所得税更正処分に対する上告人の異議申立てを棄却する旨の決定につき,理由附記に不備があると主張して,その取消しを求めた事案について,適法な理由附記があつても,理由附記の不備を理由とする異議申立棄却決定の取消しを求める訴えの利益が失われるものではないとし,原判決は法律の解釈を謝つたものであり,違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるとして,破棄差戻しとした事例
異議申立棄却決定取消請求
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷/昭和43年(行ツ)第39号
【判決日付】 昭和49年9月26日
【判示事項】 所得税更正処分に対する上告人の異議申立てを棄却する旨の決定につき,理由附記に不備があると主張して,その取消しを求めた事案について,適法な理由附記があつても,理由附記の不備を理由とする異議申立棄却決定の取消しを求める訴えの利益が失われるものではないとし,原判決は法律の解釈を謝つたものであり,違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるとして,破棄差戻しとした事例
【判決要旨】 一、税務署長がした処分につき適法な理由附記のある審査請求棄却の裁決があつても、右処分に対する異議申立棄却決定につき理由附記の不備を主張してその取消を求める訴の利益は失われない。
二、税務署長がした処分に対する異議申立を棄却する決定が判決によつて取り消された場合において、右判決確定の時当初の異議申立から既に三月を経過していても、右異議申立は、昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法八〇条一項一号の規定により当然に審査請求に移行するものではない。
【参照条文】 行政事件訴訟法9
行政事件訴訟法33-2
国税通則法84-4
国税通則法(昭和45年法律第8号による改正前のもの)75
国税通則法(昭和45年法律第8号による改正前のもの)80-1
行政不服審査法41-1
行政不服審査法48
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事112号723頁
行政事件訴訟法
(原告適格)
第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
第三十三条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
2 申請を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない。
3 前項の規定は、申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合に準用する。
4 第一項の規定は、執行停止の決定に準用する。
国税通則法
(決定の手続等)
第八十四条 再調査審理庁は、再調査の請求人又は参加人(第百九条第三項(参加人)に規定する参加人をいう。以下この款及び次款において同じ。)から申立てがあつた場合には、当該申立てをした者(以下この条において「申立人」という。)に口頭で再調査の請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
2 前項本文の規定による意見の陳述(以下この条において「口頭意見陳述」という。)は、再調査審理庁が期日及び場所を指定し、再調査の請求人及び参加人を招集してさせるものとする。
3 口頭意見陳述において、申立人は、再調査審理庁の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
4 再調査審理庁は、必要があると認める場合には、その行政機関の職員に口頭意見陳述を聴かせることができる。
5 口頭意見陳述において、再調査審理庁又は前項の職員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。
6 再調査の請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができる。この場合において、再調査審理庁が、証拠書類又は証拠物を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
7 再調査の請求についての決定は、主文及び理由を記載し、再調査審理庁が記名押印した再調査決定書によりしなければならない。
8 再調査の請求についての決定で当該再調査の請求に係る処分の全部又は一部を維持する場合における前項に規定する理由においては、その維持される処分を正当とする理由が明らかにされていなければならない。
9 再調査審理庁は、第七項の再調査決定書(再調査の請求に係る処分の全部を取り消す決定に係るものを除く。)に、再調査の請求に係る処分につき国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる旨(却下の決定である場合にあつては、当該却下の決定が違法な場合に限り審査請求をすることができる旨)及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければならない。
10 再調査の請求についての決定は、再調査の請求人(当該再調査の請求が処分の相手方以外の者のしたものである場合における前条第三項の規定による決定にあつては、再調査の請求人及び処分の相手方)に再調査決定書の謄本が送達された時に、その効力を生ずる。
11 再調査審理庁は、再調査決定書の謄本を参加人に送付しなければならない。
12 再調査審理庁は、再調査の請求についての決定をしたときは、速やかに、第六項の規定により提出された証拠書類又は証拠物をその提出人に返還しなければならない。
(国税に関する処分についての不服申立て)
第七十五条 国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に定める不服申立てをすることができる。
一 税務署長、国税局長又は税関長がした処分(次項に規定する処分を除く。) 次に掲げる不服申立てのうちその処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立て
イ その処分をした税務署長、国税局長又は税関長に対する再調査の請求
ロ 国税不服審判所長に対する審査請求
二 国税庁長官がした処分 国税庁長官に対する審査請求
三 国税庁、国税局、税務署及び税関以外の行政機関の長又はその職員がした処分 国税不服審判所長に対する審査請求
2 国税に関する法律に基づき税務署長がした処分で、その処分に係る事項に関する調査が次の各号に掲げる職員によつてされた旨の記載がある書面により通知されたものに不服がある者は、当該各号に定める国税局長又は国税庁長官がその処分をしたものとそれぞれみなして、国税局長がしたものとみなされた処分については当該国税局長に対する再調査の請求又は国税不服審判所長に対する審査請求のうちその処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立てをし、国税庁長官がしたものとみなされた処分については国税庁長官に対する審査請求をすることができる。
一 国税局の当該職員 その処分をした税務署長の管轄区域を所轄する国税局長
二 国税庁の当該職員 国税庁長官
3 第一項第一号イ又は前項(第一号に係る部分に限る。)の規定による再調査の請求(法定の再調査の請求期間経過後にされたものその他その請求が適法にされていないものを除く。次項において同じ。)についての決定があつた場合において、当該再調査の請求をした者が当該決定を経た後の処分になお不服があるときは、その者は、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる。
4 第一項第一号イ又は第二項(第一号に係る部分に限る。)の規定による再調査の請求をしている者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該再調査の請求に係る処分について、決定を経ないで、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる。
一 再調査の請求をした日(第八十一条第三項(再調査の請求書の記載事項等)の規定により不備を補正すべきことを求められた場合にあつては、当該不備を補正した日)の翌日から起算して三月を経過しても当該再調査の請求についての決定がない場合
二 その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合
5 国税に関する法律に基づく処分で国税庁、国税局、税務署又は税関の職員がしたものに不服がある場合には、それぞれその職員の所属する国税庁、国税局、税務署又は税関の長がその処分をしたものとみなして、第一項の規定を適用する。
(行政不服審査法との関係)
第八十条 国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立て(次項に規定する審査請求を除く。)については、この節その他国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法(第二章及び第三章(不服申立てに係る手続)を除く。)の定めるところによる。
2 第七十五条第一項第二号又は第二項(第二号に係る部分に限る。)(国税に関する処分についての不服申立て)の規定による審査請求については、この節(次款及び第三款(審査請求)を除く。)その他国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法の定めるところによる。
3 酒税法第二章(酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等)の規定による処分に対する不服申立てについては、行政不服審査法の定めるところによるものとし、この節の規定は、適用しない。
(行政手続法の適用除外)
第七十四条の十四 行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三条第一項(適用除外)に定めるもののほか、国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力の行使に当たる行為(酒税法第二章(酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等)の規定に基づくものを除く。)については、行政手続法第二章(申請に対する処分)(第八条(理由の提示)を除く。)及び第三章(不利益処分)(第十四条(不利益処分の理由の提示)を除く。)の規定は、適用しない。
2 行政手続法第三条第一項、第四条第一項及び第三十五条第四項(適用除外)に定めるもののほか、国税に関する法律に基づく納税義務の適正な実現を図るために行われる行政指導(同法第二条第六号(定義)に規定する行政指導をいい、酒税法第二章及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和二十八年法律第七号)に定める事項に関するものを除く。)については、行政手続法第三十五条第三項(行政指導に係る書面の交付)及び第三十六条(複数の者を対象とする行政指導)の規定は、適用しない。
3 国税に関する法律に基づき国の機関以外の者が提出先とされている届出(行政手続法第二条第七号に規定する届出をいう。)については、同法第三十七条(届出)の規定は、適用しない。
行政不服審査法
(審理手続の終結)
第四十一条 審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする。
2 前項に定めるもののほか、審理員は、次の各号のいずれかに該当するときは、審理手続を終結することができる。
一 次のイからホまでに掲げる規定の相当の期間内に、当該イからホまでに定める物件が提出されない場合において、更に一定の期間を示して、当該物件の提出を求めたにもかかわらず、当該提出期間内に当該物件が提出されなかったとき。
イ 第二十九条第二項 弁明書
ロ 第三十条第一項後段 反論書
ハ 第三十条第二項後段 意見書
ニ 第三十二条第三項 証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件
ホ 第三十三条前段 書類その他の物件
二 申立人が、正当な理由なく、口頭意見陳述に出頭しないとき。
3 審理員が前二項の規定により審理手続を終結したときは、速やかに、審理関係人に対し、審理手続を終結した旨並びに次条第一項に規定する審理員意見書及び事件記録(審査請求書、弁明書その他審査請求に係る事件に関する書類その他の物件のうち政令で定めるものをいう。同条第二項及び第四十三条第二項において同じ。)を審査庁に提出する予定時期を通知するものとする。当該予定時期を変更したときも、同様とする。
(不利益変更の禁止)
第四十八条 第四十六条第一項本文又は前条の場合において、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできない。