東京大学出版会事件・定年後の再雇用
地位確認請求事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成21年(ワ)第10447号
【判決日付】 平成22年8月26日
【判示事項】 1 被告財団法人Yが,定年後の再雇用を希望した原告Xに対し,誠実義務および職場規律に問題があり,再雇用者として通常勤務できる能力がないとして再雇用を拒否した件につき,Yにおいては,再雇用就業規則において再雇用条件(健康状態,意欲,能力)が定められていたものの,高年法9条2項にいう「継続雇用制度の対象となる高年齢者にかかる基準を定める労使協定」は締結されていなかったところ,当該規則制定の経過やその運用状況等にかんがみれば,同規則所定の要件を満たす定年退職者は,Yとの間で同規則所定の取扱いおよび条件に応じた再雇用契約を締結する雇用契約上の権利を有するものと解せられ,要件を満たす定年退職者が再雇用を希望したにもかかわらず,Yが再雇用拒否の意思表示をした場合には,解雇権濫用法理(労契法16条)の類推適用により無効となり,XとYとの間には再雇用契約が成立したものとして取り扱われることになるとされた例
2 本件再雇用就業規則3条(2)の「再雇用者として通常勤務できる意欲と能力がある者」という要件のうちの「能力」の解釈につき,その中心的なものとしては,当該職務を遂行するうえで備えるべき身体的・技術的能力を意味するが,職務遂行に必要な環境および人間関係等に照らせば,その備えるべき身体的・技術的能力を測るに当たり,協調性や規律性等の情意(勤務態度)についても,その要素として考慮しなければならない場合もあるとされた例
3 Xは定年退職するまで35年以上,一貫して編集業務に携わっていた者で,編集者としての身体的・技術的能力がないとはいえないところ,Y主張の本件再雇用拒否理由1(本件編集業務中断・原稿引渡し拒否)および同理由2(本件席移動の拒否)の事実をもってしても,職務上備えるべき身体的・技術的能力を減殺するほどの協調性・規律性の欠如は認められず,再雇用就業規則所定の「能力」がないとは認められないとして,本件再雇用拒否が無効とされ,Xの申込みに基づきX・Y間において,再雇用契約が成立したものとして取り扱われることになるとされた例
【掲載誌】 労働判例1013号15頁
労働経済判例速報2085号3頁
【評釈論文】 季刊労働法233号131頁
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
(高年齢者雇用確保措置)
第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止
2 継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主をいう。以下この項及び第十条の二第一項において同じ。)との間で、当該事業主の雇用する高年齢者であつてその定年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、当該契約に基づき当該高年齢者の雇用を確保する制度が含まれるものとする。
3 厚生労働大臣は、第一項の事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いを含む。)に関する指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
4 第六条第三項及び第四項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。
労働契約法
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。