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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

東京電力・福島第一原発国家賠償事件・国が,津波による原子力発電所の事故を防ぐために電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの)40条に基づく規制権限を行使しなかったことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/令和3年(受)第1205号

【判決日付】      令和4年6月17日

【判示事項】      国が,津波による原子力発電所の事故を防ぐために電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの)40条に基づく規制権限を行使しなかったことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うとはいえないとされた事例

【判決要旨】      電力会社が設置し運営する原子力発電所の原子炉に係る建屋の敷地に地震に伴う津波が到来し,上記建屋の中に海水が浸入して上記原子炉に係る原子炉施設が電源喪失の事態に陥った結果,上記原子炉施設から放射性物質が大量に放出される原子力事故が発生した場合において,次の(1)~(6)など判示の事情の下では,経済産業大臣が上記発電所の沖を含む海域の地震活動の長期評価に関する文書を前提に電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの)40条に基づく規制権限を行使して津波による上記発電所の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを上記電力会社に義務付けていれば上記原子力事故又はこれと同様の事故が発生しなかったであろうという関係を認めることはできず,国が,経済産業大臣が上記の規制権限を行使しなかったことを理由として,上記原子力事故により放出された放射性物質によってその当時の居住地が汚染された者に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うということはできない。

             (1)上記原子力事故以前の我が国における原子炉施設の津波対策は,津波により安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が浸水することが想定される場合,防潮堤,防波堤等の構造物を設置することにより上記敷地への海水の浸入を防止することを基本とするものであった。

             (2)上記原子力事故以前に,津波により上記敷地が浸水することが想定される場合に,想定される津波による上記敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤,防波堤等の構造物を設置するという措置を講ずるだけでは対策として不十分であるとの考え方が有力であったことはうかがわれず,その他,上記原子力事故以前の知見の下において,上記措置が原子炉施設の津波対策として不十分なものであったと解すべき事情はうかがわれない。

             (3)上記原子力事故以前に上記電力会社の委託により上記文書に基づいて行われた上記発電所に到来する可能性のある津波の試算は,安全性に十分配慮して余裕を持たせ,当時考えられる最悪の事態に対応したものとして,合理性を有する試算であった。

             (4)上記文書が今後発生する可能性があるとした地震の規模は,津波マグニチュード8.2前後であったのに対し,現実に発生した地震の規模は,津波マグニチュード9.1であった。

             (5)上記の試算された津波による上記建屋付近の浸水深は,約2.6m又はそれ以下とされたのに対し,現実に到来した津波による上記建屋付近の浸水深は,最大で約5.5mに及んだ。

             (6)上記の試算された津波の高さは,上記建屋の敷地の南東側前面において上記敷地の高さを超えていたものの,東側前面においては上記敷地の高さを超えることはなく,上記津波と同じ規模の津波が上記発電所に到来しても,上記敷地の東側から海水が上記敷地に浸入することは想定されていなかったが,現実には,津波の到来に伴い,上記敷地の南東側のみならず東側からも大量の海水が上記敷地に浸入した。

             (補足意見及び反対意見がある。)

【参照条文】      国家賠償法1-1

             電気事業法(平24法47号改正前)39-1

             電気事業法(平24法47号改正前)40

【掲載誌】        判例タイムズ1504号46頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      法学教室506号144頁

 

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

 

電気事業法

第一款 技術基準への適合

(事業用電気工作物の維持)

第三十九条 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない。

2 前項の主務省令は、次に掲げるところによらなければならない。

一 事業用電気工作物は、人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないようにすること。

二 事業用電気工作物は、他の電気的設備その他の物件の機能に電気的又は磁気的な障害を与えないようにすること。

三 事業用電気工作物の損壊により一般送配電事業者又は配電事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないようにすること。

四 事業用電気工作物が一般送配電事業又は配電事業の用に供される場合にあつては、その事業用電気工作物の損壊によりその一般送配電事業又は配電事業に係る電気の供給に著しい支障を生じないようにすること。

(技術基準適合命令)

第四十条 主務大臣は、事業用電気工作物が前条第一項の主務省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。

 

 

 

所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」の支出の主体

 

 

              所得税更正処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成23年(行ヒ)第104号、平成23年(行ヒ)第105号

【判決日付】      平成24年1月16日

【判示事項】      1 所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」の支出の主体

             2 法人が保険料を支払った養老保険契約に係る満期保険金を当該法人の代表者が受け取った場合において,上記満期保険金に係る当該代表者の一時所得の金額の計算上,上記保険料のうち当該法人における保険料として損金経理がされた部分が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に当たらないとされた事例

             3 国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】      1 一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためには、それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえることを要する。

             2 死亡保険金の受取人を法人とし、満期保険金の受取人を当該法人の代表者とする養老保険契約の保険料を当該法人が支払い、満期保険金を当該代表者が受け取った場合において、上記保険料のうち当該代表者に対する役員報酬として損金経理がされその給与として課税された部分がその2分の1である一方、その余の部分が当該法人における保険料として損金経理がされたものであるなど判示の事情のもとでは、上記満期保険金に係る当該代表者の一時所得の金額の計算上、後者の部分は所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に当たらない。

             3 一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためにはそれが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえることを要するにもかかわらず、これと異なる法令解釈に基づいて行われた過少申告について、課税実務上の運用や税務当局等の示した見解の有無などの点につき十分に審理することなく、関係する通達の文言の一部や上記の法令解釈と同旨の見解を採る市販の解説書の記載のみをもって、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとした原審の判断には、違法がある。

【参照条文】      所得税法34-2

             所得税法施行令(平成23年政令第195号による改正前のもの)183-2

             国税通則法65-4

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事239号555頁

             裁判所時報1547号46頁

             判例タイムズ1371号118頁

             判例時報2149号52頁

             金融法務事情1951号101頁

             税務訴訟資料262号順号11856

 

 

所得税法

(一時所得)

第三十四条 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。

2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。

3 前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。

 

 

所得税法施行令

(生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等)

第百八十三条 生命保険契約等に基づく年金(法第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等を除く。以下この項において同じ。)の支払を受ける居住者のその支払を受ける年分の当該年金に係る雑所得の金額の計算については、次に定めるところによる。

一 当該年金の支払開始の日以後に当該年金の支払の基礎となる生命保険契約等に基づき分配を受ける剰余金又は割戻しを受ける割戻金の額は、その年分の雑所得に係る総収入金額に算入する。

二 その年に支払を受ける当該年金の額に、イに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額は、その年分の雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

イ 次に掲げる年金の区分に応じそれぞれ次に定める金額

(1) その支払開始の日において支払総額が確定している年金 当該支払総額

(2) その支払開始の日において支払総額が確定していない年金 第八十二条の三第二項(確定給付企業年金の額から控除する金額)の規定に準じて計算した支払総額の見込額

ロ 当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額

三 当該生命保険契約等が年金のほか一時金を支払う内容のものである場合には、前号ロに掲げる保険料又は掛金の総額は、当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額に、同号イ(1)又は(2)に定める支払総額又は支払総額の見込額と当該一時金の額との合計額のうちに当該支払総額又は支払総額の見込額の占める割合を乗じて計算した金額とする。

四 前二号に規定する割合は、小数点以下二位まで算出し、三位以下を切り上げたところによる。

2 生命保険契約等に基づく一時金(法第三十一条各号(退職手当等とみなす一時金)に掲げるものを除く。以下この項において同じ。)の支払を受ける居住者のその支払を受ける年分の当該一時金に係る一時所得の金額の計算については、次に定めるところによる。

一 当該一時金の支払の基礎となる生命保険契約等に基づき分配を受ける剰余金又は割戻しを受ける割戻金の額で、当該一時金とともに又は当該一時金の支払を受けた後に支払を受けるものは、その年分の一時所得に係る総収入金額に算入する。

二 当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金(第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産及び確定拠出年金法第五十四条第一項(他の制度の資産の移換)、第五十四条の二第一項(脱退一時金相当額等の移換)又は第七十四条の二第一項(脱退一時金相当額等又は残余財産の移換)の規定により移換された同法第二条第十二項(定義)に規定する個人別管理資産に充てる資産を含む。第四項において同じ。)の総額は、その年分の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入する。ただし、次に掲げる掛金、金額、企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金の総額については、当該支出した金額に算入しない。

イ 旧厚生年金保険法第九章(厚生年金基金及び企業年金連合会)の規定に基づく一時金(第七十二条第二項(退職手当等とみなす一時金)に規定するものを除く。)に係る同項に規定する加入員の負担した掛金

ロ 確定給付企業年金法第三条第一項(確定給付企業年金の実施)に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて支給を受ける一時金(法第三十一条第三号に掲げるものを除く。)の額に第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産に係る部分に相当する金額が含まれている場合における当該金額に係る法第三十一条第三号に規定する加入者が負担した金額

ハ 第七十二条第三項第五号イからハまでに掲げる規定に基づいて支給を受ける一時金(同号に掲げるものを除く。)の額に第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産に係る部分に相当する金額が含まれている場合における当該金額に係る第七十二条第三項第五号に規定する加入者が負担した金額

ニ 小規模企業共済法第十二条第一項(解約手当金)に規定する解約手当金(第七十二条第三項第三号ロ及びハに掲げるものを除く。)に係る同号イに規定する小規模企業共済契約に基づく掛金

ホ 確定拠出年金法附則第二条の二第二項及び第三条第二項(脱退一時金)に規定する脱退一時金に係る同法第三条第三項第七号の二(規約の承認)に規定する企業型年金加入者掛金及び同法第五十五条第二項第四号(規約の承認)に規定する個人型年金加入者掛金

三 当該生命保険契約等が一時金のほか年金を支払う内容のものである場合には、前号に規定する保険料又は掛金の総額は、当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額から、当該保険料又は掛金の総額に前項第三号に規定する割合を乗じて計算した金額を控除した金額に相当する金額とする。

3 前二項に規定する生命保険契約等とは、次に掲げる契約又は規約をいう。

一 生命保険契約(保険業法第二条第三項(定義)に規定する生命保険会社又は同条第八項に規定する外国生命保険会社等の締結した保険契約をいう。第三号ロ及び次条第一項において同じ。)、旧簡易生命保険契約(第三十条第一号(非課税とされる保険金、損害賠償金等)に規定する旧簡易生命保険契約をいう。)及び生命共済に係る契約

二 第七十三条第一項第一号(特定退職金共済団体の要件)に規定する退職金共済契約

三 退職年金に関する次に掲げる契約

イ 信託契約

ロ 生命保険契約

ハ 生命共済に係る契約

四 確定給付企業年金法第三条第一項に規定する確定給付企業年金に係る規約

五 法第七十五条第二項第一号(小規模企業共済等掛金控除)に規定する契約

六 確定拠出年金法第四条第三項(承認の基準等)に規定する企業型年金規約及び同法第五十六条第三項(承認の基準等)に規定する個人型年金規約

4 第一項及び第二項に規定する保険料又は掛金の総額は、当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額から次に掲げる金額を控除して計算するものとする。

一 第七十五条第一項(特定退職金共済団体の承認の取消し等)の規定による承認の取消しを受けた法人又は同条第三項の規定により承認が失効をした法人に対し前項第二号に掲げる退職金共済契約に基づき支出した掛金、確定給付企業年金法第百二条第三項若しくは第六項(事業主等又は連合会に対する監督)の規定による承認の取消しを受けた当該取消しに係るこれらの規定に規定する規約型企業年金に係る規約に基づき支出した掛金又は同項の規定による解散の命令を受けた同項に規定する基金の同法第十一条第一項(基金の規約で定める事項)に規定する規約に基づき支出した掛金及び法人税法施行令附則第十八条第一項(適格退職年金契約の承認の取消し)の規定による承認の取消しを受けた第七十六条第二項第一号(退職金共済制度等に基づく一時金で退職手当等とみなさないもの)に規定する信託会社等に対し当該取消しに係る同号に規定する契約に基づき支出した掛金又は保険料のうち、これらの取消し若しくは命令を受ける前又は当該失効前に支出したものの額(次号に該当するものを除くものとし、これらの掛金又は保険料の額のうちに、法第三十一条第三号若しくは第三十五条第三項第三号若しくは第七十二条第三項第五号若しくは第八十二条の二第二項第五号(公的年金等とされる年金)に規定する加入者の負担した金額(当該金額に第八十二条の三第一項第二号イからリまでに掲げる資産に係る当該加入者が負担した部分に相当する金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額)又は第七十二条第三項第四号若しくは第八十二条の二第二項第四号に規定する勤務をした者の負担した金額がある場合には、これらの金額を控除した金額とする。)

二 次に掲げる保険料又は掛金(第六十五条(不適格退職金共済契約等に基づく掛金の取扱い)の規定により給与所得に係る収入金額に含まれるものを除く。)の額

イ 第七十六条第一項第二号又は第二項第二号に掲げる給付に係る保険料又は掛金

ロ 旧厚生年金保険法第九章の規定に基づく一時金(第七十二条第二項に規定するものを除く。)に係る掛金(当該掛金の額のうちに同項に規定する加入員の負担した金額がある場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分に限る。)

ハ 確定給付企業年金法第三条第一項に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて支給を受ける一時金(法第三十一条第三号に掲げるものを除く。)に係る掛金(当該掛金の額のうちに同号に規定する加入者の負担した金額がある場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分に限る。)

ニ 法人税法附則第二十条第三項(退職年金等積立金に対する法人税の特例)に規定する適格退職年金契約に基づいて支給を受ける一時金(第七十二条第三項第四号に掲げるものを除く。)に係る掛金又は保険料(当該掛金又は保険料の額のうちに同号に規定する勤務をした者の負担した金額がある場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分に限る。)

ホ 第七十二条第三項第五号イからハまでに掲げる規定に基づいて支給を受ける一時金(同号に掲げるものを除く。)に係る掛金(当該掛金の額のうちに同号に規定する加入者の負担した金額がある場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分に限る。)

ヘ 確定拠出年金法附則第二条の二第二項及び第三条第二項に規定する脱退一時金に係る掛金(当該掛金の額のうちに、同法第三条第三項第七号の二に規定する企業型年金加入者掛金の額又は同法第五十五条第二項第四号に規定する個人型年金加入者掛金の額がある場合には、これらの金額を控除した金額に相当する部分に限る。)

ト 中小企業退職金共済法第十六条第一項(解約手当金)に規定する解約手当金又は第七十四条第五項(特定退職金共済団体の承認)に規定する特定退職金共済団体が行うこれに類する給付に係る掛金

三 事業を営む個人又は法人が当該個人のその事業に係る使用人又は当該法人の使用人(役員を含む。次条第三項第一号において同じ。)のために支出した当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金で当該個人のその事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額若しくは山林所得の金額又は当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上必要経費又は損金の額に算入されるもののうち、これらの使用人の給与所得に係る収入金額に含まれないものの額(前二号に掲げるものを除く。)

四 当該年金の支払開始の日前又は当該一時金の支払の日前に当該生命保険契約等に基づく剰余金の分配若しくは割戻金の割戻しを受け、又は当該生命保険契約等に基づき分配を受ける剰余金若しくは割戻しを受ける割戻金をもつて当該保険料若しくは掛金の払込みに充てた場合における当該剰余金又は割戻金の額

 

 

国税通則法

(過少申告加算税)

第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

2 前項の規定に該当する場合(第五項の規定の適用がある場合を除く。)において、前項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について修正申告書の提出又は更正があつたときは、その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額を超えるときは、同項の過少申告加算税の額は、同項の規定にかかわらず、同項の規定により計算した金額に、その超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは、当該納付すべき税額)に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

3 前項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 累積増差税額 第一項の修正申告又は更正前にされたその国税についての修正申告書の提出又は更正に基づき第三十五条第二項の規定により納付すべき税額の合計額(当該国税について、当該納付すべき税額を減少させる更正又は更正に係る不服申立て若しくは訴えについての決定、裁決若しくは判決による原処分の異動があつたときはこれらにより減少した部分の税額に相当する金額を控除した金額とし、次項の規定の適用があつたときは同項の規定により控除すべきであつた金額を控除した金額とする。)

二 期限内申告税額 期限内申告書(次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用がある場合には、期限後申告書を含む。次項第二号において同じ。)の提出に基づき第三十五条第一項又は第二項の規定により納付すべき税額(これらの申告書に係る国税について、次に掲げる金額があるときは当該金額を加算した金額とし、所得税、法人税、地方法人税、相続税又は消費税に係るこれらの申告書に記載された還付金の額に相当する税額があるときは当該税額を控除した金額とする。)

イ 所得税法第九十五条(外国税額控除)若しくは第百六十五条の六(非居住者に係る外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額、第一項の修正申告若しくは更正に係る同法第百二十条第一項第四号(確定所得申告)(同法第百六十六条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)に規定する源泉徴収税額に相当する金額、同法第百二十条第二項(同法第百六十六条において準用する場合を含む。)に規定する予納税額又は災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)第二条(所得税の軽減又は免除)の規定により軽減若しくは免除を受けた所得税の額

ロ 法人税法第二条第三十八号(定義)に規定する中間納付額、同法第六十八条(所得税額の控除)(同法第百四十四条(外国法人に係る所得税額の控除)において準用する場合を含む。)、第六十九条(外国税額の控除)若しくは第百四十四条の二(外国法人に係る外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第九十条(退職年金等積立金に係る中間申告による納付)(同法第百四十五条の五(申告及び納付)において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の法人税の額)

ハ 地方法人税法第二条第十八号(定義)に規定する中間納付額、同法第十二条(外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第二十条第二項(中間申告による納付)の規定により納付すべき地方法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の地方法人税の額)

ニ 相続税法第二十条の二(在外財産に対する相続税額の控除)、第二十一条の八(在外財産に対する贈与税額の控除)、第二十一条の十五第三項及び第二十一条の十六第四項(相続時精算課税に係る相続税額)の規定による控除をされるべき金額

ホ 消費税法第二条第一項第二十号(定義)に規定する中間納付額

4 次の各号に掲げる場合には、第一項又は第二項に規定する納付すべき税額から当該各号に定める税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。

一 第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合 その正当な理由があると認められる事実に基づく税額

二 第一項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について期限内申告書の提出により納付すべき税額を減少させる更正その他これに類するものとして政令で定める更正(更正の請求に基づく更正を除く。)があつた場合 当該期限内申告書に係る税額(還付金の額に相当する税額を含む。)に達するまでの税額

5 第一項の規定は、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。

 

 

 

所得税更正処分に対する上告人の異議申立てを棄却する旨の決定につき,理由附記に不備があると主張して,その取消しを求めた事案について,適法な理由附記があつても,理由附記の不備を理由とする異議申立棄却決定の取消しを求める訴えの利益が失われるものではないとし,原判決は法律の解釈を謝つたものであり,違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるとして,破棄差戻しとした事例

 

 

              異議申立棄却決定取消請求

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷/昭和43年(行ツ)第39号

【判決日付】      昭和49年9月26日

【判示事項】      所得税更正処分に対する上告人の異議申立てを棄却する旨の決定につき,理由附記に不備があると主張して,その取消しを求めた事案について,適法な理由附記があつても,理由附記の不備を理由とする異議申立棄却決定の取消しを求める訴えの利益が失われるものではないとし,原判決は法律の解釈を謝つたものであり,違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるとして,破棄差戻しとした事例

【判決要旨】      一、税務署長がした処分につき適法な理由附記のある審査請求棄却の裁決があつても、右処分に対する異議申立棄却決定につき理由附記の不備を主張してその取消を求める訴の利益は失われない。

             二、税務署長がした処分に対する異議申立を棄却する決定が判決によつて取り消された場合において、右判決確定の時当初の異議申立から既に三月を経過していても、右異議申立は、昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法八〇条一項一号の規定により当然に審査請求に移行するものではない。

【参照条文】      行政事件訴訟法

             行政事件訴訟法33-2

             国税通則法84-4

             国税通則法(昭和45年法律第8号による改正前のもの)75

             国税通則法(昭和45年法律第8号による改正前のもの)80-1

             行政不服審査法41-1

             行政不服審査法48

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事112号723頁

 

 

行政事件訴訟法

(原告適格)

第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

 

 

第三十三条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

2 申請を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない。

3 前項の規定は、申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合に準用する。

4 第一項の規定は、執行停止の決定に準用する。

 

 

国税通則法

(決定の手続等)

第八十四条 再調査審理庁は、再調査の請求人又は参加人(第百九条第三項(参加人)に規定する参加人をいう。以下この款及び次款において同じ。)から申立てがあつた場合には、当該申立てをした者(以下この条において「申立人」という。)に口頭で再調査の請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。

2 前項本文の規定による意見の陳述(以下この条において「口頭意見陳述」という。)は、再調査審理庁が期日及び場所を指定し、再調査の請求人及び参加人を招集してさせるものとする。

3 口頭意見陳述において、申立人は、再調査審理庁の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。

4 再調査審理庁は、必要があると認める場合には、その行政機関の職員に口頭意見陳述を聴かせることができる。

5 口頭意見陳述において、再調査審理庁又は前項の職員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。

6 再調査の請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができる。この場合において、再調査審理庁が、証拠書類又は証拠物を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

7 再調査の請求についての決定は、主文及び理由を記載し、再調査審理庁が記名押印した再調査決定書によりしなければならない。

8 再調査の請求についての決定で当該再調査の請求に係る処分の全部又は一部を維持する場合における前項に規定する理由においては、その維持される処分を正当とする理由が明らかにされていなければならない。

9 再調査審理庁は、第七項の再調査決定書(再調査の請求に係る処分の全部を取り消す決定に係るものを除く。)に、再調査の請求に係る処分につき国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる旨(却下の決定である場合にあつては、当該却下の決定が違法な場合に限り審査請求をすることができる旨)及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければならない。

10 再調査の請求についての決定は、再調査の請求人(当該再調査の請求が処分の相手方以外の者のしたものである場合における前条第三項の規定による決定にあつては、再調査の請求人及び処分の相手方)に再調査決定書の謄本が送達された時に、その効力を生ずる。

11 再調査審理庁は、再調査決定書の謄本を参加人に送付しなければならない。

12 再調査審理庁は、再調査の請求についての決定をしたときは、速やかに、第六項の規定により提出された証拠書類又は証拠物をその提出人に返還しなければならない。

 

(国税に関する処分についての不服申立て)

第七十五条 国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に定める不服申立てをすることができる。

一 税務署長、国税局長又は税関長がした処分(次項に規定する処分を除く。) 次に掲げる不服申立てのうちその処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立て

イ その処分をした税務署長、国税局長又は税関長に対する再調査の請求

ロ 国税不服審判所長に対する審査請求

二 国税庁長官がした処分 国税庁長官に対する審査請求

三 国税庁、国税局、税務署及び税関以外の行政機関の長又はその職員がした処分 国税不服審判所長に対する審査請求

2 国税に関する法律に基づき税務署長がした処分で、その処分に係る事項に関する調査が次の各号に掲げる職員によつてされた旨の記載がある書面により通知されたものに不服がある者は、当該各号に定める国税局長又は国税庁長官がその処分をしたものとそれぞれみなして、国税局長がしたものとみなされた処分については当該国税局長に対する再調査の請求又は国税不服審判所長に対する審査請求のうちその処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立てをし、国税庁長官がしたものとみなされた処分については国税庁長官に対する審査請求をすることができる。

一 国税局の当該職員 その処分をした税務署長の管轄区域を所轄する国税局長

二 国税庁の当該職員 国税庁長官

3 第一項第一号イ又は前項(第一号に係る部分に限る。)の規定による再調査の請求(法定の再調査の請求期間経過後にされたものその他その請求が適法にされていないものを除く。次項において同じ。)についての決定があつた場合において、当該再調査の請求をした者が当該決定を経た後の処分になお不服があるときは、その者は、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる。

4 第一項第一号イ又は第二項(第一号に係る部分に限る。)の規定による再調査の請求をしている者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該再調査の請求に係る処分について、決定を経ないで、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる。

一 再調査の請求をした日(第八十一条第三項(再調査の請求書の記載事項等)の規定により不備を補正すべきことを求められた場合にあつては、当該不備を補正した日)の翌日から起算して三月を経過しても当該再調査の請求についての決定がない場合

二 その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合

5 国税に関する法律に基づく処分で国税庁、国税局、税務署又は税関の職員がしたものに不服がある場合には、それぞれその職員の所属する国税庁、国税局、税務署又は税関の長がその処分をしたものとみなして、第一項の規定を適用する。

 

(行政不服審査法との関係)

第八十条 国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立て(次項に規定する審査請求を除く。)については、この節その他国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法(第二章及び第三章(不服申立てに係る手続)を除く。)の定めるところによる。

2 第七十五条第一項第二号又は第二項(第二号に係る部分に限る。)(国税に関する処分についての不服申立て)の規定による審査請求については、この節(次款及び第三款(審査請求)を除く。)その他国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法の定めるところによる。

3 酒税法第二章(酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等)の規定による処分に対する不服申立てについては、行政不服審査法の定めるところによるものとし、この節の規定は、適用しない。

 

 

 

(行政手続法の適用除外)

第七十四条の十四 行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三条第一項(適用除外)に定めるもののほか、国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力の行使に当たる行為(酒税法第二章(酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等)の規定に基づくものを除く。)については、行政手続法第二章(申請に対する処分)(第八条(理由の提示)を除く。)及び第三章(不利益処分)(第十四条(不利益処分の理由の提示)を除く。)の規定は、適用しない。

2 行政手続法第三条第一項、第四条第一項及び第三十五条第四項(適用除外)に定めるもののほか、国税に関する法律に基づく納税義務の適正な実現を図るために行われる行政指導(同法第二条第六号(定義)に規定する行政指導をいい、酒税法第二章及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和二十八年法律第七号)に定める事項に関するものを除く。)については、行政手続法第三十五条第三項(行政指導に係る書面の交付)及び第三十六条(複数の者を対象とする行政指導)の規定は、適用しない。

3 国税に関する法律に基づき国の機関以外の者が提出先とされている届出(行政手続法第二条第七号に規定する届出をいう。)については、同法第三十七条(届出)の規定は、適用しない。

 

 

行政不服審査法

(審理手続の終結)

第四十一条 審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする。

2 前項に定めるもののほか、審理員は、次の各号のいずれかに該当するときは、審理手続を終結することができる。

一 次のイからホまでに掲げる規定の相当の期間内に、当該イからホまでに定める物件が提出されない場合において、更に一定の期間を示して、当該物件の提出を求めたにもかかわらず、当該提出期間内に当該物件が提出されなかったとき。

イ 第二十九条第二項 弁明書

ロ 第三十条第一項後段 反論書

ハ 第三十条第二項後段 意見書

ニ 第三十二条第三項 証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件

ホ 第三十三条前段 書類その他の物件

二 申立人が、正当な理由なく、口頭意見陳述に出頭しないとき。

3 審理員が前二項の規定により審理手続を終結したときは、速やかに、審理関係人に対し、審理手続を終結した旨並びに次条第一項に規定する審理員意見書及び事件記録(審査請求書、弁明書その他審査請求に係る事件に関する書類その他の物件のうち政令で定めるものをいう。同条第二項及び第四十三条第二項において同じ。)を審査庁に提出する予定時期を通知するものとする。当該予定時期を変更したときも、同様とする。

 

(不利益変更の禁止)

第四十八条 第四十六条第一項本文又は前条の場合において、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできない。

 

 

債権担保のため順次2口の代物弁済予約が締結された場合において1口につき予約完結権の行使後さらに別口につき予約完結権を行使しうるとされた事例


    所有権移転登記請求事件
【事件番号】    最高裁判所第2小法廷判決/昭和42年(オ)第1239号
【判決日付】    昭和43年3月8日
【判示事項】    債権担保のため順次2口の代物弁済予約が締結された場合において1口につき予約完結権の行使後さらに別口につき予約完結権を行使しうるとされた事例
【判決要旨】    将来の債権の根担保のため順次2口の代物弁済予約が締結され、その際予約完結時において消滅させるべき債権額についてなんらの合意がされていない等原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、当事者は予約完結権の行使後目的物件を換価または評価してその金額を債権の弁済に充当し過不足があればその清算をする意思を有するものと解すべきであり、1口について予約完結権を行使してもその当時該物件の価額が債権額を充たすに足りないときは、該物件の換価処分前であつても、さらに別口について予約完結権を行使することができる。
【参照条文】    民法369
          民法482
【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事90号611頁
          判例タイムズ225号83頁
          金融・商事判例102号2頁
          判例時報525号48頁
          金融法務事情511号34頁

民法
(抵当権の内容)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

(代物弁済)
第四百八十二条 弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

 

離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務が履行遅滞となる時期

 

 

離婚等請求本訴,同反訴事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/令和2年(受)第1765号

【判決日付】      令和4年1月28日

【判示事項】      離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務が履行遅滞となる時期

【判決要旨】      離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る。

【参照条文】      民法412

             民法709

             民法710

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集76巻1号78頁

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

(履行期と履行遅滞)

第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

 

借家期間の満了前に法定の期間を遵守しない更新拒絶がなされた場合でも、当該更新拒絶から6か月経過時に借家契約が終了するとされた事例

 

 

建物明渡請求控訴事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成元年(レ)第25号

【判決日付】      平成元年11月28日

【判示事項】      借家期間の満了前に法定の期間を遵守しない更新拒絶がなされた場合でも、当該更新拒絶から6か月経過時に借家契約が終了するとされた事例

【参照条文】      借家法2

             借家法3

【掲載誌】        判例時報1363号101頁

【評釈論文】      判例評論388号171頁

 

借地借家法26条1項

(建物賃貸借契約の更新等)

第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

 

 

国・護衛艦たちかぜ・海上自衛隊員事件・暴行,恐喝

 

 

              損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成23年(ネ)第3738号、平成23年(ネ)第6634号

【判決日付】      平成26年4月23日

【判示事項】      1 自衛官亡Kの自殺と,先輩に当たる加害者隊員である被控訴人(一審被告)Y2の暴行,恐喝行為および上司職員らの指導監督義務違反の間に事実的因果関係は認められるものの自殺は予見不可能であったとして,暴行,恐喝行為に対する慰謝料請求のみを認容した一審判決を取り消し,上司職員らは実態等を調査すればKの心身の状況を把握することができ,自殺決意を回避することができたのであり,Y2もKの心身の状況を把握することが容易な状況にあったのであるから,Kの自殺を予見することは可能であったとして,逸失利益を含む賠償請求が認められた例

             2 Y2の暴行行為の中には,外形的にみてY2の職務行為に付随してされたものとして被控訴人(一審被告)国(Y1)が国賠法に基づき損害賠償責任を負う反面,その範囲でY2個人の責任は免除されるものの,Y2の暴行の大部分は職務の執行とは全く無関係に行われたものであることが明らかであるから,Y2は個人として不法行為責任を負うとされた例

             3 Aが,乗組員らに実施されたアンケート結果等について文書開示請求をしたにもかかわらず,Y1が対象文書は破棄したとする虚偽の回答をして隠蔽し,不誠実な訴訟対応をしたことにより精神的苦痛を受けたとして追加した慰謝料請求について,開示手続きに関与した海上自衛隊担当者らが聴取内容文書を隠匿した行為は違法でありAの主張立証機会が奪われたと認められるとして20万円の慰謝料請求が認容された例(なお指定代理人らが違法な訴訟活動を行ったとはいえないとされた)

【掲載誌】        判例時報2231号34頁

             労働判例1096号19頁

             労働経済判例速報2213号9頁

 

 

労働契約法

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

(近親者に対する損害の賠償)

第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

 

 

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

  (1) 被控訴人らは,控訴人X1に対し,連帯して5461万3216円及びこれに対する平成16年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  (2) 被控訴人らは,控訴人X2に対し,連帯して1870万4406円及びこれに対する平成16年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  (3) 控訴人らのその余の請求を棄却する。

 2 被控訴人Y1の附帯控訴をいずれも棄却する。

 3(1) 被控訴人国は,控訴人X1に対し,10万円及びこれに対する平成24年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  (2) 被控訴人国は,控訴人X2に対し,10万円及びこれに対する平成24年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  (3) 控訴人らの被控訴人国に対する当審におけるその余の請求を棄却する。

 4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,控訴人らと被控訴人国との間においてはこれを2分し,その1を被控訴人国の負担とし,その余を控訴人らの負担とし,控訴人らと被控訴人Y1との間においてはこれを5分し,その2を被控訴人Y1の負担とし,その余を控訴人らの負担とする。

 5 この判決の第1項(1)及び(2)並びに第3項(1)及び(2)は,仮に執行することができる。ただし,被控訴人国は,控訴人X1のために5500万円の担保を,控訴人X2のために1900万円の担保を供するときは,各控訴人からの仮執行を免れることができる。

 

       事実及び理由

 

第1 当事者の求めた裁判

 1 控訴の趣旨

  (1) 原判決を次のとおり変更する。

   ア 被控訴人らは,控訴人X1に対し,連帯して,9928万4238円及びこれに対する平成16年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

   イ 被控訴人らは,控訴人X2に対し,連帯して,3359万4746円及びこれに対する平成16年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  (2)ア 被控訴人国は,控訴人X1に対し,1000万円及びこれに対する平成24年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

   イ 被控訴人国は,控訴人X2に対し,1000万円及びこれに対する平成24年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 附帯控訴の趣旨

   原判決を次のとおり変更する。

  (1) 被控訴人Y1は,控訴人X1に対し,112万5000円及びこれに対する平成16年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  (2) 被控訴人Y1は,控訴人X2に対し,37万5000円及びこれに対する平成16年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  (3) 控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

第2 事案の概要

 1 本件は,海上自衛官として護衛艦◇◇(以下「◇◇」という。)の乗員を務めていた亡A(以下,単に「A」という。)が平成16年10月27日に自殺したことにつき,Aの母(Aの父の訴訟承継人兼本人)及び姉(同訴訟承継人)である控訴人らが,① Aの自殺の原因は,Aの先輩自衛官であった被控訴人Y1による暴行及び恐喝であり,上司職員らにも安全配慮義務違反があったと主張して,被控訴人Y1に対しては民法709条に基づき,被控訴人国に対しては国家賠償法1条1項又は2条1項に基づき,A及びその父母に生じた損害の賠償を求めるとともに,当審において,② 被控訴人国がAの自殺に関係する調査資料を組織的に隠蔽した上,同資料に記載されていた事実関係を積極的に争う不当な応訴態度を取ったため,精神的苦痛を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づき,被控訴人国に対して慰謝料の支払請求を追加した事案である。

本件は、原告らが、街頭演説に対して路上等から「安倍辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられたり、長時間にわたって付きまとわれたりしたと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求める事案である。

 

 

              国家賠償請求事件

【事件番号】      札幌地方裁判所判決/令和元年(ワ)第2369号

【判決日付】      令和4年3月25日

【判示事項】      1 本件は、原告らが、街頭演説に対して路上等から「安倍辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられたり、長時間にわたって付きまとわれたりしたと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求める事案である。

             2 裁判所は、当時、「生命若しくは身体」に危険を及ぼすおそれのある「危険な事態」にあったとか(警察官職務執行法4条1項)、「犯罪がまさに行われようと」していた(同法5条)などとは認められないことを踏まえ、警察官らの行為につき国家賠償法1条1項の適用上違法であり、原告らの表現の自由等の権利を侵害するものと判断して、原告らの請求を一部認容した。

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      法学セミナー67巻7号108頁

             法学教室502号115頁

 

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

 

 

       主   文

 

 1 被告は、原告1に対し、33万円及びこれに対する令和元年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 被告は、原告2に対し、55万円及びこれに対する令和元年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

 4 訴訟費用は、原告1と被告との間においてはこれを10分し、その9を原告1の負担とし、その余を被告の負担とし、原告2と被告との間においてはこれを6分し、その5を原告2の負担とし、その余を被告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 1 第1事件

   被告は、原告1に対し、330万円及びこれに対する令和元年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 第2事件

   被告は、原告2に対し、330万円及びこれに対する令和元年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

   本件は、原告らが、街頭演説に対して路上等から「安倍辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられたり、長時間にわたって付きまとわれたりしたと主張して、被告(北海道)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金330万円及びこれに対する不法行為日である令和元年7月15日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

   被告は、警察官らの行為は、警察官職務執行法(以下「警職法」という。)2条1項、4条1項及び5条並びに警察法2条の規定に基づく適法な職務執行であったと主張して、これを争っている。

裁判所は,本件ログは,専ら相手方内部の者の利用に供する目的で作成され,それ以外の外部の者に開示することが予定されていない文書であって,特段の事情がない限り「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(民訴法220条4号ニ)に当たるが,文書提出命令の申立人が,所持者である相手方と同一視することができる立場にあったことが認められ,本件文書を本件訴訟の追行の目的のみに使用し,その他の目的には一切使用しないとの誓約書を裁判所に提出していること等により相手方に看過しがたい不利益が生ずるおそれはなく,特段の事情がある場合に当たるとして文書の提出を命じた事例

 

 

              文書提出命令申立事件

【事件番号】      知的財産高等裁判所決定/平成28年(ウ)第10038号

【判決日付】      平成28年8月8日

【判示事項】      申立人が,相手方の所持する「ログ」につき文書提出命令を申し立てた事案。

裁判所は,本件ログは,専ら相手方内部の者の利用に供する目的で作成され,それ以外の外部の者に開示することが予定されていない文書であって,特段の事情がない限り「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(民訴法220条4号ニ)に当たるが,文書提出命令の申立人が,所持者である相手方と同一視することができる立場にあったことが認められ,本件文書を本件訴訟の追行の目的のみに使用し,その他の目的には一切使用しないとの誓約書を裁判所に提出していること等により相手方に看過しがたい不利益が生ずるおそれはなく,特段の事情がある場合に当たるとして文書の提出を命じた事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

民事訴訟法

(文書提出義務)

第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。

一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。

二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。

三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。

イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書

ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの

ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書

ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)

ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

 

 

 

       主   文

 

 相手方は,相手方が所持する別紙文書目録記載の文書を提出せよ。

 

       理   由

 

第1 申立て

 1 文書の表示

 別紙文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)

 2 文書の趣旨

 本件文書は,ChatWork株式会社の提供するチャットワークといわれるコミュニケーションツール上でなされた相手方内部の情報共有の内容を記載したログである。相手方は,本件ゲーム開発をするに当たり,チャットワークを利用して,指示連絡や意見交換を含む情報を共有しながら作業を進めていたところ,チャットワークのうち「企画」と名付けられたチャットグループ(以下「本件チャットグループ」という。)は,本件ゲームの企画に関する内容を情報共有するグループであり,その参加者は,申立人,相手方代表者,A,B等である。

 本件文書には,本件ゲームのアイデア,ルール,ロジックに関する協議,決定したルール,ロジックに基づく指示連絡,仕様書の作成経過等が記載されているとともに,本件ゲームの開発過程における申立人の作業内容,指示内容等が記載されている。

国土交通省東京航空交通管制部・航空管制官事件・航行中の航空機同士の異常接近事故について,便名を言い間違えて降下の管制指示をした実地訓練中の航空管制官及びこれを是正しなかった指導監督者である航空管制官の両名に業務上過失傷害罪が成立するとされた事例

 

 

業務上過失傷害被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/平成20年(あ)第920号

【判決日付】      平成22年10月26日

【判示事項】      航行中の航空機同士の異常接近事故について,便名を言い間違えて降下の管制指示をした実地訓練中の航空管制官及びこれを是正しなかった指導監督者である航空管制官の両名に業務上過失傷害罪が成立するとされた事例

【判決要旨】      航行中の航空機甲機及び乙機が著しく接近し,両機の衝突を避けるために急降下した甲機の乗客らが負傷した事故について,実地訓練中の航空管制官において両機が異常接近しつつあることを知らせる警報を認知して巡航中の乙機を降下させることを意図しながら便名を言い間違えて上昇中の甲機に対し降下指示をし,その指導監督者である航空管制官においてこれに気付かず直ちに是正をしなかったことは,ほぼ同じ高度から甲機が同指示に従って降下すると同時に乙機も航空機衝突防止装置により発せられる降下指示に従って降下し,両機の接触,衝突等を引き起こす高度の危険性を有する行為であって,これと上記事故との間の因果関係も認められ,かつ,上記航空管制官両名において,両機が共に降下を続けて異常接近し,両機の機長が接触,衝突を回避するため急降下を含む何らかの措置を余儀なくされることを予見できたという本件事実関係(判文参照)の下では,上記航空管制官両名につき,両機の接触,衝突等の事故の発生を未然に防止するという業務上の注意義務を怠った過失があったものとして,それぞれ業務上過失傷害罪が成立する。

             (補足意見,反対意見がある。)

【参照条文】      刑法(平13法138号改正前)211前段

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集64巻7号1019頁

 

 

刑法

(業務上過失致死傷等)

第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。