法はない。なお、所論のうち違憲をいう部分は、本件更正処分に右条項の解釈を誤つた違法があることを前提とするものであつて、その前提において失当である。論旨は採用することができない。

 同第二点及び第三点について。

 原判決が、その適法に解(ママ)定した事実関係のもとにおいては、上告人の本件資金貸付行為は所得税法の事業に該当しないとした判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違法はない。

 なお、所論のうち違憲をいう部分は、原判決の右判断が違法であることを前提とするものであつて、その前提においてすでに失当である。論旨は採用することができない。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

    最高裁判所第二小法廷

第16章 指定された電気通信事業者が負う義務の内容

特定利用者情報の取り扱いに関する義務を負うのは、電気通信事業者のうち、

「特定利用者情報を適正に取り扱うべき電気通信事業者」として、総務大臣に指定された事業者

です。

 

指定する基準は、利用者の利益に及ぼす影響が大きい者を中心に、総務省令にて定められています(電気通信事業法27条の5)。

 

特定利用者情報の取り扱いに関する義務の具体的な内容は、以下の5つです。

 

1|情報取扱規程の整備・届け出をする義務(同法27条の6)

指定を受けた日から3カ月以内に、所定の事項を定めた情報取扱規程を制定し、総務大臣に届け出る必要があります。

 

情報取扱規程の内容が不適切な場合は、総務大臣から変更命令を受ける場合もあります(同法27条の7)。

 

2|情報取扱方針を策定・公表する義務(同法27条の8)

特定利用者情報の取り扱いの透明性を確保するため、指定を受けた日から3カ月以内に、所定の事項を定めた情報取扱方針を制定・公表する必要があります。

 

3|特定利用者情報の取り扱いに関する自己評価を実施する義務(同法27条の9)

毎事業年度、特定利用者情報の取り扱いの状況について評価を実施し、必要に応じて情報取扱規程・情報取扱方針の見直しを行う必要があります。

 

4|特定利用者情報統括管理者を選任し、届け出る義務(同法27条の10)

特定利用者情報の取扱業務を統括管理させるため、指定を受けた日から3カ月以内に、特定利用者情報統括管理者を選任する必要があります。

 

事業者は、利用者の利益の保護に関して、特定利用者情報統括管理者の意見を尊重しなければなりません(同法27条の11第2項)。

 

5|特定利用者情報が漏えいしたときに報告する義務(同法28条1項2号ロ)

万が一特定利用者情報が漏えいした場合には、

 

漏えいの事実

漏えいの理由と原因

を、遅滞なく総務大臣に報告しなければなりません。