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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

課税処分と信義則の適用

 

 

              相続税更正処分等取消、所得税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和60年(行ツ)第125号

【判決日付】      昭和62年10月30日

【判示事項】      課税処分と信義則の適用

【判決要旨】      租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならず、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示し、納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものかどうか、納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責に帰すべき事由がないかどうか、という点の考慮が不可欠である。

【参照条文】      国税通則法24

             所得税法

             民法1-2

【掲載誌】        訟務月報34巻4号853頁

 

 

国税通則法

(更正)

第二十四条 税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。

 

 

所得税法

(趣旨)

第一条      この法律は、所得税について、納税義務者、課税所得の範囲、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続、源泉徴収に関する事項並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。

 

民法

(基本原則)

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

 

 

       主   文

 

 原判決中上告人敗訴の部分を破棄する。

 前項の部分につき本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

 

       理   由

 

 上告代理人藤井俊彦、同松村利教、同宮崎直見、同岡光民雄、同田邉安夫、同中本尚、同西修一郎、同大城正春、同岩田登、同戸田信次、同坂田嘉一の上告理由について

一 原審が確定したところによれば、(1)被上告人の実兄であり、かつ養父であった式貞道(昭和四七年九月二一日死亡)は、戦前から酒類販売業の免許を受け、式商店の商号で酒類販売業を営んでいた、(2)被上告人は、昭和二五年四月門司税務署を退職し、式商店の営業に従事するようになり、昭和二九年一一月ころから事実上被上告人が中心となって同店の業務を運営するようになった、(3)貞道は青色申告の承認を受けており、式商店の営業による事業所得については、昭和二九年分から同四五年分まで貞道名義により青色申告がされてきたが、昭和四七年三月、同四六年分につき、被上告人が青色申告の承認を受けることなく自己の名義で青色申告書による確定申告をしたところ、上告人は、被上告人につき青色申告の承認があるかどうかの確認を怠り、右申告書を受理し、さらに昭和四七年分から同五〇年分までの所得税についても、被上告人に青色申告用紙を送付し、被上告人の青色申告書による確定申告を受理するとともにその申告に係る所得税額を収納してきた、(4)貞道名義で青色申告を継続してきた間、青色申告の承認を取り消されるようなことはなく、昭和四六年以降も式商店の帳簿書類の整備保存態勢に変化はなかった、(5)被上告人は、昭和五一年三月、上告人から青色申告の承認申請がなかったことを指摘されるや直ちにその申請をし、同年分以降についてその承認を受けた、というものである。

二 原審は、青色申告制度が課税所得額の基礎資料となる帳簿書類を一定の形式に従って保存整備させ、その内容に隠蔽、過誤などの不実記載がないことを担保させることによって、納税者の自主的から公正な申告による課税の実現を確保しようとする制度であることから考えると、右のような制度の趣旨を潜脱しない限度においては、青色申告書の提出について税務署長の承認を受けていなくても、青色申告としての効力を認めてもよい例外的な場合があるとしたうえ、右の事実関係のもとにおいては、被上告人が青色申告書を提出することについてその承認申請をしなかったとしても、必ずしも青色申告制度の趣旨に背馳するとは考えられず、上告人が青色申告書による確定申告を受理し、これにつきその承認があるかどうかの確認を怠り、単に被上告人がその承認申請をしていなかったことだけで青色申告の効力を否認するのは信義則に違反し許されないとし、被上告人の昭和四八年分及び同四九年分の各所得税の確定申告について、これを白色申告とみなして行った本件各更正処分は違法である、と判断した。

 論旨は、要するに、原審の右判断は、法令の解釈適用を誤り、審理不尽、理由不備の違法を犯したものである、というのである。

三 所得税法第二編第五章第三節に規定する青色申告の制度は、納税者が自ら所得金額及び税額を計算し自主的に申告して納税する申告納税制度のもとにおいて、適正課税を実現するために不可欠な帳簿の正確な記帳を推進する目的で設けられたものであって、同法一四三条所定の所得を生ずべき業務を行う納税者で、適式に帳簿書類を備え付けてこれに取引を忠実に記載し、かつ、これを保存する者について、当該納税者の申請に基づき、その者が特別の申告書(青色申告書)により申告することを税務署長が承認するものとし、その承認を受けた年分以後青色申告書を提出した納税者に対しては、推計課税を認めないなどの課税手続上の特典及び事業専従者給与や各種引当金・準備金の必要経費算入、純損失の繰越控除など所得ないし税額計算上の種々の特典を与えるものである。青色申告の承認は、所得税法一四四条の規定に基づき所定の申請書を提出した居住者(同法二条三号)に与えられる(同法一四六条、一四七条)。そして、青色申告の承認の効力は、その承認を受けた居住者が一定の業務を継続する限りにおいて存続する一身専属的なものとされている(同法一五一条二項)。

 以上のような青色申告の制度をみれば、青色申告の承認は、課税手続上及び実体上種々の特典(租税優遇措置)を伴う特別の青色申告書により申告することのできる法的地位ないし資格を納税者に付与する設権的処分の性質を有することが明らかである。そのうえ、所得税法は、税務署長が青色申告の承認申請を却下するについては申請者につき一定の事実がある場合に限られるものとし(一四五条)、かつ、みなし承認の規定を設け(一四七条)、同法所定の要件を具備する納税者が青色申告の承認申請書を提出するならば、遅滞なく青色申告の承認を受けられる仕組みを設けている。このような制度のもとにおいては、たとえ納税者が青色申告の承認を受けていた被相続人の営む事業にその生前から従事し、右事業を継承した場合であっても、青色申告の承認申請書を提出せず、税務署長の承認を受けていないときは、納税者が青色申告書を提出したからといって、その申告に青色申告としての効力を認める余地はないものといわなければならない。これと異なり、青色申告書の提出について税務署長の承認を受けていなくても青色申告としての効力を認めてもよい例外的な場合がある、とした原審の判断は、青色申告の制度に関する法令の解釈適用を誤ったものというほかない。

 原審の確定した事実関係によれば、被上告人は、その昭和四八年分及び同四九年分の各所得税について青色申告の承認を受けていないというのであるから、被上告人の右両年分の所得税の確定申告については、青色申告としての効力を認める余地はなく、これを白色申告として取り扱うべきものである。そのうえで、被上告人の確定申告につき、上告人が法令の規定どおりに白色申告として所得金額及び所得税額を計算し、更正処分をすることを違法とする特別の事情があるかどうかを検討すべきものである。

四 租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。そして、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、のちに右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか、また、納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければならない。

 これを本件についてみるに、納税申告は、納税者が所轄税務署長に納税申告書を提出することによって完了する行為であり(国税通則法一七条ないし二二条参照)、税務署長による申告書の受理及び申告税額の収納は、当該申告書の申告内容を是認することを何ら意味するものではない(同法二四条参照)。また、納税者が青色申告書により納税申告したからといって、これをもって青色申告の承認申請をしたものと解しうるものでないことはいうまでもなく、税務署長が納税者の青色申告書による確定申告につきその承認があるかどうかの確認を怠り、翌年分以降青色申告の用紙を当該納税者に送付したとしても、それをもって当該納税者が税務署長により青色申告書の提出を承認されたものと受け取りうべきものでないことも明らかである。そうすると、原審の確定した前記事実関係をもってしては、本件更正処分が上告人の被上告人に対して与えた公的見解の表示に反する処分であるということはできないものというべく、本件更正処分について信義則の法理の適用を考える余地はないものといわなければならない。

五 したがって、以上とは異なる見解に立ち、本件更正処分を違法なものとした原判決には、法律の解釈適用を誤った違法があり、ひいては審理不尽の違法があるものといわなければならず、右の違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴の部分は破棄を免れない。そして、本件更正処分の適否について更に審理を尽くさせるため、右部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。

 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

第7章 約款(定型約款)に関する規定の新設

第1節 要約

約款(定型約款)に関する規定の新設

-重要な実質改正事項-

約120年間の社会経済の変化への対応(実質的なルールの改正)

約款とは、大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項

契約内容の画一性を維持することができないと、取引の安定性を阻害

例えば、鉄道やバスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約など、多様な取引で広範に活用されている。

民法の原則によれば契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されないが、約款を用いた取引をする多くの顧客は約款に記載された個別の条項を認識していないのが通常

民法の原則によれば、契約の内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得ることが必要だが、承諾を得られないこともあり得る。

どのような場合に個別の条項が契約内容となるのか不明確

約款に関する規定を新設

旧法

現代社会においては、大量の取引を迅速に行うため、詳細で画一的な取引条件等を定めた約款を用いることが必要不可欠だが、民法には約款に関する規定がない。

解釈によって対応せざるを得ないが、いまだ確立した解釈もないため、法的に不安定

約款中に「この約款は当社の都合で変更することがあります。」との条項を設ける実務もあるが、その有効性については見解が分かれている。

約款(定型約款)に関する規定の新設

改正法の内容

・ 対象とする約款(定型約款)の定義

①     ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で、

② 内容の全部または一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの

を 「定型取引」と定義した上、 この定型取引において、

②     契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体

 

問題の所在

「約款」という用語は、現在も企業の契約実務や学界において広く用いられている。

もっとも、その意味についての理解は千差万別

約款に関する規定を新設するに当たり、改正の趣旨を踏まえた定義等が必要

【該 当】 鉄道・バスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約 等

【非該当】 一般的な事業者間取引で用いられる一方当事者の準備した契約書のひな型、労働契約のひな形 等

これらは、相手方の個性に着目して締結されるため、「不特定多数の者を相手方とする取引」(要件①)とはいえず、「定型約款」とはいえません。

 

【新§548条の2第1項】

・ 「定型約款」という名称

従来の様々あった「約款」概念と切り離して、規律の対象を抽出したことを明らかにするための名称

大量取引が行われるケースにおいて取引の安定等を図る観点から新たなルールを設けるのは、約款によって画一的な取引をすることが事業者側・顧客側双方にとって合理的であると客観的に評価することができる場合に限定する必要がある。

新設規定の対象となる約款(定型約款)の定義

改正法の内容

・ 定型約款が契約の内容となるための要件(組入要件)

次の場合は、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、契約内容となることを明確化※

 

問題の所在

民法の原則によれば契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されない。

約款(定型約款)に関する規定の新設

・ 「定型約款」については、細部まで読んでいなくても、その内容を契約内容とする旨の合意があるのであれば、顧客を契約に拘束しても不都合は少ない。

・ 明示の合意がない場合であっても、定型約款を契約内容とする旨が顧客に「表示」された状態で取引行為が行われているのであれば、同様に不都合は少ない。

ただし、相手方への「表示」が困難な取引類型(電車・バスの運送契約等)については、「公表」で足りる旨の特則が個別の業法に設けられている。

顧客の利益を一方的に害するような条項は契約内容とならないようにする余地を認めることが必要

【新§548条の2】

(定型約款の合意)

第548条の2 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条(548条の3)において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。

⑴定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。

⑵定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

2(略)

 

定型約款の定義

① 定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合

② (取引に際して)定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた場合※※

(定型取引の特質に照らして)相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意したとはみなさない(契約内容とならない)ことを明確化

※ただし、定型取引を行う合意の前に相手方から定型約款の内容を示すよう請求があった場合に、定型約款準備者が正当な事由なくその請求を拒んだ場合には、定型約款の条項の内容は契約内容とならない。【新§548条の3】

 

(定型約款の内容の表示)

第548条の3 定型取引を行い、または行おうとする定型約款準備者は、 定型取引合意の前または定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、またはこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。

2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

 

なお、次のようなケースでは、開示義務はありません(同ただし書)。

・取引相手から開示請求される前に、定型約款を記載した書面を交付した場合

・WEB上で約款内容を提供した場合

 

一度、取引相手に対して、定型約款の内容にアクセスできる機会を与えれば、再度、開示する必要はないということです。

 

【定型取引合意の後相当の期間内】とは?

期間の起算点や長さは、個別に判断されることになりますが、一般的な消滅時効期間が5年であることから、最終の取引時から5年程度は表示請求に応じる必要があると考えられています。

 

【相当な方法】とは?

次のような方法が想定されています。

・取引相手に定型約款を面前で示す方法

・定型約款を書面または電子メール等で送付する方法

・定型約款が掲載されているウェブサイトを案内する方法

 

第2節 公表によるみなし合意

公表によるみなし合意

鉄道・バス等による旅客運送取引や、高速道路等の利用取引においては、上記①②のような合意・表示をすることが困難となります。 そこで、これらの取引については、個別の業法に特則が定められています。 すなわち、相手方に対する表示を要せず、 定型約款を契約の内容とする旨の「公表」をすれば、 当事者が定型約款の個々の条項についても合意したものとみなされます。 たとえば、次のような業法に特則が定められています。

・鉄道営業法

・軌道法

・海上運送法

・道路運送法

・航空法

・道路整備特別措置法

・電気通信業法

 

第3節 不当条項の取扱い

不当条項の取扱い

(例) 売買契約において、本来の目的となっていた商品に加えて、想定外の別の商品の購入を義務付ける不当な(不意打ち的)抱合せ販売条項など

・ 契約の内容とすることが不適当な内容の契約条項(不当条項)の取扱い

定型約款が契約内容となる要件

顧客は定型約款の条項の細部まで読まないことが通常であるが、不当な条項が混入している場合もある。

※※

不当条項が契約の内容とならない要件

① 相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であること

② 定型取引の態様・実情や、取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められること

 

たとえば、次のような条項があげられます。

 

具体例

 

相手方である顧客に対して過大な違約罰を定める条項

定型約款準備者の故意または重過失による損害賠償責任を免責する旨の条項

想定外の別の商品の購入を義務づける不意打ち的抱合せ販売条項

 

じつは、消費者契約法には、不当条項に関する民法と似たような書きぶりの規定があります(消費者法10条)。 民法と消費者契約法のそれぞれの条文を比べてみてください。

 

【民法】

(定型約款の合意)

第548条の2 (略)

2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、 相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって、 その定型取引の態様およびその実情ならびに取引上の社会通念に照らして 第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの については、合意をしなかったものとみなす。

 

【消費者契約法】

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して 消費者の権利を制限しまたは消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの は、無効とする。

 

消費者契約法の定めには、「その定型取引の態様およびその実情ならびに取引上の社会通念に照らして」という文言がないことに気づきましたか? 民法の定型約款では、「契約の内容を具体的に認識しなくとも、個別の条項につき合意したものとみなす」という定型約款の特殊性を踏まえ、 取引全体にかかわる事情や取引通念も考慮されるのです。

 

 

第4節 定型約款の変更

改正法の内容

次の場合には、定型約款準備者が一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能であることを明確化 (→ 既存の契約についても契約内容が変更される。)

問題の所在

長期にわたって継続する取引では、法令の変更や経済情勢・経営環境の変化に対応して、定型約款の内容を事後的に変更する必要が生ずる。

民法の原則によれば、契約内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得る必要があるが、多数の顧客と個別に変更についての合意をすることは困難

① 変更が相手方の一般の利益に適合する場合

または

② 変更が契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無およびその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的な場合

例) 保険法の制定(平成20年)に伴う保険約款の変更

【新§548条の4第1項】

約款中に「この約款は当社の都合で変更することがあります。」などの条項を設ける実務もあるが、この条項が有効か否かは見解が分かれている。

定型約款の変更要件

犯罪による収益の移転防止に関する法律の改正(平成23年)に伴う預金規定の変更

電気料金値上げによる電気供給約款の変更

クレジットカードのポイント制度改定に関する約款の変更など

 

実際に同意がなくとも変更を可能とする必要がある一方で、相手方(顧客)の利益保護の観点から、合理的な場合に限定する必要もある。

「その他の変更に係る事情」:相手方に与える不利益の内容・程度、不利益の軽減措置の内容など

 

要件②(民法548条の4第1項2号)は、2つの要件が含まれています。

 

定型約款の変更が、 契約をした目的に反せず、かつ、 変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無およびその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

 

「契約をした目的に反しない」とは

契約目的(「契約をした目的」)とは、契約当事者の主観的なもの(認識しているもの)ではありません。すなわち、一方当事者が、「これが契約目的だ」と思っているだけでは足りず、相手方とコミュニケーションをとって、お互いに「これが契約目的ですね」と共有したものでなければなりません。 そのため、契約条件の重大な部分を変更すると、契約目的に反するものと解されるおそれがあります。

 

「変更が合理的」とは

「変更の必要性」「変更内容の相当性」「変更する旨の規定の有無」などの事情を考慮して判断します。 定型約款を「変更する旨の規定」とは、たとえば、次のような定めです。

 

「この約款は、当社の裁量により、変更することがあります」

 

なお、このように定めなければ絶対に約款を変更することができない、というわけではありません。このような定めの有無は、あくまで、合理性を判断するときの1つの考慮要素にすぎません。

 

もっとも、

・定型約款の変更を将来的に行う可能性があること

・実際に変更するときの条件と手続き

を約款に具体的に定めておき、約款を変更するときに、定めた条件と手続きのとおり約款を変更すれば、「変更の合理性」が認められやすくなります。

 

また、その他考慮される事情(「その他の変更に係る事情」)には、次のようなものがあります。

 

・変更によって取引相手が受ける不利益の内容や程度

・このような不利益を軽減させる措置がとられているか

 

たとえば、

・取引相手に解除権を与えているか

・変更の効力発生までに、どの程度の猶予期間を設けているか

といった事項が考慮されます。

 

定型約款を変更するための手続き

定型約款を変更することができる要件(民法548条の4)をみたしたとしても、次の2つの手続きを行わなければ、定型約款を変更することはできません(民法548条の4第2項)。

 

定型約款を変更することができる要件

① 約款の変更の効力が発生する時期を定めること

② 次の事項をインターネットの利用その他適切な方法により周知すること

・定型約款を変更する旨

・変更後の定型約款の内容

・変更後の定型約款の効力発生時期

 

変更内容が、相手方の一般の利益に適合しない場合は、効力発生時期までに、これらを周知しなければ、約款変更の効力が発生しません(民法548条の4第3項)。

 

(定型約款の変更)

第548条の4(略)

⑴(略)

⑵定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無およびその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき

2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、 その効力発生時期を定め、かつ、 定型約款を変更する旨および変更後の定型約款の内容ならびにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。

3 第1項第2号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。

4 (略)

 

 

裁判所がフリーのジャーナリストに対し、司法記者クラブに加盟していないことを理由に刑事事件の判決要旨を交付しなかったことが、報道の自由、取材の自由を規定した憲法21条及び平等原則を規定した憲法14条に違反しないとされた事例

 

 

              損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所/平成12年(ネ)第5279号

【判決日付】      平成13年6月28日

【判示事項】      裁判所がフリーのジャーナリストに対し、司法記者クラブに加盟していないことを理由に刑事事件の判決要旨を交付しなかったことが、報道の自由、取材の自由を規定した憲法21条及び平等原則を規定した憲法14条に違反しないとされた事例

【参照条文】      憲法1

             憲法21

             国家賠償法

【掲載誌】        訟務月報49巻3号779頁

【評釈論文】      訟務月報49巻3号1頁

 

 

憲法

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 当事者の求めた裁判

 1 控訴人

 (1)原判決を取り消す。

 (2)被控訴人は,控訴人に対し,126万円及びこれに対する平成8年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (3)控訴費用は.第1,2審とも被控訴人の負担とする。

 2 被控訴人

 本件控訴を棄却する。

第2 事案の概要

 1 フリーのジャーナリストである控訴人が,松山地方裁判所(以下「松山地裁」という。)において言い渡された刑事事件の判決の要旨の交付を求めたところ,松山地裁はその交付を拒否した。本件は,松山地裁が司法記者クラブに加盟している記者にはこれを交付しているにもかかわらず,控訴人に対して交付を拒否したことは,報道の自由,取材の自由を侵害するもので憲法21条1項に違反し,また,司法記者クラブに加盟している記者とそれ以外のジャーナリストを差別するもので憲法14条1項にも違反するものであって,控訴人はこれによって精神的苦痛を被ったと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円,弁護士費用26万円及びこれらに対する不法行為の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

任意同行中の被疑者に対し弁護士からの電話に出ることを制限した警察官の措置は、任意捜査で許容される範囲を逸脱し、弁護人依頼権の侵害に該当する違法なものであるが、それより前に適法に発付されていた強制採尿令状による尿の差押手続との間に実質的な因果関係はないとして、尿の鑑定書等の証拠能力が肯定された事例

 

 

              覚醒剤取締法違反被告事件

【事件番号】      札幌地方裁判所判決/令和3年(わ)第667号

【判決日付】      令和4年4月27日

【判示事項】      任意同行中の被疑者に対し弁護士からの電話に出ることを制限した警察官の措置は、任意捜査で許容される範囲を逸脱し、弁護人依頼権の侵害に該当する違法なものであるが、それより前に適法に発付されていた強制採尿令状による尿の差押手続との間に実質的な因果関係はないとして、尿の鑑定書等の証拠能力が肯定された事例

【参照条文】      刑事訴訟法317

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

刑事訴訟法

第三百十七条 事実の認定は、証拠による。

 

 

河川附近地制限令第4条第2号第10条と憲法第29条

 

 

河川附近地制限令違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和37年(あ)第2922号

【判決日付】      昭和43年11月27日

【判示事項】      1、河川附近地制限令第4条第2号第10条と憲法第29条

             2、憲法第29条第3項の意義

【判決要旨】      1、河川附近地制限令第4条第2号、第10条は憲法29条第3項に違反しない。

             2、財産上の犠牲が単に一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものである場合には、これについて損失補償に関する規定がなくても、直接憲法第29条第3項を根拠にして、補償請求をする余地がないではない。

【参照条文】      憲法29-3

             河川附近地制限令4

             河川附近地制限令10

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集22巻12号1402頁

 

 

憲法

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。

② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 弁護人高橋勝夫の上告趣意第一点について。

 所論は、河州附近地制限令四条二号、一〇条は、次の理由により、憲法二九条三項に違反する違憲無効の規定であるという。すなわち、同令四条二号の制限は、特定の人に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものであり、したがつて、この制限に対しては正当な補償をすべきであるのにかかわらず、その損失を補償すべき何らの規定もなく、かえつて、同令一〇条によつて、右制限の違反者に対する罰則のみを定めているのは、憲法二九条三項に違反して無効であり、これを違憲でないとした原判決は、憲法の解釈を誤つたものであるというのである。

 よつて按ずるに、河川附近地制限令四条二号の定める制限は、河川管理上支障のある事態の発生を事前に防止するため、単に所定の行為をしょうとする場合には知事の許可を受けることが必要である旨を定めているにすぎず、この種の制限は、公共の福祉のためにする一般的な制限であり、原則的には、何人もこれを受忍すべきものである。このように、同令四条二号の定め自体としては、特定の人に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものとはいえないから、右の程度の制限を課するには損失補償を要件とするものではなく、したがつて、補償に関する規定のない同令四条二号の規定が所論のように憲法二九条三項に違反し無効であるとはいえない。これと同趣旨に出た原判決の判断説示は、叙上の見地からいつて、憲法の解釈を誤つたものとはいい得ず、同令四条二号、一〇条の各規定の違憲無効を主張する論旨は、採用しがたい。

 もつとも、本件記録に現われたところによれば、被告人は、名取川の堤外民有地の各所有者に対し賃借料を支払い、労務者を雇い入れ、従来から同所の砂利を採取してきたところ、昭和三四年一二月一一日宮城県告示第六四三号により、右地域が河川附近地に指定されたため、河川附近地制限令により、知事の許可を受けることなくしては砂利を採取することができなくなり、従来、賃借料を支払い、労務者を雇い入れ、相当の資本を投入して営んできた事業が営み得なくなるために相当の損失を被る筋合であるというのである。そうだとすれば、その財産上の犠牲は、公共のために必要な制限によるものとはいえ、単に一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲をこえ特別の犠牲を課したものとみる余地が全くないわけではなく、憲法二九条三項の趣旨に照らし、さらに河川附近地制限令一条ないし三条および五条による規制について同令七条の定めるところにより損失補償をすべきものとしていることとの均衡からいつて、本件被告人の被つた現実の損失については、その補償を請求することができるものと解する余地がある。したがつて、仮りに被告人に損失があつたとしても補償することを要しないとした原判決の説示は妥当とはいえない。しかし、同令四条二号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといつて、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令四条二号およびこの制限違反について罰則を定めた同令一〇条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。

 したがつて、右各規定の違憲無効を口実にして、同令四条二号の制限を無視し、所定の許可を受けることなく砂利を採取した被告人に、同令一〇条の定める刑責を肯定した原判決の結論は、正当としてこれを支持することができる。

 同第二点について。

 所論は、昭和三四年一二月一一日宮城県告示第六四三号による宮城県知事の告示は、憲法二九条三項に違反する違憲無効の告示であるという。

 しかし、所論中、河川附近地の指定はその理由と必要性とを示し、かつ、最少限度の土地に限られるべきものであつて、右告示は、知事の自由裁量の範囲を逸脱しているものであることを主張する点は、右指定が「河川の公利を増進し、又は公害を除去若は軽減する必要のため」に行なわれるものであるという指定そのものの性質にかんがみ、どういう範囲にその指定を行なうべきかは、知事の裁量の範囲に属するものと解すべきであつて、本件指定が右裁量の範囲を著しく逸脱したものとまでは断定することができず、論旨は理由がない。また、所論中、本件告示により砂利等の採取行為を禁ぜられた被告人に多額の損失が生じたことを理由として、右告示の憲法二九条三項違反をいう点は、本件上告趣意第一点について説示した理由と同じ理由により、採用することができない。

 同第三点について。

 所論は、河川附近地制限令四条二号、一〇条は、憲法七三条六号、九八条一項に違反する違憲無効の規定であるという。

 しかし、河川附近地制限令四条の規定は、同令の制定当時施行されていた昭和三三年法律第一七三号による改正前の河川法五八条にいう「此ノ法律ニ規定シタル私人ノ義務」に関する制限を定めたものとみるべきてあるが、右改正により、新たに同法四七条の規定を設け、このような制限の根拠を一層明確にするに至つたもので、その後は、河川附近地制限令四条の定めは、右四七条に基づく有効な定めとみるべきである。また、同令一〇条の定める罰則は、所論のように明治二三年法律第八四号「命令ノ条項違犯ニ関スル罰則ノ件」に基づくものではなく、前記改正前の河川法五八条の委任に基づき適法に定められたものとみるべきであるが、右改正にあたり、この点についても、その根拠規定の疑義を避けるため、改正法五八条の五を加えるに至つたもので、その後は、同令一〇条の定めは、右五八条の五に基づく有効な定めとみるべきである。右と異なる論旨は、排斥を免れず、違憲の論旨は、その前提において採ることができない。

 以上、論旨は、すべて理由がなく、いずれも採用することができない。

 よつて、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

  昭和四三年一一月二七日

     最高裁判所大法廷

『経営の技法 (「法務の技法」シリーズ)』中央経済社 2019/1/23

久保利 英明 (著), 野村 修也 (著), 芦原 一郎 (著)

 

¥3,520

 

正しい会社経営をするためにガバナンスや内部統制といったツールをどのように使うべきか,著名な法律家が法務問題のみならず広い視点をもってまとめた経営・法務実践書。シリーズ全体の総論でありつつ,一歩踏み込んだ社内弁護士のモデルを提示! ビジネス面とリスク管理面を一体として判断し,法務が積極的にビジネス(経営判断)に関与するべき方法論を示すドラスティックな内容。

 

■本書の構成

第1章 基礎理論(11テーマ)

第2章 ガバナンス(8テーマ)

第3章 内部統制の理論(8テーマ)

第4章 内部統制の設計(11テーマ)

第5章 内部統制の運用(12テーマ)

第6章 法務部門の運用(8テーマ)

第7章 関連会社の管理(10テーマ)

各章末におまけ小説「法務の小枝(こえだ)ちゃん」を収録。

 

 

内容(「BOOK」データベースより)

本書は、「ガバナンス=株主(社外)と経営者の関係」と「内部統制=経営者と従業員(社内)の関係」という構造において、それぞれがなぜ機能不全に陥るのか、その原因と対応策を稀代の法律実務家が論じつつ、正しくかつ儲ける会社経営をするために、コンプライアンスやガバナンスといったツールをどのように用いるべきか、幅広い視点をもって解説しています。

 

 

コメント

平易に書かれているので、1日で読める。

 

 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

久保利/英明

1944年8月埼玉県生まれ、1963年3月私立開成高校卒業、1967年9月司法試験合格(東京大学法学部4年在学中)、1968年3月東京大学法学部卒業、1968年4~9月ヨーロッパ・アフリカ・アジアを歴訪、1969年4月司法修習生(23期)、1971年4月弁護士登録(第二東京弁護士会)。1971年4月に森綜合法律事務所(現:森・濱田松本法律事務所)に入所。1998年4月に日比谷パーク法律事務所を設立し、同事務所代表就任。2001年度第二東京弁護士会会長・日本弁護士連合会副会長(任期1年)。2015年4月より桐蔭法科大学院教授。2001年10月、野村ホールディングス(株)社外取締役(~2011年6月)。2011年6月~(株)東京証券取引所グループ(2013年1月に(株)日本取引所グループに商号変更)社外取締役(現任)、東京証券取引所自主規制法人(現日本取引所自主規制法人)外部理事(2017年6月任期満了により退任)。2014年6月~ソースネクスト(株)社外取締役など。(株)不二家「外部から不二家を変える」改革委員会委員長代理(2007年)、日本放送協会「職員の株取引問題に関する第三者委員会」委員長(2008年)、(株)商事法務「NBL編集倫理に関する第三者委員会」委員長(2010年)、(株)マルハニチロホールディングス「農薬混入事件に関する第三者検証委員会」委員、(株)ゼンショーホールディングス「「すき家」の労働環境改善に関る第三者委員会」委員長(以上、2014年)等、多数の第三者委員会の委員長、委員などを務める。第三者委員会報告書格付け委員会委員長(2014年~)

 

野村/修也

中央大学法学部卒業(1985年)、同大学院法学研究科博士前期課程修了(法学修士、1987年)、同後期課程中退(1989年)。西南学院大学法学部専任講師(1989年~)、同助教授(1992年~)、中央大学法学部教授(1998年~)、中央大学法科大学院教授、弁護士登録、森・濱田松本法律事務所客員弁護士(2004年~現在)。金融監督庁(金融庁)検査部参事(1998年~2002年)、金融庁顧問(2002年~2011年)、総務省顧問(2006年~2009年)、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調、2011年~2012年)、厚生労働省顧問(2014年~2018年)、金融庁・金融モニタリング有識者会議委員(2016年)、法務省・法制審議会会社法制・企業統治等関係部会委員(2017年)、内閣府・休眠預金等活用審議会委員(2017年)、参議院法務委員会調査室客員調査員(2018年)。(株)経営共創基盤社外監査役(2007年~現在)、凸版印刷(株)社外監査役(2010年~2018年)、三菱UFJ信託銀行(株)社外取締役(2014年~2016年)、同社外取締役・監査等委員(2016年~現在)、一般社団法人日本ゴルフツアー機構理事(2017年~現在)

 

芦原/一郎

早稲田大学法学部(1991年)とボストン大学ロースクール(2003年)を卒業。日本(1995年、47期)と米ニューヨーク州(2006年)で弁護士登録、証券アナリスト登録(CMA、2013年)。森綜合法律事務所(現:森・濱田松本法律事務所、1995年~)、アフラック(1999年~)、日本GE(2009年)、みずほ証券(2009年~)、チューリッヒ保険/チューリッヒ生命でのジェネラルカウンセル(2013年~)を経て、現職。東京弁護士会で民暴委員会(1995年~)や労働法委員会(2006年~,副委員長:2016年~)などに所属、日本組織内弁護士協会で理事(2012年~)、大宮法科大学院(ロースクール)で非常勤講師(2009年~2010年)なども歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

出版社 ‏ : ‎ 中央経済社 (2019/1/23)

発売日 ‏ : ‎ 2019/1/23

単行本 ‏ : ‎ 388ページ

ISBN-10 ‏ : ‎ 4502291013

 

 

第6章 債権譲渡に関する見直し

債権譲渡に関する見直し

-重要な実質改正事項-

債権譲渡とは、債権者Aの債務者Bに対する債権について、AC間の売買などにより、その債権を新たな債権者Cに移転すること

※債権譲渡の目的

弁済期前の金銭化のほか、担保化の手段として(譲渡担保)

債権譲渡による資金調達の拡充とそれに伴う問題

近時、債権譲渡(譲渡担保)による資金調達が、特に中小企業の資金調達手法として活用されることが期待されている。

※例えば、中小企業が自己の有する現在または将来の売掛債権等を原資として資金調達を行うことがある。

しかし・・・

(平時)

旧法466条の定める譲渡制限特約が資金調達を行う際の支障になっている。

将来の債権の譲渡が可能であることが条文上明確でない。

改正法の内容

債権の譲渡制限特約の効力の見直し → 詳細は次ページ

将来債権の譲渡が可能であることを明らかにする規定の新設 【新§466条の6】

譲渡担保:担保化の目的で動産・債権等の権利を形式的に移転させること(返済が無事に終われば元の権利者に復帰する)

(例)ゼネコン(B)から継続的に仕事を受注している

下請会社(A)が、金融機関(C)から融資を受ける際に、今後1年間に発生するゼネコン(B)に対する請負代金債権を担保として提供

債権譲渡(譲渡担保)

譲渡制限特約の役割(旧法)

「譲渡制限特約」とは、債権の譲渡を禁止し、または制限する旨の債権者・債務者間の特約をいう。

譲渡制限特約が付された債権の譲渡は原則無効

債務者にとっては弁済の相手方を固定するために重要

改正法の内容 【新§466、 466条の2、 466条の3】

譲渡制限特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられない(ただし、預貯金債権は除外)。

弁済の相手方を固定することへの債務者の期待を形を変えて保護

・債務者は、基本的に譲渡人(元の債権者)に対する弁済等をもって譲受人に対抗することができる(免責される)。

譲受人の保護

・債務者が譲受人から履行の催告を受け、相当の期間内に履行をしないときは、債務者は、譲受人に対して履行をしなければならない。

・譲渡人が破産したときは、譲受人は、債務者に債権の全額に相当する金銭を供託するよう請求することができる(譲渡人への弁済は譲受人に対抗できない)。

 

債権譲渡に関する見直し(債権の譲渡制限特約)

問題の所在

債権譲渡に必要な債務者の承諾を得られないことが少なくない。

債権譲渡が無効となる可能性が払拭しきれないため、譲渡(担保設定)に当たって債権の価値が低額化。

弁済

改正法

債務者

債権者(譲渡人) 譲受人

(悪意重過失)

売掛債権等

(譲渡制限特

約付き) 譲渡は有効

しかし、解除されると債権が発生しない

改正法の下での解釈論

改正法では、債務者は、基本的に譲渡人(元の債権者)に対する弁済等をすれば免責されるなど、弁済の相手方を固定することへの債務者の期待は形を変えて保護されている。

そうすると、以下の解釈ができると考えられる。

譲渡制限特約が弁済の相手方を固定する目的でされたときは、債権譲渡は必ずしも特約の趣旨に反しないと見ることができる。

そもそも契約違反(債務不履行)にならない。

債権譲渡がされても債務者にとって特段の不利益はない。

取引の打切りや解除を行うことは、極めて合理性に乏しく、権利濫用等に当たりうる。

 

債権譲渡に関する見直し(債権の譲渡制限特約)

実務上の懸念

譲渡制限特約が付された債権の譲渡が有効であるとしても、債権者・債務者間の特約に違反したことを理由に契約が解除されてしまうのではないか?

解除ができるとすると、債権譲渡をしたために取引を打ち切られるリスクがある。

譲受人にとっても、解除によって債権が発生しないおそれがあるため、そのような債権を譲り受けるのは困難。

解除

債権譲渡は契約違反だ 資金調達の円滑化につながらないおそれがないか?

なる

債権譲渡は契約違反(債務不履行)になるか?

ならない

解除権の行使は権利の濫用に当たるか?

解除は不可

 

民法742条1号にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」の意義

 

 

              婚姻無効確認本訴並びに反訴請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和42年(オ)第1108号

【判決日付】      昭和44年10月31日

【判示事項】      民法742条1号にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」の意義

【判決要旨】      民法742条1号にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ婚姻届出自体については当事者に意思の合致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないときは、婚姻は効力を生じない。

【参照条文】      民法742

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集23巻10号1894頁

 

 

民法

(婚姻の無効)

第七百四十二条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。

二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人河合伸一、同河合徹子の上告理由について。

 所論は、民法七四二条一号にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、法律上の夫婦という身分関係を当事者間に設定しようとする意思がない場合と解すべきである旨主張する。

 しかし、右にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものと解すべきであり、したがつてたとえ婚姻の届出自体について当事者間に意思の合致があり、ひいて当事者間に、一応、所論法律上の夫婦という身分関係を設定する意思はあつたと認めうる場合であつても、それが、単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないものであつて、前述のように真に夫婦関係の設定を欲する効果意思がなかつた場合には、婚姻はその効力を生じないものと解すべきである。

 これを本件についてみるに、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の適法に認定判示するところによれば、本件婚姻の届出に当たり、被上告人と上告人との間には、Aに右両名間の嫡出子としての地位を得させるための便法として婚姻の届出についての意思の合致はあつたが、被上告人には、上告人との間に真に前述のような夫婦関係の設定を欲する効果意思はなかつたというのであるから、右婚姻はその効力を生じないとした原審の判断は正当である。所論引用の判例(最高裁昭和三七年(オ)第二〇三号、同三八年一一月二八日第一小法廷判決、民集一七巻一一号一四六九頁)は、事案を異にし、本件に適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第二小法廷

自賠法3条による運行供用者責任が認められた事例

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和44年(オ)第231号

【判決日付】      昭和44年9月18日

【判示事項】      自賠法3条による運行供用者責任が認められた事例

【判決要旨】      甲の買い受けた自動車をその被用者が運転中に事故を起こした場合において、甲が、自動車運送事業の免許を受けないで、自動車の使用者名義を乙とし、車体に乙の商号を表示した該自動車を使用して、専属的に乙のための貨物運送にあたつていたもので、右事故もその業務に従事中におけるものであり、また、右自動車の割賦代金やガソリン代等は乙が支払つて甲に対する運賃から差し引いていた等、判示のような事実関係があるときは、乙は自賠法3条による運行供用者としての責任を負う。

【参照条文】      自動車損害賠償保障法3

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集23巻9号1699頁

 

 

自動車損害賠償保障法

(自動車損害賠償責任)

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

 

日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした地方自治法11条、18条、公職選挙法9条2項と憲法15条1項、93条2項

 

 

選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成5年(行ツ)第163号

【判決日付】      平成7年2月28日

【判示事項】      日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした地方自治法11条、18条、公職選挙法9条2項と憲法15条1項、93条2項

【判決要旨】      日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした地方自治法11条、18条、公職選挙法9条2項は、憲法15条1項、93条2項に違反しない。

【参照条文】      憲法15-1

             憲法93-2

             地方自治法11

             地方自治法18

             公職選挙法9-2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集49巻2号639頁

 

 

憲法

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

② すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

 

第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

 

 

地方自治法

第十一条 日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の選挙に参与する権利を有する。

 

第十六条 普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があつたときは、その日から三日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない。

② 普通地方公共団体の長は、前項の規定により条例の送付を受けた場合は、その日から二十日以内にこれを公布しなければならない。ただし、再議その他の措置を講じた場合は、この限りでない。

③ 条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して十日を経過した日から、これを施行する。

④ 当該普通地方公共団体の長の署名、施行期日の特例その他条例の公布に関し必要な事項は、条例でこれを定めなければならない。

⑤ 前二項の規定は、普通地方公共団体の規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものにこれを準用する。但し、法令又は条例に特別の定があるときは、この限りでない。

 

 

公職選挙法

(選挙権)

第九条 日本国民で年齢満十八年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。

2 日本国民たる年齢満十八年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。

3 日本国民たる年齢満十八年以上の者でその属する市町村を包括する都道府県の区域内の一の市町村の区域内に引き続き三箇月以上住所を有していたことがあり、かつ、その後も引き続き当該都道府県の区域内に住所を有するものは、前項に規定する住所に関する要件にかかわらず、当該都道府県の議会の議員及び長の選挙権を有する。

4 前二項の市町村には、その区域の全部又は一部が廃置分合により当該市町村の区域の全部又は一部となつた市町村であつて、当該廃置分合により消滅した市町村(この項の規定により当該消滅した市町村に含むものとされた市町村を含む。)を含むものとする。

5 第二項及び第三項の三箇月の期間は、市町村の廃置分合又は境界変更のため中断されることがない。