被用者が自己所有のダンプカーを私用に運転し他人を死亡させた場合に使用者に自動車損害賠償法3条の運行供用者責任が肯定された事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和45年(オ)第759号
【判決日付】 昭和46年4月6日
【判示事項】 被用者が自己所有のダンプカーを私用に運転し他人を死亡させた場合に使用者に自動車損害賠償法3条の運行供用者責任が肯定された事例
【判決要旨】 (省略)
【参照条文】 自動車損害賠償保障法3
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事102号401頁
判例時報630号62頁
【評釈論文】 別冊ジュリスト48号16頁
自動車損害賠償保障法
(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人野口昌一郎の上告理由第一点および第二点について。
所論は、上告人と訴外(第一審被告)D(以下、Dという。)との間の契約は、雇傭ではなく請負であり、Dが本件ダンプカー(以下、ダンプカーという。)を運転し砂利採取の作業に従事中でも、上告人は自動車損害賠償保障法三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」に該当しないものというべく、かりに、右契約が雇傭であり、したがつて、上告人が運行供用者になるとしても、本件事故は、Dがダンプカーを休日に私用のため砂利採取場の構外で運転中発生したものであるから、上告人は同条の責任を負わない旨主張する。
よつて按ずるに、Dは昭和四二年五月八日頃砂利採取の作業に従事するため上告人に雇われ、稼働していたものである旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠により首肯することができ、その判断の過程に所論の違法はない。
ところで、原判決の確定したところによれば、上告人は、E産業、F工業株式会社等の名称で、従業員相当数を雇い入れ、砂利の採取販売を業とするものであり、Dは、前記日時頃上告人に雇われ、自己所有のダンプカーを上告人の砂利採取場構内に持ち込み、これを運転して砂利運搬の作業に従事していたのであるが、燃料はすべて上告人から提供を受け、ダンプカーは右採取場構内に保管しており、Dおよびその家族も他の従業員とともに右構内の飯場に居住していたのであり、ただ、Dが運転免許を持たないため、同人の砂利運搬作業は、右構内に限るとの約定であつたが、Dの賃金は、ダンプカーの使用料を含め、実働回数に関係なく一日金五、〇〇〇円を毎月一〇日の勘定日に支給する約定であつたというのであり、これらの事実関係のもとでは、Dの雇主である上告人は、ダンプカーの運行について実質上支配力を有し、その運行による利益を享受していたもので、自己のためにダンプカーを運行の用に供する者に当たると解するのが相当である。
そして、本件事故は、Dが、たまたま、昭和四二年六月四日右飯場に来訪していた実妹Gを実家へ送り届けるためダンプカーに乗せ、自らこれを運転して行く途中、栃木市a町b番地附近の道路上において惹起したものであるが、前述のような上告人の事業の種類、上告人とDとの雇傭関係、Dのダンプカー運転による稼働状況、ダンプカーの保管状況等によれば、右事故当時の運行は、客観的外形的には、上告人のためにする運行と解するのが相当であつて、Dの砂利運搬の作業が採取場構内に制限されていたことは、単なる内部的事情に過ぎず、右の判断に影響を及ぼすものではない。右と同趣旨の原審の判断は正当である。
原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官田中二郎、同松本正雄の反対意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
裁判官田中二郎の反対意見は、次のとおりである。
原審は、被上告人らが亡Hの慰藉料請求権を相続したとして上告人にその支払を命じているが、これは、慰藉料請求権は、被害者の死亡によつて当然に発生し、特段の事情のないかぎり、被害者の相続人がこれを相続することができるとの見解によるものと認められる。しかし、私はこの見解に賛成することができず、原判決は、この点について法令の解釈を誤つたものであり、破棄を免れないと考える。その理由は、当裁判所昭和三八年(オ)第一四〇八号同四二年一一月一日大法廷判決における私の反対意見と同一であるから、それを引用する。
裁判官松本正雄の反対意見は、次のとおりである。
原審は、被上告人らにおいて亡Hの慰藉料請求権を相続したとして上告人にその支払を命じている。しかし、慰藉料請求権は被害者の一身専属的な権利であり、被害者がこれを請求する意思を表示したとき、またはこれを行使したばあい、あるいは契約または債務名義により加害者が被害者に慰藉料として一定額の金員の支払をなすべきものとされたばあいにおいてのみ、はじめて相続の対象になるものと解すべきであり、原判決は、この点について法令の解釈を誤つたものであり、破棄を免れないと考える。その理由は、当裁判所昭和四一年(オ)第一四六三号同四三年五月二八日第三小法廷判決(裁判集九一号一二五頁)における私の反対意見と同一であるから、それを引用する。
最高裁判所第三小法廷