法律大好きのブログ(弁護士村田英幸) -122ページ目

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

京都記者クラブ事件・地方公共団体がその庁舎内に設置した新聞記者室の性質と無償供与の適法性

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      京都地方裁判所判決/平成2年(行ウ)第10号

【判決日付】      平成4年2月10日

【判示事項】      地方公共団体がその庁舎内に設置した新聞記者室の性質と無償供与の適法性

【参照条文】      地方自治法238

             地方自治法238の4

             憲法21

【掲載誌】        判例タイムズ781号153頁

 

 

地方自治法

(公有財産の範囲及び分類)

第二百三十八条 この法律において「公有財産」とは、普通地方公共団体の所有に属する財産のうち次に掲げるもの(基金に属するものを除く。)をいう。

一 不動産

二 船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機

三 前二号に掲げる不動産及び動産の従物

四 地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利

五 特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利

六 株式、社債(特別の法律により設立された法人の発行する債券に表示されるべき権利を含み、短期社債等を除く。)、地方債及び国債その他これらに準ずる権利

七 出資による権利

八 財産の信託の受益権

2 前項第六号の「短期社債等」とは、次に掲げるものをいう。

一 社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第六十六条第一号に規定する短期社債

二 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第百三十九条の十二第一項に規定する短期投資法人債

三 信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第五十四条の四第一項に規定する短期債

四 保険業法(平成七年法律第百五号)第六十一条の十第一項に規定する短期社債

五 資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第八項に規定する特定短期社債

六 農林中央金庫法(平成十三年法律第九十三号)第六十二条の二第一項に規定する短期農林債

3 公有財産は、これを行政財産と普通財産とに分類する。

4 行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。

 

(行政財産の管理及び処分)

第二百三十八条の四 行政財産は、次項から第四項までに定めるものを除くほか、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。

2 行政財産は、次に掲げる場合には、その用途又は目的を妨げない限度において、貸し付け、又は私権を設定することができる。

一 当該普通地方公共団体以外の者が行政財産である土地の上に政令で定める堅固な建物その他の土地に定着する工作物であつて当該行政財産である土地の供用の目的を効果的に達成することに資すると認められるものを所有し、又は所有しようとする場合(当該普通地方公共団体と一棟の建物を区分して所有する場合を除く。)において、その者(当該行政財産を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付けるとき。

二 普通地方公共団体が国、他の地方公共団体又は政令で定める法人と行政財産である土地の上に一棟の建物を区分して所有するためその者に当該土地を貸し付ける場合

三 普通地方公共団体が行政財産である土地及びその隣接地の上に当該普通地方公共団体以外の者と一棟の建物を区分して所有するためその者(当該建物のうち行政財産である部分を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付ける場合

四 行政財産のうち庁舎その他の建物及びその附帯施設並びにこれらの敷地(以下この号において「庁舎等」という。)についてその床面積又は敷地に余裕がある場合として政令で定める場合において、当該普通地方公共団体以外の者(当該庁舎等を管理する普通地方公共団体が当該庁舎等の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該余裕がある部分を貸し付けるとき(前三号に掲げる場合に該当する場合を除く。)。

五 行政財産である土地を国、他の地方公共団体又は政令で定める法人の経営する鉄道、道路その他政令で定める施設の用に供する場合において、その者のために当該土地に地上権を設定するとき。

六 行政財産である土地を国、他の地方公共団体又は政令で定める法人の使用する電線路その他政令で定める施設の用に供する場合において、その者のために当該土地に地役権を設定するとき。

3 前項第二号に掲げる場合において、当該行政財産である土地の貸付けを受けた者が当該土地の上に所有する一棟の建物の一部(以下この項及び次項において「特定施設」という。)を当該普通地方公共団体以外の者に譲渡しようとするときは、当該特定施設を譲り受けようとする者(当該行政財産を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付けることができる。

4 前項の規定は、同項(この項において準用する場合を含む。)の規定により行政財産である土地の貸付けを受けた者が当該特定施設を譲渡しようとする場合について準用する。

5 前三項の場合においては、次条第四項及び第五項の規定を準用する。

6 第一項の規定に違反する行為は、これを無効とする。

7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。

8 前項の規定による許可を受けてする行政財産の使用については、借地借家法(平成三年法律第九十号)の規定は、これを適用しない。

9 第七項の規定により行政財産の使用を許可した場合において、公用若しくは公共用に供するため必要を生じたとき、又は許可の条件に違反する行為があると認めるときは、普通地方公共団体の長又は委員会は、その許可を取り消すことができる。

 

 

憲法

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

 

 

       主   文

 

一 原告の請求を棄却する。

二 訴訟費用は原告の負担とする。

 

       事   実

 

第一 当事者の求める裁判

一 原告

 1 被告は、京都府に対し、金八五九万五、〇五〇円及び平成二年四月二六日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

 2 訴訟費用は被告の負担とする。

 との判決及び第一項に限り仮執行宣言。

二 被告

 主文同旨の判決。

第二 当事者の主張

一 原告(請求原因)

  (一) 原告は、京都府の住民であり、被告は、京都府の知事である。

  (二) 京都府は、庁舎内に記者室を設置し、これを報道機関の記者の利用に供している。

  (三) 右記者室の供用は、行政財産の目的外使用として地方自治法(以下「法」という)二三八条の四の制限に違反している。

  (四) 被告は、京都府を代表して、右記者室を便宜供与していることによって、京都府政記者会(以下「記者クラブ」という)ないし同クラブ加盟各社が支払うべき次の金額につき、何ら理由がないのに、違法に公金の支出を行った。

(1) 昭和六三年度の電話代等

イ 直通電話代 八万八、九一人円

ロ ファクシミリ代 一〇万八、一〇七円

ハ NHK受信料 一万一、七〇〇円

 計金二〇万八、七三五円

(2) 平成元年度(四月~一一月)の電話代等

イ 直通電話代 五万八、八九一円

ロ ファクシミリ代 八万七、四六三円

ハ NHK受信料 一万二、二〇〇円

 計金一五万八、五五四円

(3) 記者室専属の女子職員の平成元年二月から平成二年一月までの給料合計金四〇三万五、三六一円

  (五) 被告は、京都府を代表して、記者室(面積一〇四・八一)を無償で供与しており、本来徴収すべき昭和六三年一月から平成元年一一月までの二○か月分の賃料相当損害金四一九万二、四〇〇円を徴収せずに財産管理を怠ったものである。

  (六) 原告は、平成二年一月二九日付で、右公金支出及び怠る事実は違法であるとして、京都府監査委員に監査請求したが、同委員は、同年三月一四日付で、右監査請求には理由がないと通知した。

  (七) よって、原告は、地方自治法二四二条の二第一項に基づき、京都府に代位して、被告が京都府に対し、違法な公金支出及び怠る事実によって京都府に与えた損害金八五九万五、〇五〇円及び訴状送達の翌日である平成二年四月二六日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払いを求める。

二 被告(認否・主張)

 1 認否

  (一) 請求原因(一)、(二)、(六)の各事実をいずれも認める。

  (二) 同(三)を争う。

  (三) 同(四)の(1)、(2)の事実を認め、(3)の事実を否認し、その余を争う。

  (四) 同(五)の事実のうち、京都府が記者室を無償で供与していることを認め、その余を争う。

 2 被告の主張

  (一) 法二三八条の四第四項は、地方自治体が行政財産をその本来の用途または目的を妨げない限度においてその目的外使用として、地方自治体以外の者に使用させるものであるが、記者室の供用は、後記(二)のとおり、行政財産を京都府自体の公用に供するものであって、同条項の目的外使用には当らない。京都府では、昭和三九年九月三日付企画管理部長依命通達(以下「通達」という)によって、その旨を定めている。

  (二) 即ち、京都府は、府民の知る権利を保障するため、府の施策や行事などの公共的情報を迅速かつ広範に府民に周知させる広報活動の一環として、庁舎内に記者室を設置し、報道機関の記者が常時取材の場として利用できるようにしている。記者室は、京都府自身の事務または事業の遂行のためこれにその施設を供するものであるから、通達2の基準に照らし、行政財産である土地建物を第三者に使用させることによる目的外使用には該当しない。なお、国も、昭和三三年一月七日付大蔵省管財局長通達によって、新聞記者室を国の事務、事業の遂行のため、国が当該施設を提供するものであるから、使用又は収益とみなさず、許可を要する場合に該当しないという取扱をしている。したがって、法二三八条の四第四項の適用はなく、京都府が記者室の使用料を徴収していないことにより、財産管理を怠っていることにはならない。

  (三) 電話、ファクシミリ、テレビ受像機は、記者室の設置に伴い、必要最小限の付属設備として配置されたものであって、その使用に伴う費用を京都府が負担するのは、当然のことであり、違法な公金支出にはならない。

  (四) 京都府は、記者室に企画管理部広報課に所属する女子職員一名を配置し、報道機関との連絡、新聞記事の記録及び整理、報道用資料の整理など京都府の事務を担当させているのであって、同人が京都府から給与の支給を受けるのは当然である。

三 原告(被告の主張に対する認否、反論)

 1 被告の主張に対する認否

 被告の主張をすべて争う。

 

第5章 保証に関する見直し

第1節 要約

保証に関する見直し

-重要な実質改正事項-

約120年間の社会経済の変化への対応(実質的なルールの改正)

平成16年民法改正(貸金等債務に関する包括根保証の禁止)

商工ローンの保証などの社会問題化が背景

貸金等債務の根保証をした個人保証人の保護のため、以下の措置を講ずる。

極度額(保証の上限額):極度額の定めのない根保証契約は無効(旧法§465条の2)

元本確定期日(保証期間の制限):保証人が責任を負うのは元本確定期日までの間に行われた貸金等に限定

: 元本確定期日までの期間を原則3年(最長5年)に制限(旧法§465条の3)

元本確定事由(特別事情による保証の終了):

元本確定期日の到来前であっても特別な事情(保証人や主債務者の死亡・破産等)が発生した場合には、その時点で元本確定(それ以前の貸金等に限り責任を負う)(旧法§465条の4)

保証とは、主債務者が債務の支払をしない場合に、これに代わって支払をすべき義務のこと

通常の保証:契約時に特定している債務の保証

(例:住宅ローンの保証)

根 保 証 :将来発生する不特定の債務の保証

(例:継続的な事業用融資の保証)

平成16年民法改正後の二つの課題

① 包括根保証の禁止の対象を拡大することの当否

② 保証人保護のさらなる拡充(第三者保証の法的制限など)

 

• ・貸金等債務以外の根保証(ex賃貸借や継続売買取引の根保証)についても、想定外の多額の保証債務や、想定していなかった主債務者の相続人の保証債務の履行を求められる事例は少なくない。

→ 例えば、借家が借主の落ち度で焼失し、その損害額が保証人に請求されるケースや、借主の相続人が賃料の支払等をしないケースなど

・包括根保証禁止の既存のルールをすべての契約に拡大すると、例えば、賃貸借契約について、最長でも5年で保証人が存在しなくなるといった事態が生ずるおそれがある。

旧法

   

主債務に含まれる債務

貸金等債務あり

貸金等債務なし

 

 

(賃借人の債務など)

極度額

極度額の定めは必要

極度額の定めは不要

元本確定期日

原則3年(最長5年)

制限なし

(保証期間)

 

 

元本確定事由

破産・死亡などの事情があれば保証は打ち切り

特に定めなし

(特別事情による保証の終了)

 

 

     

改正法

   

主債務に含まれる債務

貸金等債務あり

貸金等債務なし

 

 

(賃借人の債務など)

極度額

極度額の定めは必要

極度額の定めは必要

元本確定期日

原則3年(最長5年)

制限なし

(保証期間)

 

 

元本確定事由

破産・死亡などの事情があれば保証は打ち切り

破産・死亡などの事情(主債務者の破産等を除く。)があれば保証は打ち切り

(特別事情による保証の終了)

 

 

貸金等債務以外とは、たとえば、賃貸借契約や継続的売買取引契約の根保証をいいます。

個人根保証契約とは、法人などではなく個人が保証人となる根保証契約をいいます。

 

なお、貸金等債務以外の場合は④、⑤の事由が生じても打ち切り(元本の確定)にはなりません。

なぜ、貸金等以外の債務については、打ち切り(元本の確定)にはならないのでしょうか?

たとえば、賃貸借契約の賃借人が破産したとしましょう。だからといって、賃貸借契約をすぐに解除することはできないのに、賃借人から賃料が得られないことは目にみえています。このような場合にも、貸主が、保証人に賃料の支払いを求めることができないのは酷だからです。

 

改正法

①極度額の定めの義務付けについては、すべての根保証契約に適用。【新§465条の2】

 

【参照条文】

(個人根保証契約の保証人の責任等)

第465条の2

1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものおよびその保証債務について約定された違約金または損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 第446条第2項および第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

 

②保証期間の制限については、旧法維持(賃貸借等の根保証には適用せず)。【新§465条の3】

③特別事情(主債務者の死亡や、保証人の破産・死亡など)がある場合の根保証の打ち切りについては、すべての根保証契約に適用。ただし、主債務者の破産等があっても、賃貸借等の根保証が打ち切りにならない点は、旧法を維持。【新§465条の4】

 

第2節 包括根保証の禁止の対象拡大-個人保証人の保護の拡充-

(1)包括根保証の禁止の対象拡大-個人保証人の保護の拡充-

改正法の内容

保証制度は、特に中小企業向けの融資において、主債務者の信用の補完や、経営の規律付けの観点から重要な役割

一方、個人的な情義等から保証人となった者が、想定外の多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれる事例が後を絶たない。

経営者保証 有用な場合があることは否定できず、民事法による強力な規制は不適当(適用対象外に)。

第三者保証 できる限り抑制すべきであるが、一律禁止は行き過ぎ(厳格な要件の下で許容)。

改正法の内容

事業用融資の第三者個人保証に関して次のような規定を新設。【新§465条の6~465条の9】

事業用融資の保証契約は、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ、 効力を生じない。ただし、このルールは次のものには適用しない。

① 主債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等

①     主債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数を有する者等

②     主債務者が個人である場合の共同事業者または主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者

 

(1)極度額の定めのない個人の根保証契約 は無効に

保証契約に関するルールについて,個人(会社などの法人は含まれません) が保証人になる場合の保証人の保護を進めるため,次のような改正をしています。

※一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約を「根保証契約」といいます。例えば,住宅等の賃貸借契約の保証人となる契約などが根保証契約に当たることがあります。

個人が根保証契約を締結する場合には,保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ,保証契約は無効となります。

 

第3節 事業用融資における第三者保証の制限(公証人による意思確認手続の新設)-個人保証人の保護の拡充-

問題の所在

(2)事業用融資における第三者保証の制限(公証人による意思確認手続の新設)

-個人保証人の保護の拡充-

保証人の保護に関する改正

この手続では,保証意思宣明公正証書を作成することになります。これは代理人に依頼することができず,保証人になろうとする者は自ら公証人の面前で保証意思を述べる必要があります。

※次の場合には,意思確認は不要です。

会社や個人である事業主が融資を受ける場合に,その事業に関与していない親戚や友人などの第三者が安易に保証人になってしまい,結果的に,予想もしなかった多額の支払を迫られるという事態が依然として生じています。そこで,個人が事業用融資の保証人になろうとする場合について,公証人による保証意思確認の手続を新設しています。この手続を経ないでした保証契約は無効となります(※)。

公証人による保証意思確認の手続を新設          

①主債務者が法人である場合 その法人の理事,取締役,執行役や,議決権の過半数を有する株主等

②主債務者が個人である場合 主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や,主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者

 

公証人に対する口頭での申述・筆記事項

① 通常の保証契約(根保証契約以外のもの)の場合

1) 主債務の債権者および債務者

2) 主債務の元本と従たる債務(利息,違約金,損害賠償等)についての定めの有無およびその内容

3) 主債務者がその債務を履行しないときには,その債務の全額について履行する意思を有していること。

② 根保証契約の場合

1) 主債務の債権者および債務者

2) 主債務の範囲,根保証契約における極度額,元本確定期日の定めの有無およびその内容

3) 主債務者がその債務を履行しないときには,極度額の限度において元本確定期日または元本確定事由が生ずる時までに生ずべき主債務の元本および従たる債務の全額について履行する意思を有していること。

※ いずれについても,連帯保証の場合には,債権者が主債務者に対して催告をしたかどうか,主債務者がその債務を履行することができるかどうか,または他に保証人があるかどうかにかかわらず,その全額について履行する意思を有していること。

保証意思宣明公正証書の性質

・ 保証契約の契約書(保証契約公正証書)とは別のもの。

・ 保証意思宣明公正証書自体には執行認諾文言を付けることはできない。

 

公証人による保証意思の確認

○ 保証人になろうとする者が保証しようとしている主債務の具体的内容を認識していることや、保証契約を締結すれば保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければ自らが保証債務を履行しなければならなくなることを理解しているかなどを検証し、 保証契約のリスクを十分に理解した上で、 保証人になろうとする者が相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているか否かを見極める。

※ 公証人は、保証意思を確認する際には、保証人が主債務者の財産状況について情報提供義務(新§465条の10⇒次項)に基づいてどのような情報の提供を受けたかも確認し、保証人がその情報も踏まえてリスクを十分に認識しているかを見極める。

保証意思が確認できない場合

保証人の保証意思を確認することができない場合には、公証人は、無効な法律行為等については証書を作成することができないとする公証人法26条に基づき、 公正証書の作成を拒絶しなければならない。

公証人に対する口授・筆記

・ 保証人になろうとする者は,公証人に対し,保証意思を宣明するため,主債務の内容など法定された事項(右欄参照)を口頭で述べ,公証人は,保証人になろうとする者が口頭で述べた内容を筆記し,これを保証人になろうとする者に読み聞かせ,または閲覧させる。

※ 口がきけない者については,通訳人の通訳または自署

・保証人になろうとする者は,公証人が証書に記載した内容が正確なことを承認して署名押印するなどし,公証人は,その証書が法定の方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名押印する。

 

公正証書作成の例外‥配偶者

・ 主債務者が行う事業に現に従事しているとは、文字どおり、保証契約の締結時においてその個人事業主が行う事業に実際に従事しているといえることが必要。単に書類上事業に従事しているとされているだけでは足りず、また、保証

契約の締結に際して一時的に従事したというのでは足りない。

・ 主債務者が法人である場合に、その代表者等の配偶者が例外になるわけではない。

・ 例外となる配偶者は、法律上の配偶者に限られる。

公正証書の作成手続の特徴

・ 代理人による嘱託は不可。

必ず保証人本人が出頭しなければならない。

・ 手数料は、 1通1万1000円を予定

 

(2)事業用融資における第三者保証の制限(公証人による意思確認手続の新設)

-個人保証人の保護の拡充-

「事業のために負担した貸金等債務」の要件

・ 事業性

 「事業」とは,一定の目的をもってされる同種の行為の反復継続的遂行をいい,「事業のために負担した貸金等債務」とは,借主が借り入れた金銭等を自らの事業に用いるために負担した貸金等債務を意味する。

例えば,製造業を営む株式会社が製造用の工場を建設したり,原材料を購入したりするための資金を借り入れることにより負担した貸金債務が「事業のために負担した貸金等債務」の典型例である。このほか,いわゆるアパート・ローンなども「事業のために負担した貸金等債務」に該当するものと考えられる。

他方で,貸与型の奨学金については「事業のために負担した貸金等債務」に該当しないと考えられる。

・ 判断

借主が使途は事業資金であると説明して金銭の借入れを申し入れ,貸主もそのことを前提として金銭を貸し付けた場合には,実際にその金銭が事業に用いられたかどうかにかかわらず,その債務は事業のために負担した貸金等債務に該当する。

※ 借入時において,借主と貸主との間で,例えば,その使途を居住用住宅の購入費用としていた場合には,仮に借主が金銭受領後にそれを「事業のために」用いてしまったとしても,そのことによって「事業のために負担した」債務に変容

するものではない。

 

問題の所在

保証人になるに当たって、主債務者の財産状況等(保証のリスク)を十分に把握していない事例が少なくない。

旧法では、主債務者は、自らの財産状況等を保証人に説明する義務を負っていない。

債権者も、主債務者の財産状況等を保証人に伝える義務を負っていない。

改正法の内容

主債務者による保証人への情報提供義務の規定を新設

【新§465条の10】

1 対象

個人に対して事業上の債務の保証を委託する場合

(貸金債務の保証に限らない)

2 提供すべき情報

① 財産および収支の状況

② 主債務以外の債務の有無、その債務の額、その債務の履行状況

③ 担保として提供するもの(例えば、ある土地に抵当権を設定するのであれば、その内容)

3 情報提供義務違反の場合の措置

保証人は、保証契約を取り消すことができる。ただし、次の要件を満たすことが必要。

②     保証人が主債務者の財産状況等について誤認

② 主債務者が情報を提供しなかったこと等を債権者が知り、または知ることができた

 

第4節 保証契約締結時の情報提供義務-個人保証人の保護の拡充-

(3)保証契約締結時の情報提供義務-個人保証人の保護の拡充-

問題の所在

〈例〉

○ 製造業を営むAが、原材料の購入取引で負担する代金債務について、その保証人となることを知人Bに委託する場合

→ 主債務者Aに情報提供義務

○ この場合に、例えば、Aが誤った情報の提供(借地上に工場を建てていたのに、自己所有地と伝えるなど)をしたとき

→ 左記3①②の要件を満たせば、保証人Bに取消権

保証人の負担額は、主債務者が支払を遅滞した後に発生する遅延損害金によって大きくふくらむ。特に、主債務者が分割金の支払を遅滞して期限の利益を喪失し、一括払を求められるケースにおいて顕著。

主債務者が支払を遅滞し、期限の利益を喪失したことを保証人が知っていれば、早期に立替払をして遅延損害金が発生することを防ぐなどの対策を取ることも可能。しかし、保証人は、主債務者が支払を遅滞したことを当然には知らない。

 

改正法の内容

期限の利益喪失に関して債権者の保証人に対する情報提供義務の規定を新設【新§458条の3】

1 対象

保証人が個人である保証一般

2 情報提供義務の内容

主債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その喪失を知った時から2か月以内に、その旨を通知しなければならない。

3 義務違反の場合の措置

2か月以内に通知をしなかったときは、債権者は、期限の利益を喪失した時からその後に通知を現にするまでに生じた遅延損害金については、保証債務の履行を請求することができない(主債務者は支払義務を負う。)。

 

第5節 主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務-個人保証人の保護の拡充-

(4)主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務-個人保証人の保護の拡充-

※1 期限の利益とは、分割払の約定がされ、弁済が猶予される結果、期限が到来しないことによって債務者が受ける利益をいう。

※2 期限の利益の喪失とは、主債務者が分割払の支払を怠り、特約に基づいて、保証人が一括払の義務を負うことなどをいう。

〈例〉

支払を1回でも怠れば直ちに一括払の義務を負うとの特約が付いている分割払の貸金債務について、保証がされたが、主債務者が分割払の支払を怠り、一括払の義務を負った場合

→ 保証人に通知義務

この場合に、例えば、債権者が2か月以内に通知せず、3か月後に通知をした場合

→ 一括払い前提での3か月分の遅延損害金の請求を保証人にすることはできない

※ 保証人が主債務者の履行状況を知りたいと考えたときに、知ることができる制度も必要

保証人にとって、主債務の履行状況は重要な関心事であるが、その情報の提供を求めることができるとの明文の規定はない。

銀行等の債権者としても、保証人からの求めに応じ、主債務者のプライバシーにも関わる情報を提供してよいのかの判断に困り、対応に苦慮。

保証人が個人の場合だけでなく、法人の場合にも上記の問題は発生。

改正法の内容

主債務者の履行状況に関する債権者の情報提供義務に関して次のような規定を新設【新§458条の2】

1 債権者は、保証人から、請求があったときは、主債務の元本、利息および違約金等に関する次の情報を提供しなければならない。

① 不履行の有無(弁済を怠っているかどうか)

② 残額

③ 残額のうち弁済期が到来しているものの額

2 ただし、上記の請求をすることができるのは、主債務者から委託を受けた保証人(法人も可)に限られる。

 

 

保証人に対する情報提供義務(3つ)

・保証契約締結時の情報提供義務(主債務者の義務)

・主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務(債権者の義務)

・主債務者の履行状況に関する情報提供義務(債権者の義務)

 

以下、保証人に対する情報提供義務についてそれぞれ解説します。

 

保証契約締結時の情報提供義務(主債務者の義務)

 

主債務者は、個人に保証人となってもらう場合、主債務者の財産状況について情報を提供しなければなりません(民法465条の10第1項、3項)。主債務者の財産状況とは、主債務者が返済できず、自らが保証しなければならないリスクがどの程度あるのかというものです。 改正により、保証人は、主債務者の財産状況を十分に把握したうえで、保証人となるかどうかを慎重に判断することができるようになりました。

 

保証契約締結時の情報提供義務(主債務者の義務)

主債務者が、提供すべき情報は、次の3つです。

 

主債務者が提供すべき情報

① 財産および収支の状況

② 主債務以外の債務の有無、その債務の額、その債務の履行状況

③ 担保として提供するものがあればその内容

 

そして、保証人は、次の要件をみたすときに、保証契約を取り消すことができます(新民法465条の10第2項)。

 

保証契約の取消の要件

①主債務者が情報提供を怠ったために保証契約が締結されたこと

②情報提供がされなかったことを債権者が知り、または知ることができたこと

 

主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務(債権者の義務)

 

保証人が個人である場合、主債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対しその喪失を知った時から2か月以内にその旨を通知しなければならない、というルールが新設されます(民法458条の3)。 2か月以内に通知をしなかったときは、債権者は、期限の利益が喪失された時からその後に通知をするまでに生じた遅延損害金を保証人に請求することはできません。

 

主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務(債権者の義務)

たとえば、債権者が、期限の利益が喪失されたことを知ったときから2ヶ月以内に、保証人に何も連絡をとらず、3ヶ月たってようやく連絡したとします。 この場合は、期限の利益が喪失されてから3ヶ月分の遅延損害金を請求することはできなくなってしまいます。

期限の利益とは、設定された期限まで支払いを猶予してもらえる債務者の利益のことを言います。 たとえば、「100万円を10か月後までに返す」という約束をした場合、6か月後まで支払いを猶予してもらえるということが期限の利益です。

 

また、「100万円を毎月10万円ずつ返済する」という分割払いの約束をした場合も、毎月10万円ずつ支払いをすればよく、債権者は一括で100万円を返すよう求めることはできません。これも債務者にとっては支払いを猶予してもらえるため期限の利益となります。

 

多くの契約では、期限の利益について、次のような特約が付されています。

 

(期限の利益の喪失)

分割払いを認めるが、1回でも支払いを怠れば直ちに一括払いの義務を負う。

 

たとえば、100万円の10回払いが認められていた場合、毎回10万円ずつ返済していれば問題ありません。 しかし、1回でも返済を怠った場合は、残額を一括で支払わなければならなくなります。そして、毎回きちんと支払いをしていれば発生しなかった遅延損害金も発生します。

 

保証人の負担額は主債務者が支払いを滞らせた後に発生する遅延損害金によってどんどん膨らみます。 改正前は、分割払いの支払いを滞らせて期限の利益を喪失した場合に、膨大な遅延損害金が発生し、保証人がこの遅延損害金についても返済しなければならないというケースが問題となりました。 このようなケースは、保証人が、主債務者が期限の利益を喪失させているということを早期に知ることができれば、直ちに立替払いをして遅延損害金が発生しないように防御できます。

 

保証人の負担額が膨大とならないように、2年以内に通知するルールになったのです。

期限の利益が喪失された後は、すぐに支払いを済ませないと、遅延損害金が膨らんでしまいますから、保証人に早く知らせてあげよう、という趣旨となります。

主債務の履行状況に関する情報提供義務(債権者の義務)

 

債権者は、保証人が個人・法人であるかを問わず、保証人に履行状況に関する情報提供をしなければならない、というルールが新設されます(民法458の2)。このルールは、事業上の債務の保証だけでなく、すべての保証にあてはまります。

 

主債務の履行状況に関する情報提供義務(債権者の義務)

保証人にとって、主債務の履行状況(支払いが滞っていないか等)は重要な関心事です。しかし、従前は何ら規定がなく、主債務者のプライバシーとの関係で情報提供されないことがあったため改正されました。

 

債権者は、保証人から請求があったときは、主債務の元本、利息および違約金等に関して、次の情報を提供しなければなりません。債権者は主債務者の同意を得ずに保証人に対して情報提供できます。

 

保証人に対する情報提供

① 不履行の有無(きちんと支払いができているか否か) ② 残額 ③ 残額のうち支払期限が到来しているものはあるか、あればその金額

 

連帯保証人への請求が主債務者に影響しない

今回の改正では、債権者が連帯保証人に対して請求をしても、主たる債務の時効の完成は猶予されないことになりました(民法458条)。 そのため、そのまま主たる債務者に対して何も請求しなければ、主債務者は、時効が完成して返済の義務を免れます。

 

改正前は、債権者が連帯保証人に対して請求すれば、この効果は債権者にもおよびました。すなわち、主債務者にとっても時効が完成せずに猶予されました。

 しかし、現実には、主たる債務者と連帯保証人が見ず知らずの関係であることがあり、連帯保証に対して請求しても、そのことを主債務者がまったく関知していない事態がありました。

そこで、主債務者に対して、連帯保証人への時効の完成猶予の効果を及ぼすのは酷であるという配慮から改正されました。

 

債権者が連帯保証人に対して履行の請求をしても主債務者に影響を及ぼさないため、主債務者との関係では時効が完成することになります。このようなルールは、主債務者にとって有利なものです。

そこで、債権者としては、主債務者が行方不明になり、とりあえず連帯保証人に対する請求で時効の完成を止めたいというようなケースにそなえて、次のような条項を定めるのがよいとする見解も一部にはあります。

しかし、履行の請求が相対的効力しか有しないのが改正法ですので、下記の条項は無効と解されます。

 

記載例

(連帯保証人に対する履行の請求)

連帯保証人に対する履行の請求は、主債務者に対しても、その効力を生じるものとする。

 

 

自動車損害賠償保障法3条による賠償責任が認められた事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和43年(オ)第801号

【判決日付】      昭和44年1月31日

【判示事項】      自動車損害賠償保障法3条による賠償責任が認められた事例

【判決要旨】      判示のような事実関係のように、商会の運送部門を担当し、従属的関係にある者が事故を起した場合には、その商会を経営する者は、自動車損害賠償保障法三条にいう運行供与者にあたる。

【参照条文】      自動車損害賠償保障法

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事94号155頁

             判例時報553号45頁

 

 

自動車損害賠償保障法

(自動車損害賠償責任)

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

  上告代理人内田松太・同鹿島重夫の上告理由第一点について

 一件記録によれば、金栄洛が本件自動車を運転して光神商会の業務に従事中本件事故を惹き起した旨の事実のうち、本件事故が光神商会の業務に従事中惹起されたということは、上告人において、これを争っていることは明らかであるので、これらをすべて当事者間に争いがない旨を判示している原判決(その訂正、引用する第一審判決を含む。以下同じ。)は、所論のように違法であるが、原判決がその挙示の証拠のもとに適法に確定した事実によれば、右金が本件事故を光神商会の業務に従事中惹起したことを十分看取することができるから、所論の違法は原判決の結論に影響を及ぼすものではなく、所論は、結局、採用しがたい。

 同第二点について

 原判決が適法に確定したところによると、上告人は、光神商会の商号で、屑鉄回収販売を業とするものであって、右光神商会が使用する店舗、自動車、電話等の登記或は登録名義等は、いずれも、上告人の妻姜末奉伊名義になっていること、金栄洛は、独立して砂利の運搬業を営む目的で、昭和三七年一〇月三〇日自分の妻の叔父にあたる上告人から、当時右光神商会で使用中の右姜末奉伊所有名義の本件自動車を原判示の約定で買い受けてその引渡を受けたが、まだ運搬業の仕事がなかったため、

一、二回他から依頼を受けて運送した外は、毎日専属的に右光神商会の屑鉄運送の業務に従事してその運賃の一部につき前記売買残代金の一部と相殺しており、本件事故当時本件自動車の登録名義および自動車損害賠償責任保険の加入名義は、右光神商会において使用中の他の自動車と同様いずれも右姜末奉伊名義で、その車体には「光神商会」の名称が表示されていたというものであり、右によると、金は、本件事故当時右光神商会の運送部門を担当し、同商会の経営者である上告人に対し従属的関係にあるというべきで、したがって、上告人は、金の運転する本件自動車の運行について支配力を及ぼし、かつ、その運行によって利益を享受しており、自動車損害賠償保証法三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」に該当するというべく、これと同旨の原判決の結論は、正当である。

 原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の適法にした証拠の取捨・判断、事実の認定を非難するに帰し、採用しがたい。

 同第三点について

 原判決が適法に確定した事実関係のもとでは、松尾和信には過失相殺を適用するに足るほどの過失はないとした原判決の判断は相当である。

 原判決には、所論のような違法はない。

 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、松尾和信の慰藉料請求権の相続による承継の点についての裁判官色川幸太郎の反対意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

 裁判官色川幸太郎の反対意見は、次のとおりである。

 原判決は、本件事故により死亡した松尾和信の慰藉料請求権を被上告人両名において相続により取得した旨を判示しているが、原判決の確定した事実のもとでは、被上告人両名が右松尾和信の慰藉料請求権を相続するいわれはない(詳しくは、当裁判所大法廷判決・昭和三八年(オ)第一四〇八号、同四二年一一月一日民集二一巻九号二二四九頁における私の反対意見参照)から、この部分の被上告人両名の請求は失当として、排斥を免れず、この点の原判決は失当として破棄すべきである。

内部統制の有効性の評価等を引き受けた監査法人に債務不履行はないとされた事例

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成30年(ワ)第21246号

【判決日付】      令和2年6月1日

【判示事項】      内部統制の有効性の評価等を引き受けた監査法人に債務不履行はないとされた事例

【判決要旨】      当該事実関係の下では、原告会社および原告グループ会社の内部統制の有効性評価および原告の株式評価を行うことを内容とする契約上ないしこれに基づく受任業務の性質上、被告監査法人が、原告のある子会社名義のゆうちょ銀行の貯金口座の残高証明書または通帳の原本を直接確認する義務を負うものとは認められない。

【参照条文】      民法(平成29年法律第44号による改正前)415

【掲載誌】        金融・商事判例1604号42頁

【評釈論文】      銀行法務21 865号69頁

 

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

 

 

 

       主   文

 

 1 原告の請求を棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 被告は、原告に対し、4976万1600円及びこれに対する平成30年7月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

 本件は、複数の子会社を有する原告が、監査法人である被告に対して原告及びその複数の子会社の経理の調査確認等を委任するとの契約において、被告が子会社の金融機関口座の残高証明書又は通帳の原本を直接確認する義務を負い、かつ、これを怠っていたにもかかわらず、上記確認を実施した旨の誤った報告を平成26年9月1日にしたため、当時原告の従業員であった者による原告及び子会社等からの横領行為を原告が覚知することができず、その後も横領被害が続いたと主張して、被告に対し、債務不履行による損害賠償請求権に基づき、同日以降の横領被害額4976万1600円(平成28年1月31日までの横領被害総額1億5203万3000円から平成26年8月31日までの被害額1億0227万1400円を控除した額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年7月26日から支払済みまで平成29年法律第45号による改正前の商法514条に基づく商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実

 (1) 当事者

  ア 原告は、玩具、自動販売機の製造、販売及び輸出入等を目的とする株式会社である(甲1)。

 被告は、財務書類の監査又は証明及び財務に関する調査若しくは立案をする業務を目的とする監査法人である(甲2)。

  イ 原告は、平成26年6月30日の時点で、株式会社B(以下「B社」という。)、株式会社C、株式会社D(以下「D社」という。)、株式会社Eの親会社であった(争いがない。以下、上記子会社4社を併せて「原告グループ会社」という。)。

 原告は、平成28年3月頃、香港法人F(以下「F社」という。)の持分を有していた(甲13)。

  ウ 甲野太郎(以下「甲野」という。)は、平成26年頃、原告の経理課に所属していた従業員であって、平成23年から同26年にかけてB社の監査役の地位にあった者である。甲野は、原告及び原告グループ会社の経理を任され、平成26年頃、原告及び原告グループ会社の代表印(実印)及び銀行印を全て保管していた。(甲25(1ないし3頁))

 (2) 原告と被告の間の準委任契約

  ア 原告は、被告との間で、遅くとも平成26年6月に、原告を委任者、被告を受任者とする準委任契約を締結し(委任事務の具体的な内容に争いがある。以下、この契約を「本件契約」という。)、同年7月中旬から同年8月上旬にかけて、被告の会計士が原告から資料を入手し、検討するなどの方法で調査業務を行った。被告は、その調査結果として、「内部統制の有効性評価と改善点」と題する書面(以下「本件報告書」という。)及び企業評価算定書(以下「本件算定書」という。)を作成し、同年9月1日頃、原告にこれを交付した。(甲3、4、乙8、10の1、乙12)

 本件契約に係る契約書は作成されていない。また、同契約は、財務諸表を対象として、被告が監査意見を表明することを請け負う契約(いわゆる監査契約)ではない。(争いがない)

  イ 被告は、本件契約に係る委任事務の履行に当たり、ゆうちょ銀行のB社名義の貯金口座(以下「本件口座」という。)について、甲野が提出した通帳のコピーに表れた預金残高とB社の会計帳簿上の金額が合致しているかを照合するにとどめ、同口座の残高証明書又は通帳の原本を確認してB社の会計帳簿上の金額と合致しているか否かを照合する作業は行わなかった(争いがない)。

 (3) 本件報告書について

 本件報告書には、以下の趣旨の記載が存在する(甲3)。

  ア 内部統制の有効性評価の方法(2頁)

   (ア) 内部統制の有効性評価の方法は、特に販売業務管理、購買業務管理及びそれらに関連して財務関係の管理状況の確認を行った。これは、「ウォークスルー」という手法で実施する。

 ウォークスルーとは、売上及び購買(仕入)の主要取引について、各子会社において例えば、売上であれば注文(受注)から現預金として回収するまでの1つの取引を追いながら、内部統制手続を調査確認する手法である。すなわち、誤謬(≒間違い)や不正取引が起きにくい調査確認体制となっているかを確認する作業である。

   (イ) 預金の残高確認について、「ほぼグループ会社全件銀行口座にしまして、直接残高確認を実施いたしました。(原文引用)」

  イ (株)X全般について(13、14頁)

   (ア) 預金口座の管理

 今回の調査で、各社の取引先の金融機関に残高確認を実施したが、回収できなかったものが複数あった。その主な原因は、①代表者名が異なる、②住所が異なる、③届出印が異なる、④取引がない(支店違いで発送)となっている。預金口座について、届けている内容と現状の整理を実施することが必要と思う。

   (イ) 預金帳簿残高と金融機関残高の不一致

 平成26年6月30日時点の原告の預金帳簿残高について、金融機関に残高確認を実施したところ、一部不整合が生じていた。

 不整合の主な内容としては、①外貨預金の換算替えを月次で実施していないこと、②受取利息をタイムリーに処理していないこと、③会計処理が遅れて、あるいは漏れていることが挙げられる。

 このように、不整合は、銀行残高確認状の検証により判明することになる。年度末の決算処理の際は、必ず銀行残高との照合の手続をとることが必要である。

 特に、頻度の多い銀行預金口座は、遅れや漏れを防止するためにも、月次で帳簿残高と金融機関残高(通帳残高など)の照合をし、整合性の調査確認手続を構築することが望まれる。

 ただ、原告及び原告グループ会社は現金商売的な要素が大きく、キャッシュ管理がかなり細かく量が多いため、職務権限を明確にし、作業する人とそれを確認する人を分ける必要があるが、D社を除くグループ全体を俯瞰した時に、管理部のマンパワーが足りないと言える。

   (ウ) ファームバンキングシステムの権限設定

 原告管理部で利用しているファームバンキングシステムについて、データの登録権限と承認(実行)権限を同一のユーザーが所有しており、かつ、当該ユーザーは会計システム上での伝票起案も実施可能な状態となっている。これらの権限を同時に有する場合、当該権限を使用した不正が生じた場合に発見できない、若しくは発見が遅れるリスクが高い状態にあるといえる。

 これらの権限は明確に分離することが望ましいと考える。

 (4) 本件算定書について

 本件算定書には、以下の記載が存在する(甲4)。

  ア 本件算定書の目的(1頁)

 本件算定書は、原告の株式評価を行うことを目的としている。

  イ 評価の手続(2頁)

   (ア) 原告及び原告グループ会社の平成26年6月30日における合計残高試算表、売上債権仕入債務、銀行残高を「直接確認の手続きを行い(原文引用)」、主要勘定明細等の内容を検討した。

   (イ) 平成26年7月中旬から8月上旬にかけて、丙川夏彦会計士(以下「被告代表者」という。)以下4人の公認会計士が、原告から業務委託に必要と認められる資料を入手し、検討を行った。

   (ウ) 原告は、いわゆるホールディングカンパニーであり、原告グループ会社の管理会社である。

 原告グループ会社については、インカムアプローチが有効と考える。資産の評価については、若干の建物や土地等の不動産と原告グループ会社の株式等の評価が業務の中心となった。

  ウ 業務委託の前提及び責任の限定(3頁)

   (ア) 本件算定書の結論は、信頼性の保証や意見の表明とは関係がない。

   (イ) 入手した資料の正確性、完全性について、勘定明細等の入手した資料は正確かつ完全なものであると仮定している。

 (5) 甲野による横領の発覚

 平成28年1月頃、甲野が、原告及び原告グループ会社等から、数年間にわたり、金員を横領していたことが発覚した(甲25、26の4。以下、甲野による一連の横領行為を「本件横領」という。)。

 甲野は、平成30年1月19日頃、原告代理人に対し、平成28年1月31日までに1億5203万3000円を横領したこと、平成26年8月31日までにそのうち1億0227万1400円を横領したことを認め、その差額が4976万1600円になる旨の書面を提出した(甲11)。

 (6) 被告から原告に対する返金

 被告は、原告に対し、平成28年2月2日、本件契約の報酬金324万円(税込)を返金するとともに、原告から受任した本件契約外の会社に関する企業評価等の委任契約に係る報酬金(税込)及び実費の合計額220万2900円を返金した(総合計544万2900円。甲14、乙10の1、2)。

2 争点

 (1) 被告が原告に対し、本件契約の債務不履行責任を負うか否か

  ア 被告が、本件契約に基づき、本件口座の残高証明書又は通帳の原本を直接確認する義務を負うか否か

  イ 被告が、原告に対し、本件報告書及び本件算定書において、金融機関口座の預金残高の確認について誤った報告をしたか否か

 (2) 原告に生じた損害の有無及びその数額

 (3) 過失相殺の可否

 

加持祈祷という宗教行為によつて病気治療行為をなし被害者を死に致した者の刑事責任―憲法第二〇条一項の趣旨

 

 

              傷害致死被告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和36年(あ)第485号

【判決日付】      昭和38年5月15日

【判示事項】      加持祈祷という宗教行為によつて病気治療行為をなし被害者を死に致した者の刑事責任―憲法第二〇条一項の趣旨

【参照条文】      憲法20

             憲法21

             刑法205

             刑法35

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集17巻4号302頁

 

 

憲法

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

 

刑法

(正当行為)

第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

 

(傷害致死)

第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 弁護人小林康寛の上告趣意第一、第三および第五について。

 所論は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張てあつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、所論は、原裁判所は予断偏見を抱いて証拠調をし、重大な事実誤認をしていると主張するが、記録を調べても、原裁判所が論旨のように予断偏見を抱いて証拠調をし、事実の認定をしたと認むべき証跡は見出だし得ず、所論はひつきよう原裁判所の裁量に属する証拠の取捨、判断および事実の認定を非難するに帰する。また、上告趣意第五中に、司法警察員作成の昭和三三年一〇月二五日付検証調書の内容である検証は、宗教的所作を、宗教を伴わないで再現しようとしたものであつて、宗教に対する冒涜であるから、かかる検証調書は、証拠能力を有しない旨の主張があるが、捜査の必要上、宗教行為としてでなく、宗教的行事の外形を再現したからといつて、その一事をもつてそれが宗教に対する冒涜であり、その状況を記載した検証調書が証拠能力を有しないものであるということはできない。のみならず、右調書を証拠に供することについては、被告人側の同意がなされていることが記録上―記録三五五丁―明らかであり、これを不同意の書証であるとの所論は誤りである。)

 同第二、第四および第六について。

 所論中憲法違反の主張につき考えるに、憲法二〇条一項は信教の自由を何人に対してもこれを保障することを、同二項は何人も宗教上の行為、祝典、儀式または行事に参加することを強制されないことを規定しており、信教の自由が基本的人権の一として極めて重要なものであることはいうまでもない。しかし、およそ基本的人権は、国民はこれを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うべきことは憲法一二条の定めるところであり、また同一三条は、基本的人権は、公共の福祉に反しない限り立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする旨を定めており、これら憲法の規定は、決して所論のような教訓的規定というべきものではなく、従つて、信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。

 これを本件についてみるに、第一審判決およびこれを是認した原判決の認定したところによれば、被告人の本件行為は、被害者Aの精神異常平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人の右加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによつて右被害者の生命を奪うに至つた暴行の程度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないというのである。しからば、被告人の本件行為は、所論のように一種の宗教行為としてなされたものであつたとしても、それが前記各判決の認定したような他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害者を死に致したものである以上、被告人の右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであつて、憲法二〇条一項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはなく、これを刑法二〇五条に該当するものとして処罰したことは、何ら憲法の右条項に反するものではない。これと同趣旨に出た原判決の判断は正当であつて、所論違憲の主張は採るを得ない。

 その余の論旨は、単なる法令違反、事実誤認の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、被告人の本件行為が、刑法三五条の正当な業務行為と認め難いとした原判決の判示は、その確定した事実関係の下においては、当裁判所もこれを正当と認める。)

 記録を調べても、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

 よつて、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

  昭和三八年五月一五日

     最高裁判所大法廷

 

 

免職された市立学校図書館事務員のした地位保全等の仮処分申請が、行政事件訴訟法44条により許されないとされた事例

 

 

              地位保全等仮処分申請控訴事件

【事件番号】      福岡高等裁判所判決/昭和51年(ネ)第294号

【判決日付】      昭和55年3月28日

【判示事項】     1、免職された市立学校図書館事務員のした地位保全等の仮処分申請が、行政事件訴訟法44条により許されないとされた事例

             2、地方公共団体は、私法上の雇用契約を締結することができるか

【判決要旨】      1、省略

             2、地方公共団体は、私法上の雇用契約を締結することができない。

【掲載誌】        行政事件裁判例集31巻3号802頁

             判例時報974号130頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト88号86頁

 

 

行政事件訴訟法

(仮処分の排除)

第四十四条 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法(平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。

 

 

 

       主   文

 

一 本件控訴を棄却する。

二 控訴費用は控訴人らの負担とする。

 

       事   実

 

一 控訴人らは、「原判決を取り消す。控訴人らがいずれも被控訴人の職員たる地位を有することを仮に定める。被控訴人は控訴人らに対し昭和四七年一月一一日以降毎月二○日限り各金六万円を仮に支払え。」との判決を求め、被控訴人は主文と同旨の判決を求めた。

二 当事者の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほかは原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(控訴人ら)

(一) 被控訴人の本案前の抗弁について

  控訴人ら三名は、常勤の学校図書館事務員として期限の定めなく採用されたものである。すなわち、控訴人ら三名は、別紙(一)記載の昭和三八年七月一七日付確認書(以下七月一七日付確認書という)を前提に、年令故に採用形式を嘱託ということで、その採用条件を明らかにする別紙(二)記載の昭和三八年一○月四日付確認書(以下一○月四日付確認書という)が結ばれて採用されたものであり、従つてこの一○月四日付確認書は控訴人らと被控訴人との間の契約ということになり、その合意内容を明確にした右確認書どおりの効果が発生するのである。そして、一○月四日付確認書による合意は私法関係、すなわち私法上の合意であり、従つて控訴人らと被控訴人との間の関係も私法関係にあるというべきであり、かかる合意は必要な物資の購入契約と同様に地方自治体がその職責を果していくうえで適法に締結することができるものである。よつて、被控訴人の本案前の抗弁は理由がない。

 (二) 本案について

  (1) 右のとおり控訴人らと被控訴人との関係は私法関係にあるのであるから、引用にかかる控訴人の申請の理由をその意味におきかえて本件仮処分の申請に及ぶ。

  (2) 被控訴人が控訴人らに「非常勤嘱託」であるという根拠は、辞令と退職金の取扱いが他の図書司書と異つていたというだけであり、控訴人らの主張は控訴人らと一般職との間にはこのような違いはあつても実質的には一般職と同じであるから、一般職と同じ取扱いをせよというのである。控訴人らは一般職と全く同じ取扱いを受けていたと主張しているのではない。辞令と退職金については一般職と取扱いの差があつた。しかしながら北九州市のいわゆる「非常勤嘱託」の人達との間にも明らかに取扱いの差があり、嘱託になるまでの経過、前記各確認書、業務の性質、労働条件等において明確な差があつたのである。かように控訴人らと一般職との間にも取扱いの差はあるが、明らかに非常勤嘱託とは異つているから、実質的には一般職であり、少くとも一般職と同じように取扱うべきであるというのである。そして一○月四日付確認書の第二項にいう「なお、嘱託期間については、一般職員の例による」の意は、右確認書の作成された経過及びこの文書からすれば、北九州市の一般的職員すなわち一般職によるということであり、定年はないということである。このことは、『和三八年一二月二一日に、被控訴人と市職労との間において結ばれた「臨時的任用職員の取扱」に関する確認書において「(イ)アの年令を超え五九歳までの者は、別途選考を行ない適格者は一般嘱託の例により期間を付して嘱託とする。ただし、期間満了の場合は、その時点でその後の措置について組合と協議する。」旨の記載があるのとの相違からみても明らかである。

(被控訴人)

(一) 本案前の抗弁として

  控訴人らの本件仮処分の請求は、その内容からして行政事件訴訟法第四四条の趣旨に鑑み許されず、違法として却下さるべきである。

  まず、公務員の任用は公法上の行為であり、期限付公務員の地位は再任用されない限り任用期間の満了によつて当然終了するものであるところ、控訴人らの求める本件仮処分は行政庁に代つて再任用という行政処分を仮にすべきことを求めるものに外ならず、かかる行政庁に代つて行政処分を行い、新たな法律関係を形成することとなるような仮処分は、行政事件訴訟法第四四条に鑑み許されないというべきである。

  また、仮に、控訴人ら主張のように、控訴人らの公務員としての任用が任期の定めのないものであり、控訴人らの任期満了による公務員としての地位の喪失が解雇に相当するとの立場に立つても、この解雇は免職という行政処分で右法条にいう行政庁の処分に当たる行為であり、本件仮処分請求の本案をなすべき訴訟が期限付任用行為の付款たる期限部分の不存在ないし無効を前提として現在の法律関係たる地位の確認等を求める公法上の当事者訴訟であるとしても、かかる行為を阻害する仮処分は右法条の趣旨に鑑み許されないものというべきである。

  この点に関する控訴人らの反論は争う、一○月四日付確認書はその文面からも明らかなとおり控訴人らは合意の当事者としての地位を有せず、控訴人らと被控訴人との間の合意ということはできない。またかかる確認書の内容が直ちに労働契約の内容となるものとはいえず、ましてや任用による職員の勤務条件を規制するものということもできない。

(二) 本案についての控訴人らの主張について

  控訴人らと被控訴人の関係が私法関係であることを前提とする控訴人らの主張については、その前提は前記のとおりであり、その余は争う。

(証拠関係)(省略)

 

       理   由

 

一 まず、被控訴人の本案前の抗弁について判断する。

(一) 控訴人らの本件仮処分の申請は、

  まず、第一に「控訴人らは被控訴人に学校図書館事務員として任用されていたが、被控訴人から昭和四六年一二月二八日控訴人らを同四七年一月一○日限り免職する旨の意思表示を受けた。しかし、この免職の意思表示は無効であるから、控訴人らは未だその地位にある。そこで控訴人らが被控訴人の職員たる地位を有することを仮に認める旨の仮処分を求める」というのであるから、結局右免職の意思表示の効力を一時停止することを求めることに帰着する。ところで行政事件訴訟法第四四条は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事訴訟法に規定する仮処分をすることはできない。」と規定し、右免職の意思表示は右にいう行政庁の処分に当たると解されるから、かかる内容の仮処分は右法条からして許されないものといわなければならない。

  また、一面、控訴人らが被控訴人の職員たる地位を仮に定めることは、裁判所が行政行為を新たにすることを意味し、右法条はかかる法律状態の形成をなす仮処分も排除する趣旨と解されるから、この点からしてもかかる内容の仮処分は許されないといわなければならない。

(二) 第二に、控訴人らは、控訴人らと被控訴人との間が私法関係で嫡るとし、それを前提において右第一の理由をもつて控訴人らが被控訴人の職員たる地位を有することを仮に定める旨の仮処分を求める、之いうのである。しかし一般に地方公共団体が私法上の雇傭契約を締結することはできない、つまりそれは禁止されていると解され、このことは明文の規定はないが、その旨を規定する国家公務員法第二条第六項の趣旨は地方公務員法にも妥当すると解されることからしても明らかである。そして、一○月四日付確認書の性格が如何なるものであるかは別として、たとえそれが私法上の合意だとしてもそのことから直ちに控訴人らの採用が私法上のものであるとは解されないし、その他右禁止に反して控訴人らと被控訴人との間が私法上の雇傭契約の関係にあつたことを認め得る疏明もないから、そのことを前提とする本件仮処分の申請が適法だということにはならない。

(三) 第三に、控訴人らの金員支払を求める仮処分の申請であるが、この部分は控訴人らが被控訴人の職員たる地位を有することを仮に定められることが前提であるところ、その前提の認められないことが前説示のとおりであり、しかも前記免職処分が無効であることを前提とするものであるから、このような仮処分はその実質において給与請求権の消滅という免職処分の効果の一部を停止することになるから、行政事件訴訟法第四四条に抵触し許されないものといわなけれ ならない。以上のとおりで、本件仮処分の申請は本案の審理に進むまでもなく、不適法として却下を免れない。

二 以上のとおりで、控訴人らの本件仮処分申請は理由がなく失当としてこれを却下すべきであり、理由は異るがこれを却下した原判決は相当であるから本件控訴を棄却することにし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

第4章 法定利率に関する見直し

法定利率に関する見直し

-重要な実質改正事項-

法定利率の適用場面

① 利息を支払う合意はあるが約定利率の定めがない場合の利息の算定

例) 利息付き消費貸借

民事:年5%(旧法§ 404)

※制定当時の市中の金利を前提としたもの

商事:年6%(商法§ 514)

※民法の法定利率が年5%であることを前提としたもの

※商行為(営業資金の借入れ等)によって生じた債務に適用される。

 

昨今では、市中金利を大きく上回る状態が続いている。(「基準割引率および基準貸付利率」(旧「公定歩合」)の推移)

法定利率は、明治期における民法・商法の制定以来、見直しがされていない。

※「基準貸付利率」は、日本銀行が金融機関に対して直接貸付けをする際の基準金利である。

③ 逸失利益などの損害賠償の額を定める際の中間利息控除(判例)

※中間利息控除とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除することをいう。

 

② 約定利率の定めがない金銭債務の遅延損害金の算定

例) 交通事故の損害賠償などの遅延損害金

法定利率に関する見直し

問題の所在

法定利率が市中金利を大きく上回る状態が続いている。

→ 利息や遅延損害金の額が著しく多額となる一方で、中間利息の控除の場面では不当に賠償額が抑えられるなど、当事者の公平を害する

法定利率を固定のものとすると、将来、市中金利と大きく乖離する事態が生ずるおそれがある。

→ 合理的な変動の仕組みをあらかじめ法律で定めておき、予測可能性を高めるのが適切。

市中金利の短期的・微細な変動に連動して法定利率が変わると、社会的コストが非常に大きい。

現代社会において、商行為によって生じた債務を特別扱いする合理的理由に乏しい。

改正法の内容

法定利率の引下げ 【新§404条2項】

・施行時に年3%へ

緩やかな変動制の導入 【新§404条3項~5項】

・法定利率を市中の金利の変動に合わせて緩やかに上下させる変動制の導入

・3年ごとに法定利率を見直し。 貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動時と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率が変動(法定利率は整数になる。)

商事法定利率の廃止 【旧法商法§514の削除】

・商行為によって生じた債務についても、民法に規定する法定利率を適用

法定利率に関する見直し

【変動のシミュレーション】

3年を「1期」として、「1期」ごとに変動

改正法の内容(変動制の具体的な内容)

日本銀行が公表している貸出約定平均金利の過去5年間における短期貸付けの平均金利の合計を60で除して計算した割合(0.1%未満は切捨て)を「基準割合」とする。

※過去5年間=各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月

(例えば、平成35年4月1日が期の初日である場合には、平成29年1月~平成33年12月の各月)

直近変動期の基準割合と当期の基準割合との差(1%未満は切捨て)に相当する割合を、直近変動期における法定利率に加算し、または減算する。

※1つの債権については1つの法定利率(例えば、交通事故の損害賠償の遅延損害金は事故時(初めて遅滞の責任を負った時、利息債権については最初に利息が発生した時)の法定利率が適用され、事後的に変動しない)。

交通事故などの不法行為等による損害賠償は、将来の逸失利益(将来取得するはずであった利益)を含めて事故時から請求が可能

「中間利息控除」とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除すること

この控除の割合は法定利率(年5%)による(最判平成17年6月14日)

毎年200万円の逸失利益が将来にわたり10年間生ずる場合。

中間利息控除

年5%で運用したとして現在価値に割り戻す

事故

合計2000万円 中間利息控除 控除後の金額 約1540万円

検討の経過

中間試案では、中間利息控除について旧法維持(年5%の固定制)の規定を新設する案

パブコメでは多くの反対意見

・遅延損害金の算定などに用いられる法定利率を引き下げつつ、中間利息控除に使用する利率のみを旧法維持とすると、被害者の請求可能な金額が単純に減少し、関係者間の公平に欠ける。

改正法の内容

中間利息控除にも法定利率(変動制)を適用

【新§722条1項】

※ 事故時(損害賠償請求権が生じた時点)の法定利率を適用することも明確化

 

【参照条文】

(法定利率)

第404条

1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年3パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、または減算した割合とする。

5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

 

養子縁組の意思が存在し縁組が有効に成立したとされた事例

 

 

              養子縁組無効確認請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和45年(オ)第975号

【判決日付】      昭和46年10月22日

【判示事項】      養子縁組の意思が存在し縁組が有効に成立したとされた事例

【判決要旨】      甲男が乙女を養子とする養子縁組の届出をした場合において、乙は、甲の姪で、永年甲方に同居してその家事や家業を手伝い、家計をもとりしきつていた者であり、甲は、すでに高令に達し、病を得て仕事もやめたのち、乙に世話になつたことへの謝意をもこめて、乙を養子とすることにより、自己の財産を相続させあわせて死後の供養を託する意思をもつて、右届出をしたものであつて、甲乙間には過去に情交関係があつたにせよ、それは偶発的に生じたものにすぎず、事実上の夫婦然たる生活関係を形成したものではなかつたなど判示の事実関係があるときは、甲乙間に養子縁組の意思が存在し、縁組は有効に成立したものというべきである。

【参照条文】      民法802

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集25巻7号985頁

 

 

民法

(縁組の無効)

第八百二条 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百九十九条において準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。

 

古文単語の語呂合わせについて著作権侵害が認められなかった事例

 

 

損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成11年(ネ)第1150号

【判決日付】      平成11年9月30日

【判示事項】      古文単語の記憶を容易にするための語呂合わせについて著作権侵害が認められなかった事例

【参照条文】      著作権法

             著作権法10

             著作権法19

             著作権法20

             著作権法21

             著作権法27

【掲載誌】        判例タイムズ1018号259頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト157号18頁

 

 

著作権法

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

二 著作者 著作物を創作する者をいう。

三 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

四 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。

六 レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。

七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。

七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。

九 放送事業者 放送を業として行う者をいう。

九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。

九の三 有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。

九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。

九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。

イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。

ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

九の六 特定入力型自動公衆送信 放送を受信して同時に、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することにより行う自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。)をいう。

九の七 放送同時配信等 放送番組又は有線放送番組の自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。以下この号において同じ。)のうち、次のイからハまでに掲げる要件を備えるもの(著作権者、出版権者若しくは著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の利益を不当に害するおそれがあるもの又は広く国民が容易に視聴することが困難なものとして文化庁長官が総務大臣と協議して定めるもの及び特定入力型自動公衆送信を除く。)をいう。

イ 放送番組の放送又は有線放送番組の有線放送が行われた日から一週間以内(当該放送番組又は有線放送番組が同一の名称の下に一定の間隔で連続して放送され、又は有線放送されるものであつてその間隔が一週間を超えるものである場合には、一月以内でその間隔に応じて文化庁長官が定める期間内)に行われるもの(当該放送又は有線放送が行われるより前に行われるものを除く。)であること。

ロ 放送番組又は有線放送番組の内容を変更しないで行われるもの(著作権者等から当該自動公衆送信に係る許諾が得られていない部分を表示しないことその他のやむを得ない事情により変更されたものを除く。)であること。

ハ 当該自動公衆送信を受信して行う放送番組又は有線放送番組のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定めるものが講じられているものであること。

九の八 放送同時配信等事業者 人的関係又は資本関係において文化庁長官が定める密接な関係(以下単に「密接な関係」という。)を有する放送事業者又は有線放送事業者から放送番組又は有線放送番組の供給を受けて放送同時配信等を業として行う事業者をいう。

十 映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。

十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。

十の三 データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。

十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

十二 共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。

十三 録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。

十四 録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。

十五 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。

イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。

ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。

十六 上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。

十七 上映 著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。

十八 口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。

十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。

二十 技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号及び第二十二号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号、第百十三条第七項並びに第百二十条の二第一号及び第四号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

二十一 技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第六項において同じ。)を制限する手段(著作権者等の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

二十二 権利管理情報 第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項から第四項までの権利(以下この号において「著作権等」という。)に関する情報であつて、イからハまでのいずれかに該当するもののうち、電磁的方法により著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録され、又は送信されるもの(著作物等の利用状況の把握、著作物等の利用の許諾に係る事務処理その他の著作権等の管理(電子計算機によるものに限る。)に用いられていないものを除く。)をいう。

イ 著作物等、著作権等を有する者その他政令で定める事項を特定する情報

ロ 著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報

ハ 他の情報と照合することによりイ又はロに掲げる事項を特定することができることとなる情報

二十三 著作権等管理事業者 著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第三項に規定する著作権等管理事業者をいう。

二十四 国内 この法律の施行地をいう。

二十五 国外 この法律の施行地外の地域をいう。

2 この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。

3 この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。

4 この法律にいう「写真の著作物」には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含むものとする。

5 この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。

6 この法律にいう「法人」には、法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含むものとする。

7 この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。

8 この法律にいう「貸与」には、いずれの名義又は方法をもつてするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含むものとする。

9 この法律において、第一項第七号の二、第八号、第九号の二、第九号の四、第九号の五、第九号の七若しくは第十三号から第十九号まで又は前二項に掲げる用語については、それぞれこれらを動詞の語幹として用いる場合を含むものとする。

 

(著作物の例示)

第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

二 音楽の著作物

三 舞踊又は無言劇の著作物

四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

五 建築の著作物

六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

七 映画の著作物

八 写真の著作物

九 プログラムの著作物

2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。

一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。

二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。

三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

 

(氏名表示権)

第十九条 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。

2 著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。

3 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。

4 第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。

一 行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法又は情報公開条例の規定により行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示するとき。

二 行政機関情報公開法第六条第二項の規定、独立行政法人等情報公開法第六条第二項の規定又は情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第六条第二項の規定に相当するものにより行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物の著作者名の表示を省略することとなるとき。

三 公文書管理法第十六条第一項の規定又は公文書管理条例の規定(同項の規定に相当する規定に限る。)により国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示するとき。

(同一性保持権)

第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。

一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの

二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変

三 特定の電子計算機においては実行し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において実行し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に実行し得るようにするために必要な改変

四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変

第三款 著作権に含まれる権利の種類

(複製権)

第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

 

(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)

第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

 

 

 

       主   文

 

 一1 一審被告の控訴に基づき、原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。

 2 右取消しに係る部分の一審原告の請求を棄却する。

 二1 一審原告の控訴を棄却する。

 2 一審原告の当審における新請求を棄却する。

 三 訴訟費用は、第一、二審を通じ、一審原告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第一 控訴の趣旨

 一 一審原告の控訴の趣旨

  1 原判決の一審原告敗訴部分中、金一〇万五七二〇円及びこれに対する平成一〇年九月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払請求を棄却した部分を取り消す。

  2 一審被告は、一審原告に対し、右1項記載の金員を支払え。

  3 (当審における新請求)一審被告は、一審原告に対し、金一二万四二八〇円及びこれに対する平成一〇年九月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

  4 訴訟費用は第一、二審とも一審被告の負担とする。

  5 第2、第3項につき、仮執行宣言

 二 一審被告の控訴の趣旨

  1 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。

  2 右取消しに係る部分の一審原告の請求を棄却する。

  3 訴訟費用は第一、二審とも一審原告の負担とする。

第二 事案の要点及び訴訟の経緯等

 一 本件訴訟は、一審原告が、自ら執筆した書籍(原告書籍)に掲載した古文単語と現代訳語とを結合して一連の意味のある語句や文章にした語呂合わせ(原判決別紙対照表1ないし42の原告語呂合わせ)が一つ一つ創作性を有する著作物であり、一審被告が執筆した書籍(被告書籍)に掲載された語呂合わせ(原判決別紙対照表1ないし42の被告語呂合わせ)は、それぞれ右原告語呂合わせと実質的に同一又は類似であり、原告語呂合わせに依拠して作成されたものであるから、一審原告の有する著作権(複製権、翻案権)及び著作者人格権)を侵害するとして、一審被告に対し、財産権損害及び慰藉料を請求したものである。

 これに対し、一審被告は、被告語呂合わせはいずれも独自に作成したものであり、原告書籍を参考にしていないし、依拠したこともないと争っている。

 二 原判決は、原告語呂合わせのうち、1、13、27につき著作物性を認め、被告語呂合わせ1、13、27が右原告語呂合わせと実質的に同一であり、これらに依拠して作成されたものと推認し、一審原告の有する複製権及び氏名表示権を侵害しているものと認定した上、一審被告に対し、財産的損害五万円、慰謝料五万円の支払を命じ、その余の一審原告の請求を棄却した。

 三 当事者双方が控訴し、当審において、一審被告は、原判決後調査したところ、古語の語呂合わせに関する書籍として、一審原告の執筆に係る最初に発行された原告書籍一より一年以上前の平成元年一月発行の「ネコタン365」(五十嵐一郎著・株式会社学習研究社発行。乙第一〇号証)が存在し、同書籍には、原判決が著作物性を認めた原告語呂合わせ13及び27に類似した語呂合わせが既に掲載されていたことが判明したが、「ネコタン365」に掲載されている語呂合わせと類似したものは、その後に発行された原告書籍、被告書籍及び他の同種書籍に掲載されている語呂合わせ中にもそれぞれ一〇%前後見られるところであり、このことは、古語の語呂合わせ作成においてはその性質上他の類書を参考にすることがなくても偶然の一致が生じ得ることを裏付けるものであると主張した。

 四 原判決が著作物性を認定した原告語呂合わせ1、13、27並びにこれらに対応する「ネコタン365」の語呂合わせ及び被告語呂合わせは、次のとおりである。

  1 古語「あさまし」(原告書籍一は「めざまし」とも関連付けている。)

   ・ネコタン365 「あさましい・・・手を食う猫に驚きあきれる。」

   ・原告書籍一   「朝めざましに驚くばかり。」

   ・被告書籍一   「朝目覚ましに驚き呆れる。」

  13 古語「あやし」

   ・ネコタン365 「あ、やしの木だ!でもちょっとみすぼらしい。」   ・原告書籍二   「アッ、ヤシの実だ。いや、シイタケだ。」

   ・被告書籍一   「あっやしの実だ、いや、しいたけだ、そーまつぼっくりだ、不思議だな。」

  27 古語「ひがひがし」

   ・ネコタン365 「ひが、ひがしからのぼるのは、ひねくれているわけじゃない。」

   ・原告書籍一   「『日が東に沈む』というひねくれた奴」

    ・被告書籍一    「日が東に沈むとはひねくれている。」

 五 当審において、当事者双方は、「ネコタン365」の存在を知らなかったし、参考にしたことはない旨主張し、それぞれの語呂合わせにつき独自に作成した経緯等を具体的に主張した。そして、一審原告は、原告語呂合わせのうち、前記13、27のほか、3、11、14、17、18、22、24、26、28、30、31、33ないし41(合計二二個)に関する著作権及び著作者人格権の主張を撤回した上、損害賠償請求額を減縮し、著作権等の侵害を主張する原告語呂合わせを1、2、4ないし10、12、15、16、19ないし21、23、25、29、32及び42(合計二〇個)に限定した。

 

 

特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損において行為者が右事実を真実と信ずるにつき相当の理由がある場合の不法行為の成否

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成6年(オ)第978号

【判決日付】      平成9年9月9日

【判示事項】      一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損において行為者が右事実を真実と信ずるにつき相当の理由がある場合の不法行為の成否

             二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事における事実の摘示と意見ないし論評の表明との区別

             三 特定の者について新聞報道等により犯罪の嫌疑の存在が広く知れ渡っていたこととその者が当該犯罪を行ったと公表した者において右のように信ずるについての相当の理由

【判決要旨】      一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意又は過失は否定される。

             二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事が、意見ないし論評の表明に当たるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、右記事は、右事項についての事実の摘示を含むものというべきである。

             三 特定の者が犯罪を犯したとの嫌疑が新聞等により繰り返し報道されていたため社会的に広く知れ渡っていたとしても、このことから、直ちに、右嫌疑に係る犯罪の事実が実際に存在したと公表した者において、右事実を真実であると信ずるにつき相当の理由があったということはできない。

【参照条文】      民法709

             民法710

             刑法230の2-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集51巻8号3804頁

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(財産以外の損害の賠償)

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

 

刑法

(公共の利害に関する場合の特例)

第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。