被告人が,実子の身体が極度に衰弱しているにもかかわらず,生存に必要な保護をしなかったのが,刑法218条後段に該るとの一審判決を正当とした原審判断を認め,上告を棄却した事例
保護責任者遺棄傷害
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷決定/昭和37年(あ)第1521号
【判決日付】 昭和38年5月30日
【判示事項】 被告人が,実子の身体が極度に衰弱しているにもかかわらず,生存に必要な保護をしなかったのが,刑法218条後段に該るとの一審判決を正当とした原審判断を認め,上告を棄却した事例
【判決要旨】 原判決の支持した第一審判決の認定にかかる事実関係、すなわち、被告人が、実子Aが昭和三五年一二月頃身体が極度に衰弱し、両足が凍傷にかかり、昭和三六年二月初め頃には足趾が欠除し、歩行不可能となり、かつ常時鼻血をにじませており、次いで同年二月末頃には左手上腕部を骨折し、左手全体が極度に腫張し、日常の動作が不自由となつた事態にあつたことをそれぞれ知りながら同年三月一〇日過ぎ頃まで医師の専門的施療等を受けさせることなく放置した事実関係の下においてなされた被告人の行為は刑法第二一八条後段にいう被保護者の生存に必要なる保護をなさない罪に該当するものとした第一審判決の診断は、当裁判所もこれを正当と認める。
【参照条文】 刑法218-1後段
【掲載誌】 最高裁判所裁判集刑事147号409頁
刑法
(保護責任者遺棄等)
第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。