非営業貸付に係る貸付に係る貸付金元本の貸倒れ損失は必要経費に該当しないとされた事例 所得税更 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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非営業貸付に係る貸付に係る貸付金元本の貸倒れ損失は必要経費に該当しないとされた事例

 

 

所得税更正決定処分取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和48年(行ツ)第31号

【判決日付】      昭和49年9月27日

【判示事項】      (1) 非営業貸付に係る貸付に係る貸付金元本の貸倒れ損失は必要経費に該当しないとされた事例

             (2) 特殊の関係がある者に対する資金の貸付行為が所得税法上の事業に当たらず、その所得は雑所得に当たるとされた事例

【判決要旨】      (1) 旧所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)一〇条二項の規定にいう「その他の経費」が必要経費とされるためには、それが、当該総収入金額を得るために必要なものであつて、家事上の経費等でないものでなければならないところ、同じく貸付金元本の貸倒れによる損失であつても、それが事業上の賃付から生じたものである場合には、右の要件に該当するものとみることができるけれども、それが非営業貸付から生じたものである場合には、これに該当するものとみることはできない。

             (2) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料76号867頁

 

所得税法

(事業所得)

第二十七条 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

2 事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

 

(必要経費)

第三十七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

2 山林につきその年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その山林の植林費、取得に要した費用、管理費、伐採費その他その山林の育成又は譲渡に要した費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

 

 右当事者間の東京高等裁判所昭和四六年(行コ)第一三号所得税更正決定処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四七年一二月一三日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人梅沢秀次、同安田秀士の上告理由第一点について。

 昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法(昭和二二年法律第二七号。以下「旧所得税法」という。)一〇条二項の規定にいう「その他の経費」が必要経費とされるためには、それが、当該総収入金額を得るために必要なものであつて、家事上の経費等でないものでなければならないことは、規定上明白であるところ、同じく貸付金元本の貸倒れによる損失であつても、それが事業上の貸付から生じたものである場合には、右の要件に該当するものとみることができるけれども、それが非営業貸付から生じたものである場合には、これに該当するものとみることはできない。非営業貸付から生じた貸付金元本の貸倒れによる損失が旧所得税法一〇条二項に定める必要経費に該当しないとの解釈のもとに行われた本件更正処分を是認すべきものとした原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の判断は正当であつて、その過程に所論の違法はない。なお、所論のうち違憲をいう部分は、本件更正処分に右条項の解釈を誤つた違法があることを前提とするものであつて、その前提においてすでに失当である。論旨は採用することができない。

 同第二点及び第三点について。

 原判決が、その適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人の本件資金貸付行為は所得税法上の事業に該当しないとした判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違法はない。なお、所論のうち違憲をいう部分は、原判決の右判断が違法であることを前提とするものであつて、その前提においてすでに失当である。論旨は採用することができない。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

    最高裁判所第二小法廷